遮音性能と透過損失の計算
【ご注意】このページの計算結果・情報は参考値です。正確性・最新性は保証できません。税務・法務・お金・設計・施工・安全などに関わる判断は、公式の資料と専門家の確認のうえ、ご自身の責任で行ってください。免責事項
壁の面密度と周波数から質量則による透過損失を求め、窓や隙間を含めた全体の遮音性能を計算します。遮音はいちばん弱いところで決まります。面積5%の窓で4 dB、0.1%の隙間で10 dB 以上落ちることが数値で確かめられます。
遮音性能と透過損失の計算ツール
質量則
壁がどれだけ音を遮るかは、まず重さで決まります。重い壁ほど動きにくく、音のエネルギーを通しにくいからです。単層の壁の透過損失は次の式で概算できます。
TL = 18 × log₁₀(面密度 m × 周波数 f)− 44
面密度は1 m² あたりの重さ(kg/m²)です。石膏ボード12.5 mm 1枚でおよそ9 kg/m²、コンクリート150 mm でおよそ360 kg/m² です。面密度10 kg/m² の壁の500 Hz での透過損失は 22.6 dB になります。
この式からわかる大事なことが2つあります。1つは面密度を2倍にしても約5.4 dB しか上がらないこと。壁を2枚重ねても、期待するほどは効きません。もう1つは周波数が2倍になると約5.4 dB 上がること。裏を返せば低い音ほど遮りにくいということで、隣の部屋から重低音だけが響いてくるのはこのためです。
弱いところで決まる
壁に窓や扉があると、全体の性能はそれらを合わせたものになります。面積で重み付けした透過率の平均から求めます。
τ平均 = Σ(Sᵢ × 10^(−TLᵢ/10))÷ ΣSᵢ / TL総合 = 10 × log₁₀(1 / τ平均)
透過損失40 dB の壁9.5 m² に、透過損失25 dB の窓が0.5 m² あるだけで、全体は 36.0 dB まで落ちます。窓は面積の5%しかないのに、4 dB も下がります。遮音は、いちばん弱いところで決まります。隙間があればもっと極端で、全体の0.1%の隙間で性能が大きく崩れます。
材料の面密度の目安と質量則(500 Hz)
| 材料 | 面密度 | 質量則の透過損失 |
|---|---|---|
| 合板 5.5 mm | 約3 kg/m² | 約13 dB |
| 石膏ボード 9.5 mm | 約7 kg/m² | 約19 dB |
| 石膏ボード 12.5 mm | 約9 kg/m² | 約21 dB |
| 石膏ボード 12.5 mm 2枚 | 約18 kg/m² | 約27 dB |
| ガラス 5 mm | 約12.5 kg/m² | 約24 dB |
| ALC 100 mm | 約60 kg/m² | 約37 dB |
| コンクリート 150 mm | 約360 kg/m² | 約51 dB |
※質量則による概算です。実際の製品はコインシデンス効果や構造によって上下します。
弱点の影響(壁 TL40 dB・合計10 m²)
| 弱点 | 面積 | 全体の透過損失 | 低下 |
|---|---|---|---|
| なし | — | 40.0 dB | — |
| 窓 TL25 dB | 0.5 m²(5%) | 36.0 dB | −4.0 dB |
| 窓 TL25 dB | 2.0 m²(20%) | 31.5 dB | −8.5 dB |
| 隙間 | 0.01 m²(0.1%) | 29.6 dB | −10.4 dB |
| 隙間 | 0.1 m²(1%) | 20.0 dB | −20.0 dB |
※隙間は透過損失0 dB として計算。わずかな隙間で性能が崩れることがわかります。
遮音性能の等級と体感
| 等級の目安 | ピアノ・ステレオ | 話し声 | 生活実感 |
|---|---|---|---|
