排水管サイズ選定 計算ツール|DFU集計・SHASE-S 206 準拠、通気管設計対応
器具排水負荷単位(DFU)を集計し、空気調和・衛生工学会規格 SHASE-S 206準拠で排水横引管・立て管の管径を即座に選定します。戸建・共同住宅・オフィス・工場排水設計、勾配設計・通気管設計、下水道法・建築基準法・浄化槽法の適用範囲まで対応した現場実務向けツール。
排水管サイズ選定(器具排水負荷単位DFU)ツール
計算式とDFUの考え方
基本式
総DFU = Σ(器具排水負荷単位)
管径 = SHASE-S 206 別表(横引管/立て管 各許容DFU)より選定
DFU (Drainage Fixture Units、器具排水負荷単位) は、給水のWSFUと同様に「同時使用による排水流量ピーク」を確率的に集計するための指標です。個別器具の瞬間流量を単純に合計するのではなく、同時発生確率を織り込んだ設計流量に換算します。
横引管と立て管で異なる許容DFU
同じ100Aの管でも、横引管の許容DFU=42、立て管の許容DFU=240と5倍以上の差があります。これは、立て管が重力落下で高速流下できるのに対し、横引管は勾配依存で流下速度が低いためです。したがって系統ごとに横引きか立てかを判定して管径を決定する必要があります。
SHASE-S 206とは
空気調和・衛生工学会が策定する「給排水衛生設備規準」。日本国内の給排水衛生設備の事実上の標準規格で、設備設計事務所・ゼネコン・水道業者が実務で参照する基幹規格です。建築基準法・下水道法の技術基準として引用される場面も多く、給排水設備の設計監理では必須。
主要器具のDFU一覧(SHASE-S 206準拠)
| 器具 | DFU | 最小トラップ口径 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 洋式便所(タンク式) | 4 | 75mm | 戸建・住宅の主流 |
| 洋式便所(フラッシュバルブ式) | 6〜8 | 75mm | ホテル・オフィスの大流量型 |
| 和式便所 | 4 | 75mm | — |
| 小便器(壁掛) | 4 | 40mm | — |
| 浴槽 | 3 | 50mm | — |
| シャワー | 2 | 50mm | — |
| 台所流し | 2 | 40mm | ディスポーザーあり=+1 |
| 洗面器 | 1 | 32mm | — |
| 洗濯機(排水口) | 2 | 40mm | ドラム式は3で計算する場合も |
| ビデ | 1 | 32mm | — |
| 掃除流し | 2 | 50mm | — |
| 床排水(浴室) | 2 | 50mm | — |
| 床排水(トイレ・洗濯機周り) | 1 | 40mm | — |
| 冷水機 | 0.5 | 25mm | — |
| 実験流し(化学薬品) | 2〜4 | 50mm | 耐薬品管必要 |
横引管の許容DFU早見(SHASE-S 206)
勾配1/50〜1/100の横引管における管径別の許容DFUです。管径が大きくなるほど許容DFUは指数的に増えますが、勾配・満水率・粗度による実効値は個別検討が必要です。
| 管径 | 許容DFU(勾配1/100) | 許容DFU(勾配1/50) | 用途 |
|---|---|---|---|
| 40A | 1〜2 | 2〜3 | 単独洗面器・冷水機 |
| 50A | 3〜4 | 4〜6 | 浴槽・台所流し系 |
| 65A | 5〜7 | 7〜10 | 洗濯機・ミキシング系 |
| 75A | 8〜14 | 14〜20 | 戸建1階分 |
| 100A | 15〜42 | 28〜72 | 戸建全体・小規模事業 |
| 125A | 43〜160 | 73〜280 | 共同住宅・オフィス |
| 150A | 161〜380 | 281〜720 | 大規模施設 |
| 200A | 381〜1400 | 721〜2500 | 幹線 |
立て管の許容DFU早見(SHASE-S 206)
| 管径 | 1系統(1階分) | 複数系統(全高) | 用途 |
|---|---|---|---|
| 50A | 4 | 8 | 単独系統 |
| 65A | 10 | 24 | — |
| 75A | 24 | 60 | 戸建立て管 |
| 100A | 42 | 240 | 共同住宅立て管 |
| 125A | 160 | 540 | 大規模立て管 |
| 150A | 380 | 1100 | — |
| 200A | 1400 | 3600 | 超高層立て管 |
立て管はジャンプ流(高速流下)が特徴で、横引管の3〜6倍のDFUを許容します。ただしジャンプ流に伴う正圧・負圧変動が大きいため、通気管との組合わせ設計が必須です。
