N値から内部摩擦角・粘着力の推定
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N値と深さ・地下水位から有効上載圧を求め、砂質土の内部摩擦角φを道路橋示方書・建築基礎構造設計指針・大崎式の3式で、粘性土の粘着力cを一軸圧縮強さの推定式から求めます。式ごとの適用範囲も判定します。いずれも推定値です。
N値から内部摩擦角・粘着力の推定ツール
有効上載圧
N値は、同じ締まり具合の砂でも深いほど(上に載る土が重いほど)大きく出ます。そのため、有効上載圧 σv' で補正したN値(N1)を使う式があります。
σv' = γt × hw + γ' × (z − hw)(地下水位より深い場合)
砂質土の内部摩擦角 φ
道路橋示方書:φ = 4.8 ln N1 + 21(N>5)、N1 = 170N/(σv'+70)
建築基礎構造設計指針:φ = √(20N1) + 20(3.5≦N1≦20、N1>20は40)、N1 = N/√(σv'/100)
大崎式:φ = √(20N) + 15
道路橋示方書の式の ln は自然対数です(平成29年版の正誤表で定数が23から21に訂正されています)。
粘性土の粘着力 c
c = qu/2 qu = 12.5N(Terzaghi-Peck) qu = 40+5N(大崎)(kN/m²)
計算例
N = 15、深さ5m、地下水位2m、γt = 18、γ' = 9 kN/m³ なら σv' = 18×2+9×3 = 63.0 kN/m²。道路橋示方書は N1 = 19.17 で φ = 35.2°、建築基礎構造設計指針は N1 = 18.90 で φ = 39.4°、大崎式は 32.3° です。同じN値でも式によって7°近い差があります。
N値と内部摩擦角の推定(σv'=100 kN/m² のとき・N1=N)
| N値 | 道路橋示方書 | 建築基礎構造設計指針 | 大崎式 |
|---|---|---|---|
| 5 | 適用外(N≦5) | 30.0° | 25.0° |
| 10 | 32.1° | 34.1° | 29.1° |
| 15 | 34.0° | 37.3° | 32.3° |
| 20 | 35.4° | 40.0° | 35.0° |
| 30 | 37.3° | 40.0°(上限) | 39.5° |
| 50 | 39.8° | 40.0°(上限) | 46.6° |
式ごとの出典と適用範囲
| 式 | 出典 | 適用範囲・前提 |
|---|---|---|
| φ=4.8 ln N1+21、N1=170N/(σv'+70) | 道路橋示方書・同解説 IV下部構造編(平成29年) | 砂質土、N>5 |
| φ=√(20N1)+20、N1=N/√(σv'/100) | 建築基礎構造設計指針(2019) | 3.5≦N1≦20(N1>20は40°) |
| φ=√(20N)+15 | 大崎式 | 粘着力を0と仮定できる砂質土。上載圧の補正なし |
| qu=12.5N、c=qu/2 | Terzaghi-Peck | φを0とみなせる粘性土 |
| qu=40+5N、c=qu/2 | 大崎(東京の地盤の試験結果から) | φを0とみなせる粘性土 |
N値と粘着力の推定(kN/m²)
| N値 | c(Terzaghi-Peck) | c(大崎) |
|---|---|---|
| 2 | 12.5 | 25.0 |
| 4 | 25.0 | 30.0 |
| 8 | 50.0 | 40.0 |
| 15 | 93.8 | 57.5 |
※入力した内容はお使いのブラウザの中だけで処理され、サーバーには送信されません。N値から求める内部摩擦角・粘着力は経験式による推定値で、採用する式によって大きく変わります。設計に用いる地盤定数は、三軸圧縮試験・一軸圧縮試験などの土質試験の結果を踏まえて、技術者が設定してください。
N値から内部摩擦角・粘着力の推定の詳しい解説
