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農薬散布農業タンク調製水稲/果樹/畑作農薬取締法

散布液調製(タンク容量) 計算ツール|面積・散布量から必要総量・タンク回数・農薬原液量を試算

農薬・液肥・除草剤の散布液を、面積(a)と10aあたり散布量(L)から必要総量・100Lタンク回数・作業時間で即算出します。水稲・畑作・果樹別の標準散布量、動力噴霧器/SS(スピードスプレーヤー)/ブームスプレーヤー/農業用ドローン散布の実務、農薬希釈倍率(500〜4000倍)、農薬取締法・食品衛生法(ポジティブリスト・残留基準)、農作業安全対策(保護具・混合順序)、ドリフト対策、環境省水質基準、地力増進法まで、農業現場で必ず押さえたい論点を実務ベースで解説します。

最終更新:2026-08-08/監修:計算ツールズ編集部

散布液調製(タンク容量)ツール

計算式(総量・タンク回数・希釈量)

基本式

必要散布液総量(L) = 散布面積(a) × 散布量(L/10a) ÷ 10

タンク回数(回) = ceil(総量 ÷ タンク容量)

農薬原液量(mL) = タンク容量(L) × 1000 ÷ 希釈倍率

デフォルト例:10a水稲・100L/10a

10 × 100 ÷ 10 = 100L(1回で完了)。1a=100m²、10a=1反=1,000m²、1ha=100a=10反=10,000m²。日本の農地面積の慣行単位換算に注意が必要です。

1ha(100a)水稲散布例

100 × 100 ÷ 10 = 1,000L。100Lタンクで10回、平均給水+作業時間5分/回×10=約50分〜1時間の追加。動力噴霧器での連続散布は疲労蓄積を考慮し、休憩・水分補給が必須です。

果樹1ha(SS散布)

果樹は300-500L/10a と大量散布のため、100 × 400 ÷ 10 = 4,000L。SS(スピードスプレーヤー)500L積載で8回、または大型ブーム式で3-4回。散布時間3-5時間。

作物別・散布量の標準値

作物散布量(L/10a)散布機備考
水稲(茎葉散布)100L動力噴霧器標準散布
水稲(粒剤・粉剤)-散粒機液散布と併用
水稲(無人ヘリ・ドローン)0.8-2Lドローン低容量散布(希釈8-16倍)
畑作(野菜・穀類)50-200Lブームスプレーヤー作物・散布時期で幅
大豆・麦類100-150L動力噴霧器・ブーム-
ジャガイモ・キャベツ150-250Lブーム茎葉多い
果樹(リンゴ・ミカン等)300-500LSS(スピードスプレーヤー)樹全体を覆う
果樹(モモ・ナシ)200-400LSS樹高低め
ブドウ・キウイ200-400LSS・動力噴霧器棚仕立て
芝(ゴルフ場・公園)200-500L大型スプレーヤー-
茶園200-400L茶園用SS-
施設野菜(トマト・ナス等)200-300L動力噴霧器灌注もあり

散布量は農薬ラベル(登録内容)に記載の標準値を必ず確認。作物・時期・害虫種で変動します。過少では効果不足・抵抗性発達、過多では農薬コスト増・環境負荷・ドリフト発生の原因。ラベルを守った適正散布が農薬取締法上の義務です。

散布機の種類と特性

散布機タンク容量適用散布幅
手動噴霧器(蓄圧式)1-15L家庭菜園・小面積1-2m
背負式動力噴霧器15-25L畑作・小規模2-4m
据置動力噴霧器+ホース100-500L水稲・果樹数m〜数十m
ブームスプレーヤー200-2000L畑作大規模5-24m
SS(スピードスプレーヤー)200-1000L果樹・茶園両側噴霧
無人ヘリコプター10-30L水稲大規模4-8m
農業用ドローン5-30L水稲・畑作(近年急拡大)4-6m
ラジコン草刈機+散布-斜面・法面-

近年は農業用ドローン(産業用マルチコプター)の普及で、水稲・畑作の散布作業が大幅省力化されています。国土交通省の飛行許可・農林水産省の農業用ドローン安全ガイドライン準拠が必要。低容量散布(8-16倍希釈)で作業時間1/10以下、作業員1名で1日10-30ha可能。

希釈倍率と農薬原液量

農薬は希釈倍率(500〜4000倍)で使用するため、タンク容量と希釈倍率から農薬原液量を算出します。

希釈倍率と原液量早見表(100Lタンク)

希釈倍率100Lタンク当り原液量
250倍400mL
500倍200mL
1000倍100mL
1500倍約67mL
2000倍50mL
3000倍約33mL
4000倍25mL

混用の順序

複数農薬を混用する場合は、「水和剤→フロアブル→液剤→乳剤→展着剤」の順序で少しずつ加えて撹拌。逆順や一括投入は沈殿・凝集・分離を引き起こし、散布ムラ・詰まり・薬害の原因となります。混用可否は農薬メーカーの混用適否表・ラベルで必ず確認。

