反収(反あたり収量)計算ツール|主要作物の全国平均比較・粗収入試算・農業経営指標
作物・総収量・面積から反収(kg/反・kg/10a)を即算出し、農林水産省「作物統計」の全国平均と比較。水稲・小麦・大豆・ばれいしょ・さつまいも・たまねぎ・キャベツ・レタス等の主要作物データ、反(991.7m²)と10a(1000m²)の単位補正、農業経営の粗収入・所得試算まで、農家・JA・普及員の実務判断に必要な情報を網羅します。
反収(反あたり収量)計算機
計算式と単位系
基本式
反収(kg/反) = 総収量(kg) ÷ 面積(反)
10a換算値(kg/10a) = 反収 × 10 ÷ 9.917
反収は単位面積あたりの収量を示す農業生産性の基本指標です。日本古来の面積単位「1反 = 991.7m²(300坪)」を用い、統計・比較の便宜上は「1反 ≒ 10a(1000m²)」として扱うのが実務慣行。厳密には0.83%の差があり、大規模経営では換算精度が問われます。
単位系の整理
| 単位 | 換算 | 使用場面 |
|---|---|---|
| 1反(たん) | 991.7m² = 300坪 | 農地の慣行取引・水稲 |
| 10a(アール) | 1000m² | 農林水産省統計・国際比較 |
| 1ha | 10,000m² = 10反 | 大規模経営・国際単位 |
| 1町(ちょう) | 9917m² = 10反 | 近世土地台帳・登記 |
| 1畝(せ) | 99.17m² = 1/10反 | 畑作・園芸 |
全国平均比の解釈
全国平均を100とした比率で、農業技術者・JA普及員は「100=標準、110以上=好成績、120以上=優良、80以下=改善要」という定性評価を行います。ただし、地域気象・地力・品種によりベースラインが異なるため、都道府県平均や同一気象地帯内での比較が実務的です。
主要作物の全国平均反収(農水省「作物統計」より)
農林水産省が毎年公表する「作物統計調査」の直近年次の全国平均値をまとめました。単位は kg/10a です。年次によって変動し、冷夏・干ばつでは10〜20%減となる場合もあります。
| 作物 | 反収(kg/10a) | 備考 |
|---|---|---|
| 水稲(主食用米) | 534 | 全国平均。北海道・東北・北陸は600超 |
| 小麦 | 400 | 北海道・九州の二毛作が主産地 |
| 二条大麦(ビール麦) | 390 | ビール醸造原料 |
| そば | 60 | 収量は低いが単価高 |
| 大豆 | 154 | 転作大豆の助成対象作物 |
| ばれいしょ(じゃがいも) | 3,300 | 北海道が全国の78%生産 |
| さつまいも | 2,200 | 鹿児島・茨城・千葉が主産地 |
| たまねぎ | 4,500 | 北海道・佐賀・兵庫 |
| キャベツ | 4,300 | 群馬(嬬恋)・愛知(渥美) |
| レタス | 3,060 | 長野・茨城の産地リレー |
| だいこん | 4,500 | 千葉・北海道 |
| はくさい | 5,300 | 茨城・長野 |
| にんじん | 3,600 | 北海道・千葉 |
| トマト(露地) | 6,500 | — |
| トマト(施設) | 10,700 | ハウス養液栽培は3倍以上 |
| きゅうり(露地) | 3,000 | — |
| いちご(施設) | 3,500 | 栃木・福岡・熊本 |
| 茶(荒茶) | 250 | 静岡・鹿児島 |
| りんご | 1,900 | 青森・長野 |
| みかん | 1,850 | 和歌山・愛媛・静岡 |
都道府県別 水稲反収(参考)
水稲反収は北高南低の傾向があり、東北・北陸で600kg/10a超、九州で500kg前後と地域差があります。
| 都道府県 | 反収(kg/10a) | 主要品種 |
|---|---|---|
| 青森県 | 620前後 | まっしぐら・つがるロマン |
| 秋田県 | 580 | あきたこまち・サキホコレ |
| 山形県 | 595 | はえぬき・つや姫 |
| 宮城県 | 570 | ひとめぼれ・だて正夢 |
| 新潟県 | 560 | コシヒカリ・新之助 |
| 富山県 | 555 | コシヒカリ・富富富 |
| 石川県 | 530 | コシヒカリ・ひゃくまん穀 |
| 福井県 | 540 | コシヒカリ・いちほまれ |
| 茨城県 | 530 | コシヒカリ・あきたこまち |
| 千葉県 | 545 | コシヒカリ・粒すけ |
| 愛知県 | 510 | あいちのかおり |
| 兵庫県 | 500 | コシヒカリ・キヌヒカリ |
