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雪荷重施行令86条構造積雪

雪荷重 計算ツール|施行令86条準拠・屋根勾配補正付き

建築基準法施行令86条準拠で雪荷重(N/m²・kN)と屋根勾配係数を即算出。住宅・産業建屋・農業ビニールハウスの構造計算に。多雪区域の長期荷重、湿雪・雪止め有無の補正、JIS/告示に基づく設計用垂直積雪量まで、現場実務で必要な情報を網羅しました。

最終更新:2026-07-30/監修:計算ツールズ編集部

雪荷重(積雪深×単位重量×係数)ツール

計算式と単位系

基本式

雪荷重 W (N/m²) = 積雪深 d (cm) × 単位重量 w (N/m³/cm) × 屋根勾配係数 μ

μ = cos(1.5β) (β=屋根勾配°、β≧60°で μ=0)

建築基準法施行令第86条に基づく荷重算定式です。単位重量は原則20 N/m³/cm(=積雪1cmあたり20N/m²)ですが、多雪区域(北海道・東北・北陸)ではより大きな値が特定行政庁の告示で指定されることがあります。60cm積雪・単位重量20・勾配0°の水平屋根なら1,200 N/m²(≒120 kgf/m²)の荷重が屋根にかかります。

合計荷重と設計への反映

合計荷重 F (kN) = W × 屋根投影面積 A (m²) ÷ 1000

屋根1棟あたりの総荷重は、単位面積荷重に水平投影面積を乗じて算出。この値が小屋組・柱・基礎に伝達されるため、構造計算のトップダウンで最初に確定させます。積雪1mの多雪地域では、100m²の屋根で200kN(≒20t)超の荷重が乗る計算になります。

組合せ荷重

雪荷重は短期荷重(積雪時のみ)長期荷重(積雪期間の恒常荷重)で扱いが異なります。一般地域は短期のみ、多雪区域は長期(0.7倍)+短期(1.0倍)の複合設計。地震時・暴風時との組合せは施行令82条・82条の3で規定され、多雪区域では地震+積雪 = G+P+0.35S+Kの係数が適用されます。

地域別 設計用垂直積雪量早見表

特定行政庁が告示で指定する設計用垂直積雪量の目安です。実際の設計時は必ず該当自治体の最新告示・都市計画マスタープランを確認してください。

地域設計用垂直積雪量多雪区域指定
北海道 札幌市150cm指定
北海道 旭川市200cm指定
北海道 稚内市180cm指定
青森市150cm指定
秋田市130cm指定
山形市100cm指定
新潟市(沿岸)150cm指定
新潟県 上越(山間)250-350cm指定
富山市150cm指定
金沢市150cm指定
福井市150cm指定
長野市80cm一部指定
岐阜県 高山市140cm指定
宇都宮市40cm非該当
前橋市50cm非該当
東京都区部30cm非該当
横浜市30cm非該当
名古屋市30cm非該当
大阪市20cm非該当
広島市20cm非該当
福岡市20cm非該当
鹿児島市20cm非該当
那覇市非該当

関東・東海の平地でも山沿いでは50〜80cmを見込む例があり、市町村単位の告示値が正解です。

屋根勾配係数μの早見表

屋根勾配が急なほど雪が滑落しやすく、単位面積あたりの残留荷重は減少します。ただし雪止め金具・凹凸屋根・雪庇形成部では滑落しないため、原則としてμ=1(補正なし)で安全側評価することが推奨されます。

屋根勾配βμ=cos(1.5β)実務での扱い
0°(陸屋根)1.000全荷重が残留
10°0.966ほぼ全残留
15°0.924緩勾配住宅の標準
20°0.866
25°0.793
30°0.707切妻住宅の標準
35°0.609
40°0.500急勾配・雪滑落設計
45°0.383
50°0.259
55°0.131
60°以上0雪積もらないと扱う

金属屋根+勾配30°以上は雪滑落を期待できますが、下屋への雪落ち・落雪事故を招くため、多雪区域では敢えて緩勾配+雪止めなし+屋根雪処理を採る「無落雪屋根」設計も普及しています。

