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スポーツ自転車パワーメーターCoggan

FTP・パワーゾーン 計算ツール|W・W/kg・Cogganゾーン(Z1〜Z7)完全判定

自転車(ロードバイク)のFTP(Functional Threshold Power・機能的作業閾値パワー)から、Andrew Coggan博士のパワーゾーンモデル(Z1〜Z7)とW/kg(体重比パワー)を算出。世界クラスからエクセレント・非常に良い・良い・普通・初心者までの6段階レベル判定に対応。UCI(国際自転車競技連合)ワールドツアー・全日本選手権・ツール・ド・フランス・ジロ・ブエルタなど世界最高峰選手のW/kg基準、20分テスト・ランプテスト・8分テスト・95%ルールの実施方法、Zwift/TrainingPeaks/Wahoo SYSTM/Garmin Connectでの活用まで、スポーツ生理学とデータサイエンスに基づいて解説します。

最終更新:2026-07-28/監修:計算ツールズ編集部

FTP・パワーゾーン 計算機

FTPの定義と計算式

FTPとは

FTP = 1時間持続可能な最大平均パワー(W)

FTP(Functional Threshold Power・機能的作業閾値パワー)は、Andrew Coggan博士(米国スポーツ生理学者)が2006年に著書「Training and Racing with a Power Meter」で提唱した概念で、1時間全力で維持できる最大平均パワー(ワット)と定義されます。この閾値は生理学的な「乳酸性作業閾値(LT2/MLSS)」に近く、有酸素能力と無酸素能力の境界を示す最重要指標です。

W/kg(体重比パワー)

W/kg = FTP(W) ÷ 体重(kg)

ヒルクライム・レース性能を測るには絶対パワー(W)よりも体重比W/kgが重要。同じFTP 300Wでも体重60kgと80kgでは上りの速度が大きく異なります。Cogganの6段階レベル基準は男女別のW/kgで規定され、世界トップ選手は男性6.0+/女性5.0+のW/kgを1時間維持できます。

推定法(TSS・NP・IF)

FTPを基準に、TrainingPeaks等のプラットフォームでNP(Normalized Power・正規化パワー)、IF(Intensity Factor・強度係数)、TSS(Training Stress Score・トレーニング負荷スコア)を自動計算。1時間FTP走 = 100 TSSを基準にすることで、異なる強度・時間のトレーニング負荷を統一指標で比較でき、疲労管理(CTL/ATL/TSB)に活用されます。

Cogganパワーゾーン詳細

7ゾーンモデルは各生理学的能力に対応します。%FTPと持続時間・主な効果を整理しました。

ゾーン%FTP持続時間主な効果
Z1 アクティブリカバリー〜55%数時間可疲労回復・血流促進・翌日レース前調整
Z2 持久力(エンデュランス)56-75%2-6時間基礎持久力・脂肪燃焼・毛細血管密度向上
Z3 テンポ76-90%30分-3時間持久力強化・効率向上・グループライド
Z4 閾値(スイートスポット含む)91-105%10分-1時間FTP向上・乳酸耐性・タイムトライアル
Z5 VO2max106-120%3-8分VO2max向上・最大有酸素能力
Z6 無酸素能力121-150%30秒-2分無酸素解糖系・スプリント持久力
Z7 神経筋150%超10秒以下スプリント最大出力・神経系適応

Z3-Z4の境界にある「スイートスポット(SST・約88-94%FTP)」は、FTP向上効果と疲労蓄積のバランスが最適とされ、トレーニング効率が最も高いゾーンとしてFrank Overton(FasCat Coaching)により広く普及しました。冬場のベース練習の主軸として国内外のプロが多用しています。

W/kg レベル基準

Andrew Coggan博士の分類による1時間持続W/kgのレベル分布(男女別)。世界選手権・全日本選手権・アマチュアレースの水準を並列で示します。

レベル男性 W/kg女性 W/kg該当選手・カテゴリ
世界クラス(World Class)5.6+5.0+UCIワールドツアー・ツール優勝級
エクセレント(Excellent)4.6-5.64.0-5.0プロ・エリート選手
非常に良い(Very Good)3.7-4.63.2-4.0全日本上位・実業団
良い(Good)2.9-3.72.4-3.2ホビーレーサー上位
普通(Fair)2.2-2.91.8-2.4週末サイクリスト
初心者(Untrained)2.2未満1.8未満運動未経験

FTPテスト実施方法

20分FTPテスト(Coggan式標準)

