計算ツール
IBW理想体重栄養医療薬剤

理想体重(IBW)計算ツール|Broca変法・Devine式・BMI22基準で臨床の基準体重を即算出

身長からBroca変法(日本標準)・Devine式(薬剤投与)・BMI22(WHO推奨)で理想体重(IBW: Ideal Body Weight)を瞬時算出。アミノグリコシド系抗生剤・抗がん剤の投与量計算、NST(栄養サポートチーム)評価、TPN(中心静脈栄養)・EN(経腸栄養)の必要栄養量算定、リハビリ目標体重設定に。日本肥満学会・WHO・薬物療法学会の指針に準拠した臨床実務家向けツールです。

最終更新:2026-07-30/監修:計算ツールズ編集部

理想体重(IBW)推定ツール

主要算出式と使い分け

3大算出式

Broca変法: (身長cm − 100) × 0.9

Devine式(男): 50 + 2.3 × (身長inch − 60) = 50 + 2.3 × (身長cm/2.54 − 60)

Devine式(女): 45.5 + 2.3 × (身長inch − 60)

BMI22基準: 22 × (身長m)²

各式の特徴と使い分け

算出式提唱者・年用途特徴
Broca変法ポール・ブローカ(フランス、19C)日本の栄養指導・生活指導簡便・日本で最普及。身長160cm以下でやや過大評価
Devine式Ben Devine(米、1974)薬剤投与量計算の国際標準アミノグリコシド系等の投与量計算に多用
BMI22基準松沢佑次ら(日本肥満学会、1993)健康診断・生活習慣指導疾病リスク最小のBMI22の身長に対応する体重
Robinson式Robinson(1983)薬剤投与(Devine代替)男:52+1.9×(inch-60)、女:49+1.7×(inch-60)
Miller式Miller(1983)薬剤投与(Devine代替)男:56.2+1.41×(inch-60)、女:53.1+1.36×(inch-60)
Hamwi式Hamwi(1964)糖尿病栄養指導男:48+2.7×(inch-60)、女:45.5+2.2×(inch-60)

同じ身長でも算出式で±5〜10%の差が出ます。日本の栄養指導・生活指導ではBroca変法または BMI22 基準、薬剤投与量計算では Devine 式(国際標準)が主流です。

身長別 理想体重早見表

身長Broca(共通)Devine男性Devine女性BMI22基準
150cm45.0kg50.6kg46.1kg49.5kg
155cm49.5kg55.1kg50.6kg52.9kg
160cm54.0kg59.7kg55.2kg56.3kg
165cm58.5kg64.2kg59.7kg59.9kg
170cm63.0kg68.7kg64.2kg63.6kg
175cm67.5kg73.3kg68.8kg67.4kg
180cm72.0kg77.8kg73.3kg71.3kg
185cm76.5kg82.3kg77.8kg75.3kg
190cm81.0kg86.9kg82.4kg79.4kg

Devine式は低身長で理想体重を高めに算出(肥満患者の薬剤投与量が過大になりにくい)、高身長ではBMI22基準よりやや高めになる特徴があります。臨床では複数式を並べて確認するのが安全です。

AdjBW(Adjusted Body Weight:調整体重)の計算

肥満患者(実体重>IBW×1.2)に対する薬剤投与量計算では、実体重をそのまま使うと過量投与、IBWだけを使うと過小投与のリスクがあります。両者の中間値であるAdjBW(調整体重)を用いるのが薬物療法学会の推奨です。

AdjBW = IBW + 0.4 × (実体重 − IBW)

係数0.4はアミノグリコシド系抗生剤・多くの水溶性薬剤で標準。脂溶性薬剤では0.3、一部の薬剤では0.5等、薬剤の分布容積により補正係数が変わります。

計算例:身長170cm男性・実体重100kg

IBW(Devine式)= 68.7kg / AdjBW = 68.7 + 0.4×(100−68.7) = 81.2kg を薬剤投与量計算に使用

臨床現場でのIBWの位置づけ

IBWは、痩せすぎ・肥満・薬剤投与量・栄養量など臨床現場で最も頻用される基準体重。単なる「理想の見た目」ではなく、疾病リスクが統計的に最小になる体重、または薬剤動態上安全な投与量計算の基準として用いられます。

肥満患者への薬剤投与

アミノグリコシド系抗生剤(ゲンタマイシン・アミカシン等)、テオフィリン、シスプラチン等の抗がん剤は、実体重で計算すると過量投与になり、腎障害・聴覚障害・骨髄抑制のリスクが高まります。IBW または AdjBW(調整体重)を用いた減量計算が薬物療法学会・日本病院薬剤師会のガイドラインで推奨されています。

栄養評価・NST(栄養サポートチーム)

