ステッピングモータの分解能と送り量
ステップ角・マイクロステップ・送りねじのリードから、1パルスの移動量・必要なパルス数と周波数を算出します。
ステッピングモータの分解能と送り量ツール
1回転のステップ数は360÷ステップ角×マイクロステップの分割数で、既定値では360÷1.8×16=3,200パルスです。1回転あたりの移動量はリード5mm÷減速比1で5.00mmなので、1パルスの移動量は5÷3,200=0.0015625mm=1.56μmとなります。100mm動かすには64,000パルス、毎秒20mmで送るには12,800Hzのパルスが必要です。ドライバの上限を100kHzとすると送り速度の上限は156.25mm/s、歯数20枚のベルト駆動に置き換えると1パルスは12.50μmです。
ステップ角と1回転のパルス数
| ステップ角 | フルステップ | 1/16分割 | 1/32分割 |
|---|---|---|---|
| 1.8度 | 200 | 3,200 | 6,400 |
| 0.9度 | 400 | 6,400 | 12,800 |
| 0.72度 | 500 | 8,000 | 16,000 |
| 7.5度 | 48 | 768 | 1,536 |
リード別の1パルス移動量(1.8度・1/16分割)
| 送りねじのリード | 1パルスの移動量 | 100mmのパルス数 |
|---|---|---|
| 2mm | 0.63μm | 160,000 |
| 5mm | 1.56μm | 64,000 |
| 10mm | 3.13μm | 32,000 |
| 20mm | 6.25μm | 16,000 |
※参考計算です。機材の仕様・規格・法令は改定されるため、実機の仕様書と最新の告示を確認してください。
ステッピングモータの分解能と送り量の詳しい解説
ステッピングモータの分解能は計算上いくらでも細かくできますが、実際に出せる位置精度とは別物です。マイクロステップは巻線に流す電流の比を変えて中間の位置に止める方式で、分割数を上げるほど1段階あたりのトルクは小さくなります。摩擦や負荷が加わると指令した位置まで動ききらず、細かく刻んでも実位置がついてこない領域が生まれます。分解能の数値は指令の細かさであって、精度の保証ではありません。
判断が分かれるのは分割数の選び方です。細かくすれば振動と騒音が減り、低速域の動きが滑らかになりますが、同じ速度を出すのに必要なパルス周波数が比例して上がり、制御側の負担が増します。1/16程度までは振動低減の効果が大きく、それ以上は主に静音のためというのが実務での相場観です。位置決め精度を上げたいのであれば、分割数より送りねじのリードを小さくするほうが確実に効きます。
見落とされやすいのが速度の上限です。パルス周波数が上がると巻線のインダクタンスにより電流が立ち上がりきらず、高速域でトルクが急激に落ちます。計算上の上限まで回せるのは無負荷に近い条件だけで、実際には脱調しない範囲で加減速をかけながら使います。急な加速を指令すると起動直後に脱調し、以後の位置がずれたまま動き続ける点にも注意が必要です。
機構による違いもあります。送りねじはバックラッシと呼ばれる戻り方向の遊びがあり、方向を変えるたびに数十μmの誤差が出ます。ベルト駆動は速度を出しやすい反面、張力の変化と歯の噛み合いで剛性が下がります。減速機を入れると分解能とトルクは同時に上がりますが、減速機自体の遊びが加わるため、精度を要する軸では直結が選ばれることもあります。
運用の面では原点復帰の設計も重要です。ステッピングモータは位置を検出しないため、電源を入れ直すと現在位置が分からなくなります。原点センサに戻してから座標を確定する手順を組み込み、脱調が起きた場合に検知できる仕組みを別に用意しておくと、加工の失敗を早い段階で止められます。長時間の連続運転では巻線の発熱で保持力が落ちるため、停止中の電流を下げる設定も併せて検討してください。
業界・現場での使い方
工作機械の軸設計
目標の位置決め精度から必要なリードと分割数を決め、パルス周波数の上限を確認します。
3Dプリンタの調整
1パルスの移動量から制御側の設定値を算出し、寸法のずれを補正します。
検査装置の位置決め
移動距離とパルス数の対応を確認し、原点復帰後の座標管理に使います。
搬送装置の速度設計
目標速度に必要なパルス周波数を求め、ドライバの上限と突き合わせます。
よくある間違い・注意点
- 分解能をそのまま位置精度と考える — マイクロステップは指令の細かさで、摩擦や負荷があると実位置は追従しません。
- 分割数を上げれば精度が上がると考える — 1段階あたりのトルクが下がり、細かい指令ほど動ききらなくなります。
- パルス周波数の上限を確認しない — 高速域ではトルクが落ち、加速の指令によっては起動直後に脱調します。
- バックラッシを計算に入れない — 方向を変えるたびに数十μmの誤差が生じ、往復での寸法が合いません。
- 減速比を掛け忘れる — 1回転あたりの移動量が変わるため、パルス数がそのまま倍率でずれます。
関連する規格・公的資料
- 日本産業標準調査会 (JISC) — JIS規格
- 電子情報技術産業協会 (JEITA) — 電子部品・機器
- 日本電機工業会 (JEMA) — 電気機器
- 電気学会 — 電気工学
- 日本機械学会 — 機械工学
- 日本電気協会 — 電気設備の技術基準
- 産業技術総合研究所 — 計量標準
- 製品評価技術基盤機構 (NITE) — 製品安全
- 経済産業省 — 電気用品・産業政策
- 日本ロボット工業会 — 産業用ロボット
※本ツールは公的基準に基づく参考計算です。医療・法務・税務の判断は最新の告示・規格および専門家の判断に従ってください。
よくある質問(FAQ)
1.8度・1/16分割・リード5mmの1パルス移動量は?
1回転3,200パルスで5mm進むため1.56μmです。100mmでは64,000パルスになります。
マイクロステップは何分割まで有効ですか?
振動低減の効果は1/16程度までが大きく、それ以上は主に静音を目的に使われます。
パルス周波数の上限はどれくらいですか?
ドライバによりますが数十kHzから数百kHzです。高速域ではトルクが落ちるため実用上限はこれより下がります。
脱調を防ぐにはどうしますか?
加減速の時間を十分に取り、必要なトルクに対して余裕のある機種を選びます。
ベルト駆動と送りねじはどちらが有利ですか?
速度を出すならベルト、位置決め精度と保持力なら送りねじが向きます。
減速機を入れると分解能はどうなりますか?
減速比のぶん細かくなります。ただし減速機の遊びが加わるため、精度がその分だけ上がるとは限りません。
バックラッシはどう扱いますか?
一方向から位置決めする運用にするか、制御側で補正量を設定します。
保持トルクと動作時のトルクは同じですか?
異なります。回転数が上がるほどトルクは下がるため、速度とトルクの特性図で確認します。