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除細動エネルギー(ジュール数)計算|成人200J・小児2-4J/kg・二相性/単相性の使い分けと早期除細動の救命率

体重・対象年齢・波形(二相性/単相性)・回数から、心室細動(VF)・無脈性心室頻拍(pVT)患者に対する除細動エネルギーを即算出。JRC 蘇生ガイドライン2020・AHA ACLSガイドラインに基づき、成人・小児・乳児それぞれの推奨エネルギー、パッド位置、CPR併用、薬剤タイミング、早期除細動と救命率の関係までを、救急救命士・循環器医・AED設置事業者・BLS/ACLSインストラクターの現場実務に沿って解説します。

最終更新:2026-07-29/監修:計算ツールズ編集部

除細動エネルギー計算機

計算式と考え方

基本方針

成人二相性:初回 120〜200J(機種指定に従う) / 単相性:360J 固定

小児(1歳〜思春期):初回 2J/kg → 2回目 4J/kg → 以降 4〜10J/kg(上限は成人量)

乳児(1歳未満):手動式で 2〜4J/kg。AEDは小児用パッド・エネルギー減衰器を優先

除細動器は心室細動(VF)または無脈性心室頻拍(pVT)に対して電気的に心筋を脱分極させ、洞結節主導の正常リズムに戻す装置です。ジュール(J)は「電流×電圧×時間」で表される仕事量で、機種は充電したコンデンサから放電します。

初回と2回目以降の考え方

JRC 蘇生ガイドライン2020は、二相性の初回エネルギーを機種の推奨(概ね120〜200J)とし、無効であれば2回目以降を同量または増量(最大値まで)する方針を示しています。単相性は初回から360Jを用います。小児は初回2J/kg、2回目4J/kgと段階的に増量します。

1分遅れると10%救命率が低下

心停止後の生存率は1分遅れる毎に7〜10%低下すると報告されており、目撃VF+市民AED+救急要請のチェーンが生存率を大きく規定します。厚生労働省・消防庁のウツタイン統計でもバイスタンダーAED実施群の1か月生存率は有意に高いことが示されています。

二相性と単相性の違い

1990年代までは単相性(monophasic)が主流でしたが、2000年代以降のAED・除細動器は二相性(biphasic)が世界標準です。以下に主な違いを整理します。

項目二相性 (Biphasic)単相性 (Monophasic)
初回エネルギー120〜200J(機種指定)360J
除細動成功率初回で高い(80%超)初回50〜60%程度
心筋障害低い相対的に高い
電流量患者インピーダンスで自動調整固定波形
装置サイズ小型・軽量大型
現在の位置づけAED・院内除細動器の標準ほぼ製造中止

二相性はプラス→マイナスに電流方向が反転する波形で、患者胸部のインピーダンスに応じて自動的に電流を最適化するインピーダンス補正(補正型指数関数波形)を採用しています。同じジュール数なら二相性の方が有効電流が多く、より低いエネルギーで除細動に成功します。

成人 推奨エネルギー(JRC 2020/AHA ACLS 2020)

回数二相性単相性備考
初回120〜200J(機種指定)360J機種のマニュアル記載値を優先
2回目初回と同量または増量360J200J機種は200Jを継続
3回目以降200J(または機種最大値)360Jアミオダロン投与を検討
難治性VF最大値+抗不整脈薬最大値+抗不整脈薬2回目除細動後にエピネフリン投与

成人の場合、AEDは自動的にエネルギー選択を行うため、術者は「ショック指示」に従って通電ボタンを押すだけで構いません。院内の手動除細動器では、機種のダイヤルで手動選択します。

小児・乳児 体重別エネルギー

1歳〜思春期の小児では2〜4J/kgが基本。体重による初回・2回目の推奨値を以下に示します。乳児(1歳未満)は手動式除細動器で2〜4J/kgを用い、成人用AEDしかない場合は迷わず使用することが推奨されます(何もしないよりは良い)。

