計算ツール
Ca電解質医療Payne式CKD-MBD

補正カルシウム(Payne式) 計算ツール|血清Ca・アルブミン値から真の遊離Ca濃度を推定

Payne式(1973)により、血清総カルシウム値とアルブミン値から補正カルシウム値(Corrected Ca)を即算出。低アルブミン血症時の見かけ上のCa低下を補正し、真の生理活性(遊離)Ca濃度を推定します。慢性腎不全(CKD)・肝硬変・ネフローゼ症候群・栄養失調・重症患者の電解質管理で必須。KDIGO CKD-MBDガイドライン・日本臨床化学会 電解質検査基準・日本腎臓学会CKDガイドに基づき、判定基準・原因疾患・症状・治療方針まで解説します。

最終更新:2026-08-08/監修:計算ツールズ編集部

【医療従事者向けの参考ツール】 本ページは医師・看護師・臨床検査技師・薬剤師などの医療従事者が電解質評価の補助として使用することを想定しています。診断・治療方針の決定は医師の責任のもと、患者個別の状態(pH・pAlb・タンパク組成)を踏まえて行い、正確な生理活性Ca評価にはイオン化カルシウム(iCa)の直接測定を優先してください。

補正カルシウム(Payne式) 計算機

計算式(Payne式・James式)

Payne式(1973年、標準式)

補正Ca(mg/dL) = 測定Ca(mg/dL) + 0.8 × (4.0 - 血清アルブミン(g/dL))

英国のPayneらが1973年に発表した式で、世界的に最も広く使用されています。アルブミンが1g/dL低下するごとにCaは見かけ上0.8mg/dL低下するという補正を行います。基準となるアルブミン値は日本では4.0g/dL、米国では4.4g/dLが使われることがあり、施設によって式が微妙に異なります。

Payne式(米国4.4g/dL基準)

補正Ca(mg/dL) = 測定Ca(mg/dL) + 0.8 × (4.4 - 血清アルブミン(g/dL))

米国CLSI基準ではアルブミン基準を4.4g/dLとする施設が多く、この場合Payne原法より0.32mg/dL高く補正されます。

James式(重症患者・ICU向け)

補正Ca(mg/dL) = 測定Ca(mg/dL) + 0.02 × (34 - 血清アルブミン(g/L))

James式(2008年)は重症患者(ICU入院)におけるPayne式の精度低下を改善する試みで、係数を軽くしています。ただし重症患者ではpH・タンパク組成が大きく変動するため、真の生理活性Caの評価にはイオン化カルシウム(iCa)の直接測定が最も確実です。

SI単位換算

1 mg/dL(Ca) = 0.2495 mmol/L ⇔ 1 mmol/L = 4.008 mg/dL

国際単位系(SI)ではmmol/Lが正式単位。海外文献・KDIGOガイドラインはmmol/Lを使用するため、日本のmg/dL値との換算に注意してください。

なぜCa補正が必要か

血清カルシウムは体内で3つの分画に存在し、生理活性を持つのはイオン化Ca(遊離Ca)のみです。

分画割合生理活性備考
イオン化Ca(遊離Ca)約45-50%あり神経・筋・凝固に関与、真の指標
タンパク結合Ca(主にアルブミン結合)約40-45%なしアルブミン濃度に依存
錯体形成Ca(重炭酸・クエン酸等と結合)約5-10%なし陰イオンとの複合体

通常の検査では総Caを測定しますが、低アルブミン血症時にはタンパク結合Ca分画が減少するため、総Caが低く出るのに遊離Caは正常という現象が起こります。この見かけの低Ca血症を誤って低Ca血症と診断し、Ca製剤を投与すると高Ca血症(遊離Ca過剰)を引き起こす危険があります。Payne式による補正はこの誤診断を防ぐための実務的な標準手法です。

逆に高アルブミン血症(脱水・多発性骨髄腫)では総Caが高く出るため、真の遊離Caは正常でも高Ca血症と誤判定するリスクがあります。

血清Caの基準値・判定

日本臨床化学会・日本臨床検査医学会の基準に準拠した判定表です。

補正Ca(mg/dL)SI単位(mmol/L)判定臨床的意義
< 6.0< 1.50重度低Ca血症テタニー・痙攣・喉頭痙攣、緊急Ca投与
6.0-7.51.50-1.87中等度低Ca血症神経症状発現、要治療
7.5-8.51.87-2.12軽度低Ca血症無症状のことも、経過観察〜内服治療
8.5-10.52.12-2.62正常
10.5-12.02.62-3.00軽度高Ca血症無症状のことも、原因検索
12.0-14.03.00-3.50中等度高Ca血症多尿・便秘・意識障害、要治療
> 14.0> 3.50重度高Ca血症(Ca crisis)不整脈・昏睡、緊急治療

