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双曲線関数 計算ツール|sinh・cosh・tanh と逆関数、値表・微分・工学応用

双曲線関数(Hyperbolic Functions)6種類 sinh, cosh, tanh, coth, sech, csch と、その逆双曲線関数 arsinh, arcosh, artanh を即計算。カテナリー曲線(懸垂線)・特殊相対性理論・ニューラルネットのtanh活性化・熱伝導方程式・波動方程式・オイラー公式との関係まで、値表・微分積分公式・工学応用を体系的に解説します。

最終更新:2026-08-05/監修:計算ツールズ編集部

双曲線関数 計算機

定義式と指数関数表現

基本定義

sinh(x) = (eˣ − e⁻ˣ) / 2

cosh(x) = (eˣ + e⁻ˣ) / 2

tanh(x) = sinh(x) / cosh(x) = (eˣ − e⁻ˣ) / (eˣ + e⁻ˣ)

coth(x) = 1 / tanh(x) / sech(x) = 1 / cosh(x) / csch(x) = 1 / sinh(x)

双曲線関数は指数関数 eˣ の対称成分・反対称成分として定義されます。sinh は奇関数(sinh(-x) = -sinh(x))、cosh は偶関数(cosh(-x) = cosh(x))で、両者の和は eˣ、差は e⁻ˣ に等しくなります(eˣ = cosh(x) + sinh(x))。

幾何学的定義

単位円 x²+y²=1 から三角関数(cos,sin)が定義されるように、双曲線 x²−y²=1 の右枝上の点を(cosh(t), sinh(t))と表現できます。ここで t は原点と点(cosh(t),sinh(t))および(1,0)で囲まれる領域の面積の2倍に対応する双曲線角です。

オイラー公式との関係

cos(x) = cosh(ix) / sin(x) = −i·sinh(ix)

複素数を経由すると、双曲線関数と三角関数は同一の関数の実軸・虚軸方向への展開として統合されます。オイラーの公式 e^(ix) = cos(x) + i sin(x) と対応する関係で、複素解析・電気工学の交流回路解析に多用されます。

三角関数との対比

項目三角関数(円関数)双曲線関数
幾何学的定義単位円 x²+y²=1単位双曲線 x²−y²=1
指数関数表現(e^(ix) ± e^(−ix))/2i, /2(eˣ ± e⁻ˣ)/2
周期性2π 周期周期なし(実軸上)
値域(sin/sinh)[−1, 1](−∞, ∞)
値域(cos/cosh)[−1, 1][1, ∞)
値域(tan/tanh)(−∞, ∞), 発散点あり(−1, 1), 発散点なし
基本恒等式sin²+cos²=1cosh²−sinh²=1
微分(sin/sinh)coscosh
微分(cos/cosh)−sin+sinh

形式的にはほぼ相似の代数構造を持ち、加法定理・倍角公式・微分積分にも並列した公式群が存在します。工学分野では「双曲線関数は非周期振動・指数減衰・カテナリー曲線を扱う三角関数」と理解すると位置付けが明確になります。

主要値の早見表

実務で頻用する主要値をまとめました。値は小数点以下6桁を掲載。

xsinh(x)cosh(x)tanh(x)
00.0000001.0000000.0000001.000000
0.10.1001671.0050040.0996681.105171
0.250.2526121.0314130.2449191.284025
0.50.5210951.1276260.4621171.648721
0.750.8223171.2946830.6351492.117000
1.01.1752011.5430810.7615942.718282
1.52.1292792.3524100.9051484.481689
2.03.6268603.7621960.9640287.389056
2.56.0502046.1322890.98661412.182494
3.010.01787510.0676620.99505520.085537
4.027.28991727.3082330.99932954.598150
5.074.20321174.2099490.999909148.413159

x=3 で tanh は既に 0.995 に達し、以後急速に 1 に漸近します。ニューラルネットのtanh活性化で「勾配消失」が起こる典型的な領域です。

恒等式・加法定理・倍角公式

基本恒等式

cosh²(x) − sinh²(x) = 1

1 − tanh²(x) = sech²(x)

coth²(x) − 1 = csch²(x)

