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電気分解 質量計算ツール|ファラデーの法則で析出量・電気量・所要時間を相互計算

電気分解における金属析出量・ガス発生量を、電流(A)・通電時間(s)・原子量・イオン価数から即算出。ファラデー定数F = 96,485 C/molを用いたファラデーの電気分解の法則に基づき、銅めっき・アルミニウム精錬(ホール・エルー法)・水電解による水素製造・NaOH電解製造・電解精錬の実務値まで対応。国際単位系(SI)2019年改定の定義に準拠。

最終更新:2026-08-05/監修:計算ツールズ編集部

電気分解 計算機

ファラデーの法則と計算式

ファラデーの電気分解の第一法則

「電気分解によって電極で析出する物質の質量は、通じた電気量に比例する」

電気量 Q = 電流 I × 時間 t (C クーロン)

電子のモル数 = Q ÷ F (F = 96,485 C/mol)

ファラデーの第二法則

「同じ電気量で析出する物質の質量は、その物質の化学当量(原子量/価数)に比例する」

析出物のモル数 = Q ÷ (n × F)

析出質量 w = (Q × M) ÷ (n × F) = (I × t × M) ÷ (n × F) (g)

変数の意味

  • Q:電気量(クーロン、C)
  • I:電流(アンペア、A)
  • t:通電時間(秒、s)
  • M:原子量または式量(g/mol)
  • n:反応で移動する電子数(イオンの価数)
  • F:ファラデー定数 = 96,485 C/mol(≒96,500 C/mol)

実務での電流効率補正

実際の析出質量 = 理論質量 × 電流効率(η)

電流効率は工業実務で85〜99%の範囲。副反応(水素発生・酸化物形成等)により100%にならず、めっき浴・電解液の管理指標です。

ファラデー定数の意味

ファラデー定数 F = 96,485.33212... C/mol(2019年SI改定後の厳密値)は、電子1モル(6.022×10²³ 個)が持つ電気量です。

F = NA × e = 6.022×10²³ × 1.602×10⁻¹⁹ C = 96,485 C/mol

ここで NA はアボガドロ定数、e は素電荷。国際単位系(SI)の2019年5月改定でアボガドロ定数と素電荷が定義値として固定され、ファラデー定数も厳密値になりました。工学・化学の実務・入試ではF = 96,500 C/molと近似することが多いですが、精密測定では96,485.33212 C/molを使用します。

ファラデー定数を用いた「電子1モル」の実感

1Aの電流を1時間流すと電気量Q = 3,600C、これは電子3,600/96,485 = 約0.0373 mol(2.24×10²² 個)に相当します。銅めっき(Cu²⁺, n=2)なら 0.0373/2 × 63.5 = 1.19 gの銅が析出。この直感を掴めば実務判断がスムーズです。

主要金属・ガスの計算表(1Ah = 1時間 1A通電時の析出量)

電流1Aで1時間(3600秒)通電した場合の理論析出量。実務では電流効率をこれに乗じます。

物質原子量M価数n1Ahあたり質量備考
銅 Cu (硫酸浴)63.521.185 g電解精錬・銅めっき
銀 Ag (シアン浴)107.914.026 g装飾めっき
金 Au (シアン浴)197.032.451 g装飾・電子端子
アルミニウム Al27.030.336 gホール・エルー法(氷晶石融解)
亜鉛 Zn (硫酸浴)65.421.220 g亜鉛めっき・防錆
ニッケル Ni58.721.095 gワット浴・装飾めっき
クロム Cr (硬質)52.060.323 g硬質クロムめっき
鉛 Pb207.223.866 g鉛蓄電池関連
スズ Sn118.722.215 gブリキ・はんだ
水素 H₂ (発生)2.01620.0376 g (=418 mL@STP)水電解
酸素 O₂ (発生)32.040.298 g (=209 mL@STP)水電解
塩素 Cl₂ (発生)71.021.324 gNaCl電解・食塩電解

