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層間変形角耐震設計建築基準法二次設計免震制振

層間変形角 計算ツール|階高から許容変形量を即算出、1/200・1/120と免震制振・弾塑性応答まで完全対応

建築物の耐震設計で最重要指標の一つ、層間変形角δ/hを階高・水平変位から瞬時に算出。建築基準法施行令82条の6の「1/200(一般)、仕上材が変形追従可能な場合1/120」基準と、限界耐力計算・時刻歴応答解析での大地震時1/100〜1/75限界、免震構造の1/300以下目標値まで一括判定。純ラーメン・ブレース構造・耐震壁付き・免震・制振の構造種別別の応答目安、鉄骨・RC・SRC・木造の実務適用、日本建築学会「鋼構造塑性設計指針」「RC造建物の耐震設計」の推奨値を実務基準として解説します。

最終更新:2026-08-08/監修:計算ツールズ編集部

層間変形角 計算機

計算式と用語定義

基本式

層間変形角 R = δ ÷ h

δ(デルタ):i層の上下階に生じる相対水平変位[mm]
h:i層の階高[mm]
比の形で表現(1/200, 1/120, 1/100 等)し、無次元量です。

許容変位(mm)の逆算

許容層間変位 δmax = h ÷ 分母(200, 120, 100 等)

階高h=3,500mm(3.5m)の場合:

  • 1/200基準:δmax = 3500 ÷ 200 = 17.5mm
  • 1/120基準:δmax = 3500 ÷ 120 = 29.2mm
  • 1/100基準:δmax = 3500 ÷ 100 = 35.0mm

設計変位の算定

実務では地震層せん断力Qiに対する各層の相対変位を、剛性・弾塑性剛性から静的増分解析または時刻歴応答解析で算出します。詳細は日本建築学会「建築物荷重指針・同解説」および同「鋼構造塑性設計指針」を参照。

建築基準法施行令82条の6

層間変形角の基準は建築基準法施行令第82条の6および同関係告示に規定。以下、規制の要点。

令82条の6 一次設計(稀に発生する地震)

第一号:各階の層間変形角が、原則として1/200以内であることを確かめること。
ただし、内外の仕上材・帳壁等に著しい損傷が生ずるおそれがないとして国土交通大臣が定めるものにあっては、1/120以内とすることができる。

これは「稀に発生する地震動(震度5弱程度、標準せん断力係数C0=0.2)」に対する弾性域での限界を規定するものです。「損傷限界」とも呼ばれます。

大地震時の限界(令82条の5・限界耐力計算)

限界耐力計算(令82条の5)では、「極めて稀に発生する地震動(震度6強〜7、C0=1.0)」で建物が倒壊・崩壊しないことが求められ、多くの構造で層間変形角1/100〜1/75までの応答が許容されます(構造種別・部材の靭性能により変動)。

ルート別扱い

  • ルート1(比較的小規模):層間変形角検討省略可(規模・階数の要件あり)
  • ルート2(中規模):一次設計で1/200(1/120)を確認
  • ルート3(規模の大きい・複雑):一次設計+保有水平耐力+層間変形角・剛性率・偏心率
  • ルート4(超高層):時刻歴応答解析(告示第1461号)

検討フェーズ別 許容値

フェーズ地震動層間変形角建物挙動
常時使用(風・微振動)C0=0.05以下1/500以下使用性維持
一次設計(稀な地震)C0=0.201/200(1/120)弾性・仕上材無害
大地震(極稀)C0=1.01/100-1/75塑性化許容・倒壊せず
倒壊限界(極大地震)C0>1.01/50-1/30崩壊しない

免震・制振の目標水準

構造大地震時 層間変形角備考
免震構造(上部構造)1/300以下免震層で吸収
免震層(積層ゴム変形)免震材料の許容せん断ひずみ γ=200-300%以内免震装置の性能で規定
制振構造(上部構造)1/150-1/200ダンパーで応答低減
耐震構造(一般)1/100塑性化許容

構造種別ごとの応答特性

🏗️ 鉄骨造 純ラーメン

柔らかい構造で層間変形角が大きくなりやすい。一次設計で1/200を確保するには断面寸法(H形鋼・BOX柱)の確保が重要。大地震時に1/100を超える塑性化を許容する場合はH形鋼のフランジ・ウェブの幅厚比制限(FA〜FDランク)による靭性確保が必須。