地盤の強さを表す代表的な値が、内部摩擦角 φ と粘着力 c です。砂は粒どうしの摩擦で、粘土は粒子がくっつき合う力で、せん断に抵抗します。基礎の支持力、擁壁にかかる土圧、斜面の安定、杭の周面摩擦など、地盤に関わる設計計算の多くはこの2つの値を使います。本来は三軸圧縮試験や一軸圧縮試験などの室内試験で求めるものですが、小規模な建物や概略の検討では試料を採らずに、標準貫入試験のN値から推定することがよくあります。
N値は、重さ63.5kgのハンマーを76cmの高さから落とし、サンプラーを30cm打ち込むのに要した回数です。ボーリングのたびに深さ1mごとに測るため、最も手に入りやすい地盤のデータです。ただし、N値と φ・c の関係は経験的に見つけられた相関にすぎず、どのデータから作られた式かによって推定値が大きく変わります。このツールが1つの式でなく複数の式を並べ、幅として示すのはそのためです。
砂のN値は、同じ締まり具合でも深いほど大きくなります。上に載っている土の重さで砂が締め付けられ、打ち込みにくくなるからです。そこで、深さの影響を除くために有効上載圧 σv' で補正したN値(N1)を使います。σv' は、地下水位より上では土の単位体積重量 γt に深さを掛け、地下水位より下では浮力を差し引いた水中単位体積重量 γ'(飽和単位体積重量から水の約9.8 kN/m³を引いた値)を使います。
道路橋示方書(平成29年版)の式は φ = 4.8 ln N1 + 21 で、N1 = 170N/(σv'+70) です。σv' = 100 kN/m² のとき N1 = N になるよう換算しています。適用は N>5 の砂質土です。平成29年版の初版では定数が23となっていましたが、日本道路協会の正誤表で21に訂正されています。式の ln は自然対数で、N1 = 100 のとき約43°になります。川崎市の宅地造成技術指針は、原位置の σv' が50 kN/m²未満なら50として扱うと定めており、浅い位置で N1 が過大になるのを抑えています。
建築基礎構造設計指針(2019年版)の式は φ = √(20N1)+20 で、N1 = N/√(σv'/100) です。3.5≦N1≦20 の範囲で使い、N1 が20を超える場合は40°とします。同じN値でも道路橋示方書の式より大きめの値になる傾向があります。大崎式 φ = √(20N)+15 は、上載圧の補正を含まない古くからの式で、粘着力を0と仮定できる砂質土に使われます。N値が大きい範囲では、ほかの式よりかなり大きな値を出します。
粘性土は、内部摩擦角を0とみなし、粘着力を一軸圧縮強さ qu の半分(c = qu/2)として扱うのが一般的です。N値から qu を推定する式はいくつもあり、Terzaghi-Peck の qu = 12.5N(kN/m²)と、東京の地盤の試験結果から作られた大崎の qu = 40+5N がよく使われます。全国地質調査業協会連合会の報告では、N値と qu の関係式は文献によって最大で6.7倍もの差があると指摘されています。粘性土はN値が小さく、サンプラーの打ち込みで乱れやすいため、N値からの推定は砂以上に不確かです。
実務では、推定値を設計にそのまま使うのでなく、複数の式の値を比べ、安全側の値を選ぶか、土質試験で確かめるのが原則です。とくにN値の小さい軟弱な地盤では、式による差もN値自体の誤差も大きくなります。スウェーデン式サウンディング(SWS試験)から換算したN値に、さらにこの式を当てはめるのは推定を重ねることになるので避けます。このツールの結果は、地盤の性質の見当をつけ、試験の要否や設計の方針を考えるための目安として使ってください。
計算の例です。深さ5 mでN値15の砂層、地下水位が深さ2 m、地下水位より上の土の単位体積重量が18 kN/m³、下の土の水中単位体積重量が9 kN/m³とすると、有効上載圧は 18×2+9×3 = 63 kN/m² です。道路橋示方書の式では N1 = 170×15/(63+70) = 19.17 で φ = 35.2°、建築基礎構造設計指針の式では N1 = 15/√0.63 = 18.90 で φ = 39.4°、大崎式では φ = 32.3° になります。同じ試験結果から、7°以上の幅が出ることになります。