電流効率と実務ポイント

ファラデーの法則は「理想値」を与えます。実際の電気分解では、副反応・電極反応の不完全性により電流効率(η)が100%にならず、以下の値が業界目安。

電解プロセス電流効率主な副反応
銅電解精錬(硫酸浴)95〜98%不純物金属の共析
亜鉛めっき(硫酸浴)85〜95%水素発生
ニッケルめっき(ワット浴)93〜97%水素発生
硬質クロムめっき10〜25%(非常に低い)水素発生・クロム酸還元
アルミニウム精錬(ホール・エルー)85〜95%副生成物・炭素電極消耗
水電解(アルカリ)60〜80%過電圧・熱損失
水電解(PEM 固体高分子)80〜95%過電圧
食塩電解(イオン交換膜法)93〜97%酸素発生

硬質クロムめっきは電流効率が10〜25%と極めて低く、めっき膜1μm堆積に大量の電力を要します。近年は環境負荷の高い6価クロムから3価クロム・PVD代替への転換が進んでいます。

工業応用

銅電解精錬

粗銅を陽極、純銅板を陰極、硫酸銅水溶液を電解液として、99.99%純銅(電気銅)を得る。日本の主要な非鉄精錬プロセス。JX金属・住友金属鉱山・パンパシフィックカッパー等が国内3位の電気銅生産量を持つ。ファラデー計算で1日あたり生産可能量を予測。

アルミニウム精錬(ホール・エルー法)

氷晶石(Na₃AlFe6)にアルミナ(Al₂O₃)を溶解し、約960℃の融解塩を電気分解。アルミ1トンあたり約13,000〜15,000 kWhの電力が必要で、「電気の缶詰」と呼ばれる。ファラデー計算では理論値2,980 kWh/tだが、実務効率85%と過電圧で実測が高くなる。

グリーン水素製造(水電解)

再生可能エネ電力で水を電気分解し水素を製造。PEM電解では1kg H₂に約50〜55 kWh。ファラデー計算での理論値は39.4 kWh/kg。効率75〜85%が現行水準。カーボンニュートラル戦略の中核技術。

電気めっき(装飾・防錆)

ニッケル・クロム・亜鉛・銅・金・銀めっきで自動車部品、家電、電子基板、装飾品を処理。膜厚制御にファラデー計算が必要で、実装工場では電流・時間の管理でμm単位のめっき厚を得る。

食塩電解(NaOH・Cl₂製造)

塩化ナトリウム水溶液を電気分解し、水酸化ナトリウム・塩素ガス・水素を同時製造。イオン交換膜法が主流で、日本のソーダ工業の基幹プロセス。年間NaOH生産量約380万トン。

電池・充電

リチウムイオン電池の充放電、鉛蓄電池の充電も内部反応はファラデーの法則に従う。EV車の電池容量はAh(アンペア時)で表現され、走行距離予測に必須の指標。

大学入試・共通テスト対策

電気分解は高校化学・大学入試の頻出テーマ。以下のポイントを押さえておくと本番で得点しやすいです。

典型計算パターン

  1. 電流I(A)・時間t(s)から電気量Q = I × tを求める
  2. Q ÷ F で電子のモル数を求める(F = 96,500 C/mol近似)
  3. イオン価数nで割って析出物のモル数を求める
  4. モル数 × 原子量Mで析出質量を求める

例題:CuSO₄水溶液を1.93Aで500秒間電気分解した際の銅析出量は?

Q = 1.93 × 500 = 965 C

電子mol = 965 ÷ 96,500 = 0.010 mol

Cu²⁺ + 2e⁻ → Cu なので、Cuは電子の1/2 = 0.005 mol

銅の質量 = 0.005 × 63.5 = 0.3175 g

実際の入試では「陰極でCu、陽極で酸素が発生」など複数電極の同時反応を扱う出題も。両電極の電気量は等しいことを利用します。

例題2:水電解による水素製造の基礎計算

PEM水電解セルを5.00Aで1時間駆動した場合の水素発生量:

Q = 5.00 × 3600 = 18,000 C

電子mol = 18,000 ÷ 96,485 = 0.1866 mol

2H⁺ + 2e⁻ → H₂ なので水素は電子の1/2 = 0.0933 mol

水素の質量 = 0.0933 × 2.016 = 約0.188 g

標準状態(0℃・1気圧)での体積 = 0.0933 × 22.4 = 2.09 L

実務では電流効率(PEMで80〜95%)を掛けた値が実測値となります。

例題3:複数電解槽の直列接続

硫酸銅水溶液(A)と硝酸銀水溶液(B)を直列につなぎ、Aで銅0.635 g析出したとき、Bで析出する銀の質量は?