| D-30 | かなり聞こえる | 内容がわかる | 気になる |
| D-40 | 聞こえる | 聞こえるが内容は不明 | やや気になる |
| D-50 | かすかに聞こえる | ほとんど聞こえない | 気にならない |
| D-55 | ほとんど聞こえない | 聞こえない | 気にならない |
※入力した内容はお使いのブラウザの中だけで処理され、サーバーには送信されません。本ツールは理論式による参考計算です。実際の性能は施工の精度・隙間・側路伝搬に大きく左右されます。設計や法令適合の判断には、実測値と専門家の確認が必要です。
遮音性能と透過損失の計算の詳しい解説
遮音の設計でつまずく原因は、だいたい2つに絞られます。1つは「重くすれば遮れる」と思いすぎること、もう1つは「弱点の影響」を軽く見ることです。どちらも質量則と合成の式を一度計算してみれば納得できます。
まず重さについて。質量則によれば、面密度を2倍にしても透過損失は約5.4 dB しか上がりません。石膏ボードを1枚から2枚に増やしても、遮音量は5 dB 程度です。人が「半分静かになった」と感じるには10 dB 要りますから、枚数を倍にするだけでは体感はほとんど変わりません。10 dB 上げるには面密度を約4.3倍にする必要があり、現実的ではありません。だから実務では、単純に重くするのではなく二重壁にして中空層を設ける方法を使います。空気層がばねとして働き、質量則を超える性能が出せます。ただし中空層の厚さと共振周波数の関係があり、薄い中空層はかえって特定の周波数で性能を落とします。
次に周波数です。質量則は周波数が2倍になるごとに5.4 dB 上がるので、低い音ほど遮りにくいという結論になります。125 Hz と4000 Hz では27 dB も差がつきます。隣室から音楽が聞こえるとき、メロディは聞こえずベースとドラムだけが響いてくるのはこのためです。低音の対策は難しく、質量を増やすだけでは追いつきません。振動として床や躯体を伝わる成分もあるので、防振支持などの別の手当てが要ります。
そして弱点の問題です。これは遮音でもっとも見落とされます。透過損失40 dB の立派な壁を作っても、そこに25 dB の窓が5%の面積であるだけで、全体は36 dB に落ちます。窓を20%にすれば31.7 dB です。壁の性能をいくら上げても、窓を直さない限り全体は上がりません。このツールが「音が抜けている割合」を表示しているのは、どこに手を付けるべきかを見誤らないためです。
隙間はさらに極端です。全体のわずか0.1%、10 m² の壁に対して0.01 m²(10 cm 角ほど)の隙間があるだけで、40 dB の壁が29.6 dB に落ちます。1%なら20 dB です。隙間は透過損失ゼロ、つまり素通しだからです。配管やケーブルの貫通部、コンセントボックスの裏、建具の周囲、換気扇の開口。現場で遮音性能が出ない原因の多くは、材料ではなく施工の隙間です。設計値どおりの性能を出すには、貫通部の処理と気密の確保が欠かせません。
もう1つ知っておきたいのがコインシデンス効果です。板には曲げ波が伝わる性質があり、入射してくる音の波長と板の曲げ波の波長が一致する周波数で、音がすり抜けやすくなります。質量則の予測より10 dB 以上落ちることもあり、この谷は材料の厚さと剛性で決まります。ガラスは薄いものほど高い周波数に谷が出るため、二重ガラスでは厚さの違うガラスを組み合わせて谷をずらすのが定石です。同じ厚さのガラスを2枚使うと、両方の谷が重なって効果が落ちます。
最後に、測った値の読み方です。カタログに載る透過損失は、実験室で側路伝搬のない条件で測ったものです。実際の建物では、壁を透過する音のほかに、床・天井・躯体を回り込んで伝わる音があります。この側路伝搬があるため、現場での遮音性能は実験室値より数 dB 低くなるのが普通です。設計では余裕を見ておく必要があります。
