同軸ケーブルの損失と実効出力
ケーブルの種類・長さ・周波数とコネクタ数から、減衰量とアンテナに届く電力、電力の残存率を算出します。
同軸ケーブルの損失と実効出力ツール
減衰量は概ね周波数の平方根に比例します。5D-2Vの係数0.85に√145=12.04を掛けて100mあたり10.24dB、20mでは2.05dBです。コネクタ4個で0.15dBずつ加算して0.60dB、SWR1.5によるミスマッチ損失0.18dBを足すと合計2.82dBになります。出力50Wに10の(−2.82÷10)乗を掛けて、アンテナに届く電力は26.1W、残存率は52.19%です。
同軸ケーブルの減衰量の目安(100mあたり)
| 種類 | 10MHz | 145MHz | 435MHz |
|---|---|---|---|
| 3D-2V | 4.1dB | 15.7dB | 27.1dB |
| 5D-2V | 2.7dB | 10.2dB | 17.7dB |
| 8D-2V | 1.8dB | 7.0dB | 12.1dB |
| 10D-FB | 1.3dB | 4.8dB | 8.3dB |
損失dBと残る電力の関係
| 合計の損失 | 残る電力の割合 | 50W時の実効出力 |
|---|---|---|
| 1dB | 79.4% | 39.7W |
| 2dB | 63.1% | 31.6W |
| 3dB | 50.1% | 25.1W |
| 6dB | 25.1% | 12.6W |
※参考計算です。機材の仕様・規格・法令は改定されるため、実機の仕様書と最新の告示を確認してください。
同軸ケーブルの損失と実効出力の詳しい解説
同軸ケーブルの損失が周波数とともに増えるのは、導体の表皮効果と誘電体の損失が同時に効くためです。周波数が上がると電流が導体の表面付近だけを流れるようになり、実効的な断面積が減って抵抗が増えます。減衰量が周波数の平方根に近い形で増えるのはこの効果が支配的だからで、太いケーブルほど表面積が大きく損失が小さくなります。
判断が分かれるのは太さと取り回しのどちらを優先するかです。太いケーブルは損失が小さい一方、曲げ半径が大きく重量もあるため、屋内の配線や移動運用では扱いにくくなります。同じ長さで1dBの差は電力にして約2割ですが、受信では信号対雑音比の差として現れるため、送信より受信を重視する運用では太めを選ぶ判断に傾きます。
見落とされやすいのがコネクタと接続部の損失です。1か所あたりは0.1から0.2dB程度でも、中継や切替器を含めると数か所になり、短いケーブルでは本体の損失を上回ることがあります。屋外の接続部に水が入ると誘電体が湿って損失が急増し、数か月で見違えるほど性能が落ちる例もあります。防水処理の有無は、ケーブルの銘柄選定より結果に効くことがあります。
条件による違いも押さえておく必要があります。カタログの減衰量は常温での値で、夏場の直射日光下では導体抵抗が上がり数%悪化します。SWRが高い状態では反射波が往復するぶん余分な減衰を受けるため、同じケーブルでも整合が取れていない系では損失が増えます。極超短波帯で長い引き回しが避けられない場合は、送信機をアンテナに近づけるか、プリアンプを支柱上に設ける構成のほうが有利になります。
更新の判断は費用と効果の比較になります。数十メートルの引き回しを一段太い品に替えると材料と工事で数万円かかる一方、得られるのは1dBから2dBの改善で、電力にして2割から4割です。送信では体感しにくい水準ですが、受信では弱い信号を拾えるかどうかを分けることがあります。まずは接続部の手直しと余長の整理という費用のかからない対策から着手し、それでも足りない場合に交換を検討する順序が現実的です。
業界・現場での使い方
無線設備の設計
許容できる損失から使えるケーブルの種類と最大長を決め、設置場所の制約と突き合わせます。
屋上アンテナの引き込み
引き回しの距離と周波数から実効出力を試算し、ケーブル交換の効果を金額と比べます。
放送・監視設備の保守
経年で増えた損失を測定値と計算値で比較し、交換時期の判断材料にします。
移動運用の機材選定
持ち運ぶ重量と損失の兼ね合いから、長さと太さの組み合わせを決めます。
よくある間違い・注意点
- 低い周波数の減衰量で高い周波数を見積もる — 減衰量は周波数の平方根に近い形で増え、10倍の周波数では3倍以上になります。
- コネクタの損失を数えない — 1か所0.1から0.2dBでも数か所重なると、短いケーブルでは本体を上回ります。
- 屋外接続部の防水を軽視する — 浸水すると誘電体の損失が急増し、数か月で性能が大きく低下します。
- 必要以上に長いケーブルを巻いて使う — 余長も損失になります。巻いた状態は放熱にも不利です。
- SWRが高い状態の余分な損失を無視する — 反射波が往復するぶん減衰を受け、整合が取れた系より損失が増えます。
関連する規格・公的資料
- 総務省 電波利用ホームページ — 電波・無線局
- 日本アマチュア無線連盟 (JARL) — アマチュア無線
- 情報通信研究機構 (NICT) — 電波・標準時
- 国立天文台 — 天文観測
- 宇宙航空研究開発機構 (JAXA) — 宇宙科学
- 日本産業標準調査会 (JISC) — JIS規格
- 産業技術総合研究所 — 計量標準
- 日本光学工業協会 — 光学機器
- 日本天文学会 — 天文学
- 総務省 — 情報通信行政
※本ツールは公的基準に基づく参考計算です。医療・法務・税務の判断は最新の告示・規格および専門家の判断に従ってください。
よくある質問(FAQ)
5D-2Vを20m使うと145MHzで何ワット届きますか?
コネクタ4個・SWR1.5の条件で合計2.82dBの損失となり、出力50Wに対して26.1Wが届きます。
ケーブルを太くするとどれくらい変わりますか?
5D-2Vを10D-FBに替えると100mあたりの減衰量が半分以下になり、同じ長さで届く電力が大きく増えます。
コネクタ1か所の損失はどれくらいですか?
良好に施工された状態で0.1から0.2dBが目安です。接触不良や腐食があるとこれを大きく上回ります。
受信でも損失は影響しますか?
影響します。受信では信号と雑音の比が損失分だけ悪化するため、送信以上に配慮が必要な場合があります。
余ったケーブルは巻いておいてよいですか?
長さぶんの損失はそのまま生じます。必要な長さで作り直すほうが有利です。
屋外で何年くらい使えますか?
被覆の劣化と接続部の浸水次第です。紫外線に弱い被覆では5年程度で表面にひび割れが出ることがあります。
カタログ値と実測値が合わないのはなぜですか?
温度、接続部の状態、SWRの影響が加わるためです。実測が悪い場合は接続部から確認します。
プリアンプを使えば損失を補えますか?
受信側では有効ですが、アンテナ直下に置かないと効果が薄れます。送信の損失は補えません。