直列なので両電解槽の電気量は等しい。

Aでの銅のmol = 0.635 ÷ 63.5 = 0.010 mol

Cu²⁺+2e⁻→Cuなので電子mol = 0.020 mol、電気量 = 0.020 × 96,485 = 1,929.7 C

Bでは Ag⁺+e⁻→Ag なので銀のmol = 電子mol = 0.020 mol

銀の質量 = 0.020 × 107.9 = 2.158 g

よくある間違い・注意点

  • 電流効率を100%と仮定する — 理論計算は上限値。実務では85〜95%が一般的。硬質クロムでは20%前後まで下がります。設計時に効率を掛け忘れると、実際の製品重量・膜厚が理論値より大幅に少なくなります。
  • 時間の単位ミス(秒/分/時間) — Q = I × tの時間tは秒(s)を使うのが基本。分・時間で計算すると60倍・3600倍のズレが出ます。1時間なら3,600秒。
  • 価数n(電子数)の誤り — Cu²⁺なら2、Al³⁺なら3、Ag⁺なら1。「原子価」ではなく「その反応で電子が何個移動するか」で判断。例:Cr³⁺→Crなら3、Cr⁶⁺→Crなら6。
  • ファラデー定数の桁ミス — F = 96,485 C/mol。実務では96,500と近似することが多い。9,648とか964,850など桁を間違えるとオーダーが変わります。
  • 陽極と陰極を混同 — 電気分解では陰極(カソード)で金属が析出、陽極(アノード)で酸化(気体発生・電極溶解)。銅精錬では陽極も溶けて陰極に移動、その電気量は等しい。
  • ガス発生量を体積で答えない — 水素・酸素発生の入試計算では標準状態(STP: 0℃・1気圧)での体積(mol × 22.4 L)まで求める設問が多い。質量だけでなく体積答案を用意。
  • 複数電極の並列/直列を混同 — 並列回路では電流が分岐、直列回路では同じ電流が全電解槽を流れる。工業設備で複数電解槽の稼働時、電気量計算に注意が必要です。

関連する法則・定数

  • ファラデーの電気分解の第一法則 ― 析出質量は電気量に比例。イギリスの科学者マイケル・ファラデーが1834年に発表。
  • ファラデーの電気分解の第二法則 ― 同じ電気量で析出する質量は化学当量に比例。ファラデー定数導出の基礎。
  • SI基本単位系(2019年改定) ― 素電荷e = 1.602176634×10⁻¹⁹ C、アボガドロ定数NA = 6.02214076×10²³ /molが定義値化。これによりF = 96,485.33212... C/molが厳密値化。
  • ネルンストの式 ― 電極電位と溶液濃度の関係。標準電極電位の温度・濃度補正で使用。
  • タフェル式 ― 電流密度と過電圧の関係。実務効率を予測するツール。
  • JIS H 8501 ― めっきの厚さ試験方法。ファラデー計算からの理論厚と実測厚を比較する場合の規格。
  • JIS H 8617 ― ニッケルめっき及びニッケル-クロムめっき。実務規格。

参考文献・公的資料

※本ページの計算はファラデーの法則に基づく理論値または一般的な工業効率での近似値です。実際のめっき膜厚・電力消費は使用する電解液組成・電流密度・温度・電極面積等に大きく依存し、実務設計では試作評価と経験値の反映が必須です。危険物・強酸・強アルカリを扱う電気分解実験は労働安全衛生法・特定化学物質障害予防規則等の遵守が必要です。

よくある質問(FAQ)

ファラデー定数はなぜ96,485なの?

ファラデー定数F = 96,485.33212 C/molは、電子1モル(6.022×10²³個)が持つ電気量です。F = NA × e = 6.022×10²³ × 1.602×10⁻¹⁹ Cで計算されます。2019年のSI改定で素電荷eとアボガドロ定数NAが定義値化されたため、Fも厳密な値となりました。入試や実務では96,500 C/molと近似することが多いです。

電気分解でどれだけの物質が得られるか計算するには?

