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ワイヤ送給MAGMIG溶接ロボット

ワイヤ送給速度(WFS) 計算ツール|MAG/MIG溶接の電流・径から送給速度・消費量算定

MAG/MIG溶接のワイヤ送給速度(WFS: Wire Feed Speed)を、溶接電流とワイヤ径から瞬時に算出。ワイヤ消費量(kg/h)、溶着量、ロットあたり必要ワイヤ数、ソリッド/フラックス入りワイヤの区別まで対応。JIS Z 3312/3313規格、CO₂/MAG/MIG/セルフシールドの現場実務、WPS(溶接施工要領書)作成、ロボット・自動機のパラメータ設計に活用できます。

最終更新:2026-08-08/監修:計算ツールズ編集部

ワイヤ送給速度(WFS) 計算機

計算式と単位系

基本式:電流とWFSの関係

WFS(m/min) ≒ 溶接電流(A) ÷ (ワイヤ径(mm) × 30)

ソリッドワイヤ(MAG/MIG)の実用近似式です。ワイヤ径φ1.2mm・電流200AでWFS ≒ 5.6m/minとなります。厳密には、送給速度は溶融速度(バーンオフレート)と平衡し、これは電流密度・チップ間距離(CTWD)・ワイヤ材質・シールドガス種で変動します。実機ではセンサーで実測WFSをフィードバック制御しています。

ワイヤ消費量の計算

消費量(kg/h) = WFS(m/min) × π × (径mm)² / 4 × 密度(g/cm³) × 60 / 1000

φ1.2mm・WFS 5.6m/minの場合、断面積 π×0.6²=1.131mm²、体積 5.6×1000×1.131=6333mm³/min = 6.333cm³/min、質量 6.333×7.85=49.7 g/min = 2.98 kg/h。ソリッドワイヤ20kgスプールは約6.7時間のアーク時間で消費します。

溶着量と消費量の関係

溶着効率 = (溶着量 ÷ 消費量) × 100%

ソリッドワイヤの溶着効率は90〜95%(スパッタ・ヒューム損失5〜10%)、フラックス入りワイヤ(FCW)は80〜85%(スラグ・スパッタ損失15〜20%)、被覆アーク溶接棒は50〜65%(スラグ・スタブ端損失35〜50%)。ワイヤの経済性計算では溶着効率の考慮が不可欠です。

実質消費量の計算

実質消費量 = アーク中消費量 × アーク稼働率(%)

アーク稼働率(Arc-on Time / Duty Cycle)は、勤務時間のうちアーク発生時間の比率。半自動溶接では30〜50%、ロボット溶接では60〜80%、専用機・自動溶接では80〜95%が実測目安。8時間勤務・稼働率50%なら実アーク時間4時間で、実質ワイヤ消費量はアーク中消費量の1/2となります。

電流・径別 WFS早見表(ソリッドワイヤ)

MAG/MIG溶接の代表的な電流・ワイヤ径組み合わせにおけるWFS早見表です。実機のトーチ設定・トリマー校正値の基準として活用してください。

ワイヤ径100A150A200A250A300A350A400A
φ0.84.26.38.310.412.5
φ0.93.75.67.49.311.113.0
φ1.03.35.06.78.310.011.713.3
φ1.22.84.25.66.98.39.711.1
φ1.43.64.86.07.18.39.5
φ1.63.14.25.26.37.38.3

数値はm/min単位。φ0.8-1.0は薄板・自動車車体・電機筐体、φ1.2は汎用・鉄骨・機械部品、φ1.4-1.6は厚板・造船・橋梁・重機部品向けが目安です。

ワイヤ種別と密度・特性

ワイヤ種別JIS規格密度(g/cm³)溶着効率用途
ソリッドワイヤ(軟鋼・MAG)JIS Z 3312 YGW11/YGW127.8590-95%汎用鉄鋼MAG溶接
ソリッドワイヤ(軟鋼・CO₂)JIS Z 3312 YGW15/YGW187.8588-93%CO₂溶接、コスト重視
フラックス入りワイヤ(軟鋼)JIS Z 3313 YFW-C50DR/T49JA7.4-7.6(見掛)80-85%造船・橋梁・厚板
メタル系フラックスワイヤJIS Z 3313 YFW-C50GM7.5-7.788-93%スパッタ少、ロボット向け
ステンレスワイヤ 308系JIS Z 3321 Y308/Y308L7.9390-95%SUS304溶接
ステンレスワイヤ 316系JIS Z 3321 Y316/Y316L7.9890-95%SUS316耐食用
アルミワイヤ 4043系JIS Z 3232 A40432.6885-90%Al-Si合金、汎用
アルミワイヤ 5356系JIS Z 3232 A53562.6585-90%Al-Mg合金、高強度
硬化肉盛ワイヤJIS Z 33267.7-7.985-90%摩耗部品・補修