| 岡山県 | 510 | アケボノ・ヒノヒカリ |
| 福岡県 | 500 | ヒノヒカリ・元気つくし |
| 熊本県 | 490 | ヒノヒカリ・くまさんの輝き |
| 鹿児島県 | 460 | ヒノヒカリ・あきほなみ |
| 沖縄県 | 320 | ちゅらひかり(二期作あり) |
反収と粗収入・所得の関係
反収は「反収 × 単価 = 反あたり粗収入」で農業経営に直結します。米農家では以下の粗収入モデルとなります。
粗収入(円/10a) = 反収(kg/10a) × 単価(円/kg)
農業所得(円/10a) = 粗収入 − 経費(種苗・肥料・農薬・機械償却・労賃)
水稲経営の粗収入例(概算)
| 反収 | 60kg米単価 | 10a粗収入 | 10a経費 | 10a所得 |
|---|---|---|---|---|
| 450kg(低) | 13,000円/60kg | 約97,500円 | 約75,000円 | 約22,500円 |
| 534kg(全国平均) | 13,000円/60kg | 約115,700円 | 約80,000円 | 約35,700円 |
| 600kg(好成績) | 13,000円/60kg | 約130,000円 | 約82,000円 | 約48,000円 |
| 700kg(優良) | 13,000円/60kg | 約151,700円 | 約85,000円 | 約66,700円 |
反収が100kg/10a増えると、10aあたり所得は約2〜3万円増加。10ha(100反)経営なら反収+100kgで年間200〜300万円の所得差となるため、反収向上は農家経営の生命線となります。
反収を決める5要素
① 品種特性
各地域の気象・水利条件に適した品種選定が基本。多収性品種(例: 水稲「あきだわら」「にじのきらめき」)は反収+50〜100kgを実現。ただし食味・単価とのトレードオフがあり、業務用米・飼料用米への品種転換が近年主流。
② 気象条件
水稲は登熟期(出穂後30〜40日間)の日射量・気温が反収を決定。冷夏では作況指数90以下となり反収20%減、猛暑では高温障害で品質低下・くず米増加。近年は気候変動対応品種(高温耐性・耐倒伏性)の導入が進む。
③ 肥培管理
N(窒素)-P(リン酸)-K(カリ)のバランスと施肥時期が要。窒素過多で倒伏・食味低下、不足で登熟不良。基肥+穂肥の2段階施肥が水稲の標準。土壌診断(pH・EC・有効態リン酸)に基づく施肥設計で反収+50kg以上のケースも。
④ 水管理
水稲では中干し・間断灌漑で根の活性を維持。特に有効分げつ期の水位管理が反収に直結。ハウス作物では養液栽培(NFT・DFT)による日射比例灌水で反収3倍を実現するケースも。
⑤ 病害虫防除
いもち病・紋枯病・カメムシ(斑点米原因)・ウンカ類の防除で減収を防ぐ。IPM(総合的病害虫管理)の実践で農薬使用量を削減しながら反収維持が可能。JA・農政局のBI(病害虫発生予察)情報の活用が有効。
+α 土作り・地力
土壌有機物含量・排水性・地力窒素は複数年かけて改善する要素。堆肥施用・緑肥作物・輪作で土壌構造を維持し、慣行栽培の反収底上げが実現。土壌診断は3〜5年に1度が推奨。
業界での応用
🌾 農家の経営管理
年次収量記録の蓄積で自己経営を数値化。前年比・地域平均比・目標値との差から改善アクションを設計。青色申告決算書(農業所得用)への収量記載と、経費計上のセットで確定申告に活用。
🏢 JA・農業普及員の指導
地域内の反収データを集計し、成績上位農家のノウハウを普及。「地域営農指導」として肥培管理・水管理の共通ガイドラインを提示。全国農業改良普及支援協会の技術資料が基礎。
📊 農林水産省統計
作物統計調査で毎年10月に主要作物の全国・都道府県平均反収を公表。作況指数(平年比)は米価・農政判断に直結し、備蓄米制度・農業共済の給付額算定にも使用。
💼 農業経営コンサル
農地取得・レンタル判断の収益性評価。反収×単価×面積の粗収入予測と、機械投資・労賃を差し引いた所得試算で投資判断。企業参入型農業(法人化)のフィージビリティスタディに必須。
🤝 農地マッチング・農地バンク
農地中間管理機構(農地バンク)が集約する農地の生産性評価に反収データを利用。担い手農家への貸付面積・賃借料算定の基礎データとなる。
🌱 契約栽培・種苗会社
種苗会社は新品種の反収データを試験栽培で確認し、種苗代・ロイヤリティ設定の根拠に。契約栽培(業務用米・加工用野菜)では反収保証と単価保証のセット契約となる。
反収向上のアプローチ
短期(1〜2年)
土壌診断→施肥設計最適化、育苗管理の徹底(健苗育成)、病害虫防除の科学的タイミング化(発生予察の活用)、中干し・水管理のカレンダー化。短期で反収+30〜80kg/10aが期待できます。
