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津波遡上防災ハザード

津波遡上高 計算ツール|沿岸津波高・距離・標高から浸水深と危険度判定

沿岸津波高・海岸からの距離・内陸標高から津波の遡上高・浸水深・安全性判定を即算出。東日本大震災(2011)や南海トラフ地震想定(内閣府M9級)の実データを基に、家庭防災・企業BCP・自治体避難計画に必要な避難判断を支援します。V字湾での増幅、河川遡上、引き波リスク、津波防災地域づくり法の警戒区域指定まで、公的ハザードマップと併用して活用してください。

最終更新:2026-07-30/監修:計算ツールズ編集部

津波遡上高・浸水深判定ツール

計算式と前提条件

本ツールの近似式

遡上高 R = T × (1 − D × 0.05)

浸水深 = max(0, R − 内陸標高)

ここでTは沿岸津波高(m)、Dは海岸からの距離(km)。距離1kmあたり5%減衰を仮定した簡易近似で、内閣府「南海トラフ地震における被害想定」の平均的な地形での距離減衰率を参考にしています。

実際の津波挙動

津波の遡上は地形に強く依存し、平坦な砂浜では距離減衰が大きい一方、V字湾・岬・河川では逆に増幅(3〜4倍)します。東日本大震災では明治三陸津波(1896)の記録を上回る遡上高40.5m(岩手県宮古市)を観測。本ツールは概算のみで、実際の避難判断は各自治体のハザードマップと気象庁の津波警報を優先してください。

数値解析の精度

実務の津波遡上シミュレーションでは、非線形長波方程式(NLSW)を有限差分法で解く数値モデル(TUNAMI-N2・COMCOT・GeoClaw)を用います。海底地形・海岸線形状・河川・堤防・建物を精緻にモデル化することで、10m単位のメッシュで遡上高を予測します。

浸水深別 被害早見表

浸水深建物被害人的リスク推奨行動
0〜0.3m床下浸水低(徒歩避難可)速やかに高台へ
0.3〜0.5m床下浸水・自動車浸水徒歩困難・車両流失開始直ちに高所避難
0.5〜1m床上浸水・車両流失徒歩不可・水流に流される建物の2階以上へ
1〜2m木造家屋損壊生命危険大鉄筋3階以上へ
2〜3m木造家屋倒壊生命危険極大鉄筋4階以上・高台
3〜5m木造全壊・車両大規模流失ほぼ生命喪失鉄筋5階以上・避難タワー
5m以上鉄筋建物にも損傷ほぼ全滅可能な限り高台・山地

浸水深と流速の組合せが生死を分けます。流速2m/sを超えると成人男性でも歩行不可能で、車両は流失し始めます。内閣府・国土交通省の「浸水想定区域図」ではこれらのゾーンが色分け表示されます。

過去津波の実例データ

地震名(年)M最大遡上高主要被害地域死者・行方不明者
明治三陸地震(1896)8.238.2m 岩手県三陸海岸全域約22,000名
関東大震災(1923)7.912m 熱海相模湾沿岸津波犠牲者約100名
昭和三陸地震(1933)8.128.7m 岩手県三陸海岸約3,000名
チリ地震津波(1960)9.56.4m 三陸三陸海岸・北海道142名(日本)
日本海中部地震(1983)7.714.9m 秋田秋田・青森海岸104名
北海道南西沖地震(1993)7.831.7m 奥尻島奥尻島・北海道沿岸230名
スマトラ島沖地震(2004)9.134m インドネシアインド洋沿岸約230,000名
東日本大震災(2011)9.040.5m 岩手県宮古市東北・関東沿岸約22,000名

南海トラフ地震想定(内閣府)

2012年の中央防災会議「南海トラフ巨大地震モデル検討会」報告書に基づくM9クラスの最大想定津波高。実際の発生時にはこれ以上の可能性もあり、平均でも大きな地域で10m超が想定されています。

都道府県市区町村最大津波高到達時間
高知県黒潮町34m約10分
高知県土佐清水市34m約10分
徳島県海陽町24m約20分
三重県南伊勢町27m約20分
和歌山県串本町19m約20分
静岡県下田市33m約20分
宮崎県宮崎市16m約40分
愛知県田原市22m約20分

