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残業代未払い 計算ツール|3年遡及・割増賃金1.25倍を即算出

月あたりの残業時間・時給・請求月数から、未払残業代の概算請求額を算出します。労働基準法37条の割増賃金率(平日残業1.25倍、深夜追加0.25倍、休日1.35倍、月60時間超1.5倍)、2020年改正民法による時効延長(2→3年→将来5年)、証拠収集(タイムカード・打刻ログ・自主記録)、労働基準監督署・労働審判・訴訟までの実務手順を、厚生労働省・裁判所の一次資料に基づき解説します。

最終更新:2026-08-02/監修:計算ツールズ編集部

未払残業代 概算請求額の計算

未払残業代の計算式

基本式

未払残業代 = 1時間あたりの基礎賃金 × 割増率 × 残業時間 × 遡及月数

労働基準法37条により、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた労働には割増賃金の支払義務があります。「時給」は基本給+固定手当を月間所定労働時間で割った額(通勤手当・家族手当・住宅手当等は原則除外)。

1時間あたりの基礎賃金

基礎賃金/h = (月給 − 除外手当) ÷ 月平均所定労働時間

月平均所定労働時間は、年間所定労働日数×1日所定労働時間÷12で算出。多くの企業では160〜173時間/月が典型的です。除外手当は家族手当・通勤手当・別居手当・子女教育手当・住宅手当・臨時手当・賞与(労基則21条)。

遅延損害金

退職後の未払賃金には、賃金の支払の確保等に関する法律6条により年14.6%の遅延損害金が付きます(在職中は民法所定利率3%)。長期の未払案件では遅延損害金だけで数十万円になることもあります。

割増賃金率の一覧表

種別割増率根拠
時間外労働(月60h以下)1.25倍以上労基法37条1項
時間外労働(月60h超部分)1.5倍以上労基法37条1項但書(2023.4〜中小企業含め全事業所)
深夜労働(22:00〜5:00)+0.25倍労基法37条4項
時間外+深夜1.5倍(1.25+0.25)
月60h超+深夜1.75倍(1.5+0.25)
休日労働(法定休日)1.35倍以上労基法37条1項
休日労働+深夜1.6倍(1.35+0.25)

2023年4月から中小企業も含め全事業所で「月60時間超は1.5倍」が完全適用されました。それ以前(中小企業)は1.25倍で足りていましたが、以降の残業は必ず1.5倍で計算が必要です。

時効(3年→5年)と請求期限

賃金債権(残業代を含む)の消滅時効は、2020年4月施行の改正労働基準法により、「当分の間3年」(改正前2年)となりました(労基法115条・附則143条3項)。将来的には民法本則に合わせ5年に統一される予定です。

  • 2020年4月1日以降に発生した賃金 ― 時効3年
  • 2020年3月31日以前に発生した賃金 ― 旧法時効2年

時効を止めるには、内容証明郵便による催告(民法150条・6か月の完成猶予)、労働審判・訴訟提起等を行います。長期の未払案件では、時効が刻々進行しているため早期対応が重要です。

証拠収集の実務

残業代請求では、労働時間の立証が最大のハードルです。以下の証拠が有効です。

  • タイムカード・打刻記録 ― 会社の労働時間管理システムから開示請求可能(労基法108条・109条の帳簿保存義務)。
  • 入退館記録 ― オフィスビルのセキュリティカード履歴、社員証読取機記録。
  • PCログ・メール送受信履歴 ― パソコンの起動終了時刻、業務メールの送信時刻(自分宛の記録が有効)。
  • 自主記録 ― 手帳・スマホアプリでの日次記録。厚労省ガイドラインでも補助証拠として認められる。
  • 業務日報・営業報告 ― 提出時刻、日付印から労働時間の推定が可能。
  • SlackやTeamsの送信履歴 ― 業務チャットの投稿時刻。
  • スマホGPS・アプリ利用履歴 ― 職場滞在時間の推定に使用可能な補助証拠。
  • 同僚の証言 ― 労働審判・訴訟での陳述書として活用。

利用シーンと現場実務

サービス残業の常態化職場

タイムカード打刻後の残業、持ち帰り業務、始業前の朝礼・清掃等が「無給」となっている職場。労働時間として認められれば全て未払残業代の対象。

固定残業代(みなし残業)超過分

月20時間・30時間等の固定残業代を支払っているとする雇用契約でも、実際の残業がそれを超えていれば超過分は追加支払義務あり。契約書の「みなし時間」の明示性が争点。

