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レーザー切断板金加工

レーザー切断速度 計算機|出力×板厚×材質別に切断速度とタクトタイムを試算

ファイバーレーザー・CO2レーザーの出力(1〜20kW)・板厚(0.5〜25mm)・材質(軟鋼SS400/ステンレスSUS304/アルミA5052/銅C1100/真鍮C2800)の組み合わせから、切断速度(mm/min)・切断長からのタクトタイム・実効速度(穴あけ・コーナー減速考慮)・アシストガス消費量(酸素/窒素)・材料適合性の判定まで、板金加工の生産計画に必要な項目を一括試算します。ファイバーレーザーはCO2の3倍以上の電気効率で主流化しており、6kW機なら軟鋼12mmを900〜1,200mm/minで切断可能。ネスティングソフトと連携した加工時間見積、原価計算、生産設備投資の判断材料に。JIS B 6803(プラズマ切断)・ISO 9013(熱切断品質)に沿った品質等級の目安も併記します。

最終更新:2026-07-29/監修:計算ツールズ編集部

レーザー切断速度 計算ツール

ファイバーは1〜20kW、CO2は2〜6kWが実用範囲。
薄板1〜3mmが最適域、6mm超は速度低下が急速。
1部品の外周長×取り数の合計。ネスティング図から取得。

レーザー切断の基本原理

レーザー切断は、高出力のレーザービームを集光して材料表面に照射し、瞬間的な溶融・蒸発とアシストガスによる吹き飛ばしで金属を切断する加工方式です。プラズマ切断・ガス切断と比べて、切断幅(カーフ)が0.1〜0.5mmと極端に狭く、熱影響部(HAZ)も0.1〜0.3mmと小さいため、高精度・高品質・薄板の複雑形状切断に強みがあります。板金加工業では最も普及した切断手法で、レーザー加工機の国内保有台数は約3.5万台と推定されます。

切断速度は「レーザー出力に比例、板厚の逆数程度」が基本則。3kW機で軟鋼3mmを4,500mm/min(分速4.5m)、6mmで2,100mm/min、12mmで900mm/minが標準的な速度域。板厚が2倍になると速度は概ね1/2〜1/2.5に低下します。ファイバーレーザーはCO2の3倍の電気効率(30% vs 10%)で、ランニングコストと反射材料(アルミ・銅)への対応で圧倒的優位に立ちます。

ファイバーレーザー vs CO2レーザー

板金加工用レーザー切断機の主流は2015年頃から急速にファイバーへ移行しました。CO2レーザーには依然として厚板・面精度で優位性がありますが、薄中板の生産性・エネルギー効率・保守性でファイバーが圧勝しています。

項目ファイバーレーザーCO2レーザー
波長1.06 μm10.6 μm
電気効率30-35%10-12%
ランニングコスト1/3100%
薄板速度(3mm軟鋼)10070-80
厚板速度(16mm軟鋼)80100
アルミ・銅対応△(反射)
光ファイバー伝送×(ミラー光路)
ミラー・レンズ保守ほぼ不要頻繁
本体寿命10万時間2-3万時間
初期投資(6kW機)4-6千万円3-5千万円

2024年時点で新設される板金加工工場のレーザー切断機はほぼ100%ファイバー。CO2は既設機の更新でファイバー化されるか、厚板専用(20mm超)で細々と残る形になっています。

材質×板厚別 切断速度早見表

3kWファイバーレーザーによる各材質・板厚の切断速度目安(mm/min)です。実速度は機械メーカー・アシストガス純度・レンズ焦点距離で変動します。

板厚軟鋼(O2)SUS(N2)アルミ(N2)銅(N2)
0.5mm15,00018,00012,0004,000
1mm9,00010,0007,5002,500
2mm6,0005,5004,5001,500
3mm4,5003,5003,000900
6mm2,1001,2001,500450
9mm1,400700900
12mm900400550
16mm600
19mm450

ステンレスは軟鋼より速度が20〜30%低下、銅は反射率が高く電気効率の関係で軟鋼の1/4〜1/5、アルミは軟鋼の70〜80%が目安。厚板領域(12mm超)はSUS・アルミ・銅は対応困難で、プラズマ切断や機械加工に切り替えるのが実務判断です。

アシストガス(酸素・窒素・空気)

