計算ツール
登山アウトドアコースタイム安全登山

登山時間 計算ツール|コースタイム(CT)法・距離・標高差・経験値別に所要時間を算出

登山ガイドのコースタイム(CT)を、水平距離・累積標高差・経験値から即算出。ネスミス法・鹿屋体育大式・山と高原地図タイムの代表的計算式、経験値補正、下山時間、休憩を含めた実行動時間、日没時刻からの逆算、装備重量ペナルティ、そして遭難防止に不可欠な登山届の提出まで、警察庁・環境省・日本山岳協会の公式指針に基づき整理します。

最終更新:2026-08-05/監修:計算ツールズ編集部

登山CT 計算機

計算式(ネスミス法・鹿屋式・山と高原地図タイム)

本ツールの基本式(鹿屋体育大式改)

登りCT = (水平距離÷4km/h + 標高差÷300m/h) × 経験係数

下りCT = (水平距離÷5km/h + 標高差÷500m/h) × 経験係数

本ツールの計算式は鹿屋体育大学 山本正嘉教授提唱の登山エネルギー計算の簡易版で、水平移動と垂直移動を別々に見積もる方法です。標準体力の人が、日帰り装備(5〜8kg)で歩く場合の平均値です。

ネスミス法(欧米標準)

所要時間 = 距離÷5km/h + 標高差100mごとに10分追加

スコットランドの登山家W.W.ネイスミスが1892年に提唱した古典公式で、欧米の登山計画の基準として現代でも使用されます。日本の山と比較して尾根歩きが多い欧米地形の想定で、日本ではやや速めの見積もりになる傾向があります。

山と高原地図タイム(昭文社)

日本国内で最も普及する登山地図。「山と高原地図」に記載のコースタイムは40〜50代の中高年登山者を標準とした保守的な設定で、多くの初心者はほぼこのタイム通り、若い経験者は0.7〜0.8倍で歩けるのが目安です。事前計画は必ずこの地図タイムを基準にし、経験係数で補正することを推奨します。

登山道の傾斜と実速度

傾斜別の実歩行速度と、1kmあたり所要時間の目安です。同じ距離でも急坂と平坦地では所要時間が3〜5倍変わります。

地形傾斜速度目安1kmあたり備考
平坦(林道・遊歩道)0〜5°4.5km/h13分会話しながら快適に歩ける
緩やかな登り5〜10°3.5km/h17分初心者コース
普通の登り10〜15°2.5km/h24分標準的な登山道
急登15〜25°1.5km/h40分息が上がる、休憩必要
激急登(鎖場・ロープ場)25〜35°0.8km/h75分三点支持で慎重に
普通の下り10〜15°4.5km/h13分膝負担に注意
急な下り15〜25°3.0km/h20分ストック推奨
ガレ場・岩場下り1.5km/h40分登りより時間かかる場合も

累積標高差は登りの累計のみを指し、途中で下りがあってもその後の登り返しを含めます。国土地理院地形図の等高線から読み取る方法と、GPXデータから自動集計する方法があります。

経験値別の補正係数

登山者の体力・技量による補正係数の目安です。同じコースでも経験差で1.5〜2倍の時間差が出ます。

レベル係数特徴
初心者(登山経験1年未満)×1.3〜1.5標高差500m以下の日帰りが目安。息切れが激しく休憩多め
中級者(2〜5年、標高2500m級)×1.0(標準)山と高原地図タイム通り。標高差1000m日帰り可
上級者(5年以上、テント泊経験あり)×0.8〜0.9南北アルプス縦走可能。標高差1500m+日帰り可
ベテラン(バリエーション・冬山経験)×0.6〜0.7ロープワーク・雪山技術ありでルート選択自由
子連れ(小学生)×1.5〜2.0ペース維持困難、休憩と気分転換を頻繁に
高齢者(70代以上)×1.3〜1.5下り膝痛リスク、ストック必須

体力の指標として、平地4km/hのウォーキングを1時間続けられるかがラフな基準。それが厳しい人は初心者コース(標高差300m以内、片道2km以内)から始めるのが安全です。