各施設・検査法により基準値は多少異なります(概ね8.4-10.4mg/dL、8.6-10.2mg/dL等)。施設内基準値を優先してください。

イオン化Ca(iCa)との関係

Payne式による補正Caは「近似値」であり、pH変動・タンパク組成異常・重症患者ではイオン化Ca(iCa)の直接測定が推奨されます。iCaは血液ガス分析装置で測定可能で、生理活性Caの真の値を反映します。

iCa基準値

  • 成人: 1.15-1.35 mmol/L(4.6-5.4 mg/dL相当)
  • 新生児: 1.20-1.45 mmol/L

pHとiCaの関係

pHが0.1上昇すると、iCaは約0.05mmol/L低下(タンパク結合が増加)

アルカローシス(過換気・嘔吐)ではiCaが低下し、テタニー・痙攣が出現しやすくなります。逆にアシドーシス(腎不全・呼吸不全)ではiCaが上昇。pH補正込みの詳細計算はより正確なiCa評価に有用です。

iCa測定が推奨される状況

  • 重症患者・ICU入院患者
  • 大量輸血後(クエン酸によるCaキレート)
  • 体外循環中(心臓外科術中)
  • 肝移植・急性肝不全
  • 多発性骨髄腫(異常タンパク影響)
  • 複合的な酸塩基平衡異常

単位換算(mg/dL⇔mmol/L)

カルシウムの原子量は40.08。1mmol/L = 40.08mg/L = 4.008mg/dLの関係にあります。

mg/dLmmol/L判定
6.01.50重度低Ca
7.01.75中等度低Ca
8.02.00軽度低Ca
8.52.12正常下限
9.02.25正常
9.52.37正常
10.02.50正常
10.52.62正常上限
11.02.75軽度高Ca
12.03.00中等度高Ca
14.03.50重度高Ca

低Ca血症の原因と症状

主な原因

分類原因疾患・状態
PTH低下副甲状腺機能低下症、術後(甲状腺全摘後)、DiGeorge症候群
ビタミンD低下ビタミンD欠乏症、慢性腎不全、日光不足、脂肪吸収不全
Mg代謝異常低Mg血症(PTH分泌抑制)、アルコール依存、利尿薬長期
薬剤性ビスホスホネート、デノスマブ、シスプラチン、シナカルセト
沈着・キレート急性膵炎(石鹸化)、大量輸血(クエン酸)、腫瘍崩壊症候群
アルブミン低下肝硬変、ネフローゼ、栄養失調(補正で正常なら偽性)

症状

  • 神経筋: テタニー、口周囲/指先のしびれ、筋痙攣、喉頭痙攣
  • Chvostek徴候: 耳前顔面神経叩打で顔面筋収縮
  • Trousseau徴候: 血圧計加圧で助産師手位
  • 心血管: QT延長、不整脈、心不全
  • 中枢神経: 痙攣、意識障害、認知機能低下
  • その他: 白内障、皮膚乾燥、爪変形

高Ca血症の原因と症状

主な原因

分類原因疾患・状態
悪性腫瘍骨転移(乳癌・肺癌・多発性骨髄腫)、PTHrP産生腫瘍(HHM)
PTH亢進原発性/三次性副甲状腺機能亢進症
ビタミンD過剰ビタミンD中毒、サルコイドーシス、結核
薬剤性ビタミンD/A、サイアザイド、リチウム、テオフィリン
不動長期臥床、脊髄損傷、Paget病
その他milk-alkali症候群、家族性低Ca尿性高Ca血症(FHH)

症状 (Stones, Bones, Groans, Psychiatric overtones)

  • 腎: 多尿、口渇、尿路結石(Stones)、腎機能低下
  • 骨: 骨痛、病的骨折(Bones)
  • 消化器: 便秘、悪心嘔吐、腹痛(Groans)、消化性潰瘍
  • 中枢神経: 抑うつ、認知機能低下、意識障害(Psychiatric overtones)
  • 心血管: QT短縮、不整脈、高血圧
  • Ca crisis(>14mg/dL): 昏睡、心停止のリスク

CKD患者のCa管理(CKD-MBD)

慢性腎不全患者ではリン蓄積・活性型ビタミンD低下・二次性副甲状腺機能亢進によるCa/P代謝異常(CKD-MBD: Chronic Kidney Disease - Mineral and Bone Disorder)が進行し、血管石灰化・骨病変・心血管イベントのリスクが高まります。

