エアシリンダ推力計算
【ご注意】このページの計算結果・情報は参考値です。正確性・最新性は保証できません。税務・法務・お金・設計・施工・安全などに関わる判断は、公式の資料と専門家の確認のうえ、ご自身の責任で行ってください。免責事項
シリンダ内径・ロッド径・使用圧力を入れると、押し側と引き側の理論推力、負荷率を掛けた実効推力、そして動かしたい負荷から逆算した推奨標準内径を算出します。
エアシリンダ推力計算ツール
計算式
押し側の理論推力は F=P×π/4×D²、引き側はロッドの断面を差し引いて F=P×π/4×(D²−d²) です。圧力を MPa、内径を mm で入れると、MPa は N/mm² と同じ単位なので答えがそのまま N で出ます。既定値の内径50mm・0.5MPa では、受圧面積 π/4×50²=1,963.5mm² に 0.5 を掛けて押し側 981.7N、引き側は π/4×(50²−20²)=1,649.3mm² から824.7Nになります。
実際に動かせる荷重は理論推力に負荷率を掛けた値で、負荷率50%なら押し側 490.9N・引き側 412.4N が目安です。逆に「800N を動かしたい」なら、必要内径は D=√(4W/(π×P×負荷率))=√(4×800/(π×0.5×0.5))=63.8mm となり、標準内径では一段上の 80mm を選びます。
標準内径×使用圧力 押し側理論推力 早見表(N)
| 内径 | 受圧面積 | 0.3MPa | 0.4MPa | 0.5MPa | 0.6MPa | 0.7MPa |
|---|---|---|---|---|---|---|
| φ20 | 314mm² | 94 | 126 | 157 | 189 | 220 |
| φ25 | 491mm² | 147 | 196 | 245 | 295 | 344 |
| φ32 | 804mm² | 241 | 322 | 402 | 483 | 563 |
| φ40 | 1,257mm² | 377 | 503 | 628 | 754 | 880 |
| φ50 | 1,963mm² | 589 | 785 | 982 | 1,178 | 1,374 |
| φ63 | 3,117mm² | 935 | 1,247 | 1,559 | 1,870 | 2,182 |
| φ80 | 5,027mm² | 1,508 | 2,011 | 2,513 | 3,016 | 3,519 |
| φ100 | 7,854mm² | 2,356 | 3,142 | 3,927 | 4,712 | 5,498 |
標準内径とロッド径の組み合わせ(ISO 6432/ISO 15552 系の代表値)
| 内径 D | ロッド径 d | 規格系列 | 引き側の面積比 |
|---|---|---|---|
| φ20 | φ8 | ISO 6432(小形) | 84% |
| φ25 | φ10 | ISO 6432(小形) | 84% |
| φ32 | φ12 | ISO 15552 | 86% |
| φ40 | φ16 | ISO 15552 | 84% |
| φ50 | φ20 | ISO 15552 | 84% |
| φ63 | φ20 | ISO 15552 | 90% |
| φ80 | φ25 | ISO 15552 | 90% |
| φ100 | φ25 | ISO 15552 | 94% |
| φ125 | φ32 | ISO 15552 | 93% |
| φ160 | φ40 | ISO 15552 | 94% |
用途別の負荷率の目安
| 使い方 | 負荷率の上限 | 理由 |
|---|---|---|
| 静止して押し付ける(クランプ・圧着) | 70% | 加速が要らず、摩擦と圧力降下の分だけ見ればよい |
| 低速で搬送・位置決め(0.1〜0.3m/s) | 50% | 加速力と背圧、パッキン摩擦を吸収する余裕が要る |
| 高速で動かす・衝撃を伴う(0.5m/s以上) | 30%前後 | 慣性力が大きく、末端衝撃を緩衝で受ける必要がある |
| 垂直に持ち上げる | 50%以下(自重を負荷に加算) | 下降時は自重が推力に加わり、上昇時は差し引かれる |
※本ツールは理論式による参考計算です。機器の選定は各メーカーのカタログ値と安全率、および JIS・ISO と労働安全衛生法令の要求事項に従ってください。
エアシリンダ推力計算の詳しい解説