遡上高が増幅する要因

湾形状による集中

V字型の狭い湾(リアス式海岸)では津波が集中し、湾奥で高さ3〜4倍に増幅。三陸海岸(岩手・宮城)がこの地形の典型で、東日本大震災の40.5mも湾奥集中の結果です。

河川遡上

河川に沿って津波は減衰せずに10km以上遡上する事例あり。東日本大震災では北上川で50km、名取川で6km上流まで遡上を確認。河口から遠くても油断は禁物。

低地部の広範囲浸水

平野の低地部では距離減衰が緩やかで、内陸5km以上まで広範囲浸水。仙台平野では海岸線から4〜5km内陸まで大規模浸水しました。

引き波と第2波以降

初期の引き波(海面が沖に後退)は津波接近のサイン。第1波より第2波・第3波が大きいケースが多く、警報解除まで海岸に近づかないことが鉄則。

気象庁津波警報・注意報の詳細

気象庁が発表する津波関連情報の分類とそれぞれの意味・推奨行動を整理しました。

種別予想津波高発表基準推奨行動
大津波警報(特別警報)3m超(5m/10m/10m超)甚大な被害予想直ちに高台・避難タワーへ
津波警報1〜3m(3m表示)木造家屋損壊予想直ちに高台へ避難
津波注意報20cm〜1m(1m表示)海上・海岸で被害予想海岸から離れる
津波予報(若干の海面変動)20cm未満被害の心配なし通常通り

大津波警報発表時はNHK・民放全社の緊急放送・エリアメール・緊急速報メールで通知が届きます。地震発生時は揺れが小さくても、震源が沖合の場合は津波の可能性があり要警戒。

津波避難の実践的ステップ

ステップ1: 地震発生直後(0〜1分)

身の安全確保が最優先。落下物・家具転倒から身を守る。強い揺れまたは長い揺れなら津波の可能性を考える。ラジオ・スマホの緊急速報メールをオン。

ステップ2: 揺れ収束後(1〜3分)

気象庁津波警報を確認。沿岸5km以内在住なら警報を待たずに避難開始。徒歩で高台または鉄筋3階以上に向かう。車利用は道路渋滞リスクありで原則不可。

ステップ3: 高所到達後(避難完了後)

避難場所で情報収集。警報解除まで海岸に近づかない。第2波・第3波が大きい可能性が高い。家族・近隣との安否確認。

ステップ4: 警報解除後

気象庁警報解除後も、しばらくは海面変動あり。港湾・河口付近は当日中の帰宅を避け、翌日以降にニュース・自治体広報で状況確認して行動。

業界・現場での使い方

自治体防災・ハザードマップ作成

市町村は津波防災地域づくり法により津波警戒区域・特別警戒区域を指定し、ハザードマップを公表する義務があります。TUNAMI-N2等の数値シミュレーションを外注し、避難施設・避難経路の指定と整合させます。

企業BCP(事業継続計画)

沿岸事業所を持つ製造業・物流・観光業では、津波リスクを組み込んだBCP策定が必須。工場の重要設備は上階配置、データセンター内陸移転、備蓄倉庫の海抜10m以上確保等の対策が主流です。

宿泊施設・観光業

沿岸ホテル・旅館では、宿泊客への津波避難ルート案内と定期避難訓練が義務。海抜表示看板・避難タワーへの誘導サインの設置が観光庁ガイドラインで推奨されています。

沿岸工場・タンク・港湾施設

石油・化学プラント・原発では、津波高想定+安全余裕(1.5〜2倍)を防潮堤・非常用電源配置に反映。福島第一原発事故以降、電力・化学業界で想定津波高の再評価が全国で進みました。

