ROIC vs WACC
営業利益と投下資本、資本構成から、ROICとWACCの差と経済的付加価値を算出します。
ROIC vs WACCツール
計算式と考え方
NOPATは営業利益12億円に(1−実効税率30%)を掛けた8.4億円です。ROICはこれを投下資本80億円で割った10.50%になります。株主資本コストは無リスク利子率1.5%+ベータ1.1×市場リスクプレミアム6%で8.10%です。WACCは負債30億円に負債コスト1.2%の税引後0.84%を、株主資本50億円に8.10%を、それぞれ構成比で加重して5.38%となります。差は5.12ポイントで、経済的付加価値は8.4億円−80億円×5.38%の約4.1億円です。
指標の構成要素
| ROIC | NOPAT÷投下資本。事業に投じた資本がどれだけ利益を生んだかを示します |
|---|---|
| WACC | 負債コストと株主資本コストを構成比で加重平均した、資本の調達コストです |
| 株主資本コスト | 無リスク利子率+ベータ×市場リスクプレミアム。株主が期待する最低限の収益率です |
| EVA | NOPAT−投下資本×WACC。金額で表した価値創造の大きさです |
| 業種のROIC目安 | 製造業8%/小売・卸売9%/サービス・情報12%/不動産・インフラ6%。設備の重さと資本回転率の違いで水準が変わります |
ROIC vs WACCの詳しい解説
ROICがWACCを上回っているかどうかは、事業が価値を生んでいるかを判断する最も基本的な条件です。ROICは投じた資本1円あたりどれだけの税引後営業利益を生んだかを示し、WACCはその資本を調達するために負担しているコストを示します。前者が後者を下回っている状態は、利益は出ていても資本の提供者が求める水準に届いていない、つまり資本を消費している状態を意味します。会計上の当期純利益が黒字でも、この差が負であれば価値は減っています。ROICの分母である投下資本の定義には注意が必要です。事業に使われている資本、すなわち運転資本と固定資産の合計として捉える方法と、有利子負債と株主資本の合計として捉える方法があり、原則としてどちらでも近い値になりますが、余剰現金や非事業用資産の扱いで差が出ます。多額の現金を保有している企業では、これを分母に含めるとROICが低く出ます。事業の実力を見るなら非事業用の資産は除くのが自然ですが、資本を遊ばせていること自体の是非は別に議論する必要があります。WACCの推計は仮定に依存します。株主資本コストは資本資産評価モデルで求めるのが一般的で、無リスク利子率、ベータ値、市場リスクプレミアムの三つを置きます。このうち市場リスクプレミアムは推計方法によって幅があり、5%を使うか7%を使うかでWACCは1ポイント以上変わります。ベータ値も観測期間や参照する指数で変動します。単一の数字を出すより、前提を幅で置いて感度を確認するほうが実務的です。WACCが1ポイント動いたときにスプレッドがどう変わるかを見れば、結論の頑健さが分かります。負債比率の扱いも判断が分かれます。負債コストは株主資本コストより低く、支払利息には節税効果があるため、負債を増やせば計算上のWACCは下がります。しかし負債が増えれば財務リスクが高まり、株主が求める収益率も上昇します。ある水準を超えると、この効果が節税の利点を上回ります。計算上WACCが下がるからといって負債を積み増す判断は、資本構成の安定性を損なう危険があります。事業別の評価にも用途があります。全社のROICが良好でも、内訳を見ると資本コストを大きく上回る事業と下回る事業が混在していることがあります。事業ごとに投下資本を配賦してROICを算出し、資本コストと比較することで、撤退や追加投資の判断材料が得られます。ただし共通費や共通資産の配賦方法によって結果が変わるため、配賦基準を明示したうえで、複数の基準で確認することが求められます。
業界・現場での使い方
価値創造の確認
ROICが資本コストを上回っているかを判定します。
資本構成の検討
負債と株主資本の比率がWACCに与える影響を見ます。
事業別の評価
事業ごとの資本効率を比較して投資配分を検討します。
よくある間違い・注意点
- 当期純利益の黒字だけで価値創造とみなす — 資本コストを下回っていれば価値は減っています。ROICとWACCの差で判断してください。
- WACCを単一の数値として扱う — 市場リスクプレミアムやベータの置き方で1ポイント以上動きます。幅を置いて感度を確認してください。
- WACCを下げるために負債を増やす — 財務リスクの上昇で株主資本コストも上がります。ある水準を超えると節税効果を打ち消します。
関連する規格・法規
- 経営分析基準
- 日本経営学会
※本ツールは公的基準に基づく参考計算です。実際の設計・施工・法令適用は最新の告示・規格および所轄官庁の判断に従ってください。
よくある質問(FAQ)
投下資本には何を含めますか?
運転資本と固定資産の合計、または有利子負債と株主資本の合計です。余剰現金や非事業用資産の扱いを明示してください。
市場リスクプレミアムは何%が適切ですか?
推計方法により5%から7%程度の幅があります。単一の値ではなく幅を置いて感度を見るのが実務的です。
スプレッドは何ポイントあれば十分ですか?
明確な基準はありませんが、推計の誤差を考えると3ポイント以上あれば安定して価値を創造していると評価できます。