体重初回(2J/kg)2回目(4J/kg)3回目以降上限
5kg(乳児)10J20J25〜50J
10kg20J40J50〜100J
15kg30J60J60〜150J
20kg40J80J80〜200J
30kg60J120J120〜200J(成人量まで)
40kg以上成人量に準じる成人量に準じる成人量

小児用AEDパッド(または小児モード切替)は概ね体重25kg未満または6歳未満で使用します。パッドが体格に合わない場合は、成人用パッドを胸部前面・背面(前後配置)で貼付します。

パッド位置と使用禁忌

標準:前側方配置(Antero-lateral)

右鎖骨下と左側胸部(左乳頭下・中腋窩線)。AEDパッドの表示通りに貼付。ほとんどの成人・小児で第一選択。

前後配置(Antero-posterior)

胸骨中央前面と背中(左肩甲骨下)。小児・乳児、ペースメーカー装着者、女性の乳房が大きい場合、心房細動の同期除細動などで使用。

使用禁忌・注意

水濡れ胸部(拭き取ってから貼付)、貼付薬(ニトログリセリン等は剥がす)、金属アクセサリー(外す)、ペースメーカー/ICD直上(5cm以上離す)、胸毛過多(剃毛または追加パッド)。妊婦・小児にも使用可。

禁忌ではない状況

妊婦、小児、金属床の上、雨天屋外、湿った衣類などはいずれも禁忌ではありません。心停止患者に対しては躊躇せず除細動を試みることが救命率向上の鍵です。

CPRと除細動タイミング

除細動単独で救命できるのは目撃直後のVFに限られ、多くの症例では質の高いCPR+早期除細動の組み合わせが必須です。JRC/AHAのアルゴリズムは以下を推奨しています。

  • ショック前後のCPR中断は10秒以内:胸骨圧迫の中断はROSC率を低下させます。
  • ショック後は直ちに胸骨圧迫再開:リズム確認は2分後(5サイクル後)に行う。
  • 2回目のショック後にエピネフリン0.5〜1mg静注:以後3〜5分毎に反復。
  • 3回目のショック後にアミオダロン300mg静注:難治性VF/pVTに対する第一選択の抗不整脈薬。
  • 可逆的原因(4H4T)の検索:低酸素・低体温・低カリウム/高カリウム、心タンポナーデ・緊張性気胸・血栓症・毒物。

質の高いCPRの6要素

ROSC(自己心拍再開)率とその後の神経学的予後を決定するのは、「胸骨圧迫の質」です。JRC/AHAは以下の6要素を「質の高いCPR」の定義としています。

  • 速さ:100〜120回/分のリズミカルな胸骨圧迫。
  • 深さ:成人5〜6cm、小児は胸厚の1/3を目安に。
  • 完全な胸壁の戻り(recoil)を許すこと。押しっぱなしにしない。
  • 中断を最小限(10秒以内)にすること。
  • 過換気を避ける。人工呼吸は1秒/回、胸が上がる程度。
  • 2分毎に交代して疲労による質低下を防ぐ。

CPRフィードバック機器の活用

近年のAED・除細動器には胸骨圧迫フィードバック機能が搭載されており、深さ・速さ・戻りをリアルタイムに表示・音声指導します。ZOLL Real CPR Help、Philips Q-CPR、日本光電のcprMETER等が代表例で、講習・現場ともにROSC率向上に寄与するとの報告があります。

救命の連鎖(Chain of Survival)

心停止傷病者の救命率を最大化するため、AHA/JRCが提唱する「救命の連鎖」は以下の5要素で構成されます。院外心停止では最初の3要素をバイスタンダーが担うことが多く、救急要請から医療機関到着までの時間短縮が生存率を決めます。