展着剤の添加

散布液には展着剤(2000-4000倍)を通常添加し、葉面への付着性と拡展性を向上。ワックス葉(キャベツ・タマネギ)・撥水葉(サトイモ)では特に効果大。オルガノシリコーン系展着剤は少量で強力ですが、薬害誘発リスクあり。

作業計画(時間・天候・作業員)

散布時間の目安

  • 動力噴霧器(水稲10a):15-30分/回
  • SS(果樹1ha):2-4時間
  • ドローン(水稲1ha):10-20分
  • ブームスプレーヤー(畑作1ha):30-60分

天候・時間帯

散布は風速3m/s以下、気温28℃以下、湿度70%以上の朝夕に。強風時はドリフト(飛散)発生、高温時は蒸発量増加・薬害発生、低温時は薬効低下。降雨予報のある日の3時間以内散布は薬剤流亡リスク大。

作業員体制

SS・ブームスプレーヤーは2名体制(オペレータ+補給係)が定石。1名運転で全作業は疲労で事故リスク大。ドローンも操縦者+補助員(スポッター)の2名体制が農水省ガイドライン推奨。

農作業安全対策とドリフト対策

保護具着用義務

  • 防除衣(不浸透性)、耐薬品性手袋、保護メガネ、防塵防毒マスク、長靴
  • 作業後は速やかな洗浄・着替え・シャワーで農薬曝露最小化
  • 散布中の飲食・喫煙禁止

ドリフト対策

  • ノズル選定:低ドリフトノズル(エアインジェクション式)採用
  • 圧力設定:2.0MPa以下推奨(過度な高圧は微細飛沫増加)
  • 飛散防止バンド:境界5-10mは散布省略・軽減
  • 時間帯選定:早朝・夕方の低風速時
  • 近隣周知:住宅・学校・水源への事前連絡

ミツバチ・水生生物保護

ネオニコチノイド系農薬(イミダクロプリド・クロチアニジン等)はミツバチへの影響が指摘されており、開花期の散布回避・時間帯配慮が必要。魚毒性農薬(合成ピレスロイド等)は河川・水田排水への流出防止が重要。環境省・農水省の指導事項。

現場での使い方

稲作農家(大規模)

10ha以上経営体では、動力噴霧器→ブーム→ドローンの段階的省力化が進行。100Lタンク10回vsドローン1L×100回で作業時間1/10。GPS圃場管理と連動した精密散布(可変散布)も普及中。

果樹園・茶園

SS(スピードスプレーヤー)200-1000L積載で連続散布。急傾斜地・棚仕立て・列間隔4-6mに対応。近年はEV化SS・自動運転SSの導入も進行。防除暦に基づく年6-15回の定期散布が定石。

畑作(露地野菜・穀物)

ブームスプレーヤー(200-2000L)で1ha単位の効率散布。GPS自動操舵で走行の重複散布・欠散布を排除。100L→2000Lへ大型化でタンク回数削減、休憩時間短縮。

ゴルフ場・公園緑地

芝の除草剤・殺菌剤散布。夜間・早朝作業でプレー回避、水質保護のためドリフト対策必須。指定管理者・造園業者が実施。

農業用ドローン運用事業者

受託散布ビジネスとして急拡大。1ha散布料金2-3万円が相場。国土交通省航空局への飛行許可・技能認定・機体登録が必要。農水省ガイドライン準拠。

JA・農業指導員・普及員

組合員への散布指導、共同防除計画。地域一斉散布でヨトウムシ・カメムシ等の広域害虫対策。防除暦・散布記録の管理指導、農薬販売者資格の維持。

よくある間違い・注意点

  • 散布量過少で効果不足 — 薬剤付着不足で害虫・病原菌の抵抗性発達の原因に。ラベル記載の標準散布量を守ること。
  • 希釈倍率間違い — 1000倍と2000倍で薬剤コスト・薬効・薬害リスクが2倍変わる。原液量計算ミスは重大事故に直結。散布記録・写真記録を残す。
  • 混用順序の誤り — 水和剤・フロアブル・液剤・乳剤・展着剤の順で少しずつ加えて撹拌。逆順や一括投入で沈殿・分離・詰まり・薬害発生。
  • 連続散布時のタンク残液未処理 — 薬剤変更時はタンク・ホース・ノズルを完全洗浄。前薬剤残留で予期せぬ薬害発生。散布終了後の残液処理も適切に(下水放流禁止)。
  • 強風・高温時の散布 — 風速3m/s超・気温28℃超は原則散布中止。ドリフト発生で近隣農地・住宅・水源汚染、薬害・苦情の原因。
  • 収穫前日数(PHI)違反 — 農薬ごとに定められた「収穫前日数(適用時期)」を守らないと残留基準超過で食品衛生法違反。全量廃棄の重大損失。
  • 保護具未着用 — 農薬曝露は急性中毒(頭痛・めまい・呼吸困難)・慢性影響(発がん・生殖影響)の原因。防除衣・マスク・手袋・メガネ必須。
  • ドローン飛行許可失念 — 農業用ドローンでも国交省航空局への飛行許可申請必須(人口集中地区・目視外)。無許可運用は航空法違反。