フラックス入りワイヤ(FCW)は中空管状のワイヤ内部にフラックスを充填した構造で、見掛密度はソリッドより低く(7.4〜7.6g/cm³程度)、消費量計算では実測値または各メーカーカタログ値を使用します。ソリッドと同一電流ではWFSがやや高くなり、深溶込み・厚板高能率溶接に適します。

溶着量と消費量の関係

溶着量の計算

溶着量(kg/h) = 消費量(kg/h) × 溶着効率

φ1.2mmソリッドワイヤ・200A・アーク時間1時間の場合、消費量2.98kg/h × 溶着効率92% = 溶着量2.74kg/h。差分0.24kgはスパッタ(0.15kg)・ヒューム(0.05kg)・その他(0.04kg)として損失します。スパッタ回収装置(集塵)により一部再利用は可能ですが、通常は廃棄処分。

1kg当たり溶接距離の目安

ワイヤ径断面積(mm²)1kg=何m備考
φ0.80.503約253m1kgで約250m
φ0.90.636約200m
φ1.00.785約162m
φ1.21.131約113m1kgで約113m
φ1.41.539約83m
φ1.62.011約63m

ソリッドワイヤの計算例。長さ=1000÷(π×(径/2)²×7.85÷1000)。φ1.2で1kg=約113m、20kgスプールで約2260m分のワイヤ量となります。

アーク電圧・チップ間距離との関係

電流とアーク電圧の目安

電流(A)推奨アーク電圧(V) CO₂推奨アーク電圧(V) MAG
10017-1917-19
15018-2118-21
20020-2421-25
25023-2724-28
30026-3027-31
35029-3330-34
40032-3633-37

チップ間距離(CTWD: Contact Tip to Work Distance)

CTWDが長いほどワイヤ突出しが増え、抵抗発熱で電流が減少・WFSが増加します。標準的な設定はφ1.2mmで15〜20mm、φ1.6mmで20〜25mm。ロボット溶接では±2mm精度で保つ必要があります。CTWDを1mm変更すると電流が5〜10A変動し、溶込み深さ・ビード形状に影響します。

シールドガスの影響

CO₂ガスは熱伝導率が高く深溶込みが得られる反面、スパッタ多。MAGガス(Ar80%+CO₂20%)はスパッタ少・美しいビード。MIGガス(Ar100%またはAr+O₂2%)はステンレス・アルミ用でスプレー移行モード。使用ガスに応じてワイヤ種別を選定します(JIS Z 3312のYGW11はMAG専用、YGW15はCO₂専用等)。

業界での応用

自動車産業・車体組立

薄板(0.7〜3.2mm)車体パネル・シャーシフレーム・排気系のロボット溶接。φ0.9〜1.0mmソリッドワイヤ、CO₂/MAG、150〜200A、WFS 5〜8m/minが標準。1台あたりワイヤ消費量2〜4kg。生産計画・ワイヤ発注管理でWFS推定は必須。

造船・海洋構造物

厚板(12〜50mm以上)の多層盛溶接。フラックス入りワイヤ(FCW)φ1.4〜1.6mm、300〜400A、CO₂/MAG。溶着効率と多層盛回数から総ワイヤ量を積算。SM490A/EH36等の高張力鋼板対応が中心。エレクトロスラグ溶接・サブマージアーク溶接との組合せ運用。

建築鉄骨・ビル構造物

H鋼・BOX柱・仕口ダイアフラムの溶接。柱梁接合部の完全溶込溶接(CJP)ではWFSと電圧の精密制御が要求される。国土交通省告示・建築基準法施行令に基づく溶接施工要領書(WPS)・溶接施工試験(PQR)の作成にWFS実測値が必須。

ロボット溶接・自動機システム

ロボットティーチング時のWFSプリセット。パナソニック・ダイヘン・OTC・ファナック・安川電機・KUKA等の各社ロボットで、WFS/電流/電圧の3パラメータ同時制御。統合電源(シナジック電源)ではワイヤ径・材質選択でパラメータを自動最適化。

圧力容器・プラント配管

石油化学プラント・発電プラントの圧力容器・配管溶接。KHK・高圧ガス保安法・JIS B 8265準拠。ステンレスワイヤY308/316による裏波溶接、TIG初層+FCW充填の複合溶接。溶接記録(溶接記録紙・タブレット記録)にWFS・電流・電圧が全ビード分残される。

