モンテカルロ試行
変動の幅と試行回数から、投資結果の確率分布と下振れリスクを推定します。
モンテカルロ試行ツール
計算式と考え方
毎年の収益率が対数正規分布に従うと仮定し、期待収益率と標準偏差から乱数を生成して資産の推移を計算します。これを多数回繰り返し、得られた結果を並べ替えて分布を求めます。初期1,000万円に毎年60万円を追加し、期待収益率5%・標準偏差18%で20年運用する場合、中央値と平均には差が生じます。分布が右に裾を引く形になるため、平均は中央値を上回ります。下位5%と上位5%の値を見ることで、想定される幅が把握できます。元本を下回る確率と、目標額に到達する確率も同時に算出されます。
分布から読み取れること
| 中央値 | 半数がこの値を上回る。典型的な結果を示す |
|---|---|
| 平均 | 中央値より高く出る。少数の大きな結果に引き上げられる |
| 下位5% | 悪い方から5%の水準。最悪の想定として参照する |
| 元本割れ確率 | 投入した元本を下回る割合。期間が長いほど下がる傾向 |
モンテカルロ試行の詳しい解説
将来の資産額を予測する際、単一の期待収益率を用いた計算では、結果が1つの数値として示されます。しかし実際の運用では収益率が年ごとに変動するため、同じ前提でも結果は大きく散らばります。この散らばりを把握するための手法が、乱数を用いて多数の経路を計算し、その分布を見るという方法です。この手法で得られる重要な示唆は、平均と中央値が一致しないという点です。資産の増減は掛け算で積み重なるため、結果の分布は右に裾を引く形になります。少数の非常に良い結果が平均を引き上げる一方、半数はそれより低い値になります。したがって、期待収益率をそのまま複利で計算した値は、実際には半数以上のケースで達成されないことになります。この乖離は、期間が長く変動が大きいほど顕著になります。変動の影響は、単なる散らばりにとどまりません。同じ平均収益率でも、変動が大きいほど長期の到達点は低くなります。上昇と下落を繰り返すと、幾何平均が算術平均を下回るためです。この効果は、標準偏差の2乗の半分だけ実質的な成長率が下がるという形で表れます。変動を抑えることが、長期の成果を高めるという結論がここから導かれます。下位の分位点を見ることの意義は、悪い場合にどこまで下がりうるかを把握できる点にあります。平均や中央値だけを見ていると、期待どおりに進まなかった場合の備えができません。下位5%の水準が生活に支障をきたす額であれば、投資の配分を見直すか、その事態に備えた資金を別に確保する必要があります。この手法の限界も理解しておく必要があります。計算は前提とした収益率と変動幅に依存し、それが将来も当てはまるという保証はありません。また、収益率が独立に分布するという仮定は、実際の市場の性質を完全には反映していません。極端な下落が連続する、変動幅そのものが変化するといった現象は、単純なモデルでは捉えきれません。したがって、得られる数値は考え方を整理するための材料であり、精密な予測ではないという位置づけが適切です。
業界・現場での使い方
リスクの把握
想定される資産額の幅と下振れの水準を確認します。
目標の検証
目標額に到達する確率を推定します。
配分の検討
変動幅を変えた場合の分布の違いを比較します。
よくある間違い・注意点
- 期待収益率の複利計算を目標にする — 半数以上のケースでそれを下回ります。中央値で見るほうが実態に近づきます。
- 平均だけを見る — 分布が右に裾を引くため平均は中央値より高く出ます。下位の水準も確認してください。
- 結果を精密な予測とみなす — 前提が将来も当てはまる保証はありません。考え方を整理する材料として扱ってください。
関連する規格・法規
- 日本CFA
- 日本証券アナリスト協会
※本ツールは公的基準に基づく参考計算です。実際の設計・施工・法令適用は最新の告示・規格および所轄官庁の判断に従ってください。
よくある質問(FAQ)
なぜ平均と中央値が違うのですか?
資産の増減が掛け算で積み重なるため、分布が右に裾を引く形になるからです。
変動が大きいとどうなりますか?
散らばりが広がるだけでなく、長期の到達点そのものが下がります。
試行回数はどのくらい必要ですか?
数千回で分布の概形は安定します。分位点の精度を求めるならより多くが必要です。