計算ツール
シャーせん断板金設備JIS B 6406

シャー切断力 計算ツール|板厚・材質・刃角度から必要トン数を即算出

板厚・切断長・材質のせん断強度・刃の傾斜角(レーキ角)から板金加工シャー(ギロチンシャー・スイングビームシャー)の必要切断力(kN・トン)を即算出。SS400・SPCC・SUS304・A5052(アルミ)・C1100(銅)など主要材質のせん断強度早見、機械容量選定表、刃寿命・切断品質・バリの関係、JIS B 6406(シャー)規格、労働安全衛生法プレス機械等安全規則、レーザー/プラズマ/ウォータージェット/バンドソー切断との使い分けまで、板金工場・鋼材加工・設備投資担当者・生産技術者向けに実務ベースで解説します。

最終更新:2026-08-08/監修:計算ツールズ編集部

シャー切断力 計算機

シャー切断力の計算式

基本式(スクエア刃)

F(kN) = 板厚 t × 切断長 L × せん断強度 τ ÷ 1000

スクエア刃(刃の傾きがない平行刃)では、切断面積(t×L)全体に同時にせん断力が作用します。板厚6mm×長さ1500mm×せん断強度340N/mm²=3,060kN(=312トン)が必要という計算になります。

斜め刃(レーキ刃・ギロチンシャー)

F(kN) = 板厚 × 切断長 × せん断強度 × 低減係数(0.5-0.8) ÷ 1000

実際のギロチンシャーは、刃を1-3度傾けた「レーキ刃」を採用し、切断進行方向に沿って徐々にせん断していく方式(はさみ・鋏と同じ原理)。これにより、瞬時に全長を切断するのではなく順次切断となるため、必要ピーク切断力が50-80%に低減します。本ツールは標準的な2度レーキで係数0.7を初期値として設定しています。

せん断強度と引張強度の関係

τ(せん断強度) ≒ 0.6-0.8 × σ(引張強度)

材料のせん断強度は、引張強度の60-80%程度が経験則的な換算値です。SS400(引張400-510N/mm²)ならせん断強度340N/mm²、SUS304(引張520N/mm²以上)ならせん断強度520N/mm²など、材料規格の引張強度から概算できます。

切断エネルギーの推定

切断エネルギー E(J) ≒ F(N) × 板厚 t(m) × 0.5

切断エネルギーはピーク力×貫入距離の1/2で概算可能。モーター容量・フライホイールエネルギー設計の基礎値になります。

材質別 せん断強度早見表

材料規格(JIS G/H/E)の引張強度から算出したせん断強度目安です。実測値は熱処理・厚さ・圧延方向で±10-15%変動します。

材質引張強度 σせん断強度 τ比重主用途
SS400(一般構造用鋼)400-510 N/mm²約340 N/mm²7.85建築・機械・汎用
SPCC(冷間圧延鋼板)270-410 N/mm²約290 N/mm²7.85板金・自動車ボディ
SPHT(熱間圧延鋼板)295-390 N/mm²約320 N/mm²7.85厚板構造
S45C(機械構造用炭素鋼)569 N/mm²約500 N/mm²7.85シャフト・歯車
SS490490-610 N/mm²約410 N/mm²7.85高強度構造材
SM400(溶接構造用)400-510 N/mm²約340 N/mm²7.85橋梁・鉄骨
SUS304(オーステナイト系)520 N/mm²以上約520 N/mm²7.93厨房・食品機械
SUS316520 N/mm²以上約520 N/mm²7.98海水・化学プラント
SUS430(フェライト系)450 N/mm²以上約430 N/mm²7.70厨房・建材
A1050(純アルミ)65-95 N/mm²約80 N/mm²2.70電気導体・箔
A5052(Al-Mg合金)195-245 N/mm²約180 N/mm²2.68船舶・車両
A6061(Al-Mg-Si合金)245-295 N/mm²約210 N/mm²2.70構造材・自転車
A7075(超々ジュラルミン)530-570 N/mm²約400 N/mm²2.81航空機・レース
C1100(タフピッチ銅)195-275 N/mm²約220 N/mm²8.94電気配線・熱交換器
C2801(真鍮)325 N/mm²以上約300 N/mm²8.40装飾・電気接点
Ti(純チタン Class1)270-410 N/mm²約250 N/mm²4.51医療・化学プラント

レーキ角(斜め刃)と切断力低減

ギロチンシャーの刃は上下いずれか(通常は上刃)を1-4度傾けて取り付けられ、切断進行方向に沿って順次せん断する構造です。この傾斜角(レーキ角 rake angle)を大きくすると、必要切断力は低減しますが、切断面のねじれ・曲がりが増加します。

