VPN/専用線料金 計算ツール|クラウド専用線とVPNの月額を帯域別に概算
オンプレとクラウド間、複数拠点間のSite-to-Site VPN(IPsec)・クラウド専用線接続の月額を、帯域(100Mbps/1Gbps/10Gbps)・データ転送量から概算。ハイブリッドクラウド設計、DR/BCP、SD-WAN選定、Zero Trust Network、金融庁FISC/ISMAP要件のセキュア接続など、企業の重要接続の予算試算に対応。VPNの手軽さ・低コスト、専用線の安定性・低遅延・SLA保証といったトレードオフを踏まえ、稟議書・提案書向けの明確な数字を短時間で用意できます。
VPN/専用線料金 計算機
計算式とクラウド接続の基礎
クラウド接続には大きく分けてSite-to-Site VPN(IPsec/インターネット経由)とクラウド専用線接続の2択があります。VPNはインターネットを利用するため安価・即時構築可能ですが、帯域・遅延・可用性に制約あり。専用線は物理的な閉域網で安定・低遅延・SLA保証だが、キャリア工事・データセンター接続料などで高額になります。
基本料金体系
Site-to-Site VPN:$36/月/接続 + $0.05/GB(データ処理)
クラウド専用線 1Gbps:$220/月(ポート費) + $0.02/GB(データ転送out)
クラウド専用線 10Gbps:$1,620/月(ポート費) + $0.02/GB
VPNゲートウェイ(下位SKU):$0.19/h(約$139/月) + データ転送
専用線 1Gbps(業務システム系クラウドの標準プラン):$300〜/月 + データ転送
高可用VPN:$0.05/h/トンネル(約$36/月/トンネル) + データ転送
専有型の専用線 10G:$1,700/月/接続
計算例
- Site-to-Site VPN 1TB/月 → $36 + $50(1000GB×$0.05) = 約$86/月
- クラウド専用線 1Gbps 1TB/月 → $220 + $20(1000GB×$0.02) = 約$240/月
- クラウド専用線 10Gbps 10TB/月 → $1,620 + $200 = 約$1,820/月
- キャリア回線費は別途:データセンター接続込みで100Mbps 10万円/月〜、1Gbps 30-50万円/月〜、10Gbps 100万円/月〜
VPN vs 専用線 徹底比較
| 比較項目 | Site-to-Site VPN | クラウド専用線接続 |
|---|---|---|
| 初期費用 | ほぼゼロ | キャリア工事50-200万円 |
| 月額(1Gbps相当) | $36〜(クラウド側) | $220〜(ポート費)+ 回線費 |
| 構築期間 | 数分〜数時間 | 2-8週間(物理工事) |
| 帯域 | 1接続あたり1.25Gbps上限が一般的 | 1G/10G/100G選択可 |
| 遅延 | 10-50ms(不安定) | 2-10ms(安定) |
| 可用性SLA | 99.95%(ゲートウェイ) | 99.9-99.99% |
| 暗号化 | IPsec(標準) | MACsec/IPsec(オプション) |
| ジッタ | あり(音声・映像に不向き) | 低ジッタ(VoIP OK) |
| コスト予測性 | データ量で変動 | ほぼ固定 |
| 推奨用途 | DR、開発、小規模 | 本番、金融、大規模 |
主要クラウド3系統の専用線料金比較
| 項目 | シェア最大手のクラウド | 業務システム系のクラウド | データ分析系のクラウド |
|---|---|---|---|
| 1Gbpsポート費 | $220/月 | 標準プラン $300/月〜 | パートナー接続 $50/月〜 |
| 10Gbpsポート費 | $1,620/月 | 標準プラン $1,650/月〜 | 専有型 $1,700/月 |
| データ転送out | $0.02/GB | 従量($30/50GB〜)or無制限プラン | $0.02/GB(同一大陸) |