ファラデーの法則を使います。析出質量 w = I × t × M / (n × F)。ここでI=電流(A)、t=時間(s)、M=原子量、n=価数、F=96,485 C/mol。例えば10Aで1時間(3600s)銅を電解すると、10×3600×63.5/(2×96,485) = 11.85g析出します。

電流効率とは何?

ファラデー計算(理論値)に対する実際の析出質量の比率です。副反応(水素発生等)により100%未満になり、銅精錬で95〜98%、亜鉛めっきで85〜95%、硬質クロムでは10〜25%と大きく異なります。工程管理の重要指標で、電解液組成・温度・攪拌で改善します。

陽極と陰極でどちらに金属が析出する?

陰極(カソード)で金属が析出します。金属イオン(Cu²⁺等)が電子を受け取って還元されるため。陽極(アノード)では酸化反応(気体発生や電極自身の溶解)が起こります。銅電解精錬では両電極が銅で、陽極から溶けた銅が陰極で純度99.99%として析出します。

水電解で水素はどれくらい発生する?

2H₂O + 2e⁻ → H₂ + 2OH⁻ の反応で、電子2モルあたりH₂ 1モル発生。1A×1時間の電気量3,600Cでは、電子3,600/96,485=0.0373mol、H₂は0.0187mol = 約0.038 g = 標準状態で418 mL発生します。実務ではPEM水電解効率75〜85%を掛けます。

硬質クロムめっきの電流効率が低いのはなぜ?

クロム酸(CrO₃)からCrへの還元は6電子を要する上、電解液中で水素発生・クロム酸への逆酸化などの副反応が競合するため、電流効率が10〜25%と極めて低くなります。膜厚1μmを得るのに必要な電気量が多く、電力消費・処理時間が長いプロセスです。

アルミニウムはなぜ電気で作る?

アルミニウムは電気陰性度が高くイオン化傾向が大きいため、酸化アルミニウム(Al₂O₃)を炭素還元では作れません。ホール・エルー法で氷晶石(Na₃AlF₆)に溶解して融解塩電気分解(約960℃、Al³⁺+3e⁻→Al)により製造します。1トンのアルミ製造に13,000〜15,000kWhの電力が必要で「電気の缶詰」と呼ばれます。

入試問題のよくある形式は?

「A液(硫酸銅)とB液(水酸化ナトリウム)を直列に電気分解した際の各電極の変化と、Cu析出量からNaOH中の陽極で発生する酸素の体積を求めよ」等の複数電解槽の連鎖問題が頻出。同じ電気量が全部の電解槽を通ることを利用し、Q値から各電極の反応量を計算します。

1Ahって何?

1Ah(アンペア時)=1Aの電流を1時間流した電気量=3,600C(クーロン)。電池の容量表記でも使われ、モバイルバッテリー10Ahなら36,000Cの電気量を蓄えていることになります。EV車の電池は50〜100kWhで、これも内部反応でファラデーの法則が成立します。

電気分解と一次電池の違いは?

電気分解は外部電源で電気エネルギーを化学エネルギーに変換(強制反応)、一次電池・二次電池は自発的な酸化還元反応から電気エネルギーを取り出す(発電)。方向が逆ですが、いずれもファラデーの法則に従い電気量と反応量の関係が成立します。

複数電解槽を直列につないだ場合、電気量は?

直列接続では全ての電解槽に同じ電流が流れるため、通電時間が同じなら全電解槽で同じ電気量になります。工業設備では複数電解槽を直列にした「バンク運転」で電力効率を高めています。並列接続では各槽への電流が分岐し電気量が異なる点に注意。

グリーン水素の製造コストは?

PEM水電解で電力代を主とし、水素1kgあたり50〜55kWh必要。電力単価20円/kWhとすると1,000〜1,100円/kgが電力コスト。設備償却・保守を含めると1,500〜3,000円/kg。日本政府は2030年までに330円/kg、2050年に220円/kgを目標としています(水素基本戦略)。