加法定理

sinh(x±y) = sinh(x)cosh(y) ± cosh(x)sinh(y)

cosh(x±y) = cosh(x)cosh(y) ± sinh(x)sinh(y)

tanh(x±y) = (tanh(x)±tanh(y)) / (1±tanh(x)tanh(y))

三角関数の加法定理と比較すると、cosh の加法定理で符号が「+」になる点、tanh の分母が「1±」になる点(三角関数は「1∓」)が異なります。混同しやすいので暗記時は注意が必要です。

倍角・半角公式

sinh(2x) = 2 sinh(x) cosh(x)

cosh(2x) = cosh²(x) + sinh²(x) = 2cosh²(x)−1 = 1+2sinh²(x)

tanh(2x) = 2 tanh(x) / (1 + tanh²(x))

微分・積分公式

微分

d/dx sinh(x) = cosh(x)

d/dx cosh(x) = sinh(x)

d/dx tanh(x) = sech²(x) = 1 − tanh²(x)

d/dx coth(x) = −csch²(x)

d/dx sech(x) = −sech(x)·tanh(x)

d/dx csch(x) = −csch(x)·coth(x)

tanh の微分が「1 − tanh²」で書けるため、ニューラルネットの誤差逆伝播で計算が高速化される特徴があります。

積分

∫ sinh(x) dx = cosh(x) + C

∫ cosh(x) dx = sinh(x) + C

∫ tanh(x) dx = ln|cosh(x)| + C

∫ sech²(x) dx = tanh(x) + C

∫ 1/√(x²+1) dx = arsinh(x) + C

∫ 1/√(x²−1) dx = arcosh(x) + C(x>1)

逆双曲線関数

arsinh(x) = ln(x + √(x²+1))

arcosh(x) = ln(x + √(x²−1)) (x ≥ 1)

artanh(x) = (1/2) ln((1+x)/(1−x)) (|x| < 1)

逆双曲線関数は「エリア関数(area functions)」とも呼ばれ、記号は arsinh, arcosh, artanh(または asinh, acosh, atanh)が国際的な標準です。ISO 80000-2「量及び単位-第2部:数学的記号」で規定されています。「sinh⁻¹」表記は −1乗と紛らわしいため、学術論文・技術文書では arsinh 表記を推奨されます。

微分

d/dx arsinh(x) = 1 / √(x²+1)

d/dx arcosh(x) = 1 / √(x²−1) (x>1)

d/dx artanh(x) = 1 / (1−x²) (|x|<1)

マクローリン展開

sinh(x) = x + x³/3! + x⁵/5! + x⁷/7! + ...

cosh(x) = 1 + x²/2! + x⁴/4! + x⁶/6! + ...

tanh(x) = x − x³/3 + 2x⁵/15 − 17x⁷/315 + ...

三角関数のマクローリン展開と比べ、双曲線関数は全て「+」の交互和(cosh/sinh)、tanh は係数のパターンが複雑(ベルヌーイ数を含む)。原点近傍の高速な数値計算や、arsinh, artanh の実装で利用されます。|x|<1 の範囲で急速に収束するため、実装ライブラリでは |x| が小さい領域で級数展開、大きい領域で漸近展開を切り替えて桁落ちを回避します。

工学・物理・機械学習の応用

カテナリー曲線(懸垂線)

両端を固定した鎖・ケーブルが自重で描く曲線は y = a·cosh(x/a)。橋梁工学・送電線設計・アーチ橋(逆カテナリー)で必須。ガウディのサグラダ・ファミリアやセントルイスのゲートウェイ・アーチも逆カテナリー形状。

特殊相対性理論のローレンツ変換

速度パラメータ β=v/c、ラピディティ φ=artanh(β) を導入すると、ローレンツ変換はミンコフスキー空間の双曲線角回転として表現され、γ=cosh(φ), βγ=sinh(φ) となる。異なる慣性系間の速度合成もラピディティの単純加算で可能。

ニューラルネットのtanh活性化関数

tanh は値域(-1,1)・中心0で、シグモイド関数より学習収束が速い。RNN・LSTMの隠れ状態、LayerNorm前の活性化に多用。ただし|x|>3で勾配消失が起きるため、深層NNではReLU系に置き換えられる場面も。