積雪単位重量と湿雪補正

単位重量は雪質(乾雪・湿雪・締雪)で大きく変わります。一般地域は20 N/m³/cm、多雪区域では30 N/m³/cm相当まで見込むのが標準です。

雪質単位重量 N/m³/cm目安の状況
新雪(乾雪)10-15降ったばかりの粉雪
締雪(こしまり雪)15-25数日経過した積雪
ざらめ雪25-35解けかけ・春雪
湿雪(重い雪)30-400℃前後の湿った雪
氷板・凍着雪50-60屋根凍結・すが漏り

関東・中部平野の湿雪は特に単位重量が大きく、30cm湿雪で900 N/m²(≒90kg/m²)と乾雪の1.5倍。2014年2月の関東豪雪では体育館・農業ハウスの倒壊が多発し、これは湿雪の単位重量を過小評価した設計に起因すると指摘されています。

多雪区域の長期荷重

多雪区域では積雪が数ヶ月にわたって屋根上に残存するため、積雪長期荷重(0.7倍)を長期応力として扱う必要があります。以下は施行令82条・82条の3の骨子です。

一般区域(積雪短期のみ)

積雪1〜数日で消失する地域。雪荷重は短期荷重(積雪時のみの一時的荷重)として扱い、通常の設計荷重に一時加算する。地震・暴風との組合せは検討不要。

多雪区域(長期+短期)

北海道・東北・北陸・中部山間部など積雪が数週間残る地域。長期荷重として0.7×積雪荷重を常時作用と扱い、短期時は1.0倍。長期は柱脚・基礎の圧壊、短期は屋根母屋のたわみを支配。

組合せ荷重の係数

多雪区域の地震時: G+P+0.35S+K(G=固定荷重、P=積載、S=雪、K=地震)。暴風時: G+P+0.35S+W。長期の35%が短期時に転嫁される。

屋根雪処理設計

多雪地では屋根雪下ろし通路(雪庇除去用のキャットウォーク)、電気融雪ヒーター、無落雪屋根(スノーダクト方式)などのハード対策と、雪下ろし作業安全帯の設置が必須。

過去の主要雪害と設計上の教訓

日本の主要な雪害事例と、そこから得られた構造設計・雪管理の教訓をまとめます。

時期地域被害教訓
1963年 三八豪雪北陸・山陰死者228名、家屋倒壊戦後最大級。豪雪法制定の契機、多雪区域指定の基礎データ
1981年 五六豪雪北陸・東北死者152名、雪下ろし事故雪下ろし作業の安全指導強化、公費雪下ろし制度の起点
2005-06年 平成18豪雪本州日本海側死者152名、体育館屋根崩落大スパン屋根の再点検、ドリフト・不均等分布の重要性再認識
2014年2月 関東甲信豪雪山梨・関東死者26名、ハウス倒壊数万棟湿雪単位重量の見直し、農業施設の雪害対策強化
2018年 福井豪雪福井県1500台車両立往生降雪短期集中への物流BCP、道路交通のロードプライシング検討
2021年1月 北陸豪雪富山・新潟雪下ろし事故多発高齢者世帯の雪下ろし支援、除雪ボランティア制度

特に2014年関東豪雪は湿雪の重さ非多雪地の設計余裕度不足を露呈しました。以降、非多雪地でも湿雪を想定した単位重量の見直しが進んでいます。

業界・現場での使い方

戸建・共同住宅設計

意匠→構造の初期段階で積雪深と屋根勾配を確定。多雪地では小屋組をトラス化・鉄骨梁化、無落雪屋根の採用検討。分譲住宅は「雪下ろし不要」を営業訴求点にする例も多い。

工場・倉庫・体育館

大スパン鉄骨屋根はスパン中央でのたわみ・座屈が支配。積雪1m超地域では鉄骨断面が非積雪地の1.5〜2倍。天井クレーン走行梁も雪荷重を加味した実応力で設計する。

農業ビニールハウス

標準ハウスは積雪30cm対応、補強タイプで60cm、雪対策専用ハウスで100cm超。近年は屋根凍結・湿雪倒壊が多発し、農水省・JAが警戒情報を発信。ハウス倒壊は農業保険の対象。