レーザー切断はビームだけでは金属を切り離せず、アシストガスで溶融金属を吹き飛ばすことで切断が完了します。ガス種選定は材質と品質要求で決まります。

酸素(O2)切断

軟鋼・炭素鋼専用。ガス自体が燃焼反応(酸化反応)でエネルギーを発生し、レーザー出力の1.5〜2倍の熱量で切断できるため、厚板の高速切断に有利。ただし酸化スケール(黒錆)が切断面に残り、めっき・塗装前の再加工が必要になるケースあり。ガス純度99.6%以上、圧力0.5〜1.5MPaが標準。

窒素(N2)切断

ステンレス・アルミ・銅・真鍮の必須ガス。無酸化雰囲気で溶融金属を吹き飛ばすため、切断面がクリーン(銀色)で、めっき・塗装の下地処理不要。ガス純度99.99%以上、圧力1.5〜2.5MPaが必要で、消費量が多くランニングコストが高い(O2の3〜5倍)。液体窒素の大型タンク供給が実用的。

空気(Air)切断

低コストのプレス業向け新興技術。コンプレッサー空気を高圧化して使用。軟鋼薄板(1〜3mm)でN2並みの速度が出るとされ、ランニングコストを大幅に削減できるとして注目。ただし切断面は酸化雰囲気で軽微な変色があり、高品質用途には不向き。

ガス消費量の目安

材質・板厚ガス種消費量(L/m)ガスコスト(円/m)
軟鋼3mmO2303
軟鋼9mmO2505
SUS3mmN230045
SUS9mmN250075
アルミ3mmN228042

切断品質と ISO 9013 等級

レーザー切断の品質は国際規格 ISO 9013(熱切断品質等級)と JIS B 6803(プラズマ切断分類)で分類されます。切断面の直角度・粗さ・ドロス(バリ)で4等級に分けられます。

等級直角度粗さRz用途
範囲1(最高)±0.1mm10μm精密機器・電子部品筐体
範囲2±0.2mm30μmOA機器・建築金物
範囲3±0.4mm70μm建設機械・輸送機
範囲4±0.8mm140μm橋梁・大型構造物

薄板1〜3mmのファイバーレーザー切断は範囲1〜2を安定して実現できます。厚板12mm超やドロスの多い酸素切断でも範囲3までは達成可能。範囲4以上の粗さが必要な場合は追加のバリ取り・仕上げ加工が必須です。

タクトタイムと生産性計画

生産計画で重要なのは実効タクトタイムで、これは連続切断速度に加えて以下の要素を織り込む必要があります。

タクトタイム構成要素

  • ピアシング(穴あけ)時間:切断開始点で0.1〜3秒(板厚に比例)。1部品あたり穴数×ピアシング時間を加算
  • コーナー減速:直角コーナー・小R部で速度を50〜70%に減速。品質保持と焼付き防止のため
  • 加減速:高速機は加速度2G前後で、直線部でも短辺は連続速度に達しない場合あり
  • ヘッド移動(早送り):切断間の空移動、通常8,000〜15,000mm/min
  • ネスティング効率:材料歩留りと同時に、共通線切断でヘッド移動距離を短縮

1時間当たり切断長の目安

3kWファイバー・軟鋼3mmで連続速度4,500mm/minでも、実効速度は70〜80%(3,150〜3,600mm/min)、1時間当たりの切断長は190〜215mが実務値。ネスティング効率、板換え時間、日常メンテを含めた純稼働率60〜75%で、1日8時間稼働なら実切断時間5〜6時間、切断長約1,000mが典型的な生産量です。

加工コストの目安

設備償却・電気・ガス・人件費を含めた総加工コストは、3kW機で時間3,000〜5,000円、6kW機で4,000〜7,000円が業界目安。切断長1mあたりの加工単価に換算すると、軟鋼3mmで15〜25円/m、SUS3mmで20〜35円/m(N2ガス代含む)程度です。

ネスティング効率と歩留り

材料歩留り(板材の実利用率)は60〜85%が実務レンジ。CADネスティングソフトで自動配置すると単純部品でも歩留り75%前後、複雑形状でも65%前後を確保できます。歩留りが5%改善すると年間材料費が数百万円変わるため、ネスティング最適化は原価改善の要点。共通線切断(隣接部品の切断線を共有)でヘッド移動距離を短縮すればタクトも改善します。