| データ転送in | 無料 | プランに含む | 無料 |
| MACsec暗号化 | ◯(10G以上) | ◯ | ◯(専有型) |
| 拠点集約サービス | 専用線ゲートウェイ | グローバル拠点間接続オプション | クラウド間相互接続 |
| マルチクラウド対応 | ◯(相互接続事業者経由) | ◯ | ◯(2023〜) |
| SLA | 99.9%(単一)/99.99%(冗長) | 99.95% | 99.9%(単一)/99.99%(冗長) |
3系統ともポート費の水準は近く、1Gbpsで月$50〜$300、10Gbpsで月$1,600〜$1,700というレンジに収まります。差が出るのはデータ転送outの課金方式(GB従量か、帯域込みの定額プランか)と、拠点集約・マルチクラウド接続オプションの有無です。
キャリア/データセンター側料金(参考)
クラウド側のポート費のほかに、キャリア回線費・データセンター接続料が別途必要です。日本では国内の大手通信キャリアやコロケーション事業者が、主要クラウドのPoP接続をパッケージ化して提供しています。
| 回線メニューのタイプ | 帯域 | 月額目安(円) | 備考 |
|---|---|---|---|
| クラウド専用線の提携メニュー(小口) | 100Mbps | 10-15万円 | ホスト接続、共有ポート |
| 国内大手キャリアの閉域L3接続 | 1Gbps | 30-50万円 | クラウド接続用の閉域網 |
| 国内キャリアの業務系クラウド接続 | 1Gbps | 30-60万円 | 業務システム系クラウド向け |
| 中立系データセンター事業者の相互接続 | 1Gbps | 25-40万円 | マルチクラウド対応 |
| 大手キャリア専用線 | 10Gbps | 100-200万円 | 冗長構成、SLA付 |
同じ1Gbpsでも月25万〜60万円と2倍以上の開きがあります。選定の観点は単価だけでなく、接続先クラウドのPoPを持っているか・既存回線契約との統合割引・冗長経路を別ルートで確保できるかの3点です。
冗長構成・SLA・可用性
本番運用ではSLA達成のため冗長構成が必須です。主要クラウドは共通して単一の専用線接続で99.9%、冗長構成(異なる場所+異なるPoP)で99.99%というSLA体系を採っています。業務システム系クラウドは単一で99.95%、グローバル拠点間接続オプションの併用で複数リージョン間の閉域接続が可能。データ分析系クラウドも専有型接続の冗長ペア(異なるゾーン・異なる物理経路)で99.99%を達成します。
コスト影響:ポート費が2倍、キャリア回線費も2重取り、L3ルータ・ゲートウェイ料金も倍。冗長化で月額が1.8-2.2倍になるのが典型で、稟議段階からセットで計上する必要あり。
SD-WAN・Zero Trust Network
SD-WANは複数拠点+クラウドをインテリジェント制御するオーバーレイ技術で、ネットワーク機器ベンダー系・セキュリティベンダー系の各社が製品を出しています。従来型のMPLS+VPN構成より柔軟性が高くコスト最適化が可能です。Zero Trust Network Access(ZTNA)は「境界防御」から「都度検証」への転換で、クラウド型セキュリティ(SASE)ベンダーの製品が主流になっています。VPN廃止のシナリオも視野に入れた設計コスト試算を行ってください。
現場での活用シーン
ハイブリッドクラウド接続
オンプレのデータセンターとクラウドを閉域網で接続。ERPやレガシー基幹系はオンプレ、Web/AIはクラウドといった役割分担で、専用線が生命線に。10Gbps級で本番運用が定番。
DR(災害復旧)・BCP設計
オンプレPrimary+クラウドDR、またはリージョン間DR。RPO/RTO要件から帯域を逆算し、DRサイト間のレプリケーション量から専用線サイズを決定。
マルチクラウド運用
複数のクラウド間の連携接続。クラウド各社のクラウド間相互接続機能や、中立系の相互接続プラットフォームを介したマルチクラウドネットワーク設計。