Andrew Coggan博士推奨の標準テスト。ウォーミングアップ後、20分間の全力走を実施し、平均パワーの95%をFTPとする。屋外の一定勾配の登坂または平坦、あるいはZwift・TrainerRoad上で実施可能。「20分の全力=1時間持続の105%」という生理学的近似式が根拠。実施前に十分な休息、実施後は10分クールダウンが推奨されます。

ランプテスト(Ramp Test)

Wahoo SYSTM・Zwift「Ramp Test」で採用される簡易法。1分毎にパワーを20W(男性)/10W(女性)上昇させ、疲労で維持できなくなった時点の最終1分パワーの75%をFTPとする。20分テストより短時間(約20分)で心理的負担が少なく、初心者に推奨。ただし高強度時のパフォーマンス把握が主体のため、持久力型選手はやや過小評価される傾向があります。

8分×2本テスト(Hunter Allen式)

「Training and Racing with a Power Meter」共著者Hunter Allenが推奨。8分全力→10分レスト→8分全力の2セット。2セット平均の90%をFTPとする。20分テストが辛すぎる人向けの代替法で、テスト再現性が高く公平とされます。

実走・レース推定

直近のヒルクライムレース(20分〜1時間)、または閾値走のパワーメーターデータから逆算する方法。1時間全力レース = そのままFTP、20分全力 = ×0.95、30分全力 = ×1.0程度。TrainingPeaks・Golden Cheetah等の分析ソフトが自動計算します。

プロ選手・国内アマのW/kg

世界の一流選手と日本のカテゴリー別水準です。データはProCyclingStats・SRM・Garmin Connect公開データに基づく推定値。

選手・カテゴリ体重FTPW/kg
Tadej Pogačar(スロベニア)66kg約435W6.6
Jonas Vingegaard(デンマーク)60kg約400W6.7
Remco Evenepoel(ベルギー)61kg約395W6.5
Wout van Aert(スプリンター)78kg約480W6.15
新城幸也(日本人プロ)68kg約380W5.6
全日本選手権クラス65kg約340W5.2
実業団E1クラス65kg約290W4.5
実業団E2クラス65kg約250W3.8
ホビー上級(Mt.富士2時間切り)65kg約280W4.3
ホビー中級(平地50km/h維持)65kg約220W3.4
週末サイクリスト65kg約180W2.8

ツール・ド・フランスの登坂ステージでは山岳勝負ポイント(20分登坂)で6.0-6.5W/kgを出す選手が優勝します。日本のヒルクライム最高峰「Mt.富士ヒルクライム」のシルバーメダル(75分切り)は3.8W/kg、ゴールド(65分切り)は4.5W/kg程度が目安です。

ゾーン別トレーニング設計

Base期(冬・オフシーズン)

Z2(56-75%FTP)を週10-15時間継続し、有酸素基盤を築く。ポラライズドトレーニング(80%低強度+20%高強度)、Sweet Spot Training(SST・88-94%)、Long Slow Distance(LSD・低強度長時間)が代表メニュー。ミトコンドリア密度と毛細血管網が発達し、FTPの伸びしろが増えます。

Build期(春・レース前)

Z4閾値インターバル(2×20分/3×15分/4×10分)を週2回、Z5 VO2max(5×5分)を週1回。SIT(スプリントインターバル)も併用。この時期にFTPが年間で最も伸び、+5〜10%上昇が期待できます。

Peak/Race期

強度を維持しつつボリューム減。テーパリング(2-3週前から徐々に総量を減らす)で疲労を抜き、レース当日のパフォーマンスを最大化。TrainingPeaksのTSB(Training Stress Balance)が+5〜+15の状態がピーク指標。

Recovery期

シーズン終了後2-4週はZ1中心の完全休息+軽い運動。心身をリセットし、来シーズンのベース期に向けた回復期間として重要。オーバートレーニング症候群を回避する上で必須のフェーズです。

目的別トレーニングメニュー例

Mt.富士ヒルクライム シルバー(75分切り)

目標FTP:体重65kgで250W(3.8W/kg)。週7-10時間・Z2主体+週2回SST(2×20分)+週1回Z5(5×5分)。3-6ヶ月継続でFTP+10-20W上昇が期待できます。当日は保存力を優先し、序盤ペース抑制→中盤スイートスポット→ラスト5分Z4-Z5切替が典型戦略。

ロングライド(200km)完走・エンデュランス系

目標:Z2で200km完走。週2回のロングライド(3-5時間・Z2上限維持)+週1回SST。カロリー・水分補給が鍵で、1時間あたり60-90g炭水化物・500-700ml水分が目安。エネルギー切れ(ボンク)対策として3時間目以降は塩分・BCAAも補給。