名ばかり管理職(監督者性の否定)

肩書きだけの「店長」「マネージャー」は労基法41条の「管理監督者」に該当しない可能性大。日本マクドナルド事件(東京地裁2008年)等の判例で監督者性が厳格判定され、多くのケースで残業代請求が認められている。

タクシー・運送業の歩合給+残業

歩合給制でも法定時間外は割増賃金支払義務あり(労基法37条)。歩合部分を除いた基礎賃金で計算。

退職・解雇後の遡及請求

在職中に請求しにくい場合、退職・解雇後にまとめて過去3年分を請求するケースが多い。退職後は遅延損害金14.6%が付くため、より高額になる。

ブラック企業・パワハラ会社への対抗

労働基準監督署への申告(労基法104条)、労働審判(平均約3か月で解決)、訴訟の順で対応。会社の悪質性が高い場合は付加金(未払額と同額。労基法114条)も請求可能。

請求手続きの流れ

  1. タイムカード等の証拠収集 ― 在職中に労働時間記録を確保。会社に開示請求(労基則53条・帳簿保存3年)。
  2. 請求書(内容証明)の送付 ― 未払額を明示した請求書を内容証明郵便で送付。時効の完成猶予も兼ねる。
  3. 労働基準監督署への申告 ― 労基法違反として労基署に申告(労基法104条)。是正勧告が出れば会社が支払うケースあり。
  4. 労働審判の申立て ― 地方裁判所に労働審判申立て。平均3か月・3回以内の期日で解決する簡易迅速手続。
  5. 民事訴訟 ― 労働審判で解決しない場合や、金額が大きい場合は通常訴訟に移行。
  6. 強制執行 ― 判決・和解でも支払わない場合は給与差押・預金差押。

管理職・裁量労働制の例外

労基法41条により、以下の労働者は労働時間・休憩・休日の規制対象外です(ただし深夜割増賃金は支払義務あり)。

  • 管理監督者(41条2号) ― 経営者と一体的立場、時間管理を受けない、相応の待遇。名ばかり管理職は該当しない。
  • 機密事務取扱者(41条2号) ― 経営者の秘書等。
  • 監視・断続労働従事者(41条3号) ― 労基署長の許可要。

専門業務型・企画業務型の裁量労働制(労基法38条の3・38条の4)は労使協定・労基署届出が必要で、要件不備の裁量労働制は無効です(実労働時間で計算)。

よくある間違い・注意点

  • 「みなし残業だから請求できない」と誤解 ― 固定残業代を超えた分は請求可能。契約書に「40時間分の固定残業代」と明記されていても、実際に60時間残業したなら20時間分は別途請求できます。
  • 「管理職だから請求できない」と誤解 ― 労基法上の「管理監督者」は要件が厳格。日本マクドナルド事件等の判例で名ばかり管理職の請求が広く認められています。
  • 時効成立分を含めて請求 ― 賃金債権は原則3年で時効消滅。時効成立分は請求しても会社が援用すれば回収不可。早期対応が必要。
  • タイムカードなしで諦める ― 手帳・スマホアプリ・PCログ・入退館記録等の間接証拠でも立証可能。厚労省ガイドラインでも認められています。
  • 付加金請求を忘れる ― 労基法114条により、訴訟で認められれば未払額と同額の付加金を追加請求できます(裁判所の裁量)。
  • 労基署申告だけで解決すると期待 ― 労基署の是正勧告に強制力はなく、悪質会社は無視することも。並行して労働審判・訴訟の準備が必要です。
  • 「サービス残業は業界の常識」で我慢 ― 労基法違反は業界慣行を問いません。労働基準監督署への申告・匿名相談は労働者の権利です。

関連する法令・判例

  • 労働基準法32条・36条 ― 法定労働時間(1日8時間・週40時間)、36協定による時間外労働の許容。
  • 労働基準法37条 ― 割増賃金(時間外1.25倍、深夜0.25倍加算、休日1.35倍、月60時間超1.5倍)。
  • 労働基準法41条 ― 管理監督者・機密事務取扱者・監視断続労働者の労働時間規制除外。
  • 労働基準法114条 ― 付加金(訴訟で未払額と同額)。
  • 労働基準法115条 ― 賃金債権の消滅時効(改正法附則で当分の間3年)。
  • 賃金の支払の確保等に関する法律6条 ― 退職後の未払賃金への年14.6%遅延損害金。
  • 日本マクドナルド事件(東京地裁平成20.1.28判決) ― 店長の管理監督者性を否定、残業代請求を認容した代表判例。
  • 三菱重工長崎造船所事件(最高裁平成12.3.9判決) ― 更衣時間・準備時間の労働時間該当性を肯定。