太陽光発電パネル

PVパネル積載屋根では、パネル質量(20-25kg/m²)+雪荷重の合算で構造再計算が必須。多雪地では傾斜角を大きくしてパネル面の雪滑落を促す設計が主流。積雪センサーによる融雪ヒーター起動も普及。

電柱・鉄塔・看板

電力・通信の電柱、送電鉄塔、屋外広告物は雪の付着(着雪)による荷重増を加味。ギャロッピング現象(送電線の風による揺れ)は着雪時に発生しやすく、断線・停電の原因となる。

カーポート・アーケード

ホームセンター規格のカーポートは積雪20cm仕様が主流で、多雪地では対応不可。積雪50cm・100cm仕様は柱2本→3本、梁厚2倍で価格も倍額。契約時に必ず対応積雪深を確認。

よくある間違い・注意点

  • 地域別垂直積雪量を過小評価 — 関東平野でも山沿いでは50-80cm、豪雪年は100cm超も。市町村別の告示値と過去10年の実績値の高い方を採用するのが安全設計です。
  • 屋根勾配係数を金属屋根で過信 — μ=cos(1.5β)は理論値。雪止め設置・凹凸屋根・雪庇形成部では雪が滑落しないため、実設計ではμ=1で保守評価するケースが多い。
  • 湿雪の重さを無視 — 関東・中部平野の春雪は乾雪の2〜3倍の単位重量(30-40 N/m³/cm)。乾雪換算のまま設計すると耐荷重を2割以上過小評価します。
  • ドリフト(吹きだまり)を計上しない — 段差屋根・パラペット下ではドリフトで積雪深が1.5〜2倍になる部分がある。ISO 4355・AIJ雪荷重指針では局所係数の適用を推奨。
  • 多雪区域の長期荷重を忘れる — 施行令82条により、多雪区域では長期0.7倍を常時作用として設計する必要あり。短期荷重のみで計算すると柱・基礎が過小になります。
  • 雪下ろし時の作業荷重 — 屋根の雪下ろし作業時、作業員+雪の集中荷重が発生。安全帯アンカー・親綱設置は労働安全衛生法の規定対象。
  • 太陽光パネル+積雪の複合考慮不足 — PVパネル自体の質量(20-25kg/m²)+雪荷重の合算で母屋・垂木を再設計しないと、パネル設置後に雨漏り・破損が発生する事例あり。

関連する規格・法令

  • 建築基準法施行令 第86条 ― 積雪荷重の算定基準。垂直積雪量×単位重量×屋根勾配係数の基本式を規定。特定行政庁が地域ごとの垂直積雪量を告示で指定。
  • 建築基準法施行令 第82条・82条の3 ― 荷重及び外力の組合せ。多雪区域における長期(0.7S)・短期(1.0S)、地震+積雪(G+P+0.35S+K)等の係数を規定。
  • 平成12年建設省告示 第1455号 ― 屋根の雪止めの構造方法及び雪滑落防止に関する技術基準。金属屋根の雪止め金具設置ルール。
  • AIJ 雪荷重指針(日本建築学会) ― 学会標準の詳細雪荷重算定手法。ドリフト・不均等分布・雪庇の局所係数を含む。
  • JIS Z 8703 ― 試験場所の標準状態(積雪試験環境)。
  • ISO 4355 ― Bases for design of structures - Determination of snow loads on roofs(屋根の雪荷重設計の国際基準)。
  • 労働安全衛生規則 第518〜519条 ― 高所作業・墜落防止(屋根雪下ろし作業に適用)。

参考文献・公的資料

雪荷重の告示値・気象データ・被害事例を確認したい場合は、以下の公的機関の資料を参照してください。

※本ページの計算結果は概算値です。実際の構造設計・建築確認申請では、必ず該当自治体の最新告示・特定行政庁の指示・構造設計一級建築士等の有資格者の判断に従ってください。多雪区域の建築物、既存建物の増改築、太陽光パネル設置による荷重増加、積雪期の点検・雪下ろし作業等は、それぞれ関連法令に基づく専門家判断が必要です。

よくある質問(FAQ)

東京の設計用垂直積雪量は?