クリテリウム・スプリント特化

短時間高強度種目向け。Z4-Z6の反復インターバル+スプリント(15秒×10本)を週3回。ピークパワー(1秒〜15秒最大)を伸ばす神経筋トレーニング。FTPよりも1分・5分パワーの向上を優先します。

減量目的・ダイエットライダー

Z2主体(3-5時間)を空腹時に実施。1時間で400-600kcal消費、月8-12kg減量ペースが実現可能。ただし過剰減量は絶対パワー低下・免疫低下・骨密度低下(男性はテストステロン低下)を招くため、月-2kg以下・BMI 20以上維持を推奨します。

よくある間違い・注意点

  • Zwiftのバーチャル体重を実体重に偽装 — レース結果には反映されず、練習効果も虚偽になります。ドーピング検査ならぬ「Weight Doping」問題として国際的に取り締まりが強化されており、Zwift公式レースでは体重証明の提出も求められます。
  • FTP更新なしで同じゾーン維持 — 練習で成長したのにFTP値が古いままだと、実質Z3レベルの練習をZ4だと錯覚し効果が薄れます。6-8週間ごとにFTPテストを実施し、ゾーンを更新する習慣が重要です。
  • 体重減で見かけのW/kgを上げる — 過度な減量は絶対パワー低下・疲労蓄積・免疫低下を招きます。プロ選手も推奨体重を大きく下回るRED-S(相対的エネルギー不足)がUCIから警告されています。適正BMI(男性20-23)を維持しつつFTP絶対値を伸ばすのが持続可能な戦略。
  • パワーメーター校正忘れ — 温度変化で誤差5-10%発生。ライド開始前のゼロオフセット校正、月1回の静荷重校正が推奨。Stages・SRM・Quarq等は校正手順が異なるため各メーカーマニュアルを確認してください。
  • ランプテストの過大評価 — 高強度で終わるランプテストは短時間パワーが強い選手ほどFTPが実力より高く出る傾向。トライアスリート・ロング系選手には20分テストの方が正確です。
  • Z2軽視でZ4-Z5ばかり — 高強度中心のトレーニングは短期的にFTPが上がりますが、6-12ヶ月で頭打ち。ポラライズド(Z1-Z2 80%+Z4以上 20%)が持続的な向上に必要と、Stephen Seiler教授(ノルウェー)の研究で示されています。

対応アプリ・機材

パワーメーター(ペダル・クランク・ハブ型)

Garmin Rally・Favero Assioma・Wahoo POWRLINK ZERO(ペダル型)、Stages・4iiii・Rotor(クランク型)、Quarq・SRM・Powertap(スパイダー・ハブ型)等。精度±1-2%、価格8-30万円が主流。左右バランス測定できるモデルはペダリング解析にも有用です。

スマートトレーナー

Wahoo KICKR・Zwift RIDE・Tacx NEO・Elite DIRETO・Saris H3等。パワー計測+ERGモード(指定W固定)で室内トレーニング必携。ZwiftのeRacing/eSportsは2020年UCI公認、全日本E-Cycling選手権も開催されており競技化が進んでいます。

解析プラットフォーム

TrainingPeaks(業界標準)、Golden Cheetah(無料OSS)、intervals.icu(無料)、Strava Premium、Wahoo SYSTM(旧SUFFERFEST)等。CTL/ATL/TSB管理・パワー曲線・ピーク値分析が可能。日本人プロも多くがTrainingPeaks + Xert併用です。

心拍計との併用

Polar H10・Garmin HRM-Pro等の胸ストラップ型が精度最高。パワー(外的負荷)と心拍(内的負荷)の乖離から疲労状態を推定でき、デカップリング(Aerobic Decoupling)指標として持久力の発達を評価できます。

参考文献・公的資料

より詳細な理論・データを確認したい場合は、以下の公的機関・団体・書籍を参照してください。

※本ページの計算結果は目安です。実施のFTPテスト・高強度トレーニングは十分な体調・体力・医学的スクリーニング(高血圧・心疾患・糖尿病の既往なし)の確認後に行ってください。心疾患の家族歴、40歳以上、運動未経験の方は、開始前に循環器内科でメディカルチェック(運動負荷心電図等)を推奨します。オーバートレーニング症候群・RED-S(相対的エネルギー不足)の兆候(疲労蓄積・不眠・免疫低下・月経不順等)が出た場合は、直ちに休養しスポーツ医またはコーチにご相談ください。

よくある質問(FAQ)

FTPとは何?初心者向けに一言で言うと?