中期(3〜5年)
多収性品種への切替、堆肥・緑肥導入による地力向上、暗渠排水・弾丸暗渠等の圃場基盤整備。中期で反収+80〜150kg/10aを実現可能。スマート農業(可変施肥・ドローン診断・センサー管理)への投資も中期的な効果を発揮。
長期(5年以上)
圃場の大区画化(1ha以上)、ICT基盤整備、育種試験を通じた地域適応品種の開発。国のみどりの食料システム戦略に基づく環境保全型農業直接支払交付金を活用しつつ、反収と単価(高付加価値化)の両輪で経営を強化。
よくある間違い・注意点
- 反面積を大まかに測定 — 慣行の「1反」は書類上900〜1100m²の幅があり、GPS実測で1割の誤差が判明することも。正確な反収比較には、農地台帳・GPS実測・農地ナビでの面積確認が必須です。
- 湿籾重量を玄米重量と混同 — 水稲は玄米ベースで比較するのが標準。籾重量×0.79が玄米重量、玄米×0.9が精米重量の目安です。刈取直後の湿籾で計算すると反収が20〜30%多く見えます。
- 気象要因を考慮せず年比較 — 冷夏・猛暑で反収は20〜30%変動します。単年比較ではなく5年移動平均で比較し、作況指数(気象補正済み)との併用が推奨。
- 反(991.7m²)と10a(1000m²)を混同 — 実務では0.83%の差を無視するケースが多いですが、大規模経営(100ha超)や補助金申請では正確な換算が必要。「10a換算 = 反収×10÷9.917」で補正してください。
- ハウス作物と露地作物の単純比較 — 施設栽培は露地の2〜4倍の反収が可能ですが、施設投資(1000万円/10a超)・光熱費が差し引き必要。反収だけでなく反あたり所得(または収益率)で比較すべきです。
- 調製後歩留を反収に含めない — 収穫時の粗収量から、乾燥・調製・くず米除去後の調製後歩留(通常85〜92%)を差し引かないと過大評価に。JAの出荷伝票ベースの反収が実態に近い値です。
- 基盤整備地と未整備地の反収比較 — 圃場整備済地は反収+50〜100kg/10aとなるため、未整備地との単純比較は無意味。同条件圃場での比較が原則です。
関連する統計・法令
- 農林水産省 作物統計調査 ― 主要作物の作付面積・収穫量・反収を毎年公表する国の基幹統計。
- 農作物災害共済(NOSAI) ― 収穫量が基準収量の70%以下となった場合の補償制度。反収データを基礎に給付額決定。
- 収入保険制度(農業経営収入保険) ― 青色申告5年分の農業収入を基礎に、当年収入が基準の9割未満となった場合の補償(令和元年開始)。
- 経営所得安定対策(旧・戸別所得補償) ― 麦・大豆・飼料用米等の反収に応じた交付金制度。
- 環境保全型農業直接支払交付金 ― 有機農業・冬期湛水等への交付金。反収に関わらず面積単価で交付。
- みどりの食料システム戦略 ― 2050年までに化学農薬50%減・化学肥料30%減・有機農業25%目標。反収維持と両立が課題。
- 青色申告(農業所得用) ― 収量・売上・経費を記録し、確定申告時に65万円控除。反収記録の基礎データ。
- 種苗法 ― 品種登録制度・育成者権保護。多収性品種の権利保護と適切な種苗流通。
参考文献・公的資料
正確な反収データや農業経営指標の詳細は、以下の公的機関・専門機関の一次資料を参照してください。
- 農林水産省 作物統計調査 ― 全国・都道府県別の作付面積・収穫量・反収の公式統計。年次データ、時系列比較が可能。
- 農林水産省 営農類型別経営統計 ― 農業所得・経費構造の公式統計。反収別収益性の分析基礎データ。
- 農林水産省 告示・通知 ― 経営所得安定対策・農業共済等の告示。反収基準・単価の公式資料。
- 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構・NARO) ― 国の農業研究機関。多収性品種・栽培技術の研究成果を公開。
- 全国農業改良普及支援協会 ― 全国の農業普及員をサポート。地域営農技術資料・普及員向けマニュアル。
- 全国農業協同組合連合会(JA全農) ― JAグループ。営農指導・出荷実績データ。
- 全国農業共済協会(NOSAI) ― 農業共済(NOSAI)の実施機関。基準収量・補償制度の公式情報。
- 農地中間管理機構(農地バンク) ― 農地の集積・集約化。担い手農家への貸付。
- 農林水産省 スマート農業 ― ドローン診断・可変施肥・センサー農業の実証事業。
- 日本種苗協会 ― 種苗業界団体。品種特性・種子供給情報。
よくある質問(FAQ)
水稲1反1500kgは高収量?
