水の表面張力
液体の種類と温度、界面活性剤の量から、表面張力と毛細管現象、基材への濡れ性を試算します。
水の表面張力ツール
計算式と考え方
表面張力は液体の種類で決まり、温度が上がると下がります。水は20℃で72.8mN/mで、1℃上がるごとにおよそ0.15mN/m低下します。毛細管上昇高さは「2×表面張力×cos接触角÷(密度×重力加速度×半径)」で求めます。内径1mm、接触角0度なら約29.8mmです。付着仕事は「表面張力×(1+cos接触角)」で145.6mN/m、直径1mmの気泡の内外圧力差は「4×表面張力÷直径」で約291Paとなります。基材の表面自由エネルギーが76mN/mなら余裕は3.2mN/mです。
代表的な液体の表面張力(20℃)
| 水 | 72.8mN/m。水素結合により、常温の液体としては際立って高い値を示します |
|---|---|
| エタノール | 22.3mN/m。有機溶剤は総じて20〜30mN/mの範囲に入り、樹脂面もよく濡らします |
| グリセリン | 63.4mN/m。粘度は水の約1000倍ですが、表面張力は水より低い値です |
| 水銀 | 485mN/m。金属結合によるもので、ガラス面では接触角が140度前後の凸型になります |
水の表面張力の詳しい解説
表面張力は、液体内部の分子が四方から引き合っているのに対し、表面の分子は外側から引かれないという不均衡から生じます。分子間の引力が強いほど値は大きくなり、水素結合を持つ水が72.8mN/m、金属結合の水銀が485mN/mと高く、分子間力が弱い有機溶剤が20〜30mN/mにとどまるのはこの構造によります。温度が上がると分子の熱運動が活発になり引力の効果が薄れるため、値は下がります。水では1℃あたりおよそ0.15mN/mという勾配が知られており、20℃と40℃では約3mN/mの差が出ます。塗装や印刷の現場で夏と冬に仕上がりが変わる一因はここにあります。実務で最も問われるのは濡れ性です。液体が固体表面に広がるかどうかは、液体の表面張力と固体の表面自由エネルギーの大小関係でおおよそ決まります。液体側が固体側を下回れば広がり、上回ればはじきます。ポリエチレンやポリプロピレンの表面自由エネルギーは30mN/m前後しかないため、水系のインキや接着剤はそのままでは乗りません。そこでコロナ放電処理やプラズマ処理で表面を酸化させ、40mN/m以上に引き上げてから塗る、という工程が組まれます。ダインペンと呼ばれる表面張力既知の液で処理の効き具合を確認する方法が一般的です。もう一つの手段が界面活性剤の添加です。界面活性剤は表面に配向して分子間の引力を遮り、水の表面張力を30mN/m台まで下げます。ただし濃度を上げ続けても臨界ミセル濃度を超えると値は下がらなくなるため、添加量には頭打ちがあります。また、乾燥後に界面活性剤が皮膜に残って密着不良や耐水性の低下を招くことがあり、洗浄工程では泡切れの悪さが問題になります。下げれば良いというものではありません。判断が分かれるのは接触角の扱いです。接触角は同じ材料の組み合わせでも、表面粗さ、汚れ、測定の時間経過で数十度変わります。前進角と後退角の差であるヒステリシスが大きい表面では、単一の値で議論すること自体に無理があります。実測する場合は、測定条件をそろえたうえで複数点の平均を取り、絶対値より相対比較で判断するのが現実的です。見落とされやすいのが、界面張力と表面張力の区別です。液体と気体の界面が表面張力、液体と液体あるいは液体と固体の界面が界面張力で、乳化や分散を扱うときに効くのは後者です。洗浄では油と水の界面張力を下げることが本質で、空気との界面の値だけを見ても現象は説明できません。
業界・現場での使い方
塗装・印刷の前工程
基材の表面自由エネルギーと液の表面張力を比べ、表面処理の要否を判断します。
毛細管現象の見積り
細管や多孔質材への浸透高さを試算します。
洗浄液の設計
界面活性剤の添加による表面張力の低下量を確認します。
よくある間違い・注意点
- 温度を室温のまま計算する — 表面張力は温度で変わります。水では20℃と40℃で約3mN/mの差が出るため、実際の液温で見てください。
- 界面活性剤を入れれば必ず濡れると考える — 臨界ミセル濃度を超えると表面張力は下がらなくなり、残留した活性剤が密着不良の原因にもなります。
- 表面張力と界面張力を混同する — 乳化や洗浄で効くのは液体どうし・液体と固体の界面張力です。空気との界面の値だけでは説明できません。
関連する規格・法規
- JIS化学規格
- ISO化学基準
※本ツールは公的基準に基づく参考計算です。実際の設計・施工・法令適用は最新の告示・規格および所轄官庁の判断に従ってください。
よくある質問(FAQ)
水の表面張力はどのくらいですか?
20℃でおよそ72.8mN/mです。温度が上がると1℃あたり約0.15mN/mの割合で下がります。
樹脂に水系塗料が乗らないのはなぜですか?
ポリエチレンなどの表面自由エネルギーが30mN/m前後と低く、水の72.8mN/mを下回るためです。表面処理で引き上げます。
接触角はどう測りますか?
接触角計で液滴の輪郭から求めます。表面粗さや汚れで値が振れるため、条件をそろえた相対比較が実務的です。