省エネと環境負荷

ファイバーレーザーは電気効率30〜35%とCO2の3倍。6kW機の消費電力は約18kWで、1時間当たり電気代400円前後(産業用電力27円/kWh想定)。CO2機だと同出力で60〜80kW消費し、電気代1,600円超と大差。CO2削減とカーボンニュートラル対応の観点でも、ファイバー化は必須の設備投資です。

こんな時に使えます

加工時間見積の作成

顧客見積書の作成時、ネスティング図の切断長から加工時間を算出。原価計算・納期回答の基礎データに。

設備投資の意思決定

3kW→6kW機、あるいはCO2→ファイバー機への更新投資判断。切断速度差×稼働時間で投資回収期間を試算。

受注可否の判断

厚板・特殊材質の見積依頼に対して、自社機の対応可否を即判定。加工不可な案件は外注手配や辞退の判断に。

ネスティング最適化

切断速度と板厚の関係を理解して、多数取りネスティング・共通線切断・部品配置最適化の方針決定に活用。

アシストガスの原価管理

N2/O2消費量から月間ガスコストを試算。エアカット導入・液体窒素タンク更新の判断材料。

切断品質グレードの選定

用途に応じた ISO 9013 品質等級の目標設定。過剰品質を避けて生産性を確保する仕様策定に活用。

省エネ・カーボンニュートラル対応

CO2機からファイバー機への更新でCO2削減量を試算。ESG開示・SBT目標達成の技術根拠として活用。

技能者・工場長の教育資料

板厚・材質・出力の関係を体系的に理解するための教材。新人オペレータ研修・技能検定対策に。

よくある間違い・注意点

  • 連続速度と実効速度を混同 — カタログ速度は連続直線切断時の理論値。ピアシング時間・コーナー減速・ヘッド移動を含めた実効速度は連続速度の60〜80%に低下。
  • ファイバーとCO2の速度差を認識しない — 薄板3mm以下ではファイバーが20〜30%速く、電気効率3倍。CO2からの更新遅れは競争力低下に直結します。
  • 材質別ガス選定ミス — SUS・アルミ・銅を酸素切断すると切断面が黒ずみ・ドロス発生で不良多発。無酸化雰囲気の窒素切断が必須です。
  • 厚板無理切断で品質劣化 — 3kW機で軟鋼16mm以上、SUS9mm以上を切断すると、ドロス・切断面の凹凸で ISO 9013 範囲4未満の不良品に。出力に見合った板厚範囲で運用。
  • ガス純度を無視 — 窒素は99.99%以上が必須。工業用純度99.5%だと切断面に酸化ムラ発生。液体窒素タンク直供給が実務標準。
  • レンズ焦点距離の選択ミス — 薄板は短焦点(5インチ)、厚板は長焦点(7.5〜10インチ)が最適。焦点距離ミスで速度が30〜50%低下するケース。
  • ピアシング時間を軽視 — 板厚9mm以上ではピアシング1回3〜5秒。多穴部品では切断時間の30〜50%がピアシングに費やされる。連続切断とヘッド移動最小化のネスティングが重要。
  • 反射材料のヘッド損傷 — アルミ・銅・真鍮は反射率が高く、ファイバー機でもヘッド焼損リスクあり。反射防止機能付きヘッド・専用モードでの運用が必須。
  • 集塵・排煙対策の不足 — 亜鉛メッキ鋼板・SUSの切断で発生するヒュームは有害。局所排気装置・スクラバーの適切な運用が労働安全衛生規則の要件。
  • 切断品質グレードと用途のミスマッチ — 建設用の橋梁部品に範囲1(超精密)を目標にすると生産性が半減、逆に精密機器で範囲3を許容すると組立不良発生。用途に見合った品質グレードで運用。
  • ネスティング歩留りを軽視 — 材料費は加工原価の30〜50%を占めるため、歩留り60% vs 80%で年間数百万円のコスト差。CADネスティングソフトの活用と共通線切断で歩留り最適化を。
  • 省エネ効率を経営指標に含めない — CO2機とファイバー機で電気代が3〜4倍差。CO2削減目標・カーボンニュートラル対応の観点でもファイバー化は経営指標。