入院患者の必要エネルギー量・タンパク質量算定は、IBWをベースに25〜30kcal/kg/日(維持期)、1.0〜1.5g/kg/日(タンパク質)を計算。TPN(中心静脈栄養)・EN(経腸栄養)の投与量設計でも、実体重ではなくIBWを使うのが原則です。

リハビリ・生活習慣指導

糖尿病・肥満症・メタボリックシンドロームの外来指導では、IBWを目標体重として提示し、生活習慣改善の目安に。BMI22基準または Broca変法が主流で、患者にも「(身長−100)×0.9」の簡便な公式で説明できます。

職種別 使い方

薬剤師(病棟・調剤)

肥満患者への抗生剤・抗がん剤の投与量調整でIBWまたはAdjBWを算出。処方鑑査時に、実体重ベースの過量オーダーを検出し、医師に修正提案。特にアミノグリコシド系・バンコマイシンの初期投与量計算で必須。

管理栄養士(病院・在宅)

入院患者・在宅療養者の必要エネルギー量・タンパク質量算定基準に。IBW×25〜30kcalが維持期、IBW×30〜35kcalが術後・侵襲時。TPN組成設計・経腸栄養剤選択の実務指標。

外来診療(内科・糖尿病内科)

糖尿病・肥満症・メタボ患者への生活指導で、IBWを目標体重として提示。年1〜2kgペースの減量計画を立て、HbA1c・血圧・脂質の並行改善をモニタリング。

リハビリ(PT・OT)

低栄養・サルコペニア患者のリハ栄養評価。IBWまでの体重増加を目標に、レジスタンストレーニングと栄養介入を組み合わせる「リハ栄養」実践の基準体重。

ICU・救急(集中治療)

人工呼吸器の一回換気量設定(IBW×6〜8mL/kg)、輸液量・昇圧剤投与量の基準体重にIBWを使用。ARDS患者の肺保護換気戦略はIBWベースが世界標準。

健診・産業保健

特定健診・企業健診での「あなたの標準体重」提示にBMI22基準を使用。メタボ判定・保健指導の基礎データとして必須。

特殊ケース(小児・高齢者・肥満・るいそう)

小児の理想体重

小児は成長発達過程にあるためIBW式は適用外。厚生労働省「乳幼児身体発育調査」および日本小児内分泌学会の成長曲線パーセンタイルで判定します。3、10、25、50、75、90、97パーセンタイルの成長曲線に対し、身長・体重をプロットして評価。

高齢者の理想体重

高齢者(65歳以上)はBMI21.5〜24.9が推奨(フレイル予防)。若年成人のBMI18.5〜24.9より上限・下限が上方修正されています。低栄養・サルコペニア・フレイル予防のため、Broca変法よりやや高めの体重維持が望ましいです(厚労省「日本人の食事摂取基準2025年版」。目標とするBMIの範囲は2020年版から変更なし)。

肥満患者(BMI30以上)

薬剤投与量計算では前述のAdjBW(調整体重)を使用。栄養指導では実現可能な減量目標(3〜10%減量/半年)から段階的にIBWに近づけ、極端な目標設定は避けます。

るいそう(BMI16未満)

拒食症・悪液質・慢性消耗性疾患ではIBWまでの体重増加を目標に、しかし急激な栄養補給はリフィーディング症候群のリスクがあるため、初期はIBWの75%程度から段階的に増量。

よくある間違い・注意点

  • 算出式を場面で使い分けない — 薬剤投与はDevine式(国際標準)、栄養評価はBMI22、外来指導はBroca変法、と用途で使い分けが必要。
  • 肥満患者に実体重で薬剤投与 — アミノグリコシド系等の水溶性薬剤で過量投与→腎障害・聴覚障害。AdjBWを用いた減量計算が必須。
  • IBWと実体重を混同 — IBWは基準値、実際の投与・栄養設計は疾患・浮腫・胸水・腹水の有無を加味。
  • 小児にIBW式を適用 — 小児は成長曲線パーセンタイル判定が原則。IBW式は成人用。
  • 高齢者に若年基準を適用 — 高齢者はBMI21.5〜24.9が推奨(フレイル予防)。若年基準の18.5〜24.9をそのまま使うと低栄養化するリスク。
  • 浮腫・腹水・胸水を無視して実体重使用 — 慢性心不全・肝硬変等では体液貯留分を差し引いた「ドライウェイト」で計算。
  • 妊婦にIBW適用 — 妊娠中は妊娠前IBWを基準に、妊娠期間別の推奨体重増加量(BMI別に7〜12kg増)を加算。