🔩 鉄骨造 ブレース架構

ラーメンより剛性が高く層間変形角は小さい(1/500〜1/300)が、ブレースの座屈・接合部破壊で急激に耐力低下する脆性挙動に注意。座屈拘束ブレース(BRB)は塑性化を延性的に進行させ、応答低減効果あり。

🧱 RC造 純ラーメン

鉄骨より剛性が高いが重量も大きい。一次設計で1/200達成は比較的容易だが、大梁のせん断破壊回避と柱の靭性確保(せん断補強筋量・軸力比制限)が肝要。1971年基準の帯筋間隔強化以前の建物は大地震時に脆性破壊リスク大。

🏠 RC造 耐震壁付き

耐震壁は剛性が高く、層間変形角は非常に小さい(1/1000〜1/500)。壁量が十分ならば設計は容易だが、壁の配置バランス(偏心率)、開口部での応力集中、基礎の負担検討が必要。

🏢 SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート)

RCとSの合成構造で剛性・耐力ともに高い。中高層のオフィスビル・マンションで多用。層間変形角の管理はRC造に近い。

🌲 木造(枠組壁工法・軸組)

木造住宅は建築基準法上「壁量計算」で耐震設計するのが原則で、層間変形角の直接検討は行わないケース多い。ただし性能表示制度(耐震等級2・3)では変形角検討推奨。大地震時1/30以内を目標とする指針あり。

仕上材・非構造部材の追従性

1/120緩和が適用できるかは、内外装仕上材・帳壁の追従性能で決まります。

仕上材・部材変形追従の可否備考
石膏ボード貼(壁・天井)1/200基準推奨ひび割れ発生の可能性
タイル張り(モルタル下地)1/200基準剥落リスク
プラスター仕上1/200基準ひび割れ懸念
乾式間仕切(スチール下地+石膏)1/120対応可スタッド・ランナー隙間で追従
移動間仕切・オフィスパーテ1/120対応可非構造扱い
ALC外壁パネル1/120対応可(横目地)ロッキング取付
金属サンドイッチパネル1/120対応可スライド金物
ガラスカーテンウォール(SSG工法)1/100対応大変形追従設計
石張り(乾式・4点支持)1/120対応可金物設計必須
ALC間仕切(スライド式)1/120対応可層間変形吸収設計
スチール階段(構造分離)1/100対応スライド支持

1/120緩和が使えるかは、建築設備を含めた全ての仕上材・非構造部材について検証が必要。1箇所でも追従不可の部材があれば1/200基準を適用します。

免震・制振構造の設計目標

免震構造

大地震時に上部構造の層間変形角が1/300以下となるよう設計。積層ゴム支承・すべり支承・転がり支承で建物を地盤から絶縁し、揺れを大幅に低減します。免震層自体は積層ゴムのせん断ひずみ200-300%を許容(免震材料の性能で規定)し、水平変位は300-600mmに達することも。免震層クリアランス(建物と擁壁の隙間)を十分確保する必要があります。

制振構造

粘性ダンパー(オイル)・粘弾性ダンパー・鋼材(座屈拘束ブレース)・同調質量ダンパー(TMD)で応答低減。大地震時1/150〜1/200を目標とすることが多い。免震ほどの効果はないが、コスト・改修容易性で優位。既存建物の耐震補強にも活用。

設計指針

日本建築学会「免震構造設計指針」「パッシブ制振構造設計・施工マニュアル」・国交省告示第2009号(免震構造)・告示第184号(制振構造)に準拠します。

現場での使い方

🏗️ 構造設計事務所での二次設計

ルート3・4の建物で層間変形角・剛性率・偏心率の3点セット検討。SS3・BUS-5・SNAP等の構造解析ソフトで自動出力されるが、手計算での妥当性確認にも使用。

📐 建築確認申請図書の作成

構造計算書「11.層間変形角の検討」章の記載内容の確認。指定確認検査機関・特定行政庁・構造適判での指摘対応。

🏢 高層マンション・オフィスビルの設計

60m超の建物は時刻歴応答解析(告示第1461号)が原則で、層間変形角は大地震時に1/100を超えないことを確認。免震・制振採用で1/300、1/150を目指す事例増加。