「1時間全力で維持できる最大パワー(ワット)」のこと。有酸素能力と無酸素能力の境目を示し、自転車競技の実力を最も端的に表す数値です。Andrew Coggan博士(米国スポーツ生理学者)が2006年に提唱し、現在は世界標準指標として定着しています。

FTPを上げるには何をすればいい?

Z4(閾値)インターバル(2×20分または3×15分)を週2回+Z2持久走を週5-10時間が黄金パターン。8週間で+5-10%上昇が期待できます。特に「スイートスポット(88-94%FTP)」の反復は、効率的なFTP向上メニューとして世界的に定評があります。

体重60kgでFTP 200Wは平均的?

W/kg = 200/60 = 3.33。男性で「良い(Good)」レベル、女性なら「非常に良い(Very Good)」レベルに該当します。日本のホビーサイクリスト平均は2.8-3.5W/kg程度で、この水準はロングライドを楽しめる十分な体力です。

ランプテストと20分テスト、どっちが正確?

持久力型選手には20分テストが正確、短時間パワー型・初心者にはランプテストが向きます。ランプテストは20分テストより約10-15W高めに出る傾向あり。実走のTT(タイムトライアル)結果との整合性を見て使い分けるのがベストです。

Zwiftのバーチャルワッツと実走ワッツは同じ?

スマートトレーナー(Wahoo KICKR等)使用時はほぼ同じ。ただし実走は路面抵抗・空気抵抗・慣性が異なるため、屋内で250W出せる人が実走で230-240Wになることも。屋外パワーメーター実測を並行することを推奨します。

プロのW/kgはどのくらい?

ツール・ド・フランス優勝級で6.0-6.7W/kg(20分登坂)、5.5-6.0W/kg(1時間FTP)。日本人プロは5.5前後。ドーピング指標として「6.7W/kgを超えると疑わしい」というChris Froome論争の閾値(Antoine Vayer氏)も参考にされます。

FTPテストは何ヶ月に1回?

6-8週間に1回が推奨。トレーニング効果が反映されるサイクルに合わせ、ゾーンを更新してオーバートレーニングを防ぎます。ただしテスト自体が疲労を伴うため、シーズン中は代替法(ランプ・8分・実走推定)も併用可能です。

心拍とパワー、どちらを重視すべき?

パワー(外的負荷)を主指標、心拍(内的負荷)を副指標とするのが現代の標準。パワーは体調に関わらず即応、心拍は疲労・気温・カフェイン等で変動。両者のデカップリング(乖離)から持久力発達や疲労状態を評価できます。

スイートスポットとは?

88-94%FTPのゾーンで、Frank Overton(FasCat Coaching)が提唱。FTP向上効果 vs 疲労のコスパが最良で、冬場のベース強化期に主軸として使われます。2×30分SST等が代表メニュー。

ヒルクライムに必要なW/kgは?

Mt.富士ヒルクライム(11.4km・7%)でゴールド(65分切り)は4.5W/kg、シルバー(75分切り)は3.8W/kg、ブロンズ(90分切り)は3.0W/kgが目安。乗鞍・美ヶ原など他の主要ヒルクライムも同水準で判断できます。

FTPは何%上げれば実感できる?

+5%(例:200W→210W)で登坂速度が明らかに違うと実感します。TrainingPeaksでは+2-3%は測定誤差の範囲とされ、FTP改善判定には+5W以上が基準。年間で+15-30W(初心者)、+5-10W(中上級者)が現実的な目標水準です。

ペダリング効率(左右バランス)は重要?

絶対パワーが上がれば左右バランスは自然に改善します。Garmin VectorやFavero Assiomaのペダル型パワーメーターで左右比を計測でき、55/45以上の偏りは身体アンバランスやフィッティング調整の指標になります。過度な均等化追求より、フィジオセラピスト・バイクフィッターの相談を優先してください。

栄養補給はどうする?

Z4以上の高強度トレーニング時は1時間あたり炭水化物60-90g・水分500-700mlが国際スポーツ栄養学会の基準。3時間超のロングでは電解質補給・BCAAも追加。「Fasted Ride(空腹ライド)」はZ2持久力向上に有効ですが、高強度日は必ず糖質を摂取してパフォーマンス低下を防ぎます。

年齢による性能低下はどれくらい?

30歳をピークに10年で約5-8%低下が標準。ただし継続的トレーニング者は60歳でも30歳の85-90%を維持。UCI Masters(35+/45+/55+/65+)クラスでは、年齢別に競技が行われ、シニアでもW/kg 4.5+のプレーヤーが存在します。加齢と共にVO2maxが低下しやすいため、Z5-VO2maxトレーニングの継続が重要です。