  1. 心停止の早期認識と119番通報 — 意識・呼吸・脈拍の確認、応援要請、AED手配。
  2. 早期のCPR — 質の高い胸骨圧迫を絶え間なく継続。
  3. 早期の除細動 — VF/pVTなら3〜5分以内の除細動が生存率70%超に寄与。
  4. 効果的な二次救命処置(ACLS) — 気道確保・血管路確保・薬剤投与・原因検索。
  5. 集中治療と心停止後症候群への対応 — 目標体温管理療法(TTM)、循環管理、神経学的予後評価。

業界・現場での使い方

救急救命士・救急隊

特定行為としての心肺蘇生法の一環で除細動を実施。半自動除細動器(SAED)の使用手順、CPR継続、アドレナリン投与、病院搬送との連携。

循環器内科・CCU

電気的除細動(カルディオバージョン)による心房細動・心室頻拍治療。同期モードで50〜200J、鎮静下で施行。

AED設置事業者・オフィス管理

公共施設・駅・オフィス・学校・スポーツ施設に設置。バッテリー・電極パッドの使用期限管理、点検表の記録、市民AED講習の実施。

BLS/ACLSインストラクター

医療者・市民向け講習で使用手順を指導。マネキンを使ったシミュレーション、CPRフィードバック機器の活用。

ICU・手術室

院内心停止対応。手動除細動器で同期モード/非同期モードを使い分け、鎮静・気管挿管との併用管理。

公共施設・学校保健

養護教諭・警備員・スポーツ指導者への年1回のCPR/AED研修。設置位置(6分以内到達)、掲示、市民権(善きサマリア人法的保護)の周知。

よくある間違い・注意点

  • AEDに任せきりでCPR中断が長い — パッド貼付・解析・充電中は胸骨圧迫を継続。ショック直前のみ手を離し、直後に再開。中断10秒以内が目標。
  • 小児に成人用パッドを胸腹に重ねて貼る — 体格が小さい場合は胸背(前後)配置にする。何もしないより成人用でも使う方が良い。
  • ペースメーカー直上にパッドを貼る — 5cm以上離す。デバイス破損と除細動効果低下の両リスク。
  • 波形と機種の設定を確認せず適当なJで打つ — 二相性機種で360Jを設定できないケースあり。機種毎の初期設定に従うのが原則。
  • 「除細動禁忌」と誤解する状況で回避 — 妊婦・小児・水濡れ・金属床いずれも禁忌ではない。VF/pVTに対しては躊躇せず実施。
  • 心静止(Asystole)や無脈性電気活動(PEA)にAEDを試みる — この2波形はショック非適応。CPR+エピネフリン+可逆的原因検索が優先。
  • 貼付薬(ニトロパッチ等)の上にAEDパッドを貼る — 薬剤が沸騰し電気的火傷を起こす。剥がして胸部を拭いてから貼付。

関連する規格・ガイドライン

  • JRC 蘇生ガイドライン2020 ― 日本蘇生協議会。日本国内の一次救命処置・二次救命処置の公式基準。二相性・単相性別の推奨エネルギー、小児量、CPR/薬剤タイミングを規定。
  • AHA ACLS Guidelines 2020 ― 米国心臓協会のAdvanced Cardiovascular Life Supportガイドライン。世界的なACLSの標準テキスト。
  • ILCOR CoSTR 2020/2023 ― International Liaison Committee on Resuscitation。5年毎の国際的なエビデンスコンセンサス。
  • ERC Guidelines 2021 ― European Resuscitation Council。欧州の蘇生ガイドライン。
  • 厚生労働省 AED適正配置ガイドライン ― 日本国内のAED設置場所・保守管理・使用推奨に関する行政指針。
  • 薬事法(医薬品医療機器等法) ― AEDは高度管理医療機器(クラスIII)。販売・貸与・保守に業許可が必要。
  • IEC 60601-2-4 ― 除細動器の安全性と基本性能に関するIEC(国際電気標準会議)規格。

参考文献・公的資料

除細動エネルギーの推奨値・アルゴリズムは概ね5年毎に改訂されます。実施の際は必ず最新版のガイドラインを参照してください。

※本ツールの計算値は公表ガイドラインに基づく参考値です。実際の救命処置は目の前の患者の状態と機種のマニュアル記載値を最優先し、有資格者(医師・救急救命士等)の判断で実施してください。市民救助者はAEDの音声指示に従うことが安全です。心停止に対する応急手当は「善きサマリア人法」的な観点で法的保護の対象となる一方、通報・救急要請を怠らないことも重要です。

よくある質問(FAQ)

成人の除細動、初回のエネルギーは何ジュール?

