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遺族厚生年金計算機|厚生年金加入者死亡時の遺族給付

遺族厚生年金を計算する無料電卓。故人の平均標準報酬月額・厚生年金加入期間から、年間支給額を瞬時算出。300月みなし・中高齢寡婦加算・受給優先順位・妻/夫別要件・30歳未満5年制限・遺族基礎年金との併給まで、厚生労働省・日本年金機構・国税庁の公式資料に基づき解説します。

最終更新:2026-07-30/監修:計算ツールズ編集部

遺族厚生年金ツール

計算式と考え方

遺族厚生年金 = 老齢厚生年金(報酬比例部分) × 3/4
老齢厚生年金 = 平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 被保険者期間月数
※加入月数が300月未満でも300月(25年)とみなして計算

遺族厚生年金は、厚生年金保険に加入していた被保険者(または受給権者)が死亡したとき、生計を維持されていた遺族に支給される年金です。基本額は老齢厚生年金の3/4で、若くして亡くなった場合でも「300月(25年)加入とみなす」保護規定があるため、加入期間が短い若年層にも一定の給付が保障されます。

厚生年金の報酬比例部分の詳細

2003年4月以降:平均標準報酬額×5.481/1000×月数
2003年3月以前:平均標準報酬月額×7.125/1000×月数(賞与含まず)

2003年4月から総報酬制(賞与も含めた計算)が導入されたため、それ以前と以降で計算式が異なります。実際の年金機構の裁定では両期間を按分計算しますが、本ツールでは2003年4月以降を基本ロジックとして採用しています。

受給要件・優先順位

遺族厚生年金は誰でも受給できるわけではありません。「故人の生計を維持されていた」ことに加え、受給資格の優先順位が国民年金法・厚生年金保険法に規定されています。

受給できる遺族の順位

  1. 配偶者・子(妻は無条件、夫は55歳以上、子は18歳到達年度末まで・障害等級1/2級の場合は20歳未満)
  2. 父母(55歳以上、支給開始は60歳から)
  3. (18歳到達年度末まで・障害等級1/2級の場合は20歳未満)
  4. 祖父母(55歳以上、支給開始は60歳から)

生計維持要件は「同一世帯・仕送りを受けていた・生計を同一にしていた」等で判断され、年収850万円(所得655.5万円)未満が原則。上位順位の受給権者が存在すれば、下位順位には支給されません。

支給パターン早見表

遺族受給要件支給期間特記
妻(子あり)無条件終身遺族基礎年金と併給
妻(子なし・30歳以上)無条件終身40歳以上で中高齢寡婦加算
妻(子なし・30歳未満)無条件5年間限定2007年4月以降死亡から適用
55歳以上60歳〜終身受給は60歳到達後
子・孫18歳到達年度末まで(障害20歳)要件消失まで-
父母55歳以上60歳〜終身受給は60歳到達後
祖父母55歳以上60歳〜終身受給は60歳到達後

計算例3ケース

  1. 標報35万・加入25年(300月)・配偶者+子 → 老齢厚生年金 = 350,000×5.481/1000×300 ≒ 57.5万円/年、遺族厚生年金 = 57.5万×3/4 = 約43.2万円/年(月額約3.6万円)。遺族基礎年金(子1人あり 約102万円/年)と併給で計約145万円/年。
  2. 標報40万・加入10年(120月・300月みなし)・配偶者のみ → 老齢厚生年金 = 400,000×5.481/1000×300 = 65.8万円/年、遺族厚生年金 = 65.8万×3/4 = 約49.3万円/年。300月みなしで加入10年でも25年扱いに。
  3. 標報40万・加入30年(360月)・妻45歳子なし → 老齢厚生年金 = 400,000×5.481/1000×360 = 78.9万円/年、遺族厚生年金 = 78.9万×3/4 = 59.2万円/年、+中高齢寡婦加算 58.6万円 = 合計117.8万円/年(月額約9.8万円)

中高齢寡婦加算・経過的寡婦加算

子のいない中高齢の妻には、遺族基礎年金(子のある妻対象)が受給できない代わりに中高齢寡婦加算が上乗せされます。

中高齢寡婦加算

  • 対象:40歳以上65歳未満で子のない妻(または子がいるが遺族基礎年金の支給が終わった妻)
  • 金額:年額585,700円(2024年度)/遺族基礎年金の3/4相当
  • 期間:40歳から65歳まで(65歳以降は経過的寡婦加算へ切替)

経過的寡婦加算

1956年4月1日以前生まれの妻を対象とした、65歳以降に中高齢寡婦加算と入れ替わる加算。金額は生年月日で減額(20,367円〜585,700円)。

場面別の使い方

死亡直後の年金請求

死亡から5年以内に年金事務所へ「年金請求書」を提出。戸籍謄本・住民票・死亡診断書・銀行口座情報を持参。時効は5年ですが、支給開始は死亡月の翌月分から遡って支給されます。