個人・家庭の防災

ハザードマップで自宅の浸水想定を確認し、避難場所・経路を家族で共有。津波警報時は「まず逃げる」が鉄則で、車を使わず徒歩で高台へ向かうことが推奨されます。

不動産取引時の重要事項説明

2018年改正宅地建物取引業法により、津波災害警戒区域内の物件は重要事項説明で告知義務あり。購入者は物件の海抜・浸水想定を確認して意思決定します。

都道府県別 津波リスクの実情

南海トラフ・日本海溝・千島海溝の各地震想定に基づく、主要沿岸都道府県の津波リスク概要。詳細は各自治体ハザードマップを参照。

都道府県主要想定最大津波高特徴
北海道(太平洋岸)千島海溝地震27.9m(えりも町)M9級で東日本並み
青森・岩手・宮城日本海溝地震29.7m(岩手)三陸V字湾増幅
福島・茨城・千葉日本海溝・房総沖17.5m(福島)原発サイト対応強化
東京都(島嶼)南海トラフ・房総沖28m(神津島)島嶼避難計画
静岡・愛知・三重南海トラフ33m(下田)10〜20分到達
和歌山・徳島・高知南海トラフ34m(黒潮町)最短到達時間
九州(宮崎・鹿児島)南海トラフ・南西諸島海溝18m(宮崎)広域津波リスク
沖縄琉球海溝・南西諸島海溝16m(石垣島)離島避難課題
日本海沿岸日本海東縁地震約12m(秋田)到達時間短い

数値は内閣府中央防災会議・地震調査研究推進本部の最新想定に基づきます。実際のリスクは市町村単位で大きく異なるため、居住地・勤務地の自治体ハザードマップを必ず確認してください。

よくある間違い・注意点

  • 平均津波高で判断する ― 湾形状・海底地形による局所増幅で3〜4倍になる場合あり。ハザードマップの示す値は平均ではなく最悪ケースを優先。
  • 河川遡上の無視 ― 東日本大震災で北上川50km、名取川6kmまで遡上した実例あり。河口から離れていても河川沿いは要警戒。
  • 「大丈夫と思う心理」の危険 ― 「まだ大丈夫」「揺れが小さかった」等の正常性バイアスが避難遅れの最大要因。疑わしければ避難が津波防災の鉄則。
  • 車での避難 ― 津波到達が10〜20分と短時間、道路渋滞で車が動けなくなり流失した実例多数。徒歩で高台へが原則です。
  • 本ツール結果の絶対視 ― 距離1km5%減衰は平坦地形での平均値。実際の避難判断は市町村ハザードマップ・気象庁警報を最優先してください。
  • 引き波を見に行く ― 引き波(海面が沖に後退する現象)は津波の予兆で、確認しに海岸へ行くのは自殺行為。すぐに高所へ避難。
  • 警報解除前の帰宅 ― 第1波より第2波・第3波が大きいことが多く、警報解除まで避難場所に留まることが重要。過去津波で警報解除前帰宅による犠牲多数。

関連する規格・法令

  • 津波防災地域づくり法(2011) ― 東日本大震災を受けて制定。都道府県の津波災害警戒区域・特別警戒区域指定、避難施設・避難ビル指定の根拠法。
  • 災害対策基本法 ― 市町村地域防災計画・避難勧告・避難指示発令の根拠。
  • 気象業務法・気象警報基準 ― 気象庁の津波警報(大津波警報・津波警報・津波注意報)の発令基準。
  • 南海トラフ地震特別措置法 ― 南海トラフ想定に基づく強化地域指定・特別強化地域の指定と防災計画。
  • 建築基準法 施行令 ― 津波防災地域における建築物の構造基準(高さ制限・避難ビル基準等)。
  • 宅地建物取引業法(2018改正) ― 津波災害警戒区域内物件の重要事項説明義務。
  • 港湾BCP計画 ― 国土交通省港湾局による港湾BCP策定ガイドライン。
  • 原子炉等規制法・新規制基準(2013) ― 原子力発電所の津波想定と対策基準。福島事故を受けた強化基準。

参考文献・公的資料

津波リスク評価・避難計画の一次情報は、以下の公的機関の資料を必ず参照してください。

※本ページの計算結果は簡易近似式に基づく参考値です。実際の津波避難判断は気象庁の津波警報・注意報市町村の津波ハザードマップを最優先してください。津波は地形により局所的に3〜4倍に増幅する場合があり、河川遡上・引き波・第2波以降のリスクも本ツールでは表現できません。「疑わしければ避難」「まず逃げる」が津波防災の鉄則です。企業BCP・重要施設設計等の専門的用途では、有資格の防災コンサルタント・土木工学者による詳細な数値解析(TUNAMI-N2等)が必須です。

よくある質問(FAQ)

津波5m・標高3mの浸水は?