熱伝導・拡散方程式の解

有限区間の熱伝導境界値問題で、定常解や過渡解の一部が sinh, cosh の組み合わせで表現される。フィンの熱設計(熱伝導と対流の連成)で温度分布は cosh の比で与えられる。

電気工学の伝送線路方程式

分布定数線路の電圧・電流はγ(伝搬定数)を用いてV(x)=V₀·cosh(γx) − Z₀I₀·sinh(γx)。高周波配線・電力送電線の設計、Smithチャートの背後にある基本式。

統計・機械学習のロジット・オッズ

artanh はロジット(logit)関数の半分、ロジスティック関数の逆関数として現れる。生存分析のリスク比、ロジスティック回帰、情報理論の相互情報量計算等で使用。

よくある間違い・注意点

  • 三角関数の加法定理と混同 — cosh(x+y)=cosh·cosh+sinh·sinh(符号+)。三角関数の cos(x+y)=cos·cos−sin·sin と符号が異なるため、暗記時の混同が頻発します。
  • arcosh の定義域を忘れる — arcosh(x) は x≥1 でしか実数値を返しません。cosh の値域が[1,∞)であることに対応。JavaScriptの Math.acosh(0.5) は NaN を返します。
  • artanh を |x|=1 で計算 — artanh(1)=∞、artanh(-1)=-∞ で発散します。ロジット計算等で確率0や1に近い値を入力すると桁溢れするため、微小εでクリッピングが必要。
  • sinh⁻¹ 表記の誤解 — 数式中の sinh⁻¹(x) は「sinh の逆関数」であり、1/sinh(x) の意味ではありません。混同を避けるため学術文書では arsinh 表記が推奨。
  • 大きな x での桁落ち — sinh(x)、cosh(x) は x=20 で約2億、x=50 で約2.6×10²¹ と急激に増大し、64bit浮動小数点でオーバーフロー。実装では対数変換または漸近展開で回避します。
  • tanh(0)=1 と勘違い — tanh(0)=0 です。tanh は原点で0、無限遠で±1に漸近するS字曲線。cosh(0)=1 と混同しないでください。
  • coth(0) の未定義 — coth(0) = 1/tanh(0) = 1/0 で未定義。x=0近傍で発散するため、実装で扱う際は例外処理が必要。

関連する規格・記法

  • ISO 80000-2 ― 量及び単位-第2部:数学的記号(Quantities and units — Part 2: Mathematics)。双曲線関数の記号 sinh, cosh, tanh, coth, sech, csch、および逆関数 arsinh, arcosh, artanh 等の国際標準記法。
  • JIS Z 8201 ― 数学記号。ISO 80000-2の国内対応規格。
  • IEEE 754 ― 浮動小数点演算標準。sinh, cosh 実装時のオーバーフロー・アンダーフロー処理の根拠。
  • IEC 60027-2 ― 電気工学用文字記号。伝送線路方程式で使用する双曲線関数の使用ルール。
  • C99/C++11 標準ライブラリ ― math.h/cmath ヘッダの sinh, cosh, tanh, asinh, acosh, atanh 関数を規格化。

参考文献・公的資料

より正確な公式・値表・応用例を確認したい場合は、以下の公的機関・学会の資料を参照してください。

※本ページの計算結果は倍精度浮動小数点演算に基づく近似値です。学術論文・工学設計・シミュレーション等の公式用途では、専用の数式処理ソフト(Mathematica, MATLAB, SymPy等)による多倍長精度計算や理論値との照合を推奨します。特に大きな|x|での sinh/cosh は指数的増大によりオーバーフローする点、arcosh・artanh の定義域制約に留意してください。

よくある質問(FAQ)

双曲線関数はなぜ「双曲線」と呼ぶ?

単位円 x²+y²=1 から三角関数が定義されるように、単位双曲線 x²−y²=1 の右枝上の点を (cosh(t), sinh(t)) で表現できることに由来します。t は双曲線と直線で囲まれる面積の2倍(双曲線角)。円関数(三角関数)と対をなす概念です。

sinh, cosh, tanh の読み方は?