二相性除細動器なら120〜200J(機種指定)、単相性なら360Jが国際標準です。AEDは機種があらかじめ最適値を設定しているため、術者は音声指示に従うだけで構いません。院内の手動除細動器では機種マニュアルの推奨値を確認します。

2回目以降のショックは増やすべき?

初回で除細動できなかった場合、二相性では同量または増量(機種最大値まで)、単相性では360J固定を継続します。3回目のショック後にはアミオダロン300mg静注、以後1分毎に胸骨圧迫を再開しつつリズムを確認します。

小児は何J/kgが適切?

1歳〜思春期の小児は初回2J/kg、2回目4J/kg、以降4〜10J/kg(上限は成人量)です。乳児(1歳未満)は手動式で2〜4J/kg、AEDしかなければ成人用でも使用します。

妊婦にAEDを使ってもいい?

使えます。妊婦への除細動は禁忌ではありません。母体の生存が胎児救命の前提であり、通常のパッド位置・エネルギーで実施します。CPRは子宮左方転位(子宮を左に押しやる)を併用します。

ペースメーカー装着者にAEDを使える?

使えます。ただしパッドをペースメーカー/ICD直上を避け、5cm以上離して貼付します。デバイスの誤作動や破損リスクを下げ、除細動効果を確保するためです。

水に濡れている場合はどうする?

胸部の水を拭き取ってからパッドを貼付します。水濡れ自体は禁忌ではありませんが、電流が広範囲に分散して効果が下がり、術者の感電リスクも上がるため、乾いたタオルで胸を拭くのが必須です。金属床の上も禁忌ではありません。

AEDが「ショック不要」と言った場合は?

心静止(Asystole)や無脈性電気活動(PEA)などのショック非適応波形です。直ちに胸骨圧迫を再開し、質の高いCPRとエピネフリン投与、可逆的原因(4H4T)の検索を継続します。2分後に再解析して波形の変化を確認します。

二相性と単相性、なぜ二相性が主流?

二相性は電流方向が反転する波形で、患者の胸部インピーダンスに応じて自動的に電流を最適化できます。より低エネルギーで高い成功率(初回80%超)を実現し、心筋障害も少ないため、2000年代以降のAED・除細動器は世界的に二相性が標準です。単相性は事実上製造終了しています。

市民救助者がAEDを使って訴訟される?

日本の判例上、善意でAEDを使用した市民救助者は実質的に免責と考えられており、消防庁・厚労省ガイドラインも積極的な使用を推奨しています。躊躇せず、119番通報・胸骨圧迫・AED装着を一気に行うことが救命率を高めます。

AEDバッテリー・パッドの使用期限は?

機種にもよりますが、バッテリーは2〜5年、電極パッドは2年程度です。設置施設は月次点検で有効期限とインジケーターを確認し、期限切れ品は速やかに交換します。厚労省ガイドラインで管理者責任が定められています。

心房細動へのカルディオバージョンとの違いは?

カルディオバージョン(電気的除細動)はQRS波と同期させて50〜200Jで通電し、心房細動・心房粗動・心室頻拍(脈あり)を洞調律に戻す処置です。VF/pVTへの除細動は非同期(即時通電)であり、意識確認・鎮静の要否・タイミングが異なります。

早期除細動で救命率はどう変わる?

目撃VF心停止では、1分毎に生存率が7〜10%低下します。3分以内の除細動で生存率70〜80%、5分で50%、10分でほぼゼロ。市民AED実施群のウツタイン統計では、1か月生存率が非実施群の2〜4倍と報告されています。