本ツール概算では、海岸から1km地点で沿岸津波高5m、遡上高約4.75m(距離減衰5%考慮)、標高3mを差し引くと浸水深約1.75m(危険域)となります。木造家屋は損壊レベルで、鉄筋3階以上への避難が必須です。ただし地形により増幅の可能性があり、市町村ハザードマップの実測値を最優先してください。

津波の避難目安は?

高台または鉄筋コンクリート造3階以上の建物への避難が原則。標高10m以上、または海岸から数km以内は津波リスクありと考えるべき。「まず逃げる、疑わしければ避難」が鉄則で、車ではなく徒歩で高所へ向かってください。津波は10〜20分で到達するため、迅速な行動が生死を分けます。

東日本大震災の最大遡上高は?

40.5m(岩手県宮古市田老・重茂地区)で、明治三陸津波(1896年)の38.2mを更新する記録となりました。三陸海岸のV字湾集中により極端に高い遡上高が生じました。宮城県南三陸町・気仙沼市でも20m超を観測。

河川はどこまで遡上する?

東日本大震災では北上川で50km、名取川で6km、鳴瀬川で7km等の遡上が確認されました。河川は津波が減衰しにくく、河口から遠くても油断は禁物。河川沿いの低地は津波避難計画で警戒対象です。

南海トラフ地震の最大想定は?

内閣府中央防災会議(2012)の想定では、高知県黒潮町・土佐清水市で最大34m、静岡県下田市33m、和歌山県串本町19m等。到達時間は10〜30分と極めて短く、震度観測前に避難行動開始が生存の鍵です。

津波警報のレベルは?

気象庁は3段階(大津波警報:3m超・津波警報:1〜3m・津波注意報:20cm〜1m)で発令します。大津波警報時は直ちに高台または避難タワー・鉄筋建物上階へ避難、警報解除まで海岸に近づかないことが鉄則です。

引き波の危険性は?

引き波(海面が沖に後退する現象)は津波接近のサインで、その後に大津波が押し寄せてくることが多いです。「珍しい」からと見に行くのは自殺行為。すぐに高所避難してください。ただし引き波が伴わない津波も多数あります。

V字湾で津波が増幅する理由は?

幅の狭くなるV字型湾では、津波エネルギーが集中し波高が3〜4倍に増幅します。三陸リアス式海岸が典型で、東日本大震災の40.5mも湾奥集中の結果。避難計画ではこの増幅を織り込んだハザードマップが公表されています。

車で避難していい?

原則徒歩避難が推奨されます。津波到達時間が10〜20分と短く、避難車両の集中で道路渋滞が発生し、車ごと津波に流された事例が東日本大震災で多数報告されました。ただし高齢者・要支援者は車避難が必要な場合もあり、家族・自治会での役割分担が重要です。

津波警報解除まで何時間かかる?

大津波警報は数時間〜半日以上継続することがあります。第1波より第2波・第3波が大きい事例(過去津波の複数例)があり、警報解除まで避難場所に留まることが重要。東日本大震災では警報解除前に帰宅した犠牲者が多数出ました。

企業のBCPで津波対策は必須?

沿岸事業所を持つ企業は、津波リスクをBCPに組み込むことが実質的必須です。重要機能を海抜10m以上の階層に配置、非常用電源を上階または内陸移転、データセンター内陸バックアップ、備蓄倉庫の高所配置等が主要対策。福島第一原発事故を受けて業界全体で再評価が進みました。

不動産購入時に津波リスクを確認する方法は?

2018年改正宅建業法により、津波災害警戒区域内物件は重要事項説明で告知義務。購入者は物件の海抜・浸水想定を必ず確認しましょう。国土地理院「ハザードマップポータルサイト」で全国の津波浸水想定を無料検索できます。