VCヒットレート
投資社数と成功案件の比率から、ベンチャーキャピタルのファンド全体の投資倍率とIRRを試算します。
VCヒットレートツール
計算式と考え方
実際に投資に回る金額は「ファンド規模 − 管理報酬の総額」で求めます。50億円のファンドで年2.5%の管理報酬を10年払うと12.5億円が差し引かれ、37.5億円が投資に回ります。30社に均等に投じると1社あたり1.25億円です。10倍以上になる3社が平均18倍、1〜10倍の9社が平均2.2倍、残る18社が0.1倍で回収するとすると、倍率の合計は75.6となり回収額は94.5億円になります。投資額に対して2.52倍です。ファンド規模を超える44.5億円の利益から成功報酬20%を差し引くと出資者の手取りは85.6億円、1.71倍となり、平均7年の保有を前提とした内部収益率は約8.0%です。上位3社が回収全体の71.4%を占めます。
リターンの分布構造
| 10倍以上の案件 | 全体の1割前後。ファンドの回収額の7割以上をここが占めることが多い |
|---|---|
| 1〜10倍の案件 | 全体の3割前後。元本は回収できるがファンド全体を支えるには足りない |
| ほぼ毀損する案件 | 全体の半数以上。投資額の大半が戻らないことを前提に設計する |
| 管理報酬 | 年2〜2.5%を10年払うと、ファンド規模の2割強が投資に回らない計算になる |
VCヒットレートの詳しい解説
ベンチャーキャピタルの投資成績は、平均値で語ると実態を見誤ります。リターンの分布が極端に偏っており、少数の案件が全体の大半を生み出す構造になっているためです。投資した企業の半数以上は投資額の回収に至らず、その一方で1割程度の案件が10倍を超える回収をもたらし、ファンド全体の成績を決めます。この構造は、平均的に良い企業に分散して投資するという発想が機能しないことを意味します。極端な成功が起こりうる企業に投資し、それが起きたときに十分な持分を保有していることが、成績を左右します。この前提から、投資判断の基準が一般的な事業投資とは異なってきます。失敗の確率を下げることより、成功したときにどこまで大きくなりうるかを見ることが優先されます。市場の規模が小さければ、事業として成功しても回収倍率は限られます。堅実だが上限のある事業より、成立する確率は低くても成立したときに極めて大きくなる事業が選ばれるのはこのためです。ポートフォリオの設計にも影響します。極端な成功が1割の確率で起きるなら、その1割を確実に含めるためには相応の投資社数が必要になります。10社しか投資しないファンドでは、上位案件を1社も含まないという結果が現実的な確率で起こります。一方、投資社数を増やしすぎると1社あたりの投資額が小さくなり、成功した際の持分が薄くなって回収額が伸びません。また、投資後の支援に割ける時間も分散します。多くのファンドが20社から40社という範囲に収まるのは、この二つの制約のつり合いによるものです。管理報酬の影響も無視できません。年2%から2.5%という料率は小さく見えますが、10年間支払い続けると、ファンド規模の2割から2割5分が投資に回らない計算になります。50億円のファンドなら、実際に企業に投じられるのは37億円程度です。出資者から見れば、50億円に対する倍率で成績が評価されるため、投資額に対して2.5倍を達成しても、ファンド規模に対しては1.9倍にとどまります。この差が、投資先の成績と出資者の手取りの間に開く乖離の一因です。さらに利益から成功報酬が差し引かれるため、出資者の手取り倍率はさらに下がります。時間の要素も成績を左右します。同じ2倍の回収でも、5年で達成するのと12年かかるのでは内部収益率が大きく違います。初期段階の投資は回収までの期間が長くなりやすく、倍率は高くても年率に直すと見劣りすることがあります。逆に、後期の投資は倍率が低くても期間が短いため、年率では健闘する場合があります。倍率と年率のどちらで評価するかは、出資者の性格によって異なり、長期の資金を持つ機関投資家は倍率を、期間の制約がある投資家は年率を重視する傾向があります。
業界・現場での使い方
成績の推計
案件の分布の前提からファンド全体の回収倍率を見積もります。
構造の理解
上位案件がリターン全体に占める比率を確認します。
手数料の影響
管理報酬と成功報酬が出資者の手取りに与える影響を見ます。
よくある間違い・注意点
- 平均的な回収倍率で全体を見積もる — 分布が極端に偏っています。上位案件の有無で結果が大きく変わるため平均は実態を表しません。
- 投資倍率と出資者の手取りを混同する — 管理報酬と成功報酬が差し引かれます。投資額に対する倍率より手取りは低くなります。
- 少ない社数で分散したつもりになる — 上位案件が1割の確率なら、10社では1社も含まない結果が現実的に起こります。
関連する規格・法規
- NVCA
- 日本ベンチャーキャピタル協会
※本ツールは公的基準に基づく参考計算です。実際の設計・施工・法令適用は最新の告示・規格および所轄官庁の判断に従ってください。
よくある質問(FAQ)
何割が失敗しますか?
半数以上が投資額の回収に至らないとされます。これを前提にポートフォリオが設計されます。
良いファンドの基準は何ですか?
出資者の手取り倍率で2倍以上が一つの目安とされます。期間を考慮した年率でも評価されます。
投資社数はどう決まりますか?
上位案件を含める確率と、1社あたりの投資額および支援の時間のつり合いで20〜40社に収まることが多いとされます。