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蛋白ICU栄養医療TPN

ICU蛋白必要量

体重・重症度・腎機能から重症患者の必要蛋白量を即算出。TPN・EN栄養設計、アミノ酸輸液(9%・12%)換算にも対応。

最終更新:2026-07-29/監修:計算ツールズ編集部

ICU蛋白必要量ツール

ICU蛋白必要量の計算式

必要蛋白量(g/日) = 体重(kg) × 蛋白係数

アミノ酸輸液量(mL) = 必要蛋白量 ÷ (濃度% ÷ 100)

窒素量(g) = 蛋白量 ÷ 6.25

蛋白係数は、安定期0.8、ICU一般1.2、重症1.5、熱傷・多発外傷2.0g/kg/日(ESPEN・JSPENガイドライン)。60kgの重症患者なら90g/日。9%アミノ酸輸液なら1,000mL、12%なら750mL、15%なら600mLで達成できます。

腎機能低下時は蛋白負荷を減量する必要がありますが、透析患者は透析による喪失を補うため通常より1.2〜1.5g/kgに増量します。透析なしのCKDでは0.6〜0.8g/kgに抑え、進行抑制と栄養維持のバランスを取ります。

患者状態別 蛋白必要量ガイドライン

状態 蛋白(g/kg/日) 60kgでの必要量 9%アミノ酸輸液 備考
健常成人 0.8〜1.0 48〜60g/日 530〜670mL 維持量
ICU一般(急性期) 1.2〜1.5 72〜90g/日 800〜1,000mL 異化亢進対応
重症敗血症 1.5〜2.0 90〜120g/日 1,000〜1,330mL 強い異化
熱傷・多発外傷 1.5〜2.0 90〜120g/日 1,000〜1,330mL 創傷治癒優先
CKD(透析なし) 0.6〜0.8 36〜48g/日 400〜530mL 腎保護
HD/PD透析 1.2〜1.5 72〜90g/日 800〜1,000mL 透析喪失補填
肝性脳症 0.5〜0.8 30〜48g/日 BCAA製剤優先

ICU蛋白必要量の詳しい解説

ICU患者では炎症性サイトカイン・カテコラミン上昇による代謝亢進・異化亢進が生じ、健常時の1.5〜2倍の蛋白が必要になります。「投与蛋白量の適正化はICU-AW(ICU関連筋力低下)の予防、離床促進、生存予後改善に直結する」ことがESPEN・ASPEN・JSPENの各ガイドラインで示されています。特に72時間以上のICU滞在では、蛋白投与量とアウトカムの相関がエネルギー投与量以上に強いことが指摘されています。

1. 蛋白投与のタイミング:ICU入室後24〜48時間は経管栄養(EN)を早期開始することが推奨されます。血行動態が安定していれば、栄養開始翌日から蛋白量を段階的に増やし、5〜7日目までに目標量に到達させる「漸増プロトコル」が実務標準です。急性期に一気に高蛋白負荷をかけると、リフィーディング症候群・高窒素血症のリスクがあります。

2. アミノ酸輸液の濃度選択:9%製剤はカロリー輸液との配合バランスがよく標準採用されます。12%・15%は水分制限が必要な症例(心不全・腎不全・肺水腫)で選択されます。組成としてはBCAA強化型、腎不全用(必須アミノ酸中心)、肝不全用(BCAA・低AAA)など、病態別製剤が存在します。

3. NPC/N比の管理:NPC/N比(非蛋白カロリー/窒素比)は150〜200が急性期の目安、慢性期は200〜300が推奨です。ICU重症患者では100前後まで下げることもあり、蛋白利用効率を最大化します。エネルギー不足下で高蛋白のみ投与すると、アミノ酸がエネルギー源として消費されてしまい蛋白合成に使われません。

4. 経腸栄養(EN)と静脈栄養(PN)の使い分け:ENが第一選択で、腸管機能が保たれる限りENを優先します。ENで目標量の60%が達成できない場合、5〜7日目からPN併用(補完的静脈栄養)を検討します。標準EN製剤の蛋白濃度は4〜6%(1kcalあたり0.04〜0.06g蛋白)で、目標蛋白量から必要投与量を逆算します。