金融機関(FISC対応)
閉域網要件+SLA要件+暗号化要件で、専用線+MACsec+冗長化が事実上必須。ISMAP登録クラウドへの専用線接続で監査対応。
官公庁・自治体
LGWAN・政府共通プラットフォーム・ISMAPクラウド間の閉域接続。専用線での構築・運用で数千万円/年の予算計上。
SaaS/PaaS事業者のバックエンド
マルチテナントSaaSのDB層・分析層への高スループット接続。専用線10G-100Gでコスト最適化。
よくある間違い・注意点
- クラウド側ポート費のみで見積り — 実際にはキャリア回線費(月10-100万円)、データセンター接続料、機器保守費(社内ルータ)等が別。「$220/月」だけで見積ると10倍以上乖離するケースが頻発。
- 冗長構成コストの計上漏れ — SLA 99.99%を目指すなら冗長は必須。ポート費・回線費・ゲートウェイの2重計上が抜けると本番運用開始後に予算オーバー。
- データ転送料の想定不足 — 専用線経由でも$0.02/GBのアウトバウンド料金。10TB/月なら$200、100TB/月なら$2,000。動画/バックアップ大量転送では通信料が本体を超えることも。
- VPN帯域の実効値誤解 — Site-to-Site VPNは仕様上1.25Gbpsでも、暗号化処理とインターネットの揺らぎで実効500-800Mbpsが多い。動画配信・大量DBレプリケーションでは専用線推奨。
- MTU/MSS未調整でスループット低下 — IPsec VPNはヘッダオーバーヘッドでMTU 1500→1400程度に。MSS Clampingを忘れるとフラグメント多発で実効帯域が半分以下に。
- 専用線工事期間の見積り不足 — キャリア工事+データセンター設定+疎通試験で最短2週間、通常4-8週間。ラック配線、光ファイバ引込み、ルータ設定変更が発生する場合は3ヶ月コースも。
- マルチクラウド接続設計の複雑性 — クラウド間の直接接続は、各社ネイティブ機能に加え相互接続事業者経由が現実的。ネットワーク設計スキルが要ります。
セキュリティ・規制対応
専用線接続は金融庁FISC安全対策基準、ISMAP、個人情報保護法第24条(外国第三者提供制限)、GDPR、PCI DSS等の規制対応で必須または強く推奨されます。閉域網で暗号化(MACsec/IPsec)を組み合わせることで、通信区間の機密性・完全性を担保。証跡としてNetFlowやクラウドの操作監査ログ・通信フローログによるトラフィックログ保管、変更管理(SOx/J-SOX対応)、暗号鍵管理(HSM)の実装コストも予算計上が必要。金融/医療/官公庁でのハイブリッドクラウド設計時は、必ず情報セキュリティ担当・監査法人と早期合意形成を。
参考文献・公的資料
- 金融情報システムセンター(FISC) 安全対策基準 ― 金融機関のセキュリティ要件標準。
- ISMAP 政府情報システムのためのセキュリティ評価制度 ― 政府登録クラウドサービス。
- IPA クラウドサービス利用のためのセキュリティ管理策 ― クラウド利用のリスク管理・実装ガイド。
- NIST SP 800-46 テレワーク・BYOD・リモートアクセスセキュリティ ― VPN・リモートアクセス実装標準。
- IETF RFC 4301 IPsecアーキテクチャ ― IPsec VPNの標準仕様。
- 日本産業標準調査会(JISC) ― JIS Q 27001等の情報セキュリティ関連規格。
- 各クラウドの専用線・VPN公式料金ページ ― ポート費、データ転送out単価、SLA、暗号化オプションの一次情報。改定が反映されるのが最も早い資料です。
- キャリア・データセンター事業者の接続メニュー資料 ― 回線費、初期工事費、納期、冗長経路の可否。クラウド側ポート費より金額が大きいことが多く、必ず相見積りを取ります。
- 各クラウドの料金計算ツール(Pricing Calculator) ― 帯域・転送量・冗長構成を入れて月額を出す公式ツール。稟議資料の根拠として使えます。
よくある質問(FAQ)
VPNの帯域制限は?