勾配設計の実務
横引管は勾配で流下します。SHASE-S 206では管径別に最小勾配が規定されています。
| 管径 | 標準勾配 | 最小勾配 | 実例 |
|---|---|---|---|
| 65A以下 | 1/50 | 1/50 | 細管・浴室 |
| 75A | 1/100 | 1/100 | 戸建1階分 |
| 100A | 1/100 | 1/100 | 戸建全体 |
| 125A | 1/150 | 1/150 | 共同住宅 |
| 150A以上 | 1/200 | 1/200 | 大規模 |
勾配不足は詰まり・臭気逆流の主因。勾配設計は水勾配・臭気勾配の両方を確保する必要があります。50m以上長い横引きには中間桝を設置し、点検・清掃口を確保するのが実務標準です。
通気管設計と破封防止
排水設計は管径選定と通気管設計がセットです。通気なしで排水を流すと、トラップ封水が破封(サイホン現象・跳ね出し・毛細管現象)し、下水ガスが室内に逆流します。
通気方式の種類
器具通気
各器具のトラップ下流に個別の通気管を接続する方式。最も確実な破封防止だが配管量が増える。
ループ通気
複数器具の通気を1本のループ管で束ねる方式。共同住宅・オフィスの主流。SHASE-S 206に詳細規定。
伸頂通気
排水立て管の頂部を屋上まで延長し、大気開放。最もシンプル。戸建の主流だがジャンプ流には別途対策必要。
特殊継手(セクストル・ソベント等)
専用の合流部形状で通気管を省略できる特殊継手方式。高層マンション設計で採用増。
破封の主要原因
- サイホン破封: 器具排水の急激な流下で下流が負圧になり、封水を吸い出す
- 跳ね出し: 立て管上流の正圧で、封水を押し上げて溢れさせる
- 蒸発破封: 長期不使用でトラップの水が蒸発。夏場は1〜2週間で乾く
- 毛細管破封: 髪の毛等がトラップに掛かり、封水を毛細管で吸い出す
- 自己サイホン: 洗面器で満水→急排水の際にトラップが自己吸引
建物タイプ別の設計事例
典型的な建物タイプごとの排水設計例を示します。
戸建住宅(4LDK・2階建て)
- 1階トイレ・キッチン・洗濯機・洗面: 総DFU≒12→75A横引管
- 2階トイレ・浴室・洗面: 総DFU≒9→75A横引管
- 立て管: 総DFU≒21→75〜100A
- 宅内排水本管: 100A(自治体規定に準拠)
共同住宅(3LDK×10戸・5階建て)
- 各住戸内: 総DFU≒12→75A横引管
- 立て管: 総DFU≒120→100A立て管、通気管付き
- 1階の共用排水: 125A(店舗合流の場合はさらに大)
- 特殊継手(セクストル・ソベント)採用で通気省略可能
オフィスビル(1フロア50人・10階)
- 各フロアトイレ(フラッシュバルブ便器4基): DFU=24→100A横引管
- 立て管: 総DFU≒240→125A立て管
- ループ通気管必須(150A立て管には75A通気管)
- 厨房排水系統は別ライン、グリストラップ経由
飲食店(30坪ラーメン店)
- 厨房排水: 高負荷DFU=15→100A横引管
- グリストラップ入口・出口とも100A
- 客席トイレ: DFU=8→75A横引管
- 油脂濃度高いため月次清掃契約が保健所指導
排水管の材質選定
SHASE-S 206では管径だけでなく材質選定も設計要素です。用途・耐薬品性・耐火性・防音性で使い分けます。
| 材質 | 用途 | 耐薬品 | 耐火 | 防音 | コスト |
|---|---|---|---|---|---|
| 硬質塩ビ排水管 VP | 戸建・住宅一般 | △ | × | △ | 低 |
| 硬質塩ビ排水管 VU | 住宅・小規模 | △ | × | △ | 最安 |
| 耐火二層管(FDP) | マンション・防火区画 | △ | ◎ | ○ | 中 |
| 鋳鉄管(CIP) | マンション立て管・防音重視 | ○ | ◎ | ◎ | 高 |
| ステンレス管(SUS304/316) | 厨房・食品工場・実験室 | ◎ | ◎ | △ | 最高 |
| PP管(ポリプロピレン) | 薬品排水・耐熱用途 | ◎ | △ | △ | 中 |
| SGP鋼管(白管・黒管) | 雨水・小規模工場 | × | ○ | △ | 中 |
| 特殊静音塩ビ管 | マンション立て管・防音重視 | △ | × | ◎ | 中 |
業界・現場での使い方
新築住宅・リフォームの排水設計
設備設計事務所・工務店・水道業者が図面段階でDFU集計→管径確定。マンション改修では既存管径の余裕度診断にも使用。給水WSFU計算と併行実施が原則。
浄化槽・下水接続工事