レーキ角切断力低減係数切断品質用途
0度(スクエア刃)1.00(低減なし)最高精度・ねじれなし薄板高精度切断
0.5度約0.85非常に良好薄板+精度重視
1度約0.60-0.70良好汎用板金(1-3mm)
2度約0.50-0.55やや反り発生中厚板(3-9mm)
3度約0.40-0.45反り・ねじれあり厚板・大長切断
4度約0.30-0.35大きな反り粗切断・スクラップ

レーキ角を大きくすると切断力低減で機械小型化が可能ですが、切断品質(直線度・平面度)が悪化。曲げ・溶接前の下工程材では品質重視で1-2度、鋼板販売店の定尺カットでは2-3度が多く採用されます。

機械容量別 対応板厚早見表(SS400・切断長基準)

日本のシャー機メーカー(アマダ・小池酸素工業・コマツ産機・アイダエンジニアリング等)の標準機種ラインナップを参考にした対応表です。実際の選定は各社カタログ値と余裕係数(1.5-2.0倍)を確認してください。

機械容量SS400対応板厚SUS304対応切断長用途例
30t1.6mm1.0mm1.3m小型部品加工
60t2.3mm1.6mm2.0m小規模板金
100t3.2mm2.3mm2.5m中規模板金
150t4.5mm3.2mm3.0m厚板加工開始
200t6.0mm4.5mm3.0m汎用工場
300t9.0mm6.0mm3.0m建材・造船
400t12mm9.0mm3.0m造船・鉄骨
600t16mm12mm3.0m厚板専門加工
800t19mm13mm3.0m重機械部品
1000t以上25mm以上16mm3.0-6.0m鋼板販売センター

シャー機の種類と特徴

ギロチンシャー(ダウンカット)

刃が上から下に垂直に降下する方式。JIS B 6406の代表機種で、汎用板金工場の主力設備。オイルクラッチ・電磁クラッチ・全電動式(サーボ)まで多様な駆動方式があり、近年はエネルギー効率の高いサーボ式が主流。

スイングビームシャー

上刃が円弧軌道で下降するタイプ。ギロチンより剛性が高く、厚板加工(9mm超)に多く採用。刃の摩耗を均等化しやすく、刃寿命が長い特徴。

アップカットシャー

下刃が上昇するタイプ。加工材を上面固定で加工でき、後工程との自動化ライン組込みに有利。切板の反りが小さく、後工程が曲げ・溶接の場合に選ばれます。

スリッター(ロータリーシャー)

コイル材を連続的に細幅切断する専用機。円形ローラー刃で長尺スリット、生産性が非常に高く鋼板販売店・コイルセンターの主力機。JIS B 0113で規定。

コーナーシャー(ノッチャー)

角切り欠き専用機。板の角にV字・L字の切り欠き加工を行い、後工程の折り曲げ角度合わせに使用。板金工場の下工程で頻用。

回転式ハンドシャー(手動)

電動・手動の小型機。1-3mm程度の薄板を現場で切断する簡易機で、リフォーム・電工現場・DIYで使用。JIS B 4632準拠品。

切断品質・バリ・刃寿命

切断面の3ゾーン

シャー切断された断面は、上部に「だれ」、中央に「せん断面(光沢面)」、下部に「破断面(粗面)」の3ゾーンが発生します。板厚の1/3程度が光沢せん断面、残り2/3が破断面が理想的で、品質判定の目安になります。

バリの発生要因と対策

  • 刃間クリアランス過大 ― 上下刃の隙間は板厚の5-15%が標準。5%未満はバリ最小だが刃寿命短、15%超はバリ増大
  • 刃摩耗 ― 刃先が丸くなるとバリ発生。定期研磨(数千切断ごと)が必要
  • 材質の粘性 ― SUS・銅・アルミは粘りが強くバリ発生しやすい

刃寿命の目安

材質研磨サイクル寿命(累計切断長)
SPCC(冷延鋼板)3-5万切断数百kmクラス
SS400(構造用鋼)2-3万切断数百kmクラス
SUS3040.5-1万切断数十-100km
SUS316・S45C0.3-0.8万切断数十kmクラス