英語圏では sinh(シャイン、シンチ)、cosh(コッシュ)、tanh(タンチ、タンエイチ)と読まれます。日本の理工系では「ハイパボリック・サイン」「ハイパボリック・コサイン」「ハイパボリック・タンジェント」または単に「シンチ・コッシュ・タンチ」と発音する慣例が定着しています。

カテナリー曲線とは?

両端を固定した均質な鎖・ケーブルが自重で描く曲線 y = a·cosh(x/a) を指し、日本語では懸垂線(けんすいせん)。放物線と混同されがちですが、放物線は「単位長さ当たり水平方向に均一荷重」(吊り橋のケーブル)、カテナリーは「単位長さ当たり自重が均一」(何も吊るしていない鎖)で別の曲線です。

tanh がニューラルネットに使われるのはなぜ?

値域が(-1,1)で中心0、微分が(1-tanh²)と簡潔で計算が高速なため、シグモイド関数(値域(0,1))より収束が速い性質があります。RNN・LSTMの隠れ状態やゲート、LayerNorm前の活性化に頻用。ただし|x|>3で勾配消失(飽和領域)が起き、深層NNではReLU系に置き換えられる場面も多いです。

特殊相対性理論との関係は?

ラピディティ φ=artanh(v/c) を導入すると、ローレンツ変換はミンコフスキー時空の双曲線角回転として簡潔に書けます。γ=cosh(φ), βγ=sinh(φ) となり、速度合成は φ の単純加算で表現可能。相対論の教科書で標準的に扱われる概念です。

三角関数の加法定理と何が違う?

cosh(x+y)=cosh·cosh+sinh·sinh(符号+) 対 cos(x+y)=cos·cos−sin·sin(符号−)、tanh(x+y)=(tanh+tanh)/(1+tanh·tanh) 対 tan(x+y)=(tan+tan)/(1−tan·tan)。cosh, tanh の加法定理で符号が「+」になる点が違います。オイラーの公式で複素数展開すると同型構造になります。

逆双曲線関数の表記 sinh⁻¹ と arsinh のどちらが正しい?

ISO 80000-2およびJIS Z 8201では arsinh, arcosh, artanh(または asinh, acosh, atanh)を推奨。sinh⁻¹ は「sinhの-1乗」(=1/sinh)と誤読されうるため、学術論文・技術文書では arsinh 表記を優先すべきです。プログラミング言語では asinh, acosh, atanh 表記が一般的。

cosh の最小値は?

cosh(0)=1 が最小値。cosh は偶関数で下に凸のU字型曲線を描き、任意の実数xで cosh(x)≥1 が成り立ちます。基本恒等式 cosh²−sinh²=1 の直接の帰結です。

tanh の値域はなぜ(-1,1)?

tanh(x) = (eˣ − e⁻ˣ)/(eˣ + e⁻ˣ) は、|分子|<|分母|が常に成り立つため、値域は開区間(-1,1)。x→+∞で1に、x→-∞で-1に漸近しますが、決して到達しません。この有界性がロジスティック関数と類似し、機械学習で好まれる理由です。

大きな x で計算するとオーバーフローする?

はい、sinh(x), cosh(x) は指数関数的に増大し、x=20で約2億、x=50で約2.6×10²¹、x=710付近で64bit浮動小数点(倍精度)がオーバーフロー(Inf)します。実装ではlog空間演算や漸近展開(x>数十で e^x/2 で近似)で回避します。

複素数の双曲線関数は?

複素引数でも同じ定義式 sinh(z)=(e^z−e^(-z))/2 が使え、cos(z)=cosh(iz), sin(z)=−i·sinh(iz) の関係で三角関数と結ばれます。複素解析・信号処理・電気工学で虚数指数の交流信号を扱う際に自然に登場します。

逆双曲線関数の実務用途は?

artanh はロジット関数の半分(標準ロジット = 2·artanh)として、統計・生存分析・ロジスティック回帰の解析で使用。arsinh は歪んだデータの分散安定化変換(逆正弦双曲線変換)として、大量の外れ値を含むデータの正規化に活用され、経済統計の所得分布分析にも用いられます。