装備重量とペナルティ

ザック重量が体重に対して何%かで、体力消耗速度と歩行速度が変わります。

装備重量体重比速度低下推奨用途
3〜5kg約5〜8%0%(基準)日帰りハイキング
5〜8kg約8〜12%約5%低下日帰り登山標準
8〜12kg約12〜18%約10%低下山小屋1泊
12〜18kg約18〜27%約20%低下山小屋2泊・テント泊入門
18〜25kg約27〜37%約30%低下テント泊縦走
25kg以上37%超約40%以上低下冬期・長期縦走(体力大幅消耗)

体重60kgの人がザック15kgを担ぐと体重比25%で速度20%低下、標準CTの1.2倍見積もりが必要です。体重比25%以下がベテラン推奨の実用上限で、これを超えると膝・腰の故障リスクが急上昇します。

休憩・食事の時間配分

標準的な登山では歩行時間の20〜30%を休憩に充てるのが安全マージンの目安です。

基本の休憩ルール

50分歩行+10分休憩の「50-10」または60分+10分の「60-10」が定番。初心者は40-10でもOK。連続歩行しすぎるとエネルギー切れ(シャリバテ)や熱中症・低体温症のリスクが高まります。

大休止(食事休憩)

2〜3時間ごとに20〜30分の大休止。山頂・展望所・山小屋前など景色の良い場所で。おにぎり・パン等の炭水化物を摂取し、水分500mL目安で補給。

行動食(シャリバテ防止)

チョコレート・ナッツ・干し柿等の高カロリー食を歩きながらこまめに摂取。30分ごとに1口が目安。空腹感を感じてからでは遅く、予防的補給が重要です。

水分補給

体重×行動時間×5mL/kg・時間 が目安(60kg×6時間×5=1,800mL)。夏季は+50%。低張性電解質を含むスポーツドリンクや経口補水液の併用が推奨されます。

日没時刻からの逆算

下山完了時刻は必ず日没の1時間前を目標に設定します。日本国内の主要月別日没時刻(東京目安)は以下です。

日没(東京)安全下山時刻(日没-1h)推奨出発時刻(6h行動想定)
1月17:0016:0010:00
3月18:0017:0011:00
5月18:4517:4511:45
7月(夏至前後)19:0018:0012:00
9月17:4516:4510:45
11月16:3515:359:35
12月(冬至前後)16:3015:309:30

山中は市街地より30〜60分早く暗くなります(山陰の影響)。行動時間6時間なら朝6時出発が定番で、これで15時までに下山完了できる余裕マージンが確保できます。「早出早着」が登山の鉄則です。

登山届と行動計画書

登山届の提出義務

長野県・岐阜県・富山県・群馬県等では条例により、指定山域(北アルプス・南アルプス・八ヶ岳等)への登山時に登山届の提出が義務化されています。違反すると5万円以下の過料が科されるケースも。

提出先と方法

登山口のポスト、警察署、県庁ホームページからのオンライン提出、コンパス(日本山岳ガイド協会運営)のスマホアプリ提出など複数手段。コンパスは自動でご家族に通知され、下山連絡もアプリで一括管理できます。

行動計画書に記載する内容

氏名・年齢・連絡先、緊急連絡先、コース、出発予定時刻、下山予定時刻、宿泊場所、装備、非常食、通信手段(スマホ・アマチュア無線・衛星電話等)。詳しいほど遭難時の救助が早くなります。

山岳保険の加入

民間ヘリコプター救助は1回50〜100万円と高額。年間3,000〜5,000円の山岳保険加入で救助費用が補償されます。日本山岳協会・モンベル・JRO(日本山岳救助機構)等が提供。

通信手段の準備

山頂付近ではdocomo/SoftBank/auで電波状況が異なります。事前に電波マップを確認。テント泊縦走等ではモバイルバッテリー(10,000mAh以上)+ソーラー充電器+緊急用ホイッスルの三重備え。

下山連絡の徹底

下山後、家族・宿・登山届の連絡先へ「下山完了」の報告を必須ルーチンにしましょう。連絡忘れによる「誤報遭難」が全国で年数十件発生。ヘリコプター出動で数十万円の費用請求になるケースもあります。

山域別のプランニング例

日本の代表的山域での標準プランを整理します。実際は季節・天候・体力で調整が必要です。

初心者向け: 高尾山(東京都・599m)