5. 腎機能・肝機能への配慮:BUN上昇時は蛋白負荷を再評価しますが、単純減量ではなく透析条件(HD時間・回数・膜特性)の調整で対応するのが現代のICU栄養管理の標準です。肝性脳症合併時はBCAA製剤(アミノレバン等)へ切替え、AAA(芳香族アミノ酸)を制限します。血清アルブミン値は栄養状態のマーカーとして参考にはなりますが、炎症影響も受けるため単独評価は避けます。

ケーススタディ:60kg敗血症患者の蛋白管理例

設定:60歳男性、体重60kg、敗血症性ショック後ICU入室3日目、循環動態安定、経管栄養開始可能。

日数 投与経路 蛋白量目標 実投与 備考
Day1-2 PN(9%アミノ酸200mL) 0.5g/kg=30g 18g 循環安定待ち、控えめ
Day3 EN開始+PN併用 1.0g/kg=60g 50g ENは20mL/h少量開始
Day5 EN主体 1.5g/kg=90g 85g ENレート60mL/h達成
Day7 EN単独 1.5g/kg=90g 92g 目標達成、離床開始

敗血症などの重症症例では、急性期(Day1-3)は控えめに始めて、5〜7日目に目標量へ到達させる漸増が標準です。過剰蛋白負荷は高窒素血症・肝機能障害を誘発するため、BUN・肝機能を毎日モニタリングします。

業界・現場での使い方

集中治療医・ICU看護師

日次栄養プランの作成、アミノ酸輸液の投与量オーダー計算、経管栄養製剤への切替時の蛋白量整合性チェックに活用できます。

NST(栄養サポートチーム)

週次NSTラウンド時の栄養評価。目標蛋白量に対する達成率を可視化し、投与経路変更・製剤変更の判断材料に。

管理栄養士

経腸栄養製剤の選択・混合設計。目標蛋白量から必要製剤量を逆算し、水分・電解質・微量元素とのバランス設計に。

薬剤師(病院・ICU担当)

TPNオーダーの妥当性チェック。処方量が体重・重症度から見て適正か、腎機能・肝機能への配慮が十分かの監査に。

リハビリテーション科

ICU離床後の筋量維持栄養サポート。回復期リハでの蛋白必要量算定に。

栄養関連学会研修・実務教育

栄養投与量計算の演習教材として。ESPEN・JSPENガイドラインの実務適用を数値で理解する場面に。

よくある間違い・注意点

  • 腎不全患者への高蛋白投与 — 透析なしCKDでは0.6〜0.8g/kgに制限が必要。透析患者は逆に1.2〜1.5g/kgと増量が必要で、判断を誤ると腎機能悪化や透析効率低下を招きます。
  • 実体重と乾燥体重の混同 — 浮腫・腹水がある症例では実体重が10〜20kg増加していることがあり、そのまま蛋白量を計算すると過剰投与になります。DBW(乾燥体重)またはIBW(理想体重)を使用します。
  • 急性期の過大蛋白負荷 — Day1-3で目標量を全量投与すると、リフィーディング症候群・高窒素血症・肝機能障害を誘発します。5〜7日で目標到達させる漸増が原則です。
  • NPC/N比の未考慮 — 蛋白のみ投与しエネルギーが不足するとアミノ酸がエネルギー源として消費され、蛋白合成に使われません。糖質・脂質を適切に配合します。
  • 肝性脳症でのBCAA/AAA無視 — 通常アミノ酸製剤ではAAA(チロシン・フェニルアラニン)が多く、肝性脳症悪化のリスク。BCAA強化型(アミノレバン)を選択します。
  • ENからPNへの安易な変更 — 腸管機能が保たれる限りENを継続すべきで、PNのみへの変更は腸管萎縮・バクテリアルトランスロケーションのリスクを高めます。
  • アルブミン値のみによる栄養評価 — アルブミンは炎症状態でも低下するため、栄養状態を単独では評価できません。プレアルブミン・RBP・体重変化・筋肉量測定を組み合わせます。