KDIGO 2017ガイドライン推奨値

指標CKDステージG3-G5透析患者(G5D)
補正Ca基準範囲内(8.4-10.5mg/dL)基準範囲内、上限より低めが望ましい
リン(P)基準範囲内(2.5-4.5mg/dL)基準範囲内(3.5-6.0mg/dL、日本透析医学会)
intact PTH症例により判断60-240 pg/mL(日本透析医学会)
25-OH ビタミンD欠乏症なら補充欠乏症なら補充

日本透析医学会「慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン」ではより厳密な管理目標値が定められています。血管石灰化を予防するため、Ca×P積は55(mg/dL)² 以下が目標。過剰なCa含有P吸着剤の使用は血管石灰化を促進するため注意が必要です。

診療科別の応用

内科・総合診療

電解質異常の一次評価。血清Caと同時にアルブミンを測定し、補正Caで真の状態を判定。原因検索(PTH・ビタミンD・Mg・P・尿中Ca排泄)に進みます。

腎臓内科・透析医療

CKD-MBD管理の中核。補正Ca・P・intact PTHの3点をセットで管理し、Ca含有/非含有P吸着剤、シナカルセト、活性型ビタミンD製剤の使い分けを判断します。

救急・集中治療(ICU)

意識障害・不整脈・痙攣の原因検索に必須。大量輸血後・急性膵炎・敗血症では低Ca、悪性腫瘍・脱水では高Caが生じやすく、Payne式補正で見落としを防ぎます。

内分泌代謝内科

副甲状腺機能亢進/低下症、ビタミンD代謝異常、多発性骨髄腫の診断・治療評価。骨密度検査・骨代謝マーカー・PTHrPと組み合わせて総合判断します。

整形外科・骨代謝

骨粗鬆症治療(ビスホスホネート・デノスマブ・テリパラチド)開始前後の低Ca血症モニタリング。特にデノスマブは低Ca血症リスクが高く、投与前補正Caの確認が必須です。

外科・術後管理

甲状腺全摘後・副甲状腺切除後の低Ca血症モニタリング。術後24-72時間で低Ca血症が出現するため、補正Caで経過観察し、Ca製剤/活性型ビタミンD補充を判断します。

よくある間違い・注意点

  • 補正なしで低Ca血症と誤診断 — 肝硬変・ネフローゼ症候群・栄養失調でアルブミンが2g/dL台の患者では、総Ca 7.5mg/dLでも補正Caは9.5mg/dLと正常範囲。Ca製剤投与で高Ca血症を招きます。
  • 4g/dLと4.4g/dLの基準混同 — Payne原法は英国の平均アルブミン基準4.0g/dL。米国では4.4g/dLを使う施設もあり、施設内基準値との整合を確認してください。日本では通常4.0g/dL基準です。
  • アルブミン以外のタンパク(グロブリン)を考慮しない — 多発性骨髄腫ではアルブミン低下+モノクローナルタンパク増加により、Payne式では真のiCaと乖離します。iCa直接測定が推奨されます。
  • pH影響の無視 — アルカローシス(過換気)ではiCaが低下しテタニーが出現しますが、総Ca・補正Caは正常。pH変動が大きい患者ではiCa測定が優先です。
  • 重症患者にPayne式を過信 — ICU患者・敗血症・大量輸血後ではPayne式の精度が低下することが報告されています。真のiCa評価には血液ガスでの直接測定が確実です。
  • 単位換算ミス — mg/dL → mmol/L は×0.2495、mmol/L → mg/dL は×4.008。海外文献・KDIGOはmmol/L表記なので換算注意。
  • 採血時の駆血帯長時間圧迫 — 駆血1分以上でアルブミンが濃縮し測定値が変化。採血手技のばらつきが補正値に影響します。

関連するガイドライン・法規

  • KDIGO CKD-MBD ガイドライン(2017) ― 慢性腎不全患者のCa/P/PTH管理国際基準。日本透析医学会も準拠。
  • 日本透析医学会「慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン」 ― 日本の透析患者Ca/P管理基準。国内血液透析施設のスタンダード。
  • 日本腎臓学会「CKD診療ガイド」 ― CKDステージ別のCa管理目標値・治療方針。
  • 日本臨床化学会 電解質検査基準 ― 血清Ca・アルブミンの測定法標準化・基準値決定手順。
  • 日本骨代謝学会 骨粗鬆症診療ガイドライン ― 骨粗鬆症治療薬使用時のCa管理指針。
  • 日本内分泌学会 副甲状腺機能異常症診療ガイドライン ― 原発性/二次性/三次性副甲状腺機能亢進症の診断基準。
  • CLSI (Clinical and Laboratory Standards Institute) ― 米国の臨床検査標準機関。血清Ca測定の国際基準。
  • 医療法・臨床検査技師法 ― 臨床検査データの精度管理義務・報告基準。
  • 健康保険法・診療報酬点数表 ― 血清Ca・アルブミン・iCaの保険算定基準。

