棚卸資産評価
仕入の数量と単価、販売数量から、評価方法ごとの売上原価と期末棚卸高、利益の違いを計算します。
棚卸資産評価ツール
計算式と考え方
入庫は期首100個@1,000円、1回目200個@1,100円、2回目200個@1,250円の計500個・57万円です。先入先出法では古い順に払い出すため、350個の売上原価は100個×1,000円+200個×1,100円+50個×1,250円で382,500円、期末在庫150個は新しい単価で187,500円になります。売上は350個×1,800円で630,000円なので、売上総利益は247,500円、利益率は39.29%です。総平均法の単価1,140円で計算した399,000円と比べると16,500円小さくなります。
主な棚卸資産の評価方法
| 先入先出法 | 古い在庫から払い出したとみなします。期末在庫は直近の単価に近づき、実際の物の流れとも一致しやすい方法です |
|---|---|
| 総平均法 | 期間中の総原価を総数量で割った単価で払い出します。計算は簡便ですが、期末まで単価が確定しません |
| 移動平均法 | 仕入のつど平均単価を計算し直します。都度の原価が把握できる反面、記帳の負担が大きくなります |
| 後入先出法 | 新しい在庫から払い出したとみなします。日本の会計基準では2010年度以降、原則として認められていません |
棚卸資産評価の詳しい解説
棚卸資産の評価方法が問題になるのは、同じ商品でも仕入の時期によって単価が異なるためです。どの単価の在庫が売れたとみなすかによって、売上原価と期末棚卸高の配分が変わり、結果として当期の利益が変わります。物としては同じ商品が売れているのに帳簿上の利益が変わるという点が、この論点の分かりにくさの原因です。実際に古い在庫から出荷していても、評価方法として後入先出法を選べば計算上は新しい単価が払い出されます。物の流れと計算の仮定は別のものです。仕入単価が上昇している局面では、方法による差がはっきり現れます。先入先出法では古い安い単価が売上原価になるため原価が小さくなり、利益が大きく出ます。期末在庫は直近の高い単価で残るため、貸借対照表の資産額は実勢に近づきます。後入先出法では逆に、新しい高い単価が売上原価になるため利益が小さくなり、期末在庫は古い安い単価で残ります。物価が上がり続ける環境では、期末在庫が何十年も前の単価のまま残り、貸借対照表が実態を表さなくなります。日本の会計基準で後入先出法が2010年度以降原則として廃止された背景には、この問題があります。判断が分かれるのは、先入先出法と平均法のどちらを採るかです。先入先出法は物の流れと一致しやすく、期末在庫が実勢価格に近いという利点があります。一方、単価が激しく動く商品では、売上原価が古い単価に引きずられて期間損益が実勢から離れます。総平均法は期間全体をならすため損益が安定しますが、期末まで単価が確定しないため、期中の月次決算では使えません。移動平均法は仕入のつど単価を計算し直すため期中でも原価が分かりますが、記帳の負担が大きく、システムでの管理が前提になります。取扱品目数と価格変動の大きさで選ぶのが実務的です。見落とされやすいのが、評価方法の継続性です。いったん採用したら正当な理由がない限り変更できないという継続性の原則があり、利益が出そうな年に原価が大きく出る方法へ変え、翌年に戻すといった操作は認められません。税務上の評価方法は所轄税務署への届出が必要で、届け出をしていない場合は最終仕入原価法が法定の方法として適用されます。これは期末に最も近い仕入単価で在庫全体を評価する簡便な方法で、価格変動が大きい場合には実態から乖離します。もう一つの論点が、収益性の低下による簿価の切下げです。期末の正味売却価額が取得原価を下回る場合、その差額は評価損として計上しなければならないとされています。売れ残った季節商品を取得原価のまま資産に計上し続けると、資産が過大に表示されます。具体的な適用は税理士など専門家に確認してください。
業界・現場での使い方
評価方法の比較
同じ仕入と販売の条件で、方法ごとに売上原価と利益がどれだけ変わるかを確認します。
決算の見積り
期末棚卸高と売上総利益の水準を事前に把握します。
価格変動の影響把握
仕入単価の上昇局面で、利益がどの程度動くかを確かめます。
よくある間違い・注意点
- 実際の出荷順と評価方法を同じものと考える — 物の流れと計算上の仮定は別です。古い在庫から出荷していても、採用した方法で計算されます。
- 後入先出法を前提に検討する — 日本の会計基準では2010年度以降、原則として認められていません。国際的にも採用されていない方法です。
- 評価方法を年ごとに変える — 継続性の原則により、正当な理由なく変更することはできません。税務上は届出も必要です。
関連する規格・法規
- 日本商工会議所簿記
- 企業会計原則
※本ツールは公的基準に基づく参考計算です。実際の設計・施工・法令適用は最新の告示・規格および所轄官庁の判断に従ってください。
よくある質問(FAQ)
どの方法を選ぶべきですか?
取扱品目数と価格変動の大きさで決まります。物の流れと一致しやすい先入先出法が広く使われています。
後入先出法は使えますか?
日本の会計基準では2010年度以降、原則として認められていません。この計算では比較のための参考値として表示します。
届出をしていない場合はどうなりますか?
税務上は最終仕入原価法が法定の方法として適用されます。価格変動が大きい商品では実態と乖離することがあります。