他切断工法との使い分け

工法速度形状板厚上限切断品質ランニングコスト
シャー切断◎ 極高速直線のみ25mm(SS400)○ 良好・バリあり◎ 低い
レーザー切断○ 高速(薄板)自由形状25-30mm◎ 極高精度△ ガス・電力大
プラズマ切断◎ 高速(厚板)自由形状150mm△ 熱影響部あり○ 中程度
ウォータージェット△ 遅い自由形状200mm超◎ 熱影響なし× 高額
バンドソー切断× 遅い直線のみ500mm超○ 良好◎ 極低い
ガス切断(酸素)○ 中速自由形状300mm超× 熱影響大○ 低い

板金工場では「一次切断=シャー、二次加工(形状切断)=レーザー・プラズマ」という工程分業が定石。定尺板からブランク素材への一次切り出しはシャーで超高速に、続く形状加工はレーザー/プラズマで対応するのが最も生産性が高い運用です。

安全規則とJIS規格

労働安全衛生法プレス機械等安全規則

シャー機は労働安全衛生法上「プレス機械」に該当し、以下の安全対策が義務付けられています。

  • 両手操作式起動装置(危険区域から手を離した状態でしか動作しない)
  • 安全ブロック・光電式安全装置(作業者接近時の緊急停止)
  • 特定機械等(プレス機械)の定期自主検査(月次・年次)
  • プレス機械作業主任者(3日以上の教育修了)による作業指揮
  • 油圧・電気の遮断ロックアウト・タグアウト

関連JIS規格

  • JIS B 6406 ― シャー(機械プレス)の主要諸元・試験方法
  • JIS B 4632 ― 手動シャー・電気式携帯シャー
  • JIS B 0113 ― プレス加工用語(せん断・打抜き・曲げ等)
  • JIS B 9704 ― 光電式安全装置
  • ISO 12100 ― 機械類の安全性・リスクアセスメント(国際規格)

業界・工程別の使い方

板金加工工場(一次切断)

定尺板(1×2m・1.2×2.4m・1.5×3m)から製品ブランクへの一次切り出し。1日数百-数千カットの高負荷用途で、300-600t機を主力設備として保有。CADからのプログラム自動送信・NC制御で完全自動化する工場が増加中。

鋼材販売センター

顧客注文に応じた定寸カット売り。1000t超の大型シャー・スリッターで長尺コイル・厚板を短時間処理。JISマーク付き鋼材の切断加工証明を発行するケースあり。

プレス加工前工程

プレス機のブランク素材切断。プレス金型の要求精度に応じて刃間クリアランス調整・レーキ角選定を厳密管理。ブランク重量ばらつきを±0.5%以内に抑えるのが目標水準。

造船・鉄骨工事

厚板9-25mmの一次切断。ガス切断・プラズマ切断と併用。JIS G 3106(溶接構造用圧延鋼材)材の熱影響を避けたい場合はシャー優先。

電機・精密機器

薄板(0.5-3mm)SPCC・銅箔・アルミ箔の切断。小型シャー(30-100t)を製造ライン組込み。全電動サーボ式で0.1mm精度切断を実現。

設備選定・投資判断

新規工場設計・老朽化更新時の機械容量決定に。「最大板厚×切断長×せん断強度」に安全余裕1.5-2.0倍を掛けた容量選定が実務基準。中古機は50-70%の残存能力で見積もる。

よくある間違い・注意点

  • スクエア刃と斜め刃を混同 — カタログ「切断能力6mm」の多くはSS400+標準レーキ刃前提。スクエア刃で計算すると必要容量は40-100%増となり、機械選定ミスの主要原因。
  • SS400以外の材質でカタログ値そのまま — SUS304はSS400の約1.5倍のせん断力が必要。「SS400 6mm対応」機は「SUS304 4mm程度」までとなり、材質換算を怠ると刃損傷・機械故障。
  • 容量ぎりぎりの運用 — 定格容量100%運用は刃寿命を極端に短縮し、機械寿命も低下。1.5倍余裕での機械選定が実務基準。
  • 刃間クリアランスの放置 — 板厚変更時にクリアランス調整を怠ると、バリ増大・切断面品質低下・刃損傷が発生。板厚の5-15%を維持。
  • 安全装置の無効化 — 光電式安全装置・両手操作をバイパスして生産性を上げようとする違法改造は、労働安全衛生法違反+重大事故時に刑事責任。プレス機械類の安全教育・作業主任者選任は必須。
  • 切断面の反り(キャンバー)を無視 — 斜め刃で切断された鋼板は必ずねじれ・反りが発生。後工程で溶接・曲げする場合は矯正工程を挟む必要あり。
  • 厚板をシャーで無理切断 — 20mm超の厚板は反り・端面品質・機械負荷から、ガス切断・プラズマ・ウォータージェットが適切。シャー無理使用は機械寿命を著しく縮める。

参考文献・公的資料

切断能力計算・安全規則・設備選定に必要な一次資料を整理しました。

※本ページの計算式・材質値・機械容量表は、公表規格と業界慣行に基づく参考値です。実際の設備選定・購入判断・安全設計・切断加工手順は、機械メーカーの正式カタログ、材料メーカーのミルシート、労働安全衛生法プレス機械等安全規則、およびプレス機械作業主任者・生産技術者の判断に従ってください。特に労働災害リスクの高い機械であるため、無資格者による操作・改造・調整は絶対に行わないでください。

よくある質問(FAQ)

1.5m×6mm SS400のシャー必要能力は?