🔧 既存建物の耐震診断・補強設計

耐震診断基準(日本建築防災協会)に基づき、既存建物の変形性能を評価。補強計画では耐震壁増設・鉄骨ブレース・ダンパー追加で剛性・応答改善。

🏠 木造住宅の性能表示

住宅性能表示制度の耐震等級2・3では、壁量計算に加えて層間変形角検討推奨。長期優良住宅認定でも同等の検討が必要。

🏫 学校施設・重要建築物

文部科学省「学校施設の耐震化推進」で、Is値0.7以上に加えて層間変形角検討で機能維持水準を確認。防災拠点(庁舎・病院)は1/150以下を目標とする自治体多数。

よくある間違い・注意点

  • 階高hに設計上の「梁天〜梁天」でなく仕上寸法を使用 — 令82条の6の階高は原則構造芯(梁天)基準で、内法(天井高)ではありません。特にRC造で構造芯と仕上寸法の差が大きい場合、変形角の分母が変わり結果が数%変わります。
  • 1/120緩和を仕上材を検証せずに適用 — 全ての仕上材(内装・外装・帳壁・設備配管接続部)で追従性を検証しないと、大臣認定・確認検査で指摘対象。1つでも追従不可があれば1/200基準に戻ります。
  • 弾性域と塑性域の混同 — 1/200は「弾性域(損傷限界)」、1/100は「塑性域(倒壊限界)」の指標。同じ「層間変形角」でも意味が全く違います。
  • 剛性率・偏心率と混同 — 令82条の6には層間変形角(第一号)、剛性率(第二号)、偏心率(第三号)の3規定があり、目的が異なります。剛性率(0.6以上)は各階の柔軟性の均等性、偏心率(0.15以下)は平面的な剛性偏りを規定。
  • 免震層と上部構造を同一視 — 免震層の水平変位(300-600mm)は「免震材料の設計変位」で、上部構造の層間変形角(1/300以下)とは別次元。図面・計算書で明確に区別してください。
  • 非構造部材(帳壁・設備)の検討漏れ — 東日本大震災・熊本地震では、構造は無被害でも非構造部材(天井・外壁・エレベーター・設備)の被害で建物が長期使用不能になった事例が多数。層間変形角検討では非構造部材の追従設計を必ずセットで検討してください。
  • 大地震時応答の楽観評価 — 略算・簡易解析では地震応答を過小評価するリスクあり。特にねじれ振動・多層モード共振・地盤との連成が影響する複雑建物は詳細時刻歴応答解析を実施してください。

関連する規格・法令

  • 建築基準法施行令 第82条の6 ― 層間変形角の検討(第一号)、剛性率(第二号)、偏心率(第三号)を規定。
  • 建築基準法施行令 第82条の5 ― 限界耐力計算の規定(大地震時1/100等の許容変形)。
  • 国交省告示第1461号(2000) ― 超高層建築物(60m超)の時刻歴応答解析による構造計算基準。
  • 国交省告示第2009号(2000) ― 免震建築物の構造計算基準。
  • 国交省告示第184号(2001) ― 制振・エネルギー吸収構造の構造計算基準。
  • 建築基準法施行令 第81条 ― 保有水平耐力計算(ルート3)の要件。
  • 日本建築学会「鋼構造塑性設計指針」「鋼構造座屈設計指針」「RC造建物の耐震設計」 ― 各構造種別の実務設計指針。
  • 日本建築学会「建築物荷重指針・同解説」 ― 地震荷重・風荷重の算定基準。
  • 日本建築防災協会「既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準」 ― 既存建物の診断・補強設計基準。
  • 住宅性能表示制度 ― 耐震等級1〜3の判定基準に層間変形角検討含む。

参考文献・公的資料

より正確な設計基準や解説を確認したい場合は、以下の公的機関・学会の資料を参照してください。

※本ページの計算は令82条の6・限界耐力計算の解説を目的とした概算です。実際の構造設計では、SS3・BUS-5・SNAP・MidasGen等の構造解析ソフトウェアによる詳細な解析、および構造一級建築士・建築構造士による判断が必須です。確認申請・構造適合性判定・大臣認定申請等の法的手続きは、必ず有資格者(構造一級建築士等)にご相談ください。特に免震・制振・超高層建物では、日本建築センター等の第三者評価機関の技術評価が実務上必要です。

よくある質問(FAQ)

階高3.5mの許容層間変形量は?

