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タイル滑り抵抗C.S.R.JIS A 5209バリアフリー

タイル滑り抵抗(C.S.R.)判定ツール|JIS A 5209のグレード即算・浴室/公共施設の安全設計

タイルの滑り抵抗係数(C.S.R.:Coefficient of Slip Resistance)を、タイル種別(磁器質・せっき質・陶器質)と表面仕上げ(光沢釉薬・マット・粗面・滑り止め加工)から即判定。JIS A 5209のグレードA/B/C-1/C-2バリアフリー法・高齢者福祉施設設備基準・建築基準法の要求水準、浴室・キッチン・玄関・公共施設・介護施設での適合可否、水膜・油汚れ・傾斜条件の補正、O-Y-PSM測定法まで解説。転倒事故防止・PL訴訟リスク低減のために設計・施工段階で必ず確認すべき指標です。

最終更新:2026-08-08/監修:計算ツールズ編集部

タイル滑り抵抗(C.S.R.)判定ツール

C.S.R.の定義と計算式

基本式

C.S.R. = F ÷ W = 水平方向の摩擦力 ÷ 垂直方向の荷重

C.S.R.(Coefficient of Slip Resistance:滑り抵抗係数)は、床面に対して人が歩行する際の動摩擦係数を示す指標で、値が大きいほど滑りにくい床です。JIS A 5209「セラミックタイル」および JIS A 1454「建築物の床の滑り試験方法」に基づき、標準ゴムスライダー(EPDMなど)と床面の摩擦力を計測して求めます。

湿潤条件・乾燥条件

C.S.R.は乾燥状態と湿潤状態(水膜・油膜あり)で大きく異なるため、実使用環境に合わせた測定が必須です。同じタイルでも、乾燥時0.7 → 湿潤時0.3まで低下することがあり、浴室・厨房・玄関では湿潤時の値を必ず確認します。本ツールの推定値は湿潤条件の目安を示しています。

関連指標との違い

C.S.R.のほかに、米国系のASTM C1028SCOF(静摩擦係数)、DIN 51130のR値(傾斜角度)、DIN 51097のA/B/Cクラス(裸足歩行用)など、国・用途別に複数の指標があります。海外製品カタログではDCOF ≥ 0.42(ANSI A137.1)が事実上の基準です。

JIS A 5209のグレード区分

JIS A 5209(セラミックタイル)は、床用タイルの滑り抵抗を4段階に区分しています。設計者・施主は用途に応じたグレード指定が必要です。

グレードC.S.R.(湿潤)推奨用途バリアフリー適合
A≥ 0.60浴室・玄関ポーチ・屋外・プールサイド◎ 高齢者施設可
B≥ 0.50キッチン・洗面所・ベランダ○ 一般住宅可
C-1≥ 0.40内装乾式(廊下・リビング)△ 水濡れなし前提
C-2≥ 0.30内装ドライエリア(寝室等)× 湿潤NG
NG< 0.30床用不可(壁専用)× 転倒リスク大

バリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)および国土交通省告示第1497号では、公共施設や特定建築物の床仕上げについてC.S.R. 0.4以上が推奨基準として示されています。

タイル種別と滑り抵抗の関係

タイルの素地(そじ)は焼成温度と吸水率により3種類に分類され、それぞれ表面性状と滑り抵抗特性が異なります。

タイル種別焼成温度吸水率基準C.S.R.(マット)主な用途
磁器質(Porcelain)1,200〜1,300℃1%以下0.40屋外・浴室・玄関ポーチ
せっき質(Stoneware)1,200〜1,300℃5%以下0.50内外装汎用・玄関
陶器質(Earthenware)1,000〜1,200℃22%以下0.55内装壁・キッチン(乾式)

磁器質は緻密で吸水しないため水濡れ時に水膜が形成されやすく、素地単独では滑りやすい傾向があります。せっき質・陶器質は素地に微細な凹凸があり、水を吸収するため滑り抵抗が高くなる傾向。ただし陶器質は屋外・湿潤環境では吸水膨張・凍害・汚れ蓄積の問題があり床用途は限定的です。

表面仕上げによるC.S.R.変動

光沢釉薬(グロス・鏡面)

ガラス質の平滑な表面。C.S.R.基準値から−0.10の補正。美観に優れる反面、水濡れ時は極めて滑りやすくなるため、床用は非推奨(壁専用)。

マット釉薬(つや消し)

微細な凹凸を持つマット仕上げ。補正なし(±0.00)。住宅内装の標準仕様で、意匠性と安全性のバランスが良い。

粗面(テクスチャ加工)