関連する規格・法規・参考情報

  • 日本静脈経腸栄養学会(JSPEN) 静脈経腸栄養ガイドライン
  • ESPEN Guideline on Clinical Nutrition in the Intensive Care Unit
  • ASPEN Guidelines for Nutrition Support Therapy in Critically Ill
  • 日本集中治療医学会 集中治療における栄養療法ガイドライン
  • 日本腎臓学会 CKD診療ガイドライン
  • 日本肝臓学会 肝硬変診療ガイドライン

※本ツールは公表ガイドラインに基づく参考計算です。実際の栄養プラン・輸液組成・経腸栄養設計は、患者の病態、循環動態、腎肝機能、感染徴候、代謝状態を総合評価し、集中治療医・NSTチーム・管理栄養士の連携のもと最終決定してください。特に小児・高齢者・妊娠中・肝腎機能重度低下例では個別調整が必須です。

よくある質問(FAQ)

60kgの重症患者に必要な蛋白量は?

重症敗血症・多発外傷では1.5g/kg=90g/日が目安です。9%アミノ酸輸液なら1,000mL/日、12%製剤なら750mL/日で達成できます。

9%アミノ酸輸液で90gの蛋白を投与するのに必要な量は?

9%=100mLあたり9gなので、1,000mLが必要です。標準アミノ酸輸液(アミパレン等)500mL×2本、または高カロリー輸液キット(エルネオパ等)で栄養バランスをとりつつ投与します。

透析患者の蛋白量は制限しますか、増やしますか?

透析患者は透析によるアミノ酸喪失があるため、1.2〜1.5g/kgと通常より増量します。透析なしのCKDでは0.6〜0.8g/kgに制限しますが、透析導入後は増量が原則です。

ICU入室初日から目標量の蛋白を投与すべきですか?

いいえ、急性期(Day1-3)は0.5〜1.0g/kgと控えめに始め、5〜7日目に目標量に到達させる漸増プロトコルが標準です。過剰負荷はリフィーディング症候群・肝機能障害を招きます。

NPC/N比とは何ですか?

非蛋白カロリー(糖質+脂質)と窒素(蛋白÷6.25)の比です。急性期は150〜200、慢性期は200〜300が推奨。この比を保つことで投与蛋白が蛋白合成に使われ、エネルギー源に消費されるのを防ぎます。

経腸栄養(EN)と静脈栄養(PN)、どちらを優先しますか?

腸管機能が保たれる限りENが第一選択です。ENで目標量の60%達成できない場合、5〜7日目からPN併用を検討します。長期PN単独は腸管萎縮を招きます。

肝性脳症合併時の蛋白量はどうしますか?

0.5〜0.8g/kgに制限し、BCAA(分岐鎖アミノ酸)強化型製剤(アミノレバン等)へ切替えます。通常アミノ酸製剤ではAAAが多く、脳症悪化のリスクがあります。

血清アルブミン値で栄養状態を判定できますか?

単独判定は困難です。アルブミンは炎症状態でも低下(急性相反応)するため、プレアルブミン・RBP・体重変化・上腕筋囲・SGA評価などを組み合わせて総合判定します。

ICU栄養投与チェックリスト(実務向け)

項目 確認ポイント 頻度
投与量整合性 目標蛋白量に対する実投与量、達成率60%以上か 毎日
BUN・Cr 急激な上昇なし、透析条件との整合 毎日
肝機能(AST/ALT・T-Bil) PN投与時の脂肪肝・胆汁うっ滞徴候 2〜3日毎
血糖・電解質 P・K・Mg低下(リフィーディング)警戒 毎日
プレアルブミン・RBP 栄養状態の短期トレンド評価 週1回
体重・浮腫 実体重変化と水分バランスの整合 毎日
ENレート 下痢・便秘・胃残量の観察 4〜6時間毎