1/200基準なら17.5mm(3500÷200)、仕上材追従可の1/120緩和なら29.2mm(3500÷120)。大地震時の1/100基準では35mmまで許容されます。建築基準法施行令82条の6が根拠で、稀に発生する地震(震度5弱、C0=0.2)での弾性域の限界を規定します。

1/120緩和の適用条件は?

内外装仕上材・帳壁が変形に追従して「著しい損傷を生じるおそれがない」ことを検証する必要があります。乾式間仕切・ロッキング取付ALCパネル・スライド式金物のガラスCW等は追従可能。石膏ボード直貼・タイル張り・プラスター仕上等の湿式・剛強仕上は原則1/200基準を適用します。全ての仕上材・非構造部材で追従性を検証しないと1/120は使えません。

層間変形角と剛性率・偏心率の違いは?

いずれも令82条の6第一〜三号の規定で、目的が異なります。層間変形角(第一号)は各層の変形絶対値の管理、剛性率(第二号)は上下階の剛性の均等性(0.6以上)、偏心率(第三号)は平面的な剛性偏り(0.15以下)を規定。3項目セットで建物の耐震性を管理します。

大地震時の許容層間変形角は?

限界耐力計算(令82条の5)や時刻歴応答解析での「極めて稀に発生する地震動(震度6強〜7、C0=1.0)」に対しては、1/100〜1/75が一般的な許容値。ただし部材のじん性能・座屈拘束・接合部靭性等により変動し、時刻歴応答解析による個別検討が原則です。倒壊限界は1/50〜1/30に達することもあります。

免震構造での層間変形角目標は?

大地震時に上部構造の層間変形角1/300以下が一般目標。積層ゴム・すべり支承等で建物を地盤絶縁し、上部構造の応答を大幅に低減。ただし免震層自体は水平変位300-600mmとなるため、建物と擁壁との免震クリアランスを十分確保する必要があります。

制振構造での層間変形角目標は?

大地震時1/150〜1/200が一般目標。免震ほどではないが、粘性・粘弾性・鋼材ダンパー等で応答を数割低減。既存建物の耐震補強にも活用でき、免震より低コストで施工可能。ダンパー配置は各層バランスと剛性率確保が重要です。

変形角の許容値は木造でも適用される?

木造(在来軸組・枠組壁工法)は「壁量計算」が原則で、層間変形角の直接検討は法的必須ではありません。ただし住宅性能表示制度の耐震等級2・3や長期優良住宅認定では変形角検討を推奨し、大地震時1/30以内が実務目標となります。木造3階建て・混構造では検討必須。

層間変形角検討はどのルートで必要?

建築基準法の構造計算ルートで、ルート2以上(規模の大きい建物)で必要。ルート1(比較的小規模、階数・面積の要件あり)では省略可能。ルート3(規模の大きい建物・複雑形状)ではさらに剛性率・偏心率の検討が追加され、ルート4(超高層60m超)は時刻歴応答解析による総合検討となります。

実際の建物での層間変形角実測値は?

1990年代以降の中高層マンション・オフィスは、稀な地震(震度5弱)で1/500〜1/300程度に収まるよう設計されています。大地震(震度6強〜7)時は1/100〜1/50程度の応答が想定され、東日本大震災・熊本地震での実測値もこの範囲内でした。免震・制振建物ではさらに低く、免震で1/500以下、制振で1/200以下の応答例が多数報告されています。

非構造部材(天井・設備)の変形追従性も検討必須?

はい、必須です。東日本大震災では構造は無被害でも、体育館の天井落下・給排水設備の破損・エレベーター停止により長期使用不能になった事例が多数発生。国交省告示第771号(2013)で6m超の吊り天井は「特定天井」として耐震対策が義務化。設備配管・免震層内配管もフレキシブル化が必要です。

変形角が基準を超えた場合の対策は?

断面寸法の増加(柱・梁の大型化)、②耐震壁の増設、③ブレースの追加(鉄骨造)、④制振ダンパーの追加、⑤免震化への構造変更、⑥仕上材を追従可能なものへ変更(1/200→1/120緩和適用)等が対策。既存建物では①③④⑥が現実的です。

層間変形角が小さすぎるとどうなる?

剛性が過大で建物が固すぎる場合、地震時に大きな慣性力が発生し部材・接合部への負担増加、基礎への応力集中の問題が発生します。適度な柔軟性(1/300〜1/200程度)を持たせて、変形吸収能力(靭性)で地震エネルギーを消散させる設計思想が現代の耐震設計の基本です。