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貸倒引当率

債務者区分別の残高と予想損失率から、銀行の所要引当金と貸倒引当率を試算します。

最終更新:2026-05-06/監修:計算ツールズ編集部

貸倒引当率ツール

計算式と考え方

債務者区分ごとに「残高 × 予想損失率」を求め、担保・保証で回収できる分を控除して合計します。既定値では貸出金5,000億円のうち正常先が90%の4,500億円で損失率0.15%の6.75億円、要注意先が8%の400億円で損失率4.0%の16億円です。残る2%の100億円が破綻懸念先以下で、損失率60%に対し担保・保証で60%がカバーされるため24億円となります。合計46.7億円で、貸倒引当率は約0.93%、業務純益300億円に対する与信費用の割合は約15.6%です。

債務者区分と引当の考え方

正常先業況が良好で財務内容にも問題がない先。過去の貸倒実績率をもとに0.1〜0.3%程度を一般貸倒引当金として計上します。
要注意先業況が低調または財務内容に問題がある先。貸出条件緩和債権を含み、損失率は数%台になります。
破綻懸念先経営破綻の状態にはないが、今後破綻に陥る可能性が大きい先。担保・保証控除後の残額に対して50〜70%を引き当てます。
実質破綻先・破綻先法的・形式的な破綻や事実上の破綻に至った先。担保・保証控除後の全額を引き当てるのが原則です。

貸倒引当率の詳しい解説

貸倒引当率が1%前後という水準は、日本の銀行が長期にわたる低金利と企業の財務改善を背景に、極めて低い信用コストで運営してきた結果です。金融危機直後には2%を超える時期があり、業務純益の大半が与信費用で消える局面もありました。引当率が1%動けば貸出金5,000億円の銀行で50億円の損益影響が出るため、業務純益300億円の銀行にとっては利益の6分の1に相当します。引当の水準を左右するのは、区分別の構成比と、破綻懸念先以下に対する担保・保証のカバー率です。同じ破綻懸念先100億円でも、不動産担保が十分にあれば引当は数億円で済み、無担保の事業性融資であれば60億円近くになります。実務で判断が分かれるのは、将来を見込んだ引当をどこまで織り込むかです。従来の貸倒実績率に基づく方法は、過去のデータを使うため景気の転換点で引当が遅れる弱点があります。これに対し、将来の経済シナリオを反映して見積もる方法が導入されつつあり、景気後退の兆しがあれば実績率が悪化する前から引当を積み増すことになります。ただし将来予測を織り込むほど見積もりの主観性が増し、期間比較の可能性が下がるという指摘もあります。見落とされやすいのは、業種と地域の集中度です。特定の業種への貸出が全体の3割を占めていれば、その業種が悪化したときに複数の債務者が同時に区分を落とすため、平均的な損失率では捉えられない損失が発生します。地方銀行では地域経済への依存が高く、主要産業の変調がそのまま資産の質に反映されます。条件変更を行った債権の扱いも論点で、返済猶予により当面の延滞は解消されても、実質的な返済能力が回復していなければ引当が必要になります。景気後退局面では区分の格下げと損失率の上昇が同時に起きるため、引当額は平常時の1.5倍から2倍に膨らむのが過去の経験則です。自己資本比率への影響、不良債権比率の開示、金融当局の検査で用いられる基準など、実務上の適用は個別の判断を伴うため、実際の会計処理は監査法人や当局の指針に沿って確認する必要があります。

業界・現場での使い方

信用コストの感応度分析

景気局面を切り替えて、引当額が業務純益に与える影響の幅を把握します。

融資ポートフォリオの評価

区分別の構成比を動かし、資産の質の変化が引当率にどう効くかを確認します。

貸出金利の水準検討

引当率を信用コスト率として捉え、金利に上乗せすべき水準の目安を求めます。

よくある間違い・注意点

  • 担保・保証の控除を考えずに引当額を見積もる — 破綻懸念先以下では担保・保証で回収可能な部分を控除した残額が引当の対象です。控除を忘れると引当額を過大に見積もります。
  • 平均的な損失率だけで判断する — 業種や地域に集中があると、悪化が同時に起きて平均を大きく上回る損失が出ます。集中度の確認が欠かせません。
  • 過去の実績率をそのまま将来に当てはめる — 実績率は景気の転換点で必ず遅れます。先行指標や将来シナリオを織り込まないと引当の積み増しが後手に回ります。

関連する規格・法規

  • 金融庁
  • 日本銀行

※本ツールは公的基準に基づく参考計算です。実際の設計・施工・法令適用は最新の告示・規格および所轄官庁の判断に従ってください。

よくある質問(FAQ)

貸倒引当率と不良債権比率はどう違いますか。

引当率は貸出金に対する引当金の割合、不良債権比率は開示基準に該当する債権の割合です。担保の状況によって両者の水準は連動しません。

引当金は費用として計上されますか。

繰入額は与信関係費用として損益計算書に計上されます。区分が改善して戻入となれば利益要因になります。

景気後退でどの程度増えますか。

過去の局面では区分の格下げと損失率の上昇が同時に起き、平常時の1.5〜2倍になりました。局面の設定を切り替えて幅を確認してください。