生命保険加入の判断

公的な遺族年金だけでは不足する分を民間保険で補うため、事前に遺族厚生年金の見込額を試算。40歳男性・年収600万円・子あり家庭では、遺族厚生+遺族基礎で月13-15万円程度が目安。

ライフプランニング

FP相談・住宅ローン検討・教育費計画で、万一の際の家計シミュレーションに必須。可処分所得の6-7割維持が目標水準で、遺族年金でカバーされる分を差し引いて必要保障額を算定。

離婚・再婚の判断

再婚すると遺族厚生年金は打切(事実婚も含む)。離婚後に元配偶者が死亡した場合は原則対象外だが、離婚時年金分割していれば分割相当額は独立して受給可。

65歳以降の年金選択

65歳以降は自身の老齢厚生年金と遺族厚生年金の「差額調整」が発生。「自身の老齢厚生+差額」または「遺族厚生年金2/3+自身の老齢厚生1/2」の選択制。年金事務所で有利な方を試算依頼できる。

相続税との関係

遺族年金は非課税所得(所得税・住民税・相続税いずれも非課税)。生命保険金と異なり相続財産に含まれず、遺産分割の対象外。ただし雑所得に該当する個人年金・企業年金は課税対象になるので区別が必要。

遺族厚生年金と税金・社会保険料

遺族厚生年金には他の年金にはない「完全非課税」の特徴があります。所得税・住民税だけでなく相続税も非課税で、雑所得としてカウントされないため確定申告も不要です。

非課税の範囲

  • 所得税・住民税:非課税(所得税法第9条第1項第3号ロ)。合計所得金額に算入されず、給与所得・事業所得と合算されない。
  • 相続税:非課税(相続財産に含めない)。生命保険金と異なり法定相続分に影響しない。
  • 健康保険料・介護保険料算定:住民税所得割算定基準に含まれないため、遺族年金だけの受給者は保険料負担が最低ランクで済むケースが多い。

民間の遺族保障との組み合わせ

遺族厚生年金は「所得の代替」性格が強いため、民間の生命保険と組み合わせて必要保障額を設計するのが一般的です。生命保険文化センターの目安では、40歳夫婦・子1人・年収600万円の世帯で、遺族年金でカバーされる分を差し引いて1,500-2,500万円の民間死亡保険が推奨されています。

遺族厚生年金と老齢年金の併給調整(65歳以降)

選択1:自身の老齢基礎年金+自身の老齢厚生年金
選択2:自身の老齢基礎年金+遺族厚生年金
選択3:自身の老齢基礎年金+自身の老齢厚生年金の1/2+遺族厚生年金の2/3

65歳以降、自身も老齢厚生年金の受給権を持つ場合、上記3パターンの中で最も金額が高いものが自動的に選ばれます。年金事務所での試算や「ねんきんネット」での確認が可能です。

よくある間違い・注意点

  • 子なし配偶者は「遺族基礎」は対象外だが「遺族厚生」は対象 — 遺族基礎年金は「18歳未満の子のいる配偶者」限定ですが、遺族厚生年金は子なし配偶者にも支給されます。混同して「もらえない」と諦めてしまうケースが頻発。
  • 30歳未満・子なし妻は5年限定 — 2007年4月以降の死亡から、30歳未満で子のない妻への遺族厚生年金は5年で打切。従来は終身だったため、若年遺族保護が縮小されました。
  • 夫の受給要件が厳しい — 妻死亡時の夫は「55歳以上」が要件で、支給開始は60歳から。妻死亡時に55歳未満の夫には遺族厚生年金は支給されません。制度上の男女差は最高裁でも合憲判断。
  • 中高齢寡婦加算は「40歳以上65歳未満」限定 — 40歳未満で子なしの妻には加算されません。夫にも加算はなし。この加算は生活保護代替の性格が強いため、対象範囲が狭く設定されています。
  • 再婚したら打切 — 事実婚(内縁関係)も対象。「入籍せず同居」でも「事実上の婚姻関係にある」と認定されれば打切になります。年金事務所への届出義務あり。
  • 自分の老齢年金と両方は受給できない — 65歳以降は「差額調整」で実質的に片方相当(または調整併給)しか受給できません。両方満額受給は不可能。
  • 共済年金と厚生年金の一元化(2015年10月) — 公務員・私学教職員の共済年金加入者遺族も現在は厚生年金と同等の遺族厚生年金として扱われます。過去に共済加入期間がある方は一元化後の合算計算に。

請求手続きの流れ

遺族厚生年金の請求は、死亡診断書・戸籍等の書類が揃った時点で速やかに行うことが重要です。時効は5年ですが、請求月から支給が始まるため、遅延分は支給されません。

ステップ1:死亡届の提出(死亡から7日以内)