内部摩擦角が数度違うだけで、支持力係数や土圧係数は大きく変わります。たとえばランキンの主働土圧係数は、φ = 30°で0.333、35°で0.271と、2割近く違います。どの式を使ったかを必ず記録し、設計の基準が指定する式に合わせることが大切です。道路橋の設計なら道路橋示方書、建築物の基礎なら建築基礎構造設計指針というように、使う基準によって採用する式が決まっていることが多くあります。
業界・現場での使い方
擁壁・土留めの概略検討
背面の土の内部摩擦角を推定し、土圧の見当をつけます。
基礎の支持力の概算
φやcから支持力係数を読み、支持力の大まかな値を出します。
斜面安定の検討
土質試験の前に、地盤定数の幅を把握します。
ボーリング柱状図の読み取り
深さごとのN値から、層ごとの性質の目安をつけます。
土質試験の計画
推定値の幅が大きい層を見つけ、試験を行う層を決めます。
よくある間違い・注意点
- 1つの式の値だけを使う — 式によって7°以上違うことがあります。複数の式を比べ、安全側を選びます。
- 道路橋示方書の式を常用対数で計算する — 4.8 ln N1 の ln は自然対数です。常用対数で計算すると大幅に小さくなります。
- 適用範囲の外で使う — 道路橋示方書はN>5、建築基礎構造設計指針は3.5≦N1です。範囲外は使いません。
- 地下水位より下で湿潤単位体積重量を使う — 有効上載圧は浮力を引いた水中単位体積重量で計算します。
- SWS試験の換算N値に当てはめる — 推定を重ねることになり、誤差が大きくなります。
関連する規格・公的資料
- 公益社団法人 日本道路協会 道路橋示方書・同解説 IV下部構造編(平成29年11月)正誤表 — 参考資料1 式(参1.1) φ=4.8 log N1+21 への訂正
- 川崎市 宅地造成技術指針 第7章 地盤調査・地盤改良計画 — 大崎式・道路橋示方書の式・qu と粘着力の推定
- 全国地質調査業協会連合会 技術フォーラム2020「N値に関する物性値換算の問題と適応性の限界について」 — N値とせん断抵抗角・一軸圧縮強度の相関式の比較
- 公益社団法人 地盤工学会 — 地盤調査の方法と解説
- 一般社団法人 日本建築学会 — 建築基礎構造設計指針
- 一般社団法人 全国地質調査業協会連合会 — 標準貫入試験と地盤定数
- 国立研究開発法人 土木研究所 — 土質・基礎の研究
- 日本産業標準調査会(JISC) — JIS A 1219 標準貫入試験方法
※本ツールは公的基準に基づく参考計算です。医療・法務・税務の判断は最新の告示・規格および専門家の判断に従ってください。
よくある質問(FAQ)
N値から内部摩擦角を求める式は?
道路橋示方書の φ=4.8 ln N1+21、建築基礎構造設計指針の φ=√(20N1)+20、大崎式の φ=√(20N)+15 などがあります。
N1とは何ですか?
有効上載圧で補正したN値です。道路橋示方書は N1=170N/(σv'+70)、建築基礎構造設計指針は N1=N/√(σv'/100) です。
N値15の砂の内部摩擦角は?
深さ5m・地下水位2mの例で、道路橋示方書35.2°・建築基礎構造設計指針39.4°・大崎式32.3°です。
道路橋示方書の式の定数は21ですか23ですか?
平成29年版の正誤表で23から21に訂正されています。
ln と log のどちらで計算しますか?
自然対数(ln)です。N1=100で約43°になります。
粘性土の粘着力はN値から出せますか?
qu=12.5N(Terzaghi-Peck)や qu=40+5N(大崎)で一軸圧縮強さを推定し、c=qu/2 とします。
N値10の粘土の粘着力は?
Terzaghi-Peckで62.5kN/m²、大崎で45kN/m²です。
有効上載圧の求め方は?
地下水位より上は γt×深さ、下は水中単位体積重量 γ' を使って加えます。
推定値を設計に使ってよいですか?
概略の検討の目安です。設計に使う地盤定数は土質試験の結果を踏まえて設定します。