関連する規格・法令・指針

  • 日本肥満学会 肥満症診療ガイドライン ― BMI25以上肥満、BMI35以上高度肥満、BMI22標準体重の日本国内定義。
  • WHO Physical status: The use and interpretation of anthropometry ― BMI国際基準(18.5未満低体重、25以上過体重、30以上肥満)。
  • 厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2025年版) ― 高齢者BMI21.5〜24.9推奨、年齢階級別必要エネルギー・タンパク質量。
  • 日本病院薬剤師会 医薬品情報ガイドライン ― アミノグリコシド系・バンコマイシン等のTDM実務指針。IBW・AdjBWの使用推奨。
  • 日本静脈経腸栄養学会(JSPEN)ガイドライン ― 静脈栄養・経腸栄養の必要量算定基準、IBWベースの投与設計。
  • 日本小児内分泌学会 成長曲線 ― 小児の身長・体重評価にIBWでなく成長曲線パーセンタイル使用。
  • 日本集中治療医学会 ARDS診療ガイドライン ― 一回換気量IBW×6〜8mL/kgの肺保護換気推奨。

参考文献・公的資料

臨床判断は必ず公的一次資料および担当医・薬剤師・管理栄養士に相談してください。

※本ツールは臨床現場で頻用される公表算出式に基づく参考計算です。実際の薬剤投与量・栄養設計・目標体重設定は、患者の年齢・性別・疾患・体格・浮腫・妊娠等を総合評価し、医師・薬剤師・管理栄養士の判断に従ってください。特にアミノグリコシド系抗生剤・抗がん剤等の狭域治療薬では、TDM(治療薬物モニタリング)による血中濃度確認が必須です。

よくある質問(FAQ)

身長170cm男性のIBWは?

Broca変法で63kg、Devine式で68.7kg、BMI22基準で63.6kg。用途で使い分けます。日本の生活指導はBroca、薬剤投与はDevine、健診はBMI22が主流です。

算出式の使い分けは?

日本の生活・栄養指導はBroca変法または BMI22 基準、薬剤投与量計算はDevine式(国際標準)、健診・特定保健指導はBMI22 基準。臨床では複数式を並べて総合判断するのが安全です。

BMI25以上はどう扱う?

体重(kg)÷身長(m)²≥25 で肥満(日本肥満学会定義)。BMI30以上は高度肥満で、生活指導+薬物療法+外科的介入(肥満外科)も検討対象。WHO基準では25以上を過体重、30以上を肥満と定義しています。

高齢者のIBWの考え方は?

高齢者(65歳以上)はBMI21.5〜24.9が推奨(厚労省 食事摂取基準2025年版)。若年成人より上限・下限が上方修正されており、フレイル・サルコペニア予防のためやや高めの体重維持が望ましいです。

肥満患者への薬剤投与量計算は?

実体重>IBW×1.2 の肥満患者では、AdjBW(調整体重)= IBW + 0.4×(実体重−IBW) を用いて計算します。特にアミノグリコシド系抗生剤・シスプラチン等で必須。実体重投与は過量、IBW投与は過小のリスクがあります。

小児にIBW式は使える?

使えません。小児は成長曲線パーセンタイルで評価するのが原則。日本小児内分泌学会・日本小児保健協会の成長曲線に身長・体重をプロットし、3〜97パーセンタイルの範囲で判定します。

妊婦のIBWは?

妊娠前のIBWを基準に、妊娠期間別の推奨体重増加量を加算。BMI18.5未満は+9〜12kg、18.5〜25未満は+7〜12kg、25以上は+個別対応(日本産科婦人科学会指針)。

ARDS患者の一回換気量計算は?

肺保護換気戦略として一回換気量=IBW×6〜8mL/kg(低換気量換気)が世界標準。IBWは Devine 式で算出。実体重ベースだと肥満患者で過大換気になり、肺障害を悪化させます。

浮腫・腹水・胸水がある場合は?

実体重から体液貯留分(浮腫の程度で1〜10kg)を差し引いた「ドライウェイト」で計算。慢性心不全・肝硬変・ネフローゼ症候群等で必須の補正です。

NST(栄養サポートチーム)でのIBW活用は?

入院患者の必要エネルギー量算定にIBW×25〜30kcal/日(維持期)、IBW×30〜35kcal/日(術後・侵襲時)を使用。タンパク質はIBW×1.0〜1.5g/日。TPN組成・EN選択の基礎データです。

Broca式は日本人だと過大評価?

身長160cm以下でやや過大評価する傾向があります。低身長女性ではBMI22基準やDevine式のほうが実感に近い場合も。臨床では複数式を並べて総合判断するのが安全です。

スポーツ選手・筋肉質の人には?

体脂肪率20%以下の筋肉質な人はBMIが高くても健康リスクが低いため、IBWの一律適用は不適切。体組成計・DXA法・BIA法で除脂肪体重(LBM)を測定し、より正確な健康指標とすべきです。