東京都区部は30cmが建築基準法上の設計値。ただし2014年2月の関東豪雪では実積雪27cm(気象庁観測)を記録し、湿雪のため実荷重が想定を上回りました。都心の陸屋根建築物はドリフトも考慮が必要です。

雪1cmあたりの重量は?

一般地域では20 N/m²/cm(≒2 kgf/m²/cm)が標準。乾いた新雪は10-15、湿雪や春雪は25-30、氷板化すると50以上まで増加します。関東の湿雪は特に重く、乾雪の2倍近くになるため注意が必要です。

屋根勾配が急いと雪荷重は減る?

理論上はμ=cos(1.5β)で減少(勾配30°でμ=0.71、45°で0.38、60°で0)。ただし雪止め金具設置屋根や凹凸屋根では雪が滑落しないため、実設計ではμ=1(補正なし)で保守評価するのが安全です。

多雪区域の指定基準は?

建築基準法上の多雪区域は特定行政庁が告示で指定。北海道・東北・北陸各県+新潟・長野・岐阜の山間部が中心。多雪区域では長期荷重として0.7×雪荷重を常時作用と扱う必要があります。

ビニールハウスの倒壊を防ぐには?

標準ハウスは積雪30cm対応、補強タイプで60cm、雪対策専用ハウスで100cm超対応。多雪地では屋根雪下ろし、電気融雪、二重張り防止などの対策が必須。農業共済(NOSAI)の雪害補償加入も推奨されます。

太陽光パネル設置後の雪荷重はどう考える?

パネル質量(20-25kg/m²)+雪荷重の合算で母屋・垂木・柱を再計算する必要あり。パネル面の雪滑落を促すため設置角度を大きく(20-30°)取り、雪センサー+融雪ヒーターを併用する例が普及しています。

陸屋根の雪はどう処理する?

陸屋根(勾配1-2°)は雪滑落せず全荷重が残留。多雪地ではスノーダクト方式(屋根中央に融雪溝を設けて排水)やヒーター融雪、電気融雪パイプ埋込などで処理。雪下ろし作業は労安則で親綱・安全帯必須です。

カーポートの選び方は?

ホームセンター標準品は積雪20cm(主に関東以西)対応。積雪深と地域を必ず確認。積雪50cm・100cm仕様は柱本数増+梁厚倍で価格が倍額。多雪地は雪落しやすい片流れ型+柱3本以上を選択。

雪下ろし作業の法的義務は?

建物所有者・管理者は民法の工作物責任(717条)により、雪下ろし不備で通行人被害が生じた場合は損害賠償責任が発生。労働者に雪下ろしをさせる場合は労安則518〜519条で親綱・安全帯・墜落防止措置が義務化されています。

ドリフト(吹きだまり)は考慮すべき?

段差屋根の低い側・パラペット下・突起物周辺では、風による吹きだまりで積雪深が1.5〜2倍になる部分があります。AIJ雪荷重指針・ISO 4355では局所係数を規定。工場・倉庫の大屋根で特に注意が必要です。

2014年関東豪雪の教訓は?

湿雪の単位重量が想定を上回り、体育館・農業ハウス・カーポートの倒壊多発。設計上30cm対応の建物が実積雪27cmで倒壊した事例あり。湿雪では単位重量25-30 N/m²/cmで再計算する保守評価が広まりました。

着雪(送電線・電柱)の設計は?

送電線・電柱・鉄塔では風による着雪(電線の風上側に雪が付着)を加味した設計が必要。着雪+風でギャロッピング(電線の大振幅振動)が起き、断線・停電の原因になります。電気学会の設計指針に基づき、雪氷防災研の観測データを参照します。