関連する法令・規格

  • 農薬取締法 ― 農薬の製造・輸入・販売・使用の基本法。登録農薬のみ使用可、ラベル記載事項の遵守義務。
  • 食品衛生法(残留農薬ポジティブリスト制度) ― 2006年施行。残留基準を超えた食品の販売禁止。約800農薬に基準設定。
  • 農作業安全対策 ― 農水省ガイドライン。防除衣・保護具着用、散布前後の洗浄、休憩・水分補給等の指針。
  • 航空法(農業用ドローン) ― 国土交通省航空局。飛行許可・登録・技能認定・目視外飛行制度。
  • 環境省水質基準 ― 河川・水道水源の農薬濃度基準。ネオニコチノイド等の水質モニタリング。
  • 地力増進法 ― 農林水産省。土壌管理・肥料使用の基本法。
  • JAS法(有機農産物) ― 化学農薬・化学肥料原則不使用の認証制度。

参考文献・公的資料

正確な農薬使用・散布計画は、以下の一次資料をご確認ください。

※本ページの計算結果は概算目安です。実際の散布計画は、農薬ラベル記載事項(適用作物・散布量・希釈倍率・使用時期・使用回数)、農薬登録情報提供システム(FAMIC)、JA営農指導員・農業普及指導員・農薬販売業者・都道府県農政部の判断を優先してください。特に食品衛生法の残留基準・農薬取締法の使用基準違反は重大なコンプライアンス事案となるため、散布記録の適切な管理と最新法令の確認が必須です。

よくある質問(FAQ)

10a水稲の散布液は?

100L(1回)で完了。100L標準タンク×1回、動力噴霧器で15-30分。1a=100m²、10a=1反=1,000m²の慣行単位換算に注意してください。

果樹園1haの散布量は?

果樹300-500L/10aなので、1ha(100a)で3,000-5,000L。SS(スピードスプレーヤー)500L積載で6-10回、または大型ブーム3-4回。散布時間3-5時間。

ドローン散布は普通散布と何が違う?

ドローンは低容量散布(0.8-2L/10a、希釈8-16倍の濃厚液)。作業時間1/10、1日10-30ha可能。ただし専用ドローン登録農薬でないと使えない。国交省飛行許可・農水省ガイドライン準拠必須です。

散布量が過少・過多だとどうなる?

過少で薬剤付着不足→効果不足→抵抗性害虫・耐性病原菌の発達。過多で薬害(葉焼け・成長阻害)・農薬コスト増・環境負荷・ドリフト発生。ラベル記載の標準散布量を厳守。

複数農薬を混用する順序は?

水和剤→フロアブル→液剤→乳剤→展着剤の順で少しずつ加えて撹拌。逆順や一括投入は沈殿・凝集・詰まりの原因。混用可否は農薬メーカーの混用適否表・ラベルで必ず確認。

ドリフト(飛散)を防ぐには?

低ドリフトノズル(エアインジェクション式)使用、圧力2.0MPa以下、境界5-10m省略、風速3m/s以下・朝夕の低風速時に散布、近隣事前周知。周囲に住宅・学校・水源がある場合は特に注意。

収穫前日数(PHI)とは?

農薬ごとに定められた最終散布から収穫までの最短日数。これを守らないと残留基準超過で食品衛生法違反、全量廃棄の重大損失。農薬ラベルに必ず記載。PHIより余裕を持って散布計画を組む。

展着剤は必ず添加する?

ワックス葉(キャベツ・タマネギ)・撥水葉(サトイモ)・果樹には効果大。展着剤2000-4000倍で葉面付着性向上。ただしオルガノシリコーン系は薬害誘発リスクあり、農薬メーカーの推奨に従う。

散布時の保護具は?

防除衣(不浸透性)・耐薬品性手袋・保護メガネ・防塵防毒マスク・長靴の5点セット。作業後は速やかにシャワー・着替え・洗浄。散布中の飲食・喫煙禁止。急性中毒・慢性影響を防ぐ基本です。

ミツバチ・水生生物への配慮は?

ネオニコチノイド系(イミダクロプリド等)はミツバチ影響が指摘されており開花期散布回避。魚毒性農薬(合成ピレスロイド等)は河川・水田排水への流出防止が重要。環境省・農水省の指導事項。

散布記録は必要?

必要。圃場・作物・農薬名・散布日・散布量・希釈倍率・散布者を記録。JGAP・グローバルGAP認証の要件、農薬取締法・食品衛生法違反時の証跡としても重要。5年間の保存推奨。

農業用ドローンに必要な許可は?

国交省航空局への飛行許可(人口集中地区・目視外・危険物散布)、機体登録、農水省ガイドライン準拠。技能認定(民間資格・国家資格の操縦ライセンス)、農薬散布の場合は農薬ラベルにドローン適用の記載必須。