鉄骨柱の許容圧縮力計算
鋼種・柱の実長・座屈長さ係数・断面二次半径から、細長比と許容圧縮応力度、許容軸力、作用軸力との検定比を算出します。
鉄骨柱の許容圧縮力計算ツール
細長比は座屈長さ÷断面二次半径で求めます。既定値では座屈長さ1.0×4,000mm=400cmを7.5cmで割ってλ=53.3。限界細長比はΛ=π√(E÷0.6F)で、F=235のときΛ=119.8です。λ≦Λなので許容圧縮応力度は fc=(1−0.4(λ/Λ)²)F÷ν の式を使い、ν=1.632となってfc=132.6 N/mm2。許容軸力は132.6×84cm2=1113.5 kNで、作用軸力600kNに対する検定比は53.88%です。
座屈長さ係数の目安
| 柱頭・柱脚の条件 | 理論値 | 設計で用いる値 |
|---|---|---|
| 両端ピン | 1.0 | 1.0 |
| 一端固定・他端ピン | 0.7 | 0.8程度 |
| 両端固定 | 0.5 | 0.65程度 |
| 一端固定・他端自由 | 2.0 | 2.1程度 |
細長比と許容圧縮応力度の関係(F=235)
| 細長比 λ | 長期 fc | 低減の度合い |
|---|---|---|
| 30 | 約150 N/mm2 | ほぼ低減なし |
| 60 | 約129 N/mm2 | 1割強の低減 |
| 90 | 約102 N/mm2 | 3割の低減 |
| 120 | 約73 N/mm2 | 5割の低減 |
| 150 | 約42 N/mm2 | 7割の低減 |
※参考計算です。規準・示方書・製品仕様は改定されるため、実施設計では最新の告示と材料メーカーの技術資料で確認してください。
鉄骨柱の許容圧縮力計算の詳しい解説
鉄骨柱の許容圧縮力が断面積に単純比例しないのは、細長い部材ほど降伏より先に横へはらむ座屈が起こるためです。細長比は座屈長さを断面二次半径で割った値で、この値が限界細長比を超えると弾性座屈が支配します。限界細長比は基準強度が大きいほど小さくなるので、高張力鋼に替えても細長い柱では耐力がその比率どおりには増えません。断面積を増やすより断面二次半径の大きい形状へ替えるほうが効く場面が多いのは、この構造によります。
実務で判断が分かれるのは座屈長さ係数の取り方です。理論値では両端固定が0.5ですが、実際の柱脚は完全な固定ではなく、露出柱脚ではむしろピンに近い挙動になります。梁の剛性が小さければ柱頭も回転を拘束できません。安全側に1.0で通す設計者もいれば、剛接架構として算定図から0.7前後を採る設計者もいます。根拠が説明できない係数を使わないことが、審査での指摘を避ける最短の道です。
見落とされやすいのは、強軸と弱軸で細長比が別々に決まる点です。H形鋼は弱軸の断面二次半径が強軸の半分以下になることが多く、弱軸側に小梁やブレースで横補剛が入っているかで支配する方向が入れ替わります。さらに実際の柱には梁からの曲げが同時に働くため、軸力だけで余裕があっても組合せ応力の検定で不足することがあります。柱脚のアンカーボルトやベースプレートが先に決まる場合も少なくありません。
条件による違いも大きく出ます。短期の地震時は長期の1.5倍まで許容されますが、細長比が大きい領域では元の値が小さいため増分も小さくなります。角形鋼管は二方向の断面二次半径が等しく座屈長さの読み違いに強い一方、板厚と幅厚比の制限が別に効きます。冷間成形角形鋼管では材端の応力割増しも求められるため、最終的な断面はこの計算だけでは決まりません。実施設計では構造計算に基づく確認が必要です。
設計の順序としては、まず座屈長さを確定し、次に細長比が100を下回る範囲に収まるかを見ます。100を超えると許容応力度の下がり方が急になり、断面積を増やしても効率が悪くなります。この段階で階高を分割する水平材の追加や、柱の向きの変更を検討したほうが鋼材量は減ります。仕上げや設備との取り合いも同時に確かめておくと、後戻りが少なくなります。
業界・現場での使い方
鉄骨造の一次設計
柱の断面仮定を素早く行い、許容軸力に対する余裕を把握します。
既存建物の耐力確認
図面から断面性能を拾い、現状の柱がどの程度の軸力に耐えるかを確認します。
仮設構台・支保工の検討
支柱の座屈長さと細長比を確認し、水平つなぎの段数を決める材料にします。
鉄骨積算・見積もり
断面を変えたときの許容軸力の変化から、鋼材量と単価の折り合いを検討します。
よくある間違い・注意点
- 断面積だけで耐力を判断する — 細長比が大きい柱では許容応力度が半分以下に落ち、断面積に比例した耐力は出ません。
- 強軸の断面二次半径だけを使う — 横補剛がなければ弱軸で先に座屈します。小さいほうの値で検定する必要があります。
- 柱脚を無条件に固定とみなす — 露出柱脚は回転剛性が小さく、実挙動はピンに近いため座屈長さが伸びます。
- 軸力だけで検定を終える — 梁からの曲げが同時に作用するため、組合せ応力の検定を省くと不足します。
- 高張力鋼にすれば必ず有利と考える — 限界細長比が下がるため、細長い柱では基準強度の比ほど耐力が上がりません。
関連する規格・公的資料
- 国土交通省 — 建築基準法・土木
- 日本建築学会 — 構造設計規準
- 土木学会 — 示方書・指針
- 日本産業標準調査会 (JISC) — JIS規格
- 建築研究所 — 建築の研究開発
- 土木研究所 — 土木の研究開発
- 日本道路協会 — 道路構造・舗装
- 日本コンクリート工学会 — コンクリート
- 日本建設業連合会 — 施工・積算
- 国土地理院 — 測量・基準点
※本ツールは公的基準に基づく参考計算です。医療・法務・税務の判断は最新の告示・規格および専門家の判断に従ってください。
よくある質問(FAQ)
既定値の条件で許容軸力はいくつになりますか?
F=235、λ=53.3の条件で fc=132.6 N/mm2、断面積84cm2との積で1113.5 kNです。
限界細長比Λは何を表しますか?
材料が降伏する前に弾性座屈へ移る境目の細長比です。F=235で約119.8、F=325で約101.9となります。
座屈長さ係数はどれを選べばよいですか?
柱頭・柱脚の回転拘束の実態で決めます。根拠が示せない場合は安全側の1.0を採るのが無難です。
短期はどのくらい割り増せますか?
長期の1.5倍が許容値です。ただし細長比が大きい領域では元の値が小さく、増分も限定的になります。
細長比に上限はありますか?
構造耐力上主要な柱では200以下とすることが定められています。仮設材でも同等の管理が求められます。
弱軸と強軸のどちらで計算しますか?
断面二次半径の小さいほう、つまり細長比が大きくなる方向で検定します。横補剛があればその区間で判断します。
角形鋼管とH形鋼ではどちらが座屈に強いですか?
同じ断面積なら二方向の断面二次半径が近い角形鋼管が有利です。ただし幅厚比の制限が別に効きます。
この結果だけで断面を決めてよいですか?
軸力に対する目安です。曲げとの組合せ、幅厚比、柱脚の設計を含めた構造計算で最終確認してください。