橋梁・鉄道車両

橋梁の桁溶接・鉄道車両アルミ車体溶接。JIS B 8267・道路橋示方書の溶接部要求性能に基づく高精度WPS/PQR。アルミMIG(φ1.6mm・A5356・250A・WFS 8〜10m/min)、鉄鋼サブマージ・FCWの組み合わせで低スパッタ・低ヒューム・高外観品質を実現。

よくある間違い・注意点

  • ワイヤ径固定で電流だけ調整 — ワイヤ径×電流はセットで管理すべきパラメータ。φ1.2mmで400Aは電流過剰でアーク不安定、φ1.6mmで100Aは短絡多発。電流密度(A/mm²)=電流÷ワイヤ断面積が適正範囲(150〜300 A/mm²)に入るよう組み合わせます。
  • ワイヤ消費量の過小見積 — スパッタ・ヒューム・スラグ・切端くず等のロス(15〜25%)を無視すると、ワイヤ発注量が不足しライン停止に。実測消費量 = 溶着量 × 1.15〜1.25で見積り、余裕を持って発注します。
  • アーク稼働率100%で計算 — 半自動溶接では実アーク時間は勤務時間の30〜50%、ロボット溶接でも60〜80%。稼働率を無視すると、8時間勤務あたりのワイヤ消費が2〜3倍に過大評価されます。生産計画・原価計算では稼働率を必ず反映します。
  • ソリッドとFCWの消費量を同一視 — フラックス入りワイヤ(FCW)はソリッドより見掛密度が低く(7.4〜7.6g/cm³)、また同一電流でWFSがやや高くなります。消費量計算では各メーカーのカタログ値・実測値を使用してください。
  • チップ間距離(CTWD)の管理漏れ — CTWDが変動すると実際の電流・WFS・溶込みが変動します。手動溶接でCTWDの1mmずれで電流5〜10A変動、ロボットでは±2mm精度でトーチ姿勢制御が必要。ノズルカス除去・チップ摩耗管理も定期的に。
  • アーク電圧の不整合 — 電流に対するアーク電圧が低すぎると短絡アーク・スパッタ多、高すぎるとアーク長長すぎ・アンダーカット。CO₂・MAG・MIGの各推奨電圧テーブル(本ページ参照)から適正値を選定します。
  • ガス種と鋼種の不一致 — 軟鋼MAGにMIGガス(Ar100%)を使うとスパッタ多発、SUSにCO₂を使うと炭素含有率上昇で耐食性低下。ワイヤと鋼種とガスは一貫性を持って選定してください。

関連する規格・法令

  • JIS Z 3312 ― 軟鋼、高張力鋼及び低温用鋼用のマグ溶接及びミグ溶接ソリッドワイヤ(YGW11/12/15/18等)。
  • JIS Z 3313 ― 軟鋼、高張力鋼及び低温用鋼用アーク溶接フラックス入りワイヤ(YFW-C50DR、T49J0等)。
  • JIS Z 3321 ― 溶接用ステンレス鋼溶加棒、ソリッドワイヤ及び鋼帯(Y308/316/309等)。
  • JIS Z 3232 ― アルミニウム及びアルミニウム合金の溶加材(A4043/5356等)。
  • JIS Z 3326 ― 硬化肉盛用アーク溶接フラックス入りワイヤ。
  • JIS Z 3841 ― 半自動溶接技能者評価試験方法及び判定基準。
  • JIS Z 3255 ― 溶接施工要領書(WPS)及びその承認のための試験。
  • 建築基準法施行令 第67条(接合) ― 建築鉄骨溶接の要求基準。
  • 高圧ガス保安法(圧力容器溶接) ― 圧力容器・高圧ガス設備の溶接資格・施工要件。
  • ISO 3834(溶接品質要求事項) ― 国際標準の溶接管理要求。ISO 3834-1〜4。
  • ISO 15614(WPS/PQR) ― 溶接施工要領書の承認試験。

参考文献・公的資料

溶接パラメータ・ワイヤ選定・施工管理の詳細は、以下の公的機関・業界団体の一次資料を参照してください。

※本ページの計算値は代表的な近似式に基づく参考値です。実施工では使用するワイヤメーカー・電源・ガス組成による実測値が優先されます。建築鉄骨・圧力容器・橋梁等の法令適用工事では、有資格者(溶接管理技術者(WES 8103)・特別ボイラー溶接士等)の判断とWPS/PQR(溶接施工要領書・溶接施工試験記録)による正式なパラメータ管理が必要です。安全衛生については労働安全衛生規則(アーク溶接特別教育・保護具・換気)を遵守してください。

よくある質問(FAQ)

φ1.2ワイヤ・200AのWFSは?

