ROAS目標
粗利率と付随費用から、EC広告の損益分岐ROASと目標ROAS、許容CPAを試算します。
ROAS目標ツール
計算式と考え方
実績ROASは売上を広告費で割った値で、500万円÷100万円で500%です。1件の売上のうち利益に回る割合は、粗利率35%から送料・決済・梱包の8%を引いた27%になります。損益分岐ROASは100をこの27%で割った約370%です。検索広告では安全率1.25倍を掛けて目標ROASは約463%となります。利益は500万円×27%から広告費100万円を引いた35万円です。許容CPAは客単価10,000円にリピート分2,400円を加えた12,400円の27%で約3,348円になります。
ROASの水準と読み方
| 損益分岐ROAS | 100÷(粗利率−付随費用率)。これを下回ると売るほど赤字になります |
|---|---|
| 目標ROAS | 損益分岐に安全率を掛けた値。人件費や固定費の回収分を上乗せします |
| 許容CPA | 1顧客から得られる粗利の上限。これを超える獲得単価は採算に合いません |
| 媒体による違い | 検索は顕在層で効率が高く、ディスプレイや動画は間接効果を含めた評価が必要です |
ROAS目標の詳しい解説
ROASは売上を広告費で割った指標ですが、この値だけでは採算の可否を判断できません。同じROAS400%でも、粗利率50%の商材では十分な利益が残り、粗利率20%の商材では赤字になります。判断の基準になるのは損益分岐ROASで、100を貢献利益率で割って求めます。貢献利益率とは、売上のうち商品原価と、送料や決済手数料、梱包資材といった注文ごとに発生する費用を差し引いた後に残る割合です。粗利率だけで計算すると付随費用の分だけ楽観的な数字になるため、注文ごとに必ず発生する費用は必ず含めてください。次に検討するのが安全率です。損益分岐ROASは広告費を回収できる水準にすぎず、人件費、倉庫費、システム利用料、モールへの固定手数料といった費用は回収できていません。これらを賄うために、損益分岐の2割から6割増しを目標に置くのが実務的です。媒体によって上乗せ幅を変えるのは、計測の性格が異なるためです。検索広告は購入意図が明確な層に当たるため計測値と実態のずれが小さく、ディスプレイや動画は認知への寄与が計測に表れにくい一方で、計測される売上には他の媒体の貢献が混ざりやすいという性質があります。リピートをどこまで織り込むかは判断が分かれる論点です。初回の粗利だけで許容CPAを決めると、獲得できる顧客数が限られます。一方で楽観的なリピート率を前提にすると、資金繰りが先に苦しくなります。実際に取得したデータで12か月のリピート率と再購入額を測り、それを超える仮定は置かないという線引きが一つの目安です。定期購入型の商材では回数の分布まで見る必要があり、平均だけでは実態を捉えられません。計測そのものの信頼性も見落とされがちです。ブラウザの制約や複数端末をまたぐ行動により、広告経由と記録される売上は実際より少なくなる傾向があります。逆に、広告がなくても購入したはずの顧客が広告経由として計上されることもあります。媒体の管理画面上のROASと、事業全体の売上や利益の推移が食い違う場合は、一定期間広告を止めて全体の売上がどれだけ落ちるかを測る方法が有効です。手間はかかりますが、増分としての効果を最も直接的に確認できます。最後に、ROASを追い過ぎることの弊害にも触れておきます。目標を高く設定すると配信は絞られ、効率の良い層だけに当たるため数値は改善しますが、売上の絶対額は伸びません。利益額を最大にする点は、ROASが最も高い点よりも低い水準にあるのが普通です。指標の目的が利益であることを踏まえ、ROASと利益額の両方を並べて判断してください。
業界・現場での使い方
目標値の設定
粗利率から損益分岐と目標のROASを求めます。
入札の判断
許容CPAを基準に獲得単価の上限を決めます。
媒体の評価
媒体ごとに必要なROASの水準を比較します。
よくある間違い・注意点
- 粗利率だけで損益分岐を計算する — 送料、決済手数料、梱包費が注文ごとに発生します。これらを引いた貢献利益率で計算してください。
- ROASの最大化を目標にする — 配信を絞れば数値は上がりますが売上は伸びません。利益額と併せて判断してください。
- 管理画面の数値だけを信じる — 計測は過小にも過大にも振れます。広告を止めた期間の売上変化で増分を確認してください。
関連する規格・法規
- 日本ECコンサル協会
- SaaStr
※本ツールは公的基準に基づく参考計算です。実際の設計・施工・法令適用は最新の告示・規格および所轄官庁の判断に従ってください。
よくある質問(FAQ)
ROASとROIはどう違いますか?
ROASは売上を広告費で割った値、ROIは利益を投資額で割った値です。ROASは100%でも赤字になり得ます。
目標ROASの目安はありますか?
貢献利益率で決まります。粗利率35%・付随費用8%なら損益分岐は約370%で、目標はその1.2倍から1.6倍です。
リピートはどこまで織り込めますか?
実測した12か月のリピート率と再購入額までにとどめるのが安全です。楽観的な仮定は資金繰りを圧迫します。