FIM機能自立度
運動13項目・認知5項目の合計からFIM合計スコア(18-126点)、自立度分類、FIM効率(改善点数/日数)、回復期リハ病棟の実績指数目安を即時算出。
脳卒中・大腿骨頸部骨折・廃用症候群のカットオフ値、Barthel Index(BI)との換算目安、DPC加算算定基準まで一括で確認できるリハビリ現場向けツール。
FIM機能自立度ツール
基本式・スコアリング
FIM合計 = 運動13項目合計 + 認知5項目合計 (18-126点)
FIM効率 = (退院時FIM − 入院時FIM) ÷ 入院期間(日)
FIM(Functional Independence Measure)は18項目×7段階=18-126点で構成されるADL評価尺度で、リハビリ効果測定の国際標準として世界70か国以上で使用されています。運動項目13(セルフケア6+排泄コントロール2+移乗3+移動2)、認知項目5(コミュニケーション2+社会認知3)の18項目を、7=完全自立から1=全介助まで7段階でスコアリング。合計スコアが18点で「全介助」、126点で「完全自立」を表します。
日本では2016年の診療報酬改定以降、回復期リハビリ病棟の実績指数(FIM利得÷入院期間×基準日数)が入院料算定の根拠となり、FIMは病棟評価の中核指標へと格上げされました。評価者間信頼性を担保するため、UDSMR(米ニューヨーク州立大学)公認のFIM研修受講が事実上の必須要件となっています。
FIM合計スコアの評価分類
| 合計点 | 状態 | 介助時間目安 | 典型的な生活場面 |
|---|---|---|---|
| 108-126 | ほぼ自立 | 1日15分未満 | 独居可、在宅退院可 |
| 90-107 | 軽度介助 | 1日15-30分 | 家族同居で在宅可 |
| 72-89 | 中等度介助 | 1日30-60分 | 要介護1-2相当 |
| 54-71 | 中等度介助(重) | 1日1-2時間 | 要介護3-4相当 |
| 36-53 | 重度介助 | 1日2-4時間 | 要介護4-5、施設入所検討 |
| 18-35 | 全介助 | 1日4時間以上 | 要介護5、施設・病院 |
疾患別 入院時FIMのカットオフ値
| 疾患 | 入院時FIM中央値 | 退院時目標 | 入院期間(標準) |
|---|---|---|---|
| 脳卒中(発症30日以内) | 60-70 | 90+ | 150日以内 |
| 大腿骨頸部骨折 | 70-80 | 100+ | 90日以内 |
| 脊髄損傷(頸髄不全) | 40-55 | 75+ | 180日以内 |
| 廃用症候群 | 65-80 | 95+ | 90日以内 |
| 高次脳機能障害 | 75-90 | 105+ | 180日以内 |
FIM機能自立度の詳しい解説
FIM(Functional Independence Measure、機能的自立度評価表)はリハビリ効果を客観的に測定するための国際標準スケールです。1983年にUDSMR(米ニューヨーク州立大学バッファロー校)で開発され、日本では慶應義塾大学の千野直一教授らによって1990年代に導入・翻訳されました。18項目×7段階、合計18-126点で「している能力(実行状況)」を評価するのが特徴で、Barthel Index(BI、100点満点)が「できる能力」を評価するのと対をなす概念です。
運動13項目はセルフケア(食事・整容・清拭・更衣上/下・トイレ動作)6項目+排泄コントロール(排尿/排便管理)2項目+移乗(ベッド-椅子/トイレ/浴槽)3項目+移動(歩行/車椅子・階段)2項目で構成。認知5項目はコミュニケーション(理解・表出)2項目+社会認知(社会的交流・問題解決・記憶)3項目で構成されます。各項目1-7点、合計運動13-91点+認知5-35点=18-126点となります。
2016年度診療報酬改定で導入された回復期リハビリテーション病棟入院料の実績指数は、[(退院時FIM運動 − 入院時FIM運動) ÷ 入院期間] × [対象日数 ÷ 基準日数]で算出され、指数40以上を維持する病棟が入院料1・2の算定要件となっています。2020年改定でカットオフが引き上げられ、質の高いリハビリを提供する病棟のみが加算を得られる仕組みに強化されました。この制度以降、多くの病棟がFIM評価者研修を組織的に受講し、月次でFIM効率をモニタリングする体制を整えています。