浄化槽設置業者・下水道工事事業者が接続管サイズを確認。合併処理浄化槽5〜10人槽での接続基準。浄化槽法・下水道法に基づく届出時の設計根拠。
建築確認申請の設備計画
建築確認申請の「排水設備計画届出書」に管径根拠として添付。建築士・設備施工管理技士の実務。
共同住宅の立て管更新工事
築30〜50年マンションの排水立て管更新工事(バルコニー・PS内)でDFU再計算。専有面積増や用途変更時は必ず実施。
飲食店・厨房排水設計
グリストラップ(油脂分離槽)前後の管径選定。DFU=4〜8の高負荷が多く、100〜125Aが定番。保健所届出時の計算根拠。
ホテル・オフィスビル設計
フラッシュバルブ便器(DFU=6〜8)を大量使用するため、住宅より大幅に管径アップ。125A〜200Aの立て管が標準。
よくある間違い・注意点
- 給水管サイズと同じサイズにする — 排水は瞬間流量が大きく、給水WSFUと排水DFUは全く別の考え方。給水20Aと同管径の排水20Aを施工すると即詰まり不能。便器周りは特に給水より1〜2サイズ大きく取ります。
- 勾配を確保せず横引きを長くする — 勾配1/100未満だと詰まる。50m以上長い横引きは中間桝の設置が必要。100Aで長さ10mなら100mm下がる計算です。
- 通気管を省略 — トラップ破封→下水臭逆流。SHASE-S 206の通気設計は必ず組み合わせる。共同住宅のリフォームで通気を省略した結果、下階トイレから臭気が上がるトラブルが頻発。
- 横引管と立て管を同じ許容DFU表で判定 — 5倍以上の差があるため、系統ごとの判定必須。横引管100AでDFU=200を接続すると詰まり不可避。
- ディスポーザー付台所流しを通常DFUで計算 — ディスポーザーは油脂・食渣の負荷が大きく、DFUを+1〜+2で加算するのが実務。マンションディスポーザー導入時は通常の1.5倍で設計するケースも。
- フラッシュバルブ便器を通常便器で計算 — フラッシュバルブは瞬間流量約100L/min(タンク式の3〜5倍)。DFUを6〜8で計算しないと排水詰まり必至。ホテル・オフィスでは絶対要チェック。
- 浴室洗い場と浴槽を1系統で束ねる際の見落とし — 浴槽DFU=3+シャワーDFU=2+洗面DFU=1で合計6となり、50Aでは能力不足。65A以上が必要です。
- 雨水管との合流(合流式)と分流式の混同 — 都市部下水道は合流式・分流式が地域で異なり、雨水と汚水の合流可否は自治体条例で規定。管径選定前に自治体下水道課に確認必須。
関連する規格・法規
- SHASE-S 206 ― 空気調和・衛生工学会規格「給排水衛生設備規準」。日本の給排水衛生設備設計の事実上の標準。DFU値・許容値・勾配・通気設計の詳細規定。
- 建築基準法(建築設備関係) ― 給排水設備の技術基準を規定(施行令129条の2の4他)。建築確認申請時に設備計画の適合性審査。
- 下水道法・下水道法施行令 ― 公共下水道への接続基準、排水設備工事責任技術者制度、雨水・汚水の分流/合流方式。
- 浄化槽法 ― 浄化槽の設置・管理基準、人槽算定、放流水質基準。合併処理浄化槽の設置届出時の技術基準。
- 建設業法 ― 給排水設備工事は「管工事」業種、または「水道施設工事」業種に該当。建設業許可要件。
- 水道法 ― 給水装置の技術基準。給水は排水設計と対で計画される。
- JIS G 3452(SGP)・JIS G 3454(STPG) ― 配管用炭素鋼鋼管、圧力配管用炭素鋼鋼管のJIS規格。
- JIS K 6741(硬質塩ビ排水管) ― VP・VU管の規格。住宅の排水管の主流材質。
- 水質汚濁防止法・工場排水規制 ― 特定工場・特定施設からの排水基準。実験流し・工場排水は特殊管材必要。
参考文献・公的資料
- 空気調和・衛生工学会(SHASE) ― SHASE-S規格の発行元。給排水設備の実務者向け講習会・技術指針の一次情報源。
- 国土交通省 下水道 ― 下水道法・排水設備工事・接続基準の公式情報。
- 環境省 浄化槽 ― 浄化槽法・人槽算定・放流水質基準の公式情報。
- 日本建築構造技術者協会(JSCA) ― 建築設備を含む構造・設備設計の技術指針。
- 日本産業標準調査会(JISC) ― JIS配管・継手・弁類の公式索引。JIS G 3452・K 6741等の検索。
- 国土交通省 建築基準法・建築設備 ― 建築設備の技術基準・確認申請の公式解説。
- 日本下水道管路管理業協会 ― 排水管の維持管理・清掃・更生工事の技術情報。
- 日本建築家協会(JIA) ― 建築設備設計の実務ガイドライン。
- 日本水道協会(JWWA) ― 給水装置(排水設計とセット)の技術基準。
- 環境省 排水規制 ― 水質汚濁防止法・工場排水規制の公式情報。
よくある質問(FAQ)
DFUとは何ですか?