参考文献・公的資料

レーザー切断・熱切断品質の詳細は、以下の公的機関・業界団体の資料をご確認ください。

※本ページの切断速度は各種公開技術資料・メーカーカタログを基にした一般的な目安値です。実際の切断速度は機械メーカー・機種・レンズ焦点距離・アシストガス純度・材料表面状態・熱伝導特性で大きく変動します。生産計画・加工原価の算定に用いる場合は必ずお使いのレーザー加工機のマニュアル・技術サポート、または日本溶接協会・レーザ加工学会等の技術専門機関にご確認ください。

よくある質問(FAQ)

3kW・3mm鋼の切断速度は?

ファイバーレーザーの軟鋼3mm・酸素切断で約4,500mm/min(分速4.5m)。実効速度は連続速度の70〜80%、実時間3,500mm/min前後が生産計画上の基準値です。

ファイバーとCO2どちらを選ぶ?

2024年時点はファイバーレーザーが圧倒的主流。電気効率3倍、ランニングコスト1/3、アルミ・銅対応可、光ファイバー伝送で保守簡便。新設は原則ファイバー、CO2は既設機のみ。

アルミ・銅は切断できる?

ファイバーレーザーで対応可(CO2は反射率高く困難)。窒素アシストガス必須、反射防止機能付きヘッドで運用。銅は速度が軟鋼の1/4〜1/5と大幅に遅くなります。

切断できる最大板厚は?

3kWファイバーで軟鋼16mm、6kW機で25mm、12kW機で40mm程度まで可能。ただし厚板は速度が急激に低下し、SUS・アルミ・銅は薄中板に限定されます。

酸素と窒素の使い分けは?

軟鋼・炭素鋼は酸素(燃焼反応で高速切断可、切断面は酸化黒色)、SUS・アルミ・銅・真鍮は窒素(無酸化・銀色クリーン面)が必須。空気切断は軟鋼薄板向けの新興技術。

1時間の生産量は?

3kW機・軟鋼3mm連続切断で190〜215m/hが実効値。ネスティング効率・板換え時間を含めた1日8時間稼働で実切断時間5〜6時間、切断長約1,000mが典型的な生産量です。

ピアシング時間は?

板厚1mm 0.1秒、3mm 0.3秒、9mm 2〜3秒、16mm 5〜7秒が目安。多穴部品では総切断時間の30〜50%をピアシングが占めるケースあり、ネスティング設計での注意点。

切断品質は?

ISO 9013 の範囲1〜4で分類。ファイバー3mm以下なら範囲1(超精密・粗さRz10μm・直角度±0.1mm)を安定達成。用途に応じた品質グレードで生産性最適化を。

加工原価はいくら?

3kW機で時間3,000〜5,000円、6kW機で4,000〜7,000円が業界目安。1mあたりでは軟鋼3mmで15〜25円、SUS3mmで20〜35円(N2ガス代含む)。労務単価とは別の設備コスト。

設備投資額は?

6kWファイバー機で本体4,000〜6,000万円、周辺(自動搬送・集塵・冷却)込みで5,000〜8,000万円。3kW機なら本体2,500〜4,000万円が2024年時点の相場です。

集塵・排煙対策は?

亜鉛メッキ鋼板・SUS切断で発生するヒューム(金属酸化物微粒子)は有害。局所排気装置・スクラバーの設置が労働安全衛生規則の要件。特定粉じん作業に該当し健康診断も義務。

プラズマやガス切断との違いは?

レーザーは薄中板の精密切断(〜16mm)に最適、プラズマは中厚板(〜50mm)の高速切断、ガス切断は厚板・大型構造(〜200mm)向け。用途で使い分け、多くの工場は複数併用しています。

ネスティング効率はどれくらい?

材料歩留りは60〜85%が実務レンジ。CADネスティングソフトの自動配置で単純部品なら75%前後、複雑形状でも65%を確保できます。歩留り5%改善で年間材料費が数百万円変わる重要ポイント。

電気代はいくら?

6kWファイバー機で稼働時消費電力18kW前後、電気代400円/時(産業用27円/kWh想定)。同出力のCO2機は60〜80kW消費で電気代1,600円超と大差。省エネ性能もファイバー選定の理由。