スクエア刃計算では板厚6mm×切断長1500mm×せん断強度340N/mm²=3,060kN(約312トン)。標準的な2度レーキ刃(低減係数0.7)適用で約2,140kN(約218トン)となり、余裕1.5倍で325トン機以上の選定が実務推奨です。中古機は残存能力50-70%で見積もり、余裕を追加してください。

SS400と SUS304 でシャー機の対応板厚が違うのは?

SUS304のせん断強度(約520N/mm²)はSS400(約340N/mm²)の約1.5倍。「SS400 6mm対応シャー機」は「SUS304 約4mm対応」と読み替える必要があります。ステンレス多用工場では最初からSUS基準で容量選定するのが安全です。

レーキ角を大きくすると何が変わる?

必要切断力は50-80%に低減して機械を小型化できますが、切断品質(直線度・平面度)は低下し、切板にねじれ・反りが発生します。後工程が溶接・曲げの場合は矯正工程が必要になり、精密切断が必要ならスクエア刃または1度以下の小レーキ角を選択します。

刃の寿命と研磨サイクルは?

材質と使用頻度で大きく変動しますが、目安はSPCC 3-5万切断、SS400 2-3万切断、SUS304 5,000-10,000切断で研磨。累計切断長では数百kmクラスが上限です。刃摩耗はバリ増大・切断面品質低下として現れるため、定期点検が必須です。

安全余裕は何倍見るべき?

実務では1.5-2.0倍が標準。カタログ定格値ぎりぎりでの運用は刃寿命・機械寿命を著しく縮めます。中古機を購入する場合は残存能力50-70%として、実質1.5×1.4=2.1倍程度の余裕を見込むと安全です。

シャーとレーザー、どちらが得?

用途による使い分けが最適。直線切断・大量生産・厚板→シャー複雑形状・少量多品種・精密→レーザー。板金工場では両者を保有し工程分業するのが定石。1日あたり切断枚数、形状複雑度、要求精度から判断してください。

厚板は何mmまでシャー切断できる?

市販最大級のシャー機(1500-2000t)でSS400 25-32mm、SUS304で16-20mmが上限。それを超える厚板はガス切断・プラズマ切断・ウォータージェットが適切。20mm超の厚板は反り・端面品質・機械負荷から、シャーは不経済です。

スイングビームシャーとギロチンシャーの違いは?

刃の下降軌道が違います。ギロチンは垂直下降で汎用性が高く、スイングビームは円弧軌道で剛性が高く厚板向き。厚板9mm超ではスイングビーム、それ以下ではギロチンが選ばれる傾向です。

切断面のバリを減らすには?

(1)刃間クリアランスを板厚の5-8%に調整、(2)定期的な刃研磨、(3)材質に応じた刃硬度選定(SKD-11・SKH等)、(4)潤滑油の適切な使用。バリ完全排除は困難で、後工程でバリ取り(ブラシ・ベルト研磨)が必要な精密部品もあります。

プレス機械作業主任者は必要?

労働安全衛生法により、動力プレス機械5台以上を有する事業場では、プレス機械作業主任者(3日以上の技能講習修了)の選任が義務付けられています。シャー機もプレス機械に含まれるため、対象事業場では必ず選任してください。

切断エネルギーはモーター選定に必要?

はい。ピーク切断力×貫入距離×0.5≒切断エネルギー(J)を基に、フライホイール蓄勢能力・モーター定格・サイクルタイムから機械電気系統を設計します。全電動サーボ式ではモーター定格容量が直接反映されるため、ピーク電流計算にも使用します。

ハンドシャー(手動)で何mmまで切れる?

電気式携帯シャー(電動レバーシャー)で SPCC 1.6-2.0mm、SUS304 1.2mm程度が実用限界。手動レバー式は SPCC 1.2mm以下。板厚3mm超は据置型シャーが必須です。DIY・電工現場・空調工事等での使用が中心です。