FIM効率(FIM Efficiency)は「FIM利得÷入院期間」で計算され、脳卒中0.5-1.5、大腿骨頸部骨折1.0-2.0、廃用症候群0.5-1.5が標準レンジです。FIM効率2.0を超える症例は「急速改善型」、0.3を下回ると「改善鈍化型」として、退院支援・在宅移行の準備タイミングを判断します。訪問リハ・通所リハでも継続評価に使われ、介護保険下の維持期リハビリでも重要な指標となっています。
FIMには7段階評価の解釈が難しいという特有の課題があります。5点(監視・準備)と4点(最小介助、患者75%以上実行)の境目、3点(中等度介助、50%以上)と2点(最大介助、25%以上)の閾値の理解には研修が不可欠で、評価者間の信頼性(κ係数)を保つには定期的な症例検討・ビデオ研修が推奨されています。UDSMR公認のFIM研修は数万円かかりますが、回復期病棟で働くPT/OT/STにとって事実上の必須資格です。
介護保険の要介護認定においては、FIMそのものは公式評価項目ではありませんが、認定調査の74項目や主治医意見書のADL評価と強い相関があり、FIM合計90前後で要介護1-2、70前後で要介護3、50前後で要介護4-5相当とざっくり対応します。ケアマネジャーが多職種連携カンファレンスでFIMスコアを共有すれば、退院時カンファレンスから在宅ケアプラン作成までの情報伝達がスムーズになります。
業界・現場での使い方
回復期リハ病棟
入院時・退院時FIMを評価し、FIM利得と入院期間から実績指数を算出。指数40以上維持で回復期リハ病棟入院料1・2を算定。週次カンファレンスでFIMスコア共有・目標設定を行い、リハ計画書に反映します。
急性期リハ・DPC病院
ADL維持向上等体制加算(80点/日)の算定要件にFIM評価を含む。急性期14日以内のFIM維持率で加算判定を受けるため、入院早期からリハ介入・FIM再評価を行います。
訪問リハ・通所リハ
介護保険下の維持期リハで月次FIM評価を実施。長期的な自立度維持・改善を追跡し、ケアプラン見直し・サービス調整の根拠に使用。訪問看護計画書にも記載します。
介護支援専門員(ケアマネ)
退院時カンファレンスでFIMを情報連携ツールとして活用。要介護認定の主治医意見書・認定調査項目74項目とFIMを対応させ、ケアプランでのサービス種別・量を検討します。
リハ研究・臨床試験
脳卒中rTMS治療、CI療法、ロボットリハ等の効果検証でFIM利得を主要評価項目に採用。多施設共同研究では評価者間信頼性のため、UDSMR公認研修修了者の評価データのみを採用するのが標準です。
医療ソーシャルワーカー
退院支援でFIMスコアから在宅・施設・療養病床の適応判断。90点以上で在宅、70-90で在宅+介護サービス、70未満で施設入所検討という目安で、家族・本人と退院先を協議します。
ケーススタディ:現場での実務計算
ケース1:脳卒中患者のFIM効率算出
- 入院時:運動FIM 40+認知FIM 25 = 65点
- 退院時(90日後):運動FIM 78+認知FIM 33 = 111点
- FIM利得:111-65 = 46点
- FIM効率:46÷90 = 0.51点/日(標準的改善速度)
- 運動FIM利得38、実績指数=(38÷90)×(90÷90)=42.2(算定要件クリア)
ケース2:大腿骨頸部骨折の目標設定
- 術後入院時:運動FIM 55+認知FIM 30 = 85点
- 退院目標(60日):運動FIM 78+認知FIM 33 = 111点(自宅退院可)
- FIM利得目標26点、FIM効率0.43点/日
- 移乗・移動FIMを重点訓練対象に設定
ケース3:廃用症候群からの回復
- 入院時FIM 50(全介助レベル)、認知は正常
- 4週後 FIM 75、8週後 FIM 100
- FIM効率0.89点/日で急速改善型
- 介護老人保健施設ではなく自宅退院方針に変更
ケース4:訪問リハでの月次モニタリング
- 訪問リハ開始時FIM 82(要介護2相当)