石目調・木目調・ザラつきのある表面。+0.15の補正。屋外テラス・玄関ポーチ・共用廊下に最適。

滑り止め加工(カーボランダム・凹凸ライン)

炭化ケイ素粒子や凹凸ラインを焼き付けた特殊仕上げ。+0.25の補正。浴室・プールサイド・階段踏面・高齢者施設で使用。

用途別・推奨グレード早見表

用途推奨グレードC.S.R.目安備考
浴室床A≥ 0.60石鹸水・シャンプーで滑りやすい
玄関ポーチ(屋外)A≥ 0.60雨天・凍結対応
プールサイドA≥ 0.60DIN 51097 Cクラス相当推奨
介護施設・浴室A≥ 0.60厚労省高齢者福祉施設設備基準
キッチン(住宅)B≥ 0.50油汚れで低下考慮
洗面所B≥ 0.50水はねエリア
ベランダ・バルコニーB≥ 0.50雨水・落葉考慮
共用廊下(マンション)B≥ 0.50雨天時の傘水滴
玄関ホール(内側)B≥ 0.50雨天靴底の水分
リビング・廊下C-1≥ 0.40乾式内装
寝室・書斎C-2≥ 0.30湿潤なし前提
店舗(飲食)A/B≥ 0.50水・油こぼれ考慮
病院・診療所A≥ 0.60清掃頻度高・水濡れ多

O-Y-PSM測定法と現場評価

C.S.R.の現場測定には、日本で開発されたO-Y-PSM(Oda-Yamazoe Portable Slip Meter)が広く使われています。これは JIS A 1454 の付属書に規定された可搬式測定装置で、以下の手順で実施します。

測定手順

  1. 床面を清掃し、乾燥状態または湿潤状態(水膜厚み1mm)に調整
  2. EPDMゴムスライダー(硬度70°、接地面積30×80mm)を装置に装着
  3. 1辺30cm程度の測定領域を5点以上で測定
  4. スライダーの静止摩擦から動摩擦への遷移時の値を記録
  5. 5点の平均値をC.S.R.として採用

他の測定法

測定法規格対応国特徴
O-Y-PSMJIS A 1454日本可搬式・現場測定・EPDMスライダー
BPT振り子式BS 7976英国・EU振り子ペンデュラム式・PTV値
Tortus IIIAS 4586豪州・NZ電動式DCOF測定
BOT-3000EANSI A326.3米国DCOF≥0.42基準
DIN傾斜法DIN 51130独・EUR9〜R13の傾斜角

業界・現場での使い方

タイルメーカー・製品開発

新製品のC.S.R.測定を第三者機関(LIXIL Research・INAX・産総研等)に依頼し、JIS A 5209の適合等級を製品カタログ・技術資料に明記。SDS(安全データシート)と併せて設計者・施工店に提示する。

建築設計・意匠設計

用途地域・利用者属性(高齢者・子ども・障害者)を踏まえ、部屋ごとに要求グレードを設定。実施設計段階でメーカー技術資料からC.S.R.値を確認し、仕上表・仕様書に「A(浴室)」「B(キッチン)」等を明記する。

介護・高齢者施設運営

厚労省の高齢者福祉施設設備基準・特別養護老人ホーム設備基準では滑り止め対応が求められ、浴室・脱衣所・共用廊下はグレードAを標準とする。既存施設は定期点検で摩耗による低下を確認。

公共施設・特定建築物

バリアフリー法対応で、駅・空港・庁舎・病院・商業施設ではC.S.R. 0.4以上(推奨0.5以上)が実質的な基準。国土交通省「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律施行令」の対象施設で必須。

PL訴訟・事故対応

転倒事故発生後、床面のC.S.R.測定結果が製造物責任・工作物責任の判断材料となる。設計・施工記録として測定成績書を10年以上保管。判例では0.4未満で管理者責任が認められた例あり。

既存床の改修・後施工

既存タイルの滑り止め加工には、フッ酸系エッチング・ダイヤモンド研磨・防滑コーティング・シート貼付など複数手法。加工後C.S.R.再測定と定期メンテナンス計画が重要。