Drainage Fixture Units の略で、器具ごとに標準化された排水負荷単位。便器4・浴槽3・洗面1などSHASE-S 206で規定。単純合計ではなく同時使用確率を織り込んだ設計指標です。
横引管と立て管で許容DFUが違うのは?
重力落下する立て管は排水能力が高く、横引管は勾配依存のため能力が低い。同じ100Aでも横引42/立て240と5倍以上差があります。立て管はジャンプ流(高速流下)で大流量を捌けるため。
排水勾配1/100の意味は?
水平10mで100mm下がる勾配。100Aでは1/100が標準、細管ほど急勾配(1/50)が必要。50m長い横引きなら500mm(50cm)下がる計算です。天井裏で確保困難な場合は中間桝・ポンプアップも検討。
通気管の役割は?
排水時のトラップ破封防止(サイホン破封防止)、下水ガス逆流防止。ループ通気・伸頂通気で気圧を均等化。通気なしで排水すると1〜2階のトイレから下水臭が逆流するトラブルが頻発します。
マンションの立て管更新時の注意点は?
既存管径・位置に合わせるのが原則。DFU変わらないなら同径、専有面積増や用途変更時は再計算。共用部PS(パイプスペース)内の立て管更新は住民合意形成と工事期間の水断ち計画が最大の実務課題です。
フラッシュバルブ便器のDFUは?
DFU=6〜8(タンク式は4)。瞬間流量約100L/minでタンク式の3〜5倍。ホテル・オフィスビル・学校・駅トイレで標準採用。設計時は必ずタンク式と区別して集計しないと排水詰まり必至です。
ディスポーザー付き台所流しのDFUは?
通常のDFU=2に加えて+1〜+2で加算するのが実務。マンションディスポーザー導入時は排水管径を通常の1.5倍で設計するケースも。マンション管理組合の許可・専用処理槽設置が前提です。
排水管の材質は何を選ぶ?
住宅は硬質塩ビ排水管(VP・VU)が主流。中高層マンションは耐火二層管(遮音・耐火性能付き)。工場・実験室はステンレス・耐薬品管。防音重視は鋳鉄管や新型静音塩ビ管も採用されます。
浄化槽の排水設計での注意点は?
浄化槽への流入管はDFU集計に加えて人槽(浄化槽サイズ)を環境省告示で決定。合併処理浄化槽5〜10人槽は住宅、20人槽以上は事業所・小規模ビル。浄化槽法に基づく届出必須。
雨水と汚水は合流できる?
都市部下水道は合流式・分流式が地域で異なります。分流式地域(近年整備)は雨水管と汚水管を分けて敷設、合流式地域(古い都市部)は合流可能。自治体下水道条例で規定されているため、設計前に必ず確認しましょう。
グリストラップの後の管径は?
グリストラップ(油脂分離槽)は飲食店厨房・食品工場の排水で必須。グリストラップ入口・出口とも100〜125Aが定番。DFU=4〜8の高負荷+油脂固着で詰まりやすく、月次清掃と管径選定に余裕を持たせるのが実務。
共同住宅の排水設備工事責任技術者資格は必要?
公共下水道への接続工事は「排水設備工事責任技術者」有資格者による施工が原則。都道府県・政令市の下水道法・条例で規定。マンションの共用配管更新工事もこの資格が求められます。