エアシリンダの推力は「圧力×受圧面積」という単純な式で決まりますが、現場で選定を誤る原因のほとんどは面積ではなく圧力の見積もりにあります。レギュレータの設定圧がそのままピストンに掛かるわけではなく、配管の摩擦、電磁弁の有効断面積、継手の絞りで供給圧は下がり、さらに動作中は排気側に背圧が残ります。とくにメータアウト制御では排気側の圧力がロッド側に残って押し側の推力を食うため、静止時に測った圧力で計算すると動作中の実力を過大に見積もることになります。負荷率という係数は、こうした圧力降下と摩擦、加速に必要な力をまとめて吸収するための余裕であり、理論推力に対して動かしたい荷重の割合を抑えることで、実機で狙いどおり動く設計にします。
押し側と引き側で推力が違うのはロッドが受圧面積を占有するためで、その差はロッド径の二乗に比例します。φ50 のシリンダにφ20 のロッドが付いていれば引き側の面積は押し側の84%に落ち、高圧・大径になるほど差は無視できなくなります。ワークを引き寄せる用途や、複動シリンダで往復とも荷重が掛かる場合は、必ず引き側の値で判断してください。逆にφ63 以上では規格上のロッド径が相対的に細く、面積比は90%を超えるので、押し引きの差は小さくなります。
必要内径を逆算するときは、荷重 W を圧力と負荷率で割った面積から直径を出し、その値以上の標準内径を選びます。標準内径は ISO 3320 の系列に沿って 6・10・16・20・25・32・40・50・63・80・100・125・160・200・250 が並び、メーカーのシリーズもこの数列で揃っています。計算値が 63.8mm なら φ63 では足りず φ80 になります。一段上に上がると受圧面積は約1.6倍に増えるため、推力に余裕が出る一方で空気消費量も同じ比率で増えます。推力が足りないからといって圧力を上げる判断は、圧縮機の吐出圧と配管の耐圧、他の機器への影響を伴うので、まず内径を上げるのが定石です。
速度も推力に影響します。高速で動かすほど加速に力を取られ、ストローク末端でピストンが停止するときの運動エネルギーは緩衝機構で吸収しなければなりません。負荷率を30%程度まで落とすのはこの慣性力のためで、同時に末端の衝撃をクッションやショックアブソーバの許容エネルギーと照合する必要があります。垂直取付では自重が常に一方向に掛かるので、上昇側は「荷重+自重」、下降側は「荷重−自重」として別々に検討し、電磁弁が切れたときにワークが落下しない保持手段も併せて考えます。
温度と環境も見落とされがちな要素です。低温ではグリースの粘度が上がって摺動抵抗が増え、高温ではシール材の耐久性が下がります。海外向け設備で圧力を psi や bar で指定される場合は、0.5MPa が 5bar、約72.5psi に相当することを押さえたうえで、同じ式に単位換算した圧力を入れれば結果は変わりません。どの単位で入力しても最後に N と kgf の両方で確認し、カタログの許容荷重・許容速度と突き合わせるのが、机上の推力と実機の動きを一致させる近道です。
別の条件での計算例
小形の φ32・ロッドφ12 を 0.4MPa で使う場合、受圧面積は 804.2mm² なので押し側 321.7N、引き側は π/4×(32²−12²)=691.2mm² から 276.5N です。負荷率50%なら 160.9N と 138.2N で、およそ16kg のワークを水平に運べる計算になります。逆に 5,000N の押し付け力を 0.5MPa・負荷率50%で出そうとすると必要内径は √(4×5,000/(π×0.5×0.5))=159.6mm で φ160 になり、空圧としてはかなり大きく、配管も電磁弁も太くなるので油圧シリンダを検討する境目です。選定の手順は、①荷重の大きさと方向を決める、②用途に応じた負荷率を決める、③シリンダ手前で実際に得られる圧力を決める、④必要内径を計算して一段上の標準内径を選ぶ、⑤引き側の推力・速度・末端の衝撃・ロッドの座屈を確認する、の順です。
業界・現場での使い方
治具・クランプの設計
押し付け力から必要内径を逆算し、静止用途なので負荷率70%で選定します。クランプ力の測定値と理論値の差が配管損失の指標になります。
搬送装置・ピック&プレース
水平搬送では負荷率50%、垂直では自重を加算して上昇側で判定します。速度が速いラインは末端の衝撃エネルギーも同時に確認します。
包装機・プレス補助