ケーブルカー山麓駅から1号路経由で山頂まで水平距離3.8km・標高差400m。CT1時間40分、下山1時間15分の合計約3時間。休憩込みで4〜5時間、家族連れでも安心の入門コース。年間260万人が訪れる日本一登山者の多い山です。

中級者向け: 富士山(3,776m)吉田ルート

5合目〜山頂の水平距離7.5km・標高差1,471m。CT登り6時間・下り3時間半で合計9時間半、休憩込みで12時間。山小屋1泊(8合目泊、御来光)が標準プラン。高山病対策と防寒具必須。夏山シーズン7月〜9月中旬のみ登山可能。

上級者向け: 北アルプス 槍ヶ岳(3,180m)

上高地〜槍ヶ岳の水平距離約20km・累積標高差2,000m以上。CT1日目9時間(上高地→槍沢ロッジ)、2日目9時間(槍ヶ岳山頂→下山)の2泊3日が標準。テント泊なら装備20kg以上でさらに時間が必要。事前訓練とパートナー同行推奨です。

雪山入門: 谷川岳(1,977m)天神平ロープウェイ

冬期は群馬県谷川岳遭難防止条例により登山届と装備審査が必要。ロープウェイ天神平から西黒尾根・肩の小屋経由で山頂へ、水平距離3km・標高差700m。CT登り3時間半・下り2時間半。ピッケル・アイゼン・冬用手袋・雪山経験者同行が必須です。

よくある間違い・遭難事例

  • コースタイムを鵜呑みにして休憩ゼロ計画 — CTには休憩時間は含まれません。実行動時間はCTの1.2〜1.3倍が現実。休憩ゼロは疲労蓄積・判断力低下から遭難の温床です。
  • 下山時間を軽視 — 下りは登りより早いと思われがちですが、疲労・膝痛・視界の悪化で登りと同等以上かかる場合も。下山にも登りの80〜100%の時間を見積もるのが安全。
  • 装備軽量化しすぎて防寒具不足 — 標高100mごとに気温0.6℃低下。3000m峰の山頂は平地より18℃低い。真夏でも山頂5℃以下は珍しくなく、雨具+防寒具は必須。低体温症で遭難する事例は真夏でも発生しています。
  • 登山届未提出 — 警察庁「山岳遭難統計」で毎年3,000件以上の遭難発生。登山届未提出だと家族から捜索願が出るまで救助開始が遅れ、生存率低下。特に単独行では必須。
  • スマホバッテリー切れ — GPS・地図アプリ多用で消費が早い。モバイルバッテリー1個+紙地図・コンパスのバックアップ必須。標準地形図(1/25000)は国土地理院サイトで無料印刷可能。
  • 単独下山の判断遅れ — 「もう少し行けそう」で計画超過は最悪の判断。15時までに下山できない場合は撤退のルールを事前決定。撤退判断は登山者の技量の証明です。
  • 天気予報を出発直前に確認 — 山岳天気は市街地天気と大きく異なる場合が。ヤマテン・山と天気(有料)や気象庁高層天気予報を活用し、前日18時・当日5時の2回確認するのが標準。

関連する規則・ガイドライン

  • 長野県登山安全条例 ― 指定山域への登山届提出義務。違反時5万円以下の過料。
  • 岐阜県北アルプス地区登山届提出条例 ― 岐阜側北アルプス指定区域の登山届義務。
  • 富山県登山届出条例 ― 剱岳等の指定山域への登山届義務。
  • 群馬県谷川岳遭難防止条例 ― 特別警戒区域への冬期登山届と装備審査。
  • 環境省 国立公園法 ― 国立公園内でのテント設営・焚火・動植物採取の規制。
  • 警察庁 山岳遭難統計 ― 毎年公表される遭難件数・死亡事故の統計。
  • 日本山岳協会 登山道整備ガイドライン ― 一般登山道のグレーディング基準。
  • 気象業務法 ― 山岳予報士制度と山岳気象情報の提供根拠。

参考文献・公的資料

安全登山のための最新情報は以下の公的機関・専門団体を参照してください。

※本ページの計算結果は標準装備・平均的な体力を前提とした概算値です。天候・積雪・悪路条件・体調・装備・パーティ人数で実際の所要時間は大きく変動します。実登山では山岳ガイドの助言、地元自治体・気象庁の最新情報、山岳保険加入、登山届提出を必ず行い、無理な行動を避けてください。特に冬期・単独行・バリエーションルートは経験者同行または専門ガイド依頼を強く推奨します。

よくある質問(FAQ)

登山コースタイム(CT)って何?