死亡診断書(または死体検案書)を添えて、市区町村に死亡届を提出。同時に埋火葬許可証を受領。健康保険・国民年金の資格喪失手続きも同時進行。

ステップ2:必要書類の収集(1-2週間)

  • 年金請求書(様式第105号) - 年金事務所で入手
  • 戸籍謄本(受給権発生日以降のもの)
  • 世帯全員の住民票(死亡者・受給者の生計維持関係の確認)
  • 受給者の所得証明書または非課税証明書
  • 死亡診断書のコピー(または死亡日記載の戸籍謄本)
  • 受給者名義の銀行口座通帳のコピー
  • 死亡者・受給者の年金手帳・基礎年金番号通知書

ステップ3:年金事務所への提出(2-4週間目)

最寄りの年金事務所または街角の年金相談センターへ書類提出。窓口では受給要件・計算内容の説明を受けられます。予約なしでも受付可能ですが、混雑期(3月・6月)は予約推奨。

ステップ4:審査・支給決定(1-4ヶ月)

日本年金機構での審査を経て、「年金証書・年金決定通知書」が郵送されます。支給開始は死亡月の翌月分から、隔月払い(偶数月の15日)で振込。

ステップ5:定期的な現況届提出

受給後も、住所変更・氏名変更・受給権失権(再婚等)時には年金事務所への届出が必要。マイナンバー登録済みの場合、現況届は原則不要になりました。

関連手続き(死亡直後にまとめて実施推奨)

  • 健康保険埋葬料の請求:協会けんぽ・組合健保・国保から埋葬料(5万円)を申請。時効2年。
  • 未支給年金の請求:故人が受給していた年金の死亡月分・未受領分を遺族が請求。時効5年。
  • 寡婦年金・死亡一時金(国民年金):故人が国民年金第1号被保険者だった場合の遺族給付。
  • 労災保険の遺族補償年金:故人の死因が業務上・通勤上の場合、労災から別途遺族補償年金が支給。
  • 生命保険金請求:民間の死亡保険金請求。時効3年。
  • 相続手続き:預貯金・不動産・株式等の名義変更、相続税申告(10ヶ月以内)。
  • 住宅ローンの団信対応:団体信用生命保険加入なら残債完済処理。

関連する規格・法令

  • 厚生年金保険法(第58条〜第72条) ― 遺族厚生年金の支給要件・計算方法・受給順位・失権事由を規定。
  • 国民年金法(第37条〜第42条) ― 遺族基礎年金の規定。遺族厚生年金と併給される仕組み。
  • 厚生年金保険法施行令 ― 生計維持要件(年収850万円未満)、300月みなし規定の詳細。
  • 被用者年金一元化法(2015年10月施行) ― 共済年金と厚生年金の統合。公務員・私学教職員も同等扱い。
  • 年金機能強化法(2012年成立) ― 遺族基礎年金の父子家庭への支給拡大(2014年4月)。従来は母子家庭限定だった不平等を是正。
  • 離婚時年金分割制度(2007年4月) ― 合意分割と3号分割。分割された年金は独立して受給権が確保される。
  • 所得税法(遺族年金非課税) ― 遺族年金は所得税・住民税・相続税いずれも非課税。

参考文献・公的資料

より正確な受給額試算や個別ケースの判断には、以下の公的機関の一次資料と、最寄りの年金事務所での相談を推奨します。

※本ページの計算結果は概算です。実際の遺族厚生年金額は、故人の全期間の標準報酬記録・保険料納付状況・受給者本人の状況(年齢・子の有無・年収)により変動します。正確な金額はお近くの年金事務所またはねんきんネットでの試算をご利用ください。個別ケースの判断は社会保険労務士等の有資格専門家にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

子のいない妻は遺族厚生年金をもらえる?

もらえます。遺族基礎年金は「18歳未満の子のいる配偶者」限定ですが、遺族厚生年金は子の有無に関わらず配偶者に支給されます。ただし30歳未満・子なしの妻は5年間限定支給、40歳以上65歳未満の子なし妻には中高齢寡婦加算(年約58.6万円)が上乗せされます。

30歳未満・子なし妻の5年間限定はいつから?

2007年4月1日以降の死亡から適用されています。それ以前は終身支給でしたが、若年遺族の自立支援・就業機会確保を目的に5年間の有期年金へ改正されました。30歳を超えていれば無期限支給、または40歳以上で中高齢寡婦加算が付きます。

夫が亡くなった場合と妻が亡くなった場合で違いは?