圧着や打ち抜きの補助では圧力の安定が推力の安定に直結するため、レギュレータ直後の圧力ではなくシリンダ手前の圧力で検討します。
設備保全・トラブル診断
推力不足の相談を受けたら、供給圧の低下と背圧をまず疑います。理論推力に対する実測荷重の比率が負荷率の実力値です。
よくある間違い・注意点
- 引き側も押し側と同じ推力だと思う — ロッドの断面だけ受圧面積が減ります。φ50・φ20ロッドなら引き側は84%です。
- レギュレータの設定圧で計算する — 配管・電磁弁・継手で圧力は下がり、動作中は背圧も残ります。負荷率で余裕を持たせるか、シリンダ手前の圧力で計算します。
- 負荷率100%で内径を決める — 理論推力ぴったりの荷重では動き出しません。静止で70%、搬送で50%、高速で30%が目安です。
- kgf と N を混同する — 1kgf は 9.80665N です。古いカタログの kgf 表記を N と読むと約10倍の誤差になります。
- 垂直取付で自重を忘れる — 上昇時はワークとロッドの自重が推力から差し引かれます。下降時は逆に加わるので、落下防止も含めて両方向を確認します。
関連する規格・公的資料
- 日本産業標準調査会(JISC) — JIS規格の検索と閲覧。空気圧・油圧の各規格番号はここで確認できる
- 日本フルードパワー工業会(JFPA) — 油圧・空気圧機器の業界団体。技術資料と機器の安全基準
- 日本フルードパワーシステム学会 — 油空圧の学術団体。基礎理論と最新の研究
- ISO(国際標準化機構) — ISO 6358・ISO 15552・ISO 3320 などの原規格
- 厚生労働省 — 労働安全衛生法と圧力容器・空気圧機器の安全規制
- e-Gov 法令検索 — ボイラー及び圧力容器安全規則・労働安全衛生法施行令の条文
- 高圧ガス保安協会(KHK) — 高圧ガス保安法の解説。1MPa以上の圧縮ガスの扱い
- 産業技術総合研究所 計量標準総合センター — 圧力・流量・温湿度の国家計量標準
- 日本機械学会 — 流体工学・機械設計の学術資料
- 日本規格協会(JSA) — JIS規格票の発行と規格の解説
- 労働安全衛生総合研究所 — 産業安全の研究機関。機械災害の防止
- 経済産業省 — 産業保安と省エネルギー施策。コンプレッサの省エネ指針
- ISO 3320(シリンダ内径・ロッド径の系列) — シリンダ内径とピストンロッド径の標準数列。標準内径の根拠
- ISO 15552(空気圧シリンダ 取付寸法 φ32〜320) — 中大形エアシリンダの取付互換寸法
- ISO 6432(空気圧シリンダ φ8〜25) — 小形エアシリンダの取付互換寸法
- JIS B 8370(空気圧システム通則) — 空気圧システムと機器の一般規則・安全要求事項
※本ツールは公的基準に基づく参考計算です。医療・法務・税務の判断は最新の告示・規格および専門家の判断に従ってください。
よくある質問(FAQ)
エアシリンダの推力はどう計算しますか?
圧力(MPa)×受圧面積(mm²)で N が出ます。既定値の内径50mm・0.5MPa では押し側 981.7N、引き側 824.7N です。
負荷率とは何ですか?
理論推力に対して実際に掛ける荷重の割合です。配管の圧力降下・摩擦・加速力を吸収する余裕で、静止で70%、搬送で50%、高速で30%が目安です。
引き側の推力が小さいのはなぜですか?
ロッドがピストンの面積を占有し、圧力を受ける面積が減るためです。差はロッド径の二乗に比例します。
800N を動かすにはどの内径が必要ですか?
0.5MPa・負荷率50%なら必要内径は63.8mm で、標準内径では φ80 を選びます。
kgf に直すにはどうしますか?
N を 9.80665 で割ります。981.7N は約100.1kgf です。
圧力を上げれば推力は増えますか?
比例して増えますが、圧縮機の吐出圧・配管耐圧・他機器への影響を伴います。まず内径を一段上げるのが定石です。
垂直に取り付けるときの注意は?
上昇側は自重を負荷に足し、下降側は落下防止を検討します。電磁弁が切れたときの保持も設計に含めます。
標準内径にはどんなサイズがありますか?
ISO 3320 の系列で 6・10・16・20・25・32・40・50・63・80・100・125・160・200・250 などが並びます。
高速で動かすと推力が足りなくなるのはなぜですか?
加速に力を取られ、末端の衝撃も緩衝で吸収する必要があるためです。負荷率を30%程度に落として選定します。