参考文献・公的資料

詳細な計算方法・法令解釈・実務運用は、以下の公的機関の一次資料を参照してください。

※本ページの計算結果は残業時間×時給×1.25倍×月数の簡易概算であり、実際の請求額は基礎賃金の算定(除外手当の確定)、深夜労働・休日労働の内訳、月60時間超の適用、時効成立分の控除、遅延損害金、付加金等で大きく変わります。実際の請求は必ず弁護士(または法テラス)にご相談ください。証拠(タイムカード・打刻ログ・自主記録)の確保が最重要です。

よくある質問(FAQ)

残業代の時効は何年?

2020年4月1日以降に発生した賃金債権は3年(旧法2年から延長)。将来的には民法本則に合わせ5年に統一予定です。時効を止めるには内容証明送付・労働審判・訴訟提起が必要です。

固定残業代(みなし残業)があっても請求できる?

できます。固定残業代は「一定時間分の残業代を先払い」する仕組みで、実際の残業がそれを超えていれば超過分の請求が可能です。契約書の「みなし時間の明示」が要件で、明示なしなら固定残業代自体が無効となる判例もあります。

管理職でも残業代は請求できる?

労基法41条2号の「管理監督者」に該当しない名ばかり管理職は請求可能。判定基準は(1)経営者と一体的立場(2)時間管理を受けない(3)相応の待遇の3要件。日本マクドナルド事件等で店長の管理監督者性が否定され、多くの請求が認められています。

タイムカードがない職場でも請求できる?

できます。手帳・スマホアプリ・PCログ・入退館記録・業務メール送受信履歴等の間接証拠で立証可能です。厚労省ガイドラインでも自主記録が補助証拠として認められています。同僚の証言も労働審判で有効です。

労働基準監督署に申告するとどうなる?

労基署が会社に立入調査を行い、労基法違反があれば是正勧告を出します。悪質な場合は書類送検(刑事事件化)されることも。ただし労基署は民事の未払賃金の直接支払を強制する権限はないため、実際の回収は労働審判・訴訟が必要な場合も多いです。

労働審判とはどんな手続?

地方裁判所で行う簡易迅速な労働紛争解決手続。平均3か月・3回以内の期日で解決することを目標としており、通常訴訟より早く費用も安いのが特徴。労働審判委員会(裁判官+労使代表)が調停・審判を行います。

付加金とは何?

労基法114条により、裁判所の判決で認められれば未払残業代と同額の付加金を追加請求できる制度。裁判所の裁量ですが、悪質な違反ほど認められやすい傾向。訴訟提起前2年以内の請求が要件です。

退職後でも残業代を請求できる?

できます。むしろ在職中は請求しにくいため、退職・解雇後にまとめて請求するケースが多いです。退職後は年14.6%の遅延損害金(賃金支払確保法6条)が付くため、高額になります。

36協定を結んでいれば残業させ放題?

違います。36協定は残業を可能にする「上限」の設定であり、割増賃金支払義務は変わりません。2019年働き方改革関連法で36協定でも月45時間・年360時間(特別条項でも月100時間・年720時間等)の上限が設定されました。

裁量労働制なら残業代は不要?

裁量労働制でも深夜割増(22時〜5時)と休日割増は支払義務あり。また裁量労働制の適用には労使協定・労基署届出等の厳格な要件があり、要件不備なら無効で実労働時間で計算されます。

会社を辞めさせられそうで請求できない場合は?

労基法104条2項により、労基署への申告を理由とする解雇・不利益取扱いは禁止されています。違反時は民事の損害賠償請求可能。まず匿名で労基署・弁護士会の労働相談窓口に相談することも可能です。

弁護士費用の相場は?

着手金10〜30万円、成功報酬は回収額の16〜30%が一般的。回収額が確定するまで着手金無料・成功報酬型の弁護士事務所も増えています。費用面で困難なら法テラス(日本司法支援センター)の民事法律扶助制度で立替払いが可能です。