参考文献・公的資料

詳細な診療基準・最新エビデンスは以下の公的機関・学会資料を参照してください。

【重要な医療上の免責】 本ツールの計算結果はPayne式による近似値であり、臨床判断・治療方針を決定するものではありません。重症患者・肝硬変・多発性骨髄腫・pH異常・大量輸血後などではPayne式の精度が低下するため、真の生理活性Ca評価には血液ガス分析装置でのイオン化カルシウム(iCa)直接測定を優先してください。診断・治療・薬剤選択は患者個別の状態を踏まえ、医師の責任のもとで行い、KDIGO・日本透析医学会・日本腎臓学会等の最新ガイドラインおよび各医療機関のプロトコルに従ってください。一般の方は本ツールで自己判断せず、健診異常があれば医療機関を受診してください。

よくある質問(FAQ)

Ca 8.5・Alb 3.0の補正Caは?

Payne式(4g/dL基準)で8.5 + 0.8 × (4.0 - 3.0) = 9.3 mg/dLと算出され、基準範囲(8.5-10.5)内で正常と判定されます。総Ca 8.5では低Ca傾向に見えても、アルブミン低下による見かけ現象と分かります。

低Ca血症の症状は?

神経筋症状(テタニー、口周囲/指先のしびれ、筋痙攣、喉頭痙攣)、Chvostek徴候・Trousseau徴候、QT延長、不整脈、痙攣、意識障害など。慢性の場合は白内障・皮膚乾燥・爪変形も出現します。

高Ca血症の症状は?

「Stones, Bones, Groans, Psychiatric overtones」で覚えます。腎結石・多尿・口渇、骨痛・病的骨折、便秘・悪心・腹痛、抑うつ・認知機能低下・意識障害。Ca > 14mg/dLはCa crisisで昏睡・心停止のリスク。

Payne式の限界は?

重症患者・多発性骨髄腫・肝硬変・大量輸血後・pH変動大の症例では精度が低下します。イオン化カルシウム(iCa)の直接測定(血液ガス分析装置)が推奨されます。

アルブミン基準値は4g/dLと4.4g/dLどちらが正しい?

Payne原法(1973年、英国)は4.0g/dL基準。米国では4.4g/dLを使う施設もあります。日本では通常4.0g/dL基準を採用。施設内基準値を優先してください。

イオン化Ca(iCa)の基準値は?

成人で1.15-1.35 mmol/L(4.6-5.4 mg/dL相当)。新生児は1.20-1.45 mmol/L。血液ガス分析装置で測定可能で、生理活性Caの真の値を反映します。

pHとカルシウムの関係は?

pHが0.1上昇するとiCaは約0.05mmol/L低下(タンパク結合が増加)。アルカローシス(過換気・嘔吐)ではiCa低下でテタニー・痙攣が出やすくなります。アシドーシス(腎不全)ではiCa上昇。

単位換算(mg/dL⇔mmol/L)は?

1 mg/dL = 0.2495 mmol/L1 mmol/L = 4.008 mg/dL。日本はmg/dL、海外文献・KDIGOはmmol/L表記が多いため換算に注意してください。

CKD患者のCa目標値は?

KDIGO 2017ガイドラインでは、CKDステージG3-G5・透析患者ともに補正Caは基準範囲内(8.4-10.5mg/dL)を目標。透析患者では上限より低めが望ましく、Ca×P積は55(mg/dL)²以下が血管石灰化予防の目安です。

低Ca血症の緊急治療は?

重度(<6mg/dLまたは症状あり)ではグルコン酸カルシウム(カルチコール)の静注。10%グルコン酸Ca 10mL(1A)を5-10分で緩徐静注、その後持続点滴で経過管理。Mg欠乏の合併があれば同時補正が必須。

高Ca血症の治療は?

①生理食塩水大量輸液(200-300mL/h)②ループ利尿薬(尿中Ca排泄促進)③ビスホスホネート(ゾレドロン酸)④カルシトニン⑤原疾患治療(悪性腫瘍・PTH亢進)。Ca crisis(>14mg/dL)は透析も選択肢。

骨粗鬆症治療前のCa確認が必要な理由は?

ビスホスホネート・デノスマブは低Ca血症を悪化させるため、投与前に補正Ca・25-OH ビタミンDを確認し、必要に応じCa製剤・活性型ビタミンD補充を先行します。特にデノスマブは重度低Ca血症のリスクがあり、腎機能低下例では注意が必要です。