- 6か月後FIM 88、12か月後FIM 90
- 年間FIM利得8点、月次利得0.67点で維持〜微改善
- ケアプラン継続・訪問頻度維持で合意
ケース5:回復期病棟の実績指数管理
- 2026年度目標:入院料1維持(実績指数40以上)
- 月次20症例平均でFIM運動利得35、平均入院日数75
- 実績指数=(35÷75)×(75÷90×90)=42.0(要件クリア)
- 認知症・重度失語症例の除外規定も適用
よくある間違い・注意点
- 主観的評価による評価者間バイアス — FIM7段階評価は「している能力(実行状況)」の判定に主観が入りやすく、評価者Aは5点、Bは4点と分かれることが頻発。UDSMR公認研修受講とキャリブレーションミーティングで信頼性(κ係数)を確保する。
- 18項目の一部省略 — 排泄コントロール(排尿・排便)や社会認知(問題解決・記憶)は評価しにくく省略しがち。全18項目評価が必須で、不明項目は1点扱いとするのが原則。
- 「できる能力」と「している能力」の混同 — FIMは「している能力」を評価する。訓練室で歩ける患者でも病棟で車椅子移動なら移動FIMは低くなる。Barthel Indexは「できる能力」なので両者は数値が異なる。
- 認知症・失語症の除外規定を見落とす — 回復期リハ病棟の実績指数計算では、重度認知症・失語症・脊髄損傷など特定条件で除外規定あり。事務職も含めて算定基準を正確に把握する必要がある。
- FIMだけで退院判断 — FIM 90以上でも家族介護力・住環境(段差・浴室)・経済状況で在宅退院が困難なケース多数。MSW・ケアマネ・家族との多職種カンファで総合判断を。
- 介護保険の要介護度と直接対応させる — FIMと要介護度は相関はあるが公式対応はない。認定調査は別の74項目基準。目安として活用しつつ、認定結果は認定調査員の判断に依存すると理解する。
関連する規格・法規・技術基準
- UDSMR FIM System(米ニューヨーク州立大学バッファロー校) — FIM評価の国際標準。公認研修と評価者認定が事実上の必須要件。
- 厚生労働省 診療報酬 回復期リハビリテーション病棟入院料 — 実績指数40以上で入院料1・2算定。FIM評価と結果報告が算定要件。
- 厚生労働省 疾患別リハビリテーション料 — 脳血管疾患・運動器・呼吸器・心大血管・廃用症候群の各リハ料でADL評価が必須項目。
- 日本リハビリテーション医学会 診療ガイドライン — 脳卒中・大腿骨頸部骨折・脊髄損傷等のリハ標準治療でFIM評価タイミング・目標値を規定。
- 介護保険法(要介護認定基準) — 認定調査74項目でADL評価。FIMは公式指標ではないが多くの現場で参考評価。
- Barthel Index(BI)・改訂長谷川式(HDS-R)・MMSE — FIMと併用される主要評価尺度。ADL・認知機能の総合評価に活用。
- 日本理学療法士協会・作業療法士協会・言語聴覚士協会 業務指針 — 各職種のFIM評価スキル・記録要件を規定。生涯学習制度で継続研修を推奨。
※本ツールは公的基準に基づく参考計算です。実際の診療報酬算定・介護認定・治療方針判断は最新の告示・診療ガイドラインおよび主治医・所轄官庁の判断に従ってください。
よくある質問(FAQ)
運動60+認知25の合計は?
85点(中等度介助)。運動FIM 60は移乗・移動に部分介助が必要なレベル、認知FIM 25は軽度低下。要介護2-3相当で、家族介護と訪問サービスを組み合わせた在宅生活が可能な範囲です。
FIMとBarthel Index(BI)の違いは?
FIMは「している能力(実行状況)」を評価、BIは「できる能力」を評価します。FIMは18項目・7段階・126点満点、BIは10項目・複数段階・100点満点です。BIの方が簡便で急性期向け、FIMは詳細でリハ効果測定に強みがあります。両者を併用する施設も多いです。
FIM効率の標準値は?
脳卒中0.5-1.5、大腿骨頸部骨折1.0-2.0、廃用症候群0.5-1.5、脊髄損傷0.3-0.8が標準レンジです。2.0超は「急速改善型」、0.3未満は「改善鈍化型」として、退院支援タイミングを判断します。
回復期リハ病棟の実績指数はどう計算する?