大きな違いがあります。夫死亡時の妻:年齢不問で受給可(30歳未満子なしは5年限定)。妻死亡時の夫:55歳以上が要件で、支給開始は60歳から。この男女差は憲法上議論もありましたが、最高裁で合憲判断が出ています(遺族補償年金訴訟)。

再婚したらどうなる?

受給打切になります。婚姻届を出さない事実婚(内縁関係)も対象。年金事務所への「失権届」提出義務あり。届出せず受給を続けると不正受給として返還請求と加算金の対象になります。連れ子との養子縁組も含めて注意。

自分の老齢年金と両方もらえる?

両方満額は不可能。65歳未満は選択受給(片方のみ)。65歳以降は「差額調整併給」で、自身の老齢厚生年金相当額が差し引かれる仕組みです。「①自身の老齢厚生+差額」または「②遺族厚生年金の2/3+自身の老齢厚生の1/2」のうち高い方を選択できます。

離婚した元夫が亡くなった場合は?

原則対象外です。ただし離婚時に年金分割していれば、分割相当額は自身の年金として独立して受給できます。婚姻期間中の共済・厚年加入分の按分(合意分割・3号分割)は元配偶者の生死とは無関係に有効です。

共済年金加入者の配偶者は?

2015年10月の一元化により、公務員・私学教職員も厚生年金加入者と同等の遺族厚生年金として扱われます。過去に共済加入期間がある場合は、一元化後の日本年金機構と各共済組合が連携して合算計算します。

300月みなしとは?

厚生年金加入期間が300月(25年)未満でも、300月加入したとみなして計算する若年層保護規定。加入10年で亡くなっても25年みなしで計算されるため、若い遺族への保障が確保されます。この規定は「短期要件」による遺族厚生年金の特徴。

遺族基礎年金との違いは?

遺族基礎年金は国民年金の遺族給付で、18歳未満の子のいる配偶者または子に定額支給(2024年度 約81.6万円+子の加算)。遺族厚生年金は厚生年金加入者への上乗せで、報酬比例の給付。厚生年金加入者が亡くなった場合、両方を併給できるケースが多いです。

遺族年金は税金がかかる?

非課税所得です。所得税・住民税・相続税いずれもかかりません。生命保険金と異なり相続財産にも含まれないため、遺産分割協議の対象外。ただし個人年金・企業年金の遺族給付は雑所得として課税対象になる場合があります。

請求手続きに時効はある?

受給権発生から5年で時効です。ただし請求できる年金は「死亡の翌月分から」で、5年以内に請求すれば全期間分がまとめて支給されます。5年を超えると超過分が消滅しますが、それ以降の分は請求すれば継続受給できます。

子の遺族厚生年金はいつまで支給される?

18歳到達年度末(高校卒業まで)が原則。障害等級1級・2級に該当する子は20歳未満まで。婚姻したときは失権します。子と配偶者が同時に受給権を持つ場合は、配偶者が受給する間は子の分は支給停止されます。

まとめ:遺族厚生年金活用の要点

遺族厚生年金は公的な遺族保障の中核制度です。以下の要点を押さえて、生前設計・請求手続き・家計シミュレーションに活用してください。

  • 老齢厚生年金の3/4が基本額。300月みなしで若年層の遺族も一定額保障。
  • 子なし配偶者も対象(遺族基礎年金と異なる)。40歳以上65歳未満の子なし妻には中高齢寡婦加算(年約58.6万円)。
  • 受給要件の男女差に注意:夫は55歳以上要件で支給開始60歳。妻は原則無条件。
  • 30歳未満・子なし妻は5年限定(2007年4月改正)。若年遺族保護は縮小傾向。
  • 再婚で失権:事実婚(内縁関係)も対象。届出義務あり。
  • 65歳以降は差額調整併給:自身の老齢年金との組合せは3パターンから有利選択。
  • 完全非課税:所得税・住民税・相続税いずれもかからない優遇制度。
  • 時効5年・請求月から支給:早期の請求手続きが実利。年金事務所または街角の年金相談センターで相談可能。
  • 他の遺族給付との併用:遺族基礎年金・寡婦年金・死亡一時金・労災遺族補償と重畳可能な場合あり。
  • 民間保険との組合せ設計:遺族年金でカバーされる分を差し引いた必要保障額を、生命保険で補完。

本ツールで算出した数値はあくまで概算です。故人の実際の標準報酬月額の記録・保険料納付状況・受給者本人の年齢や状況により、実際の受給額は変動します。正確な金額はお近くの年金事務所またはねんきんネットでの試算をご利用ください。個別事例の相談は社会保険労務士等の有資格専門家にご相談ください。

受給後も、住所変更・氏名変更・再婚等の失権事由があった場合には、速やかに年金事務所へ届出を行うことが法令で求められています。届出を怠ると不正受給として返還請求と加算金の対象になるため、生活状況の変化があった時点で必ず届出手続きを行ってください。