Site-to-Site VPNは1接続あたり1.25Gbps程度が仕様上の上限(実効は500-800Mbps程度が多い)というのが主要クラウド共通の水準です。VPNゲートウェイのSKUによっては650Mbps〜10Gbpsまで選べ、高可用VPNは1トンネルあたり3Gbps程度。大量転送・低遅延要件があるなら専用線への切替を検討します。
専用線の設置期間は?
クラウド側ポート発注から疎通まで2-8週間。物理工事(キャリア回線引込み・データセンター内配線・ルータ設定・BGPピアリング)を含みます。既存ラックがあれば早く、新規ラック契約から始まる場合は3ヶ月コース。パートナー経由の共用ポート(ホスト型接続)なら数日で可能です。
VPNと専用線のどちらを選ぶ?
(1)月データ量が数百GB以下+コスト重視ならVPN、(2)本番・金融/官公庁・大量転送・低遅延要求なら専用線、(3)DR/バックアップ用途にVPN+本番用に専用線という併用も定番。VPNは即時構築可能なので、専用線工事期間中のつなぎ用途にも使えます。
専用線の冗長構成はどう組む?
異なるPoP(Point of Presence)+異なるキャリア+異なる物理経路で2本引く。主要クラウドは同一リージョン内の2つの物理データセンターに接続することでSLA 99.99%を達成します。BGPで両経路を制御し、Active-Active or Active-Standby運用。
マルチクラウド接続はどう設計する?
(1)各クラウドのネイティブなクラウド間相互接続機能、(2)中立系の相互接続プラットフォーム事業者経由、(3)SASEプロダクト経由、が選択肢。設計と運用工数のバランスで選定します。
データ転送料はどれくらいかかる?
専用線経由:$0.02/GB(アウトバウンド)。1TB/月なら$20、10TB/月なら$200、100TB/月なら$2,000。インターネット経由($0.114/GB)より83%安く、大量転送では専用線の方が実質お得です。
SD-WANとの違いは?
SD-WANはインターネット/MPLS/専用線を統合制御するオーバーレイ技術。複数拠点+クラウドをアプリケーション別最適経路で制御します。VPN代替+動的最適化+管理容易化がメリット。ネットワーク機器ベンダー系・セキュリティベンダー系の製品が主流です。
金融庁FISC対応での注意点は?
FISC安全対策基準ではクラウド利用時の閉域接続、暗号化、SLA、ログ保管、監査可能性が問われます。専用線+MACsec暗号化+冗長構成+クラウドの操作監査ログ・通信フローログによる証跡保管+ISMAP登録クラウド選定が事実上のスタンダードです。
専用線の上位プランは必要?
標準プランは同一大陸内のリージョン間で有効。上位プランは大陸間・グローバル接続、同社のオフィススイート・業務SaaSへの接続、ルーティング上限拡張に対応します。年間$3,000〜の追加費用が発生するため、多国籍企業やSaaS大量利用時に検討します。
MACsec暗号化は必要?
専用線は物理的な閉域網なので暗号化なしでも「隣接キャリアからの盗聴」のみが理論リスク。ただし金融・機密情報・PCI DSSなど規制対応、または経路上の物理タップ攻撃対策として、MACsec(L2暗号化)や上位のIPsec(L3)を追加する構成が推奨されます。
キャリア別・料金差はある?
国内大手通信キャリア、外資系通信事業者、中立系データセンター事業者でクラウド接続メニュー・料金・SLAが異なります。同じ1Gbpsでも月25万〜60万円まで幅あり。地域・データセンター位置・既存回線契約との統合割引で最適化可能。相見積りは必須です。
クラウド初心者はどこから始める?
まずはSite-to-Site VPNで検証環境を接続(月$100前後、即時構築)。本番移行時に帯域・遅延・SLA要件を再評価し、必要なら専用線へ移行。この段階的アプローチが最もリスクが低い進め方です。