よくある間違い・注意点

  • 見た目・意匠だけで床タイルを選定 — 光沢タイル×浴室・水回りは転倒事故の典型パターン。設計段階でC.S.R.値をメーカーカタログで必ず確認し、湿潤時の値を採用してください。
  • 乾燥時のC.S.R.を根拠に安全と判断 — 実使用環境は水・石鹸・油で湿潤状態。乾燥時0.7でも湿潤時0.3まで低下する製品があり、必ず湿潤条件のC.S.R.で評価します。
  • DCOF・R値・PTV値との換算を混同 — 米国DCOF 0.42、独R9(10°未満)、英PTV 36等の基準は測定法・スライダー材質が異なり、単純換算は不可。設計基準と測定方法を一致させます。
  • 清掃性優先で滑り止め加工を回避 — 凹凸のある滑り止め加工タイルは汚れが溜まりやすく、汚れが滑り抵抗を低下させる悪循環に。専用洗剤・定期メンテナンス計画とセットで採用を検討します。
  • 摩耗による経年低下を無視 — 高頻度歩行エリアでは10年で表面のカーボランダム粒子や凹凸が摩耗し、C.S.R.が0.2程度低下することがあります。5年ごとの再測定を推奨。
  • 目地の滑り抵抗を考慮しない — タイル本体がグレードAでも、目地部分(セメント系・エポキシ系)は光沢がありC.S.R.が低いことがあります。目地幅・目地材の仕上げも設計対象。
  • バリアフリー法の適用範囲を誤認 — 一般住宅は法適用外ですが、賃貸住宅・共同住宅・高齢者向け住宅・サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は対象。用途変更時の再確認が必要。

関連する規格・法令

  • JIS A 5209 ― セラミックタイル。床用タイルの滑り抵抗グレード(A/B/C-1/C-2)、寸法、吸水率、耐凍害性等を規定。日本国内タイル製品の基本規格。
  • JIS A 1454 ― 建築物の床の滑り試験方法。O-Y-PSM測定装置による現場測定手順を規定。
  • バリアフリー法(H18法律91号) ― 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律。特定建築物・公共交通施設の床仕上げに滑り止め対応を求める。
  • 国土交通省告示第1497号 ― バリアフリー法に基づく建築物移動等円滑化基準。床仕上げの滑り抵抗性能を規定。
  • 建築基準法施行令第117条 ― 廊下・階段等の避難施設。滑りにくい材料の使用を求める。
  • 厚生労働省 高齢者福祉施設設備基準 ― 特別養護老人ホーム・介護老人保健施設の浴室・共用部の床仕上げに滑り止め対応を求める。
  • ANSI A326.3(米国) ― DCOF(動摩擦係数)0.42以上を室内床タイルの基準とする。
  • DIN 51130(ドイツ) ― R9〜R13の傾斜角度によるすべり抵抗クラス分類。作業所・工場向け。
  • DIN 51097(ドイツ) ― 裸足歩行エリア(浴場・プール)のA/B/Cクラス分類。

参考文献・公的資料

より詳細な規格情報・法令・技術資料は、以下の公的機関・業界団体の一次情報を参照してください。

※本ツールのC.S.R.推定値は、タイル種別・仕上げから統計的な標準値を推定した参考値です。実際の製品の滑り抵抗性能は、メーカー技術資料(試験成績書・SDS)に記載された実測値を優先してください。設計・施工・法令適合の判断は、有資格者(建築士・設備設計一級建築士等)および所轄官庁の判断に従い、公共施設・介護施設等では第三者機関による現場測定を実施してください。転倒事故防止のためには、床仕上げの選定だけでなく、手すり設置・段差解消・照明・清掃頻度・履物指導など総合的な対策が必要です。

よくある質問(FAQ)

C.S.R.とDCOFの違いは?

いずれも動摩擦係数を示す指標ですが、C.S.R.は日本のJIS A 1454(O-Y-PSM測定法)、DCOFは米国のANSI A326.3(BOT-3000E測定法)に基づき、スライダーの材質・接地面積・測定条件が異なるため単純換算はできません。目安として、DCOF 0.42はC.S.R. 0.4〜0.5相当。海外製品を国内で使用する場合は、日本の測定法での再測定を推奨します。

磁器質タイルは本当に浴室に向いていない?

磁器質「素地」は滑りやすいですが、表面に滑り止め加工(カーボランダム・凹凸ライン・粗面テクスチャ)を施した磁器質タイルであれば浴室にも適します。むしろ吸水率1%以下で耐凍害性・清掃性に優れるため、屋外・浴室向けの高機能製品は磁器質が主流です。カタログで「浴室グレードA適合」と明記されているものを選定してください。

光沢タイルを既存の床で使っているが対策は?

後施工の防滑対策として、フッ酸系エッチング処理(表面をわずかに溶かして凹凸化)、防滑コーティング(透明樹脂塗布)、滑り止めシート・テープ貼付バスマット・浴室すのこ設置などがあります。エッチングは意匠性を損なわず0.1〜0.2程度C.S.R.を上げられますが、施工業者の選定と加工後の再測定が重要です。

バリアフリー法は個人住宅にも適用される?