業界・現場での使い方
間仕切り壁の仕様検討
必要な遮音量から、石膏ボードの枚数と中空層の要否を判断します。
窓の仕様選定
壁の性能に対して窓がどれだけ足を引っ張るかを面積比から確かめます。
機械室の防音
外側の騒音レベルと目標値から、必要な透過損失を逆算します。
貫通部の処理の説明
小さな隙間が性能をどれだけ落とすかを数値で示し、施工の重要性を伝えます。
既存建物の改修計画
いまの壁の面密度から現状性能を推定し、改修でどこまで上がるかを見積もります。
よくある間違い・注意点
- 重くすれば遮れると考える — 面密度2倍で5.4 dB しか上がりません。10 dB 上げるには4.3倍必要です。
- 隙間を軽く見る — 全体の0.1%の隙間で10 dB 以上落ちます。貫通部と建具まわりの処理が決め手です。
- 窓を放置して壁だけ強化する — 面積5%の窓で4 dB 下がります。弱点を直さないと全体は上がりません。
- 低音も同じように遮れると思う — 周波数が半分になると5.4 dB 落ちます。低音は質量だけでは対処できません。
- 同じ厚さのガラスを2枚使う — コインシデンスの谷が重なります。厚さを変えて谷をずらすのが定石です。
関連する規格・公的資料
- 環境省 騒音・振動対策 — 騒音に係る環境基準と規制の所管
- 環境省 騒音に係る環境基準について — 地域の類型ごとの基準値の告示
- e-Gov 法令検索(騒音規制法) — 特定工場・特定建設作業の規制の条文
- 厚生労働省 — 騒音障害防止のためのガイドライン
- 日本産業標準調査会(JISC) — JIS A 1416 音響透過損失の測定方法など
- 日本規格協会(JSA) — JIS 規格票の発行
- 日本音響学会 — 音響の学術的な基準と用語
- 日本騒音制御工学会 — 騒音制御の技術資料
- 日本建築学会 — 建築物の遮音性能基準と設計指針
- 国土交通省 — 建築物の環境性能と住宅性能表示
- 独立行政法人 労働者健康安全機構 — 職場の騒音と聴力保護
- 中央労働災害防止協会 — 保護具の選定と使用の手引き
- 国際標準化機構(ISO) — ISO 717 遮音性能の評価方法
※本ツールは公的基準に基づく参考計算です。医療・法務・税務の判断は最新の告示・規格および専門家の判断に従ってください。
よくある質問(FAQ)
質量則とは何ですか?
壁の遮音量が面密度と周波数で決まるという経験則です。TL=18log₁₀(m×f)−44 で概算します。
壁を2倍の厚さにすると何 dB 上がりますか?
約5.4 dB です。倍にしても体感ではあまり変わりません。
なぜ低い音が漏れやすいのですか?
質量則では周波数が半分になると5.4 dB 落ちるためです。低音は遮るのが難しい性質があります。
小さな隙間でも影響しますか?
大きく影響します。全体の0.1%の隙間で10 dB 以上落ちます。隙間は素通しだからです。
窓があると全体の性能はどうなりますか?
面積で重み付けした透過率の平均で決まります。面積5%・25 dB の窓で全体が4 dB 落ちます。
二重壁は質量則より効きますか?
効きます。中空層がばねとして働くためです。ただし薄い中空層は共振で逆効果になることがあります。
コインシデンス効果とは何ですか?
入射音と板の曲げ波の波長が一致する周波数で音が抜けやすくなる現象です。質量則より10 dB 以上落ちることがあります。
カタログ値どおりの性能が出ないのはなぜですか?
実験室値には側路伝搬がありません。実際は床や躯体を回り込む音があるため数 dB 低くなります。
D-50 とはどのくらいですか?
隣室のピアノがかすかに聞こえ、話し声はほとんど聞こえない程度とされます。
内側の騒音レベルは正確ですか?
このツールは室内の吸音を考えない簡易値です。実際は室の吸音力によって数 dB 変わります。