近似式(WFS ≒ 電流÷(径×30))により約5.6m/min。消費量は約2.98 kg/h、20kgスプールで約6.7時間のアーク時間で消費します。実際のWFSはワイヤ材質・電源特性・チップ間距離により±10%程度変動しますので、実機のセンサー実測値で校正してください。

ソリッドワイヤとFCWの違いは?

ソリッドワイヤは無垢の金属線で、CO₂/MAGガスシールドが必要。密度7.85g/cm³。フラックス入りワイヤ(FCW)は中空管状で内部にフラックス充填、見掛密度7.4〜7.6g/cm³。FCWは深溶込み・厚板高能率、セルフシールド型は屋外・風雨中でも溶接可能で造船・橋梁で多用されます。

ワイヤ消費量の実務見積り方法は?

実質消費量 = 溶着量 × 1.15〜1.25(スパッタ・ロス考慮) × アーク稼働率で計算します。8時間勤務・φ1.2mm・200A・稼働率50%なら、アーク時間4h × 消費量2.98kg/h = 約12kg/日。月20日稼働で240kg、20kgスプール12本の必要量となります。

電流密度の適正範囲は?

ソリッドワイヤの電流密度(A/mm²)=電流÷ワイヤ断面積が150〜300 A/mm²が適正範囲。φ1.2mm(断面積1.131mm²)なら170〜340Aが範囲、φ1.6mm(2.011mm²)なら302〜603A。この範囲外では溶接性が悪化し、パラメータ調整で対応できない場合はワイヤ径変更を検討します。

アーク電圧の適正値は?

CO₂溶接では電流100Aで17〜19V、200Aで20〜24V、300Aで26〜30V。MAGはCO₂より1〜2V高く設定します。電圧が低すぎると短絡アーク・スパッタ多、高すぎるとアーク長長すぎ・アンダーカット発生。溶接姿勢(下向き/立向き/上向き)によっても最適値が変わります。

チップ間距離(CTWD)は何mmが標準?

φ0.9mmで10〜15mm、φ1.0mmで12〜18mm、φ1.2mmで15〜20mm、φ1.4mmで18〜22mm、φ1.6mmで20〜25mm。CTWDが長いほど抵抗発熱でワイヤ突出しが高温化し、電流減少・WFS増加。ロボット溶接では±2mm精度で保持します。

ロボット溶接のアーク稼働率は?

ロボット溶接では60〜80%が実測目安。段取り・治具セット・シーム検知・パーツ交換の時間を含むと、8時間シフトあたり実アーク時間5〜6.5時間。専用機・自動溶接ラインではさらに高く80〜95%(15〜30分の段取りのみ)を達成します。

溶着効率とは?

溶着量÷ワイヤ消費量×100(%)。ソリッド90〜95%、フラックス入り80〜85%、被覆アーク溶接棒50〜65%。差分はスパッタ・スラグ・ヒューム・切端くず等として損失。ワイヤコスト計算では溶着効率を反映し、実際に母材に付着した金属量を評価します。

WPS(溶接施工要領書)にWFSは記載必要?

ISO 15614・JIS Z 3255・AWS D1.1に基づくWPSでは、電流・電圧・溶接速度・シールドガス種類/流量・ワイヤ径/種別・CTWDの範囲を明記します。WFS自体は電流と径から一意に決まるため直接記載しないケースもありますが、パルスMAGなどではWFSも指定します。

スパッタを減らす方法は?

①MAGガス(Ar80%+CO₂20%)への切替、②アーク電圧の最適化、③電源のパルス制御・シナジック電源採用、④メタル系FCWの使用、⑤ワイヤ送給ローラ・チューブライナー保守、⑥CTWDの精密管理が有効。近年はDCEP+アーク波形制御でスパッタを1/3以下に低減する電源も普及しています。

ワイヤスプールの標準サイズは?

20kg(300mmφリール)が最も一般的、他に15kg・12kg・5kg・1kg(コッパ巻)があります。ロボット溶接や大量生産ではペール缶入り(250〜300kg)・パックワイヤ(BB巻・Marathon Pac等)を使用してワイヤ交換頻度を減らします。

アルミワイヤは鋼ワイヤと同じ計算式でOK?

WFS式(電流÷径÷30)はソリッド鋼ワイヤ専用です。アルミは電気抵抗率が鋼の1/5・融点660℃と低いため、同一電流でWFSは1.5〜2倍高くなります。アルミ専用の近似式か、電源メーカーの推奨WFS表を参照してください。密度2.68g/cm³で消費量計算します。