一般の戸建て住宅は法適用外ですが、賃貸共同住宅・分譲マンション(一定規模以上)・サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)・グループホーム等は対象となります。介護保険を利用したリフォーム(住宅改修費支給)でも滑り止め改修は対象工事に含まれ、20万円までの補助が受けられます。

目地の滑り抵抗はどう評価する?

目地部分もタイル本体と同様にC.S.R.測定が可能ですが、通常はタイル部分の値のみで評価します。ただし大判タイル(600×600mm等)で目地割合が少ない場合はタイル本体の性能が支配的、モザイクタイル(50×50mm等)で目地割合が多い場合は目地材の選定も重要です。目地幅3mm以上・エポキシ系目地材ではC.S.R.向上効果もあります。

C.S.R.は経年でどれくらい変化する?

使用頻度と清掃条件によりますが、高頻度歩行エリア(駅・商業施設・共用廊下)では10年で0.1〜0.2程度低下する例があります。滑り止め加工タイルは表面のカーボランダム粒子や凹凸が摩耗するため。5年ごとの現場測定と、必要に応じた再加工・貼替えを計画します。

プールサイド・スパ施設の基準は?

プールサイド・大浴場等の裸足歩行エリアは、日本ではC.S.R.グレードA(≥0.6)が推奨されます。国際的にはDIN 51097のCクラス(傾斜24°以上で滑らない)が最高等級。塩素水・微生物膜(バイオフィルム)で滑りやすくなるため、定期的な高圧洗浄・除菌が必要です。

フローリング・シートフロアのC.S.R.は?

フローリング(無垢・複合)や塩ビシート・長尺シートもC.S.R.測定対象です。一般的にフローリング(ウレタン塗装)はC.S.R. 0.4〜0.5程度、防滑塩ビシート(東リ・タジマ等)は0.5〜0.7程度。介護施設・厨房・水回りには防滑グレードのシートを選定します。JIS A 1454は床材全般に適用可能です。

転倒事故で管理者責任を問われるC.S.R.値は?

判例では明確な閾値はありませんが、公共施設・特定建築物でC.S.R. 0.4未満だった場合、工作物責任(民法717条)が認められた例があります。設計・施工時の測定成績書、定期点検記録、事故後の再測定結果が民事訴訟の重要証拠となるため、記録保管(10年以上)と保険加入が推奨されます。

屋外タイルの凍害と滑り抵抗の関係は?

寒冷地ではタイル表面が凍結・霜で覆われると滑り抵抗が急激に低下します。JIS A 5209では耐凍害性試験(吸水率1%以下の磁器質推奨)も規定。積雪・凍結地域では、床暖房・融雪ヒーター・融雪剤散布などの対策と併用します。ロードヒーティングを併用する場合はタイル・接着剤・下地の熱膨張差にも配慮。

店舗・厨房のC.S.R.基準は?

飲食店の厨房床は油汚れ・水濡れが常態化するため、C.S.R. 0.5以上(グレードB)が実質的な標準。労働安全衛生法・食品衛生法の直接基準ではありませんが、労災事故防止・食品事故責任の観点から必須です。HACCP対応の場合は清掃性と防滑性の両立が求められ、防滑性エポキシ塗床(オキシコート等)が採用されます。

階段の踏面(ふみづら)はどう考える?

階段は転倒時の被害が大きいため、建築基準法施行令第25条で「滑りにくい材料」の使用が求められます。C.S.R.グレードB以上(≥0.5)が推奨で、鼻先には金物のノンスリップ(アルミ・ステンレス+ゴム)を設置することが一般的。屋外階段はグレードA(≥0.6)を目安とします。

タイル選定時にメーカーに確認すべき情報は?

①JIS A 5209適合等級(A/B/C-1/C-2)、②C.S.R.実測値(乾燥時・湿潤時の両方)、③試験機関名と試験日、④測定装置(O-Y-PSM等)、⑤想定用途への推奨可否、⑥耐凍害性(屋外の場合)、⑦経年劣化見込み。カタログに記載がない場合は技術資料(試験成績書)を要求してください。

介護保険を使った防滑リフォームの補助は?

介護保険の住宅改修費支給(要介護・要支援認定者対象)で、滑り止め改修は対象工事に含まれます。支給限度基準額は20万円(自己負担1〜3割)で、事前申請と工事完了報告が必要。市区町村により独自加算あり。ケアマネジャーへの相談から始めます。