水稲の全国平均は534kg/10a(≒530kg/反)ですので、1500kg/反は約280%で驚異的な数値です。実際は籾重量・湿籾重量・単位間違いのケースが多いため、玄米ベースで再確認をお勧めします。青森・秋田等でも700〜800kg/10a(730〜810kg/反)が全国トップ級です。
反収を上げる方法は?
短期では土壌診断による施肥設計最適化・多収性品種選定・水管理徹底・病害虫防除の科学化で反収+30〜80kg/10aが可能。中長期では圃場基盤整備・堆肥導入・スマート農業投資で+80〜150kg/10a。全国農業改良普及支援協会の技術資料が基礎になります。
全国トップ反収は?
水稲では青森県・秋田県で700〜800kg/10aの事例が報告されています。特に多収性品種(あきだわら・にじのきらめき・つきあかり等)の導入と、暗渠排水完備の圃場で達成されます。個別農家では900kg/10aを超えるコンテスト受賞事例もあります。
反(991.7m²)と10a(1000m²)の違いは?
反は日本古来の面積単位で991.7m² = 300坪、10aは国際単位系で1000m²。0.83%の差があり、実務では便宜上「1反 ≒ 10a」として扱いますが、大規模経営・補助金申請では正確に換算します。「10a換算 = 反数×10÷9.917」で補正してください。
ハウス栽培と露地栽培の反収差は?
施設栽培は露地の2〜4倍の反収を実現できます。トマトは露地6,500kg/10aに対し施設10,700kg/10a、いちごは施設で3,500kg/10a。ただし施設投資1,000万円/10a超、光熱費・重油代が加算されるため、投資回収期間と収益率の総合判断が必要です。
作況指数と反収の関係は?
作況指数は農林水産省が発表する平年反収に対する当年反収の比(平年=100)。95以下で「やや不良」、90以下で「不良」、100超で「やや良」。指数は米価・農業共済給付・備蓄米放出の判断基準となる重要指標です。
反収データはどこで入手できる?
農林水産省「作物統計調査」の公式サイトで、全国・都道府県別・作物別・年次別データを無料で入手可能です。市町村単位はJA・農政局・農業改良普及センターに照会。個別農家の実績はJA出荷伝票が最も精度が高い一次データです。
湿籾と玄米の換算率は?
刈取直後の湿籾(水分22〜25%)を乾燥調製すると、乾燥籾(水分15%)で約85%重量、玄米ベースで湿籾×0.79(乾燥籾×0.79)が目安です。反収比較は必ず玄米ベースで統一してください。
反収の他に評価すべき指標は?
反収に加え、粗収入(反収×単価)・所得(粗収入−経費)・所得率・労働時間あたり所得で総合評価します。高単価作物(ブランド米・有機栽培)は反収が低くても収益性が高いケースもあります。反収と単価のバランスが経営戦略の要です。
気候変動に伴う反収変化は?
温暖化により水稲の高温障害(白未熟粒発生)・登熟不良が全国的に拡大。北海道は温暖化で稲作適地拡大、九州は不適地化の傾向があります。高温耐性品種(にじのきらめき・きぬむすめ)への切替が進行中です。
反収と農業所得の関係は?
水稲では反収+100kg/10aで所得+2〜3万円/10a、10ha経営なら年間200〜300万円の所得差となります。ただし経費(肥料・農薬・機械償却)も反収向上で若干増加。限界利益(粗収入−変動費)で判断するのが実務的です。
収入保険と農業共済の違いは?
農業共済(NOSAI)は反収基準の70%以下となった際の物量補償、収入保険は青色申告5年分の農業収入(反収×単価×面積)の90%を保証する収入基準の補償。両者は基本的に併用不可(選択制)で、収入保険は令和元年開始の新制度です。