登山地図に記載される区間ごとの標準所要時間のこと。「山と高原地図」(昭文社)は40〜50代中高年の標準ペースを基準としており、若い経験者は0.7〜0.8倍、初心者は1.3〜1.5倍で計算するのが目安。休憩時間は含まれないため、実行動時間は+20〜30%必要です。

ネスミス法との違いは?

ネスミス法はW.W.ネイスミスが1892年に提唱した欧米標準式で「距離÷5km/h + 標高差100mあたり10分」。日本の山地形と比較して尾根歩き想定で速めの見積もり。山と高原地図タイムは日本の岩場・急登を含めた保守的な設定で、実勢に近い数字です。

下りは登りより早く歩ける?

平坦な下山道なら早いですが、急な下り・岩場・ガレ場では登りより時間かかる場合も。膝痛・疲労・視界悪化で減速するため、下山にも登りの80〜100%の時間を見積もるのが安全です。特に下山中の転倒事故は登山中の3倍以上多いため、慎重に。

累積標高差はどう調べる?

山と高原地図・地形図(1/25000)の等高線から計算するか、YAMAP・ヤマレコ等のアプリでGPXデータから自動集計。登りの累計のみを数え、途中の下降と登り返しがある場合はその登り返し分を加算します。単純な標高差ではなく累積が重要。

登山届は必ず必要?

長野・岐阜・富山・群馬など一部の県では条例で義務化されており、違反時5万円以下の過料。義務がない山域でも、遭難時の救助迅速化のため強く推奨されます。コンパス(日本山岳ガイド協会)のアプリなら無料で全国対応、家族への自動通知も可能。

山岳保険は必要?

民間ヘリコプター救助は1回50〜100万円と高額。年間3,000〜5,000円で捜索・救助費用が補償されるため、日帰り登山者でも必須級です。モンベル野遊び保険、日本山岳協会保険、JRO(会員制)等が主な選択肢。1日単位のスポット保険もあります。

子連れ登山の適正コースは?

小学校低学年なら標高差300m以内・片道2km以内・危険箇所なしが目安。山と高原地図タイムの1.5〜2倍の時間を確保し、休憩を頻繁に取ります。中学生以上なら大人ペースの1.2倍程度で歩けるようになります。安全は最優先です。

単独登山は危険?

遭難時の生存率が低いため複数人でのパーティ登山を推奨。単独行する場合は必ず登山届提出、家族への日帰り予定通知、GPS+紙地図両方装備、モバイルバッテリー、非常食2倍、防寒着追加が必須。低山でも軽視は禁物です。

装備の目安重量は?

日帰りは体重の10〜12%以内(60kg→6〜7kg)、山小屋泊は15〜18%、テント泊は20〜25%が上限目安。それを超えると膝・腰の故障リスクが急上昇。軽量化はモンベル・ミレー等のULテント・ダウンで年々可能になっています。

雨天の登山は?

低体温症・落雷・鉄砲水のリスク上昇のため基本的に中止・撤退が推奨。特に稜線・岩稜帯・沢沿いは危険。小雨程度で低山ハイキングは可能ですが、レインウェア(ゴアテックス等)+防水ザックカバー+ザック内荷物のドライバッグ収納が必須。

高山病はどう予防する?

富士山(3,776m)等の3000m峰では発症率30%以上。ゆっくり歩く・こまめな水分補給・深呼吸・前日8合目宿泊で高度順化が基本予防策。頭痛・吐き気の症状が出たら即下山。ダイアモックス(処方薬)の予防投与も選択肢ですが、医師相談が必要です。

山と天気予報はどこで確認?

ヤマテン(有料月330円)が山岳気象専門で最も的中率が高い。無料では気象庁「山の天気」、tenki.jp「山の天気」も参考になります。市街地予報と大きく異なる場合が多いので、必ず山岳専門予報を確認。前日18時+当日5時の2回チェックが標準です。