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高力ボルト摩擦接合鉄骨せん断

高力ボルトの必要本数計算

設計せん断力・ボルトの呼び径・摩擦面の数・板厚から、高力ボルトの必要本数と余裕率、配置の最小寸法を算出します。

最終更新:2026-05-06/監修:計算ツールズ編集部

高力ボルトの必要本数計算ツール

摩擦接合の1本あたり許容せん断力は0.3×設計ボルト張力×摩擦面の数で求めます。既定値のM20・F10T・2面摩擦・長期では0.3×165×2=99.0 kN。一方で孔壁支圧は呼び径×板厚×支圧許容応力度=20×12×293.75=70.5 kNとなり、小さいほうの70.5kNが1本の耐力を決めます。設計せん断力600kNを70.5kNで割ると8.51本、切り上げて9本。実配置12本なら余裕率は41.00%、最小ピッチは2.5d=50mm、最小縁端距離は34mmです。

高力ボルトの設計ボルト張力と1面あたり長期許容せん断力(F10T)

呼び径設計ボルト張力1面・長期2面・長期
M16106 kN31.8 kN63.6 kN
M20165 kN49.5 kN99.0 kN
M22205 kN61.5 kN123.0 kN
M24238 kN71.4 kN142.8 kN

ボルト配置の寸法制限

呼び径孔径最小ピッチ最小縁端距離
M1618 mm40 mm28 mm
M2022 mm50 mm34 mm
M2224 mm55 mm38 mm
M2426 mm60 mm44 mm

※参考計算です。規準・示方書・製品仕様は改定されるため、実施設計では最新の告示と材料メーカーの技術資料で確認してください。

高力ボルトの必要本数計算の詳しい解説

高力ボルト摩擦接合の耐力は、ボルトのせん断強度ではなく摩擦面のすべりで決まります。ボルトを強く締め付けて板同士を押し付け、その摩擦で力を伝える仕組みなので、効くのは設計ボルト張力とすべり係数、そして摩擦面の数です。同じM20でも片面添え板の1面摩擦と両面添え板の2面摩擦では耐力が2倍違います。せん断力が大きいときにまず検討すべきは本数を増やすことではなく、両面添え板に替えて摩擦面を増やすことです。

判断が分かれるのは摩擦面の処理です。すべり係数0.45は、黒皮を除去して自然発錆させた面かブラスト処理面を前提とした値です。工期の都合で赤錆が十分に出ていない、あるいは防錆塗装が及んでいる場合、実際の係数は下がります。無機ジンクリッチペイントであれば所定の膜厚管理を条件に0.45を見込めますが、一般の錆止め塗料が付着した面は対象外です。現場での判断ではなく、施工計画の段階で処理方法を決めておく必要があります。

見落とされやすいのが孔壁支圧と母材の有効断面です。摩擦接合であっても、すべりが生じた後は孔壁が支圧を受けます。板厚が薄いと支圧側が先に効き、摩擦耐力に届く前に本数が増えます。さらにボルト孔による断面欠損で母材の引張耐力が下がるため、接合部だけでなく母材側の検定も必要です。縁端距離が足りないと端抜けが起こり、ピッチが狭いと締付けの相互影響で張力が確保できません。

条件による違いも押さえておきます。短期の地震時は長期の1.5倍まで許容されますが、繰り返しですべりが生じると初期剛性は戻りません。トルシア形高力ボルトはピンテールの破断で張力を管理でき、締付け検査が簡便です。板の合わせ面に隙間があると張力が逃げるため、フィラープレートの挿入が必要になります。板厚差が1mmを超える場合はフィラーの要否を必ず確認してください。最終的な本数は構造設計者の判断によります。

数量を詰める順序としては、まず摩擦面の数を確定し、次に呼び径を選び、最後に本数を決めます。呼び径を1段上げると1本あたりの耐力が2割から3割増えるため、本数を減らしてピッチや縁端距離の制約を緩められる場合があります。添え板の板厚と幅も同時に決まるので、接合部全体の納まりを見ながら組み合わせを比較してください。

業界・現場での使い方

鉄骨の接合部設計

設計せん断力から必要本数を求め、添え板の構成とボルト列数を決めます。

鉄骨製作図のチェック

図面のボルト本数とピッチ・縁端距離が最小値を満たすかを照合します。

現場での納まり検討

摩擦面の数を変えたときに本数がどこまで減らせるかを比較します。

改修・補強の計画

既存部材にどれだけのボルトを配置できるかから、伝達可能なせん断力を逆算します。

よくある間違い・注意点

  • ボルトのせん断強度で計算する — 摩擦接合は板間の摩擦で力を伝えるため、耐力は設計ボルト張力とすべり係数で決まります。
  • 摩擦面の数を数え違える — 両面添え板は2面、片面添え板は1面です。取り違えると耐力が2倍ずれます。
  • 孔壁支圧の検討を省く — 板厚が薄いと支圧が先に効き、摩擦耐力どおりの本数では不足します。
  • 孔による断面欠損を無視する — 母材の有効断面が減るため、接合部が成立しても母材側で不足することがあります。
  • 縁端距離とピッチを詰めすぎる — 端抜けや締付け張力の不足を招きます。呼び径ごとの最小値を必ず確認してください。

関連する規格・公的資料

※本ツールは公的基準に基づく参考計算です。医療・法務・税務の判断は最新の告示・規格および専門家の判断に従ってください。

よくある質問(FAQ)

M20・F10T・2面摩擦で600kNを伝えるには何本必要ですか?

板厚12mmでは孔壁支圧が支配して1本70.5kNとなり、9本が必要です。

F8TとF10Tでは何が違いますか?

設計ボルト張力が約2割小さくなるため、同じ本数では耐力が下がります。既存建物の改修で使われることがあります。

すべり係数0.45はどんな条件で使えますか?

黒皮を除去した自然発錆面か、所定の粗さを確保したブラスト面が前提です。一般の錆止め塗装面では確保できません。

短期は何倍まで見てよいですか?

長期の1.5倍です。ただし一度すべりが生じると初期剛性は戻らないため、繰り返し荷重には注意が必要です。

最小ピッチはどう決まりますか?

呼び径の2.5倍以上が標準です。締付け工具の作業空間も別に確認する必要があります。

フィラープレートはいつ必要ですか?

添え板と母材に板厚差や隙間がある場合です。差が1mmを超えるときは挿入の要否を確認してください。

トルシア形ボルトの利点は何ですか?

ピンテールの破断で締付け完了を確認でき、トルク管理より検査が簡便です。耐力はF10Tと同等に扱えます。

この本数で確定してよいですか?

接合部単体の目安です。母材の断面欠損、偏心、組合せ応力を含めた構造計算で確認してください。