検出力分析事前計画
想定する効果量と検出力から、研究計画に必要なサンプルサイズを算出します。
検出力分析事前計画ツール
計算式と考え方
必要例数は「2 ×(有意水準の基準値 + 検出力の基準値)の2乗 ÷ 効果量の2乗」で求めます。平均50と55、標準偏差12なら効果量は5÷12で約0.417です。両側5%の基準値1.960と検出力80%の基準値0.842を足すと2.802、その2乗の2倍は約15.70となり、効果量の2乗0.174で割ると1群あたり約91例です。脱落率10%を見込むと組み入れは1群102例、両群で204例が必要になります。確保見込みが1群60例であれば検出力は約62.6%にとどまり、その例数で検出できる平均差は約6.14です。
検出力分析で決める4つの量
| 有意水準 | 誤って差があると判定する確率。慣習的に両側5%が用いられる |
|---|---|
| 検出力 | 本当に差があるときに検出できる確率。80%が最低線、90%以上が望ましい |
| 効果量 | 群間差を標準偏差で割った値。0.2が小、0.5が中、0.8が大の目安 |
| サンプルサイズ | 他の3つが決まれば一意に定まる。実務ではここを逆算する |
検出力分析事前計画の詳しい解説
検出力分析は、研究を始める前に必要な標本の大きさを決めるための手続きです。標本が小さすぎれば、実際に差があっても検出できず、投じた資源と参加者の負担が無駄になります。逆に必要以上に大きければ、臨床的に意味のない差まで統計的に有意と判定され、参加者を不必要な介入にさらすことになります。事前計画が倫理審査で求められるのは、この両面の問題を避けるためです。計算に必要な量は4つあり、有意水準、検出力、効果量、サンプルサイズのうち3つを決めれば残り1つが定まります。有意水準は誤って差があると判断する確率で、両側5%が慣習として定着しています。検出力は本当に差があるときにそれを検出できる確率で、80%が最低限の水準、余裕を持たせるなら90%が推奨されます。検出力80%とは、同じ研究を10回行えば2回は差を見逃すという意味であり、決して安全側の設定ではありません。最も難しいのが効果量の設定です。ここに願望を入れると、必要例数が小さく算出され、結果として検出力の低い研究になります。先行研究の実測値、あるいは臨床的に意味があると合意できる最小の差を根拠にすることが求められます。標準偏差の見積もりも同様で、実際のばらつきが想定より大きければ検出力は計画値を下回ります。脱落と欠測の扱いも計画段階で織り込む必要があります。算出される例数は解析対象として必要な数であり、追跡不能や同意撤回で失われる分を上乗せしなければ、解析時点で例数が不足します。長期の追跡を伴う研究では、脱落率が2割を超えることも珍しくありません。研究が終わった後に、得られた結果から検出力を計算し直す事後の検出力分析は、統計的な情報を追加しません。p値と一対一に対応するだけであり、有意でなかった結果を弁明する材料にはならないという指摘が広く共有されています。有意差が出なかった場合に意味を持つのは、信頼区間の幅から、どの程度の差までなら否定できるかを読み取ることです。多群比較や複数の評価項目を設定する場合は、検定の繰り返しによる誤りの増加を補正する必要があり、その分だけ必要例数も増えます。計画の段階で主要評価項目を1つに絞ることが、例数を現実的な範囲に収める方法として推奨されます。
業界・現場での使い方
研究計画の作成
倫理審査に提出する必要例数の根拠を算出します。
予算と期間の見積
組み入れ例数から募集期間と費用を逆算します。
実行可能性の判断
確保できる例数での検出力を確認し、計画の見直しを検討します。
よくある間違い・注意点
- 効果量を希望的に大きく設定する — 必要例数が過小になり、検出力の低い研究になります。先行研究の実測値を根拠にしてください。
- 脱落を見込まない — 算出値は解析対象として必要な数です。脱落率の分を上乗せして組み入れる必要があります。
- 研究後に検出力を計算する — 事後の検出力はp値と対応するだけで情報を追加しません。信頼区間で解釈してください。
関連する規格・法規
- 日本統計学会
- ASA声明
※本ツールは公的基準に基づく参考計算です。実際の設計・施工・法令適用は最新の告示・規格および所轄官庁の判断に従ってください。
よくある質問(FAQ)
検出力は何%にすべきですか?
80%が最低線とされ、90%以上が望ましいとされます。80%は差を2割見逃す設定です。
効果量はどう決めますか?
先行研究の実測値か、臨床的に意味があると合意できる最小の差を用います。
片側検定にすれば例数を減らせますか?
減りますが、片側にする根拠が事前に明確な場合に限られます。安易な採用は推奨されません。