実績指数=(退院時運動FIM − 入院時運動FIM)÷入院期間 ×(対象日数÷基準日数)で算出。指数40以上で入院料1・2の算定要件を満たします。重度認知症・失語症・脊髄損傷等の除外規定もあります。
FIM評価者研修は必須?
法的必須ではありませんが、回復期リハ病棟の実績報告や臨床研究ではUDSMR公認研修修了者の評価が事実上の要件となります。研修費用は数万円、e-learningでも受講可能です。評価者間信頼性(κ係数0.7以上)を保つため定期研修が推奨されます。
認知症患者のFIM評価はどうする?
認知5項目のうち、社会認知(問題解決・記憶)が特に低くなります。運動FIMは維持されていても認知FIMで大きく下がるパターンが多く、総合判断が必要。回復期リハ病棟の実績指数では重度認知症は除外対象となる場合があります。
FIMは何点で自宅退院可能?
目安としてFIM 90以上で家族介護あり在宅退院、108以上で独居可能とされます。ただし住環境(段差・浴室・トイレ)、家族介護力、経済状況、地域資源で総合判断されます。MSW・ケアマネ・家族との多職種カンファレンスで決定するのが実務です。
訪問リハでもFIM評価する?
介護保険下の維持期リハでも月次または3か月毎のFIM評価が推奨されます。長期的な自立度維持・改善の追跡、ケアプラン見直しの根拠、家族への説明資料として活用されます。訪問看護計画書にも記載されます。
要介護度とFIMの対応は?
公式対応はありませんが目安として:要介護1-2でFIM 90前後、要介護3でFIM 70前後、要介護4-5でFIM 50前後です。認定調査は別の74項目基準なので、直接換算はできません。
FIM評価の所要時間は?
熟練評価者で約20-30分。初回評価は面接+観察+記録で30-45分、再評価は15-20分程度です。多職種で分担評価も可能で、PT/OT/STが担当項目を分けて評価するのが効率的です。
用語集
- FIM(Functional Independence Measure)
- 機能的自立度評価表。18項目×7段階=18-126点でADL評価。
- 運動FIM/認知FIM
- 運動13項目(91点満点)/認知5項目(35点満点)の内訳。
- FIM効率(FIM Efficiency)
- FIM利得÷入院期間。改善速度を表す指標。
- 実績指数
- 回復期リハ病棟の入院料算定基準。40以上が要件。
- Barthel Index(BI)
- ADL評価尺度。10項目・100点満点で「できる能力」を評価。
- UDSMR
- 米ニューヨーク州立大学バッファロー校医学リハビリセンター。FIM開発・研修運営元。
- κ(カッパ)係数
- 評価者間信頼性の指標。0.7以上が実用レベル。
- 「している能力」
- 実生活で実際に行っている状況。FIMの評価軸。
- 「できる能力」
- 訓練室等で最大限発揮できる能力。BIの評価軸。
- 要介護認定
- 介護保険法に基づく要介護度判定。認定調査74項目+主治医意見書。
まとめ・実務ポイント
FIMはリハビリ効果測定の国際標準として、回復期病棟の実績指数算定・退院支援・多職種連携の中核指標となっています。18項目全部の評価、UDSMR研修受講、評価者間信頼性の維持の3つを押さえることで、実務で通用するFIM評価が可能になります。
実務では入院時・退院時に加え、月次または週次でFIMを再評価し、FIM効率・実績指数のモニタリングで病棟運営とリハ計画を回します。認知症・失語症の除外規定、Barthel Indexとの使い分け、要介護度との目安対応を理解しつつ、単一指標に頼らず多職種カンファレンスで総合判断するのが実務の鉄則です。本ツールで基本値を確認し、詳細な算定・認定判断は関連ツールと組み合わせて活用してください。
参考文献・公的リソース
- 厚生労働省「診療報酬点数表・回復期リハビリテーション病棟入院料」mhlw.go.jp
- 厚生労働省「介護保険制度・要介護認定」mhlw.go.jp
- 日本リハビリテーション医学会「診療ガイドライン」jarm.or.jp
- 回復期リハビリテーション病棟協会「実績指数・症例登録」rehabili.jp
- 日本理学療法士協会「業務指針・生涯学習」japanpt.or.jp
- 日本作業療法士協会「業務指針」jaot.or.jp
- UDSMR(米NY州立大学)「FIM System・研修プログラム」udsmr.org