ヌッセルト数
流れの条件と流体の物性から、ヌッセルト数と熱伝達率、伝熱量を計算します。
ヌッセルト数ツール
計算式と考え方
レイノルズ数は「密度 × 流速 × 代表寸法 ÷ 粘性係数」で求めます。水の物性で流速2m/s、管内径0.02mなら約44,800となり、乱流の範囲です。プラントル数は「比熱 × 粘性係数 ÷ 熱伝導率」で約6.14になります。管内の乱流ではDittus-Boelterの式「Nu = 0.023 × Re の0.8乗 × Pr の0.4乗」を用い、ヌッセルト数は約250です。熱伝達率は「Nu × 熱伝導率 ÷ 代表寸法」で約7,580W/(m2·K)、伝熱面積0.5m2、温度差20Kなら伝熱量は約75,800Wになります。
無次元数の意味
| ヌッセルト数 | 対流による伝熱が、静止した流体の熱伝導の何倍かを示す |
|---|---|
| レイノルズ数 | 慣性力と粘性力の比。2,300前後で層流から乱流に移る |
| プラントル数 | 運動量の伝わりやすさと熱の伝わりやすさの比。物性だけで決まる |
| Dittus-Boelterの式 | 管内乱流の代表的な整理式。加熱は0.4乗、冷却は0.3乗を用いる |
ヌッセルト数の詳しい解説
ヌッセルト数は、対流によって運ばれる熱が、同じ厚みの静止した流体を通る熱伝導の何倍にあたるかを表す無次元数です。値が大きいほど流れによる熱の輸送が効いていることを示します。この形で整理することにより、寸法や物性が異なる装置の結果を同じ土俵で比較でき、実験の結果を別の条件に外挿できるようになります。管内の乱流に対して広く使われるDittus-Boelterの式では、ヌッセルト数がレイノルズ数の0.8乗に比例します。この指数の意味は実務上重要で、流速を2倍にしても熱伝達率は約1.74倍にしかならないことを示しています。一方、圧力損失は流速のおよそ2乗で増えるため、流速を上げて伝熱を改善しようとすると、動力の増加が伝熱の改善を上回ります。熱交換器の設計で流速に適正な範囲が設けられているのは、この関係によるものです。加熱と冷却でプラントル数の指数が変わるのは、壁面付近の温度によって粘性が変化するためです。液体を加熱すると壁の近くで粘性が下がり、その分だけ伝熱が良くなります。冷却ではその逆が起こります。温度差が大きい場合は、壁面の温度における粘性を用いた補正項を加える式が使われます。適用の範囲にも制約があります。Dittus-Boelterの式は、レイノルズ数が1万以上、管の長さが内径の10倍以上といった条件で整理されたもので、これを外れると誤差が大きくなります。特に、入口の近くでは境界層が発達しておらず、実際の熱伝達率は式の値より高くなります。短い管や、曲がりの多い流路では、この助走区間の影響を無視できません。層流の場合、管内の熱伝達は流速にほとんど依存しなくなります。壁温が一定という条件で十分に発達した層流では、ヌッセルト数は3.66という一定値をとります。これは、層流では熱が主に伝導によって運ばれ、流れが速くなっても壁から中心への熱の伝わり方が変わらないためです。したがって、層流の領域で伝熱を改善したい場合は、流速を上げるのではなく、管を細くする、乱れを起こす部品を挿入する、といった別の手段が採られます。実際の装置では、式で求めた熱伝達率がそのまま実現するとは限りません。管の内面に付着物が生じると、薄い層でも熱伝導率が低いため、全体の性能を大きく下げます。設計では汚れの影響を見込んだ余裕が加えられます。また、管の外側の流体の熱伝達率と管壁の熱抵抗を合わせた総括の値で装置の性能は決まるため、内側だけを改善しても、律速となっている側が変わらなければ効果は限られます。どちらが支配的かを確認してから対策を選ぶことが設計の要点になります。
業界・現場での使い方
熱交換器の設計
流れの条件から熱伝達率と伝熱量を求めます。
条件の比較
流速や寸法を変えた場合の伝熱の変化を確認します。
流れの判定
レイノルズ数から層流か乱流かを判断します。
よくある間違い・注意点
- 流速を上げれば比例して伝熱が良くなると考える — 0.8乗でしか増えません。圧力損失は約2乗で増えるため、動力が先に効いてきます。
- 適用範囲を確認せずに式を使う — レイノルズ数や管の長さに条件があります。入口付近や短い管では誤差が大きくなります。
- 管の内側だけを改善する — 外側の熱伝達率や汚れが律速の場合、内側を改善しても全体の性能は変わりません。
関連する規格・法規
- JIS化学規格
- ISO化学基準
※本ツールは公的基準に基づく参考計算です。実際の設計・施工・法令適用は最新の告示・規格および所轄官庁の判断に従ってください。
よくある質問(FAQ)
ヌッセルト数は何を表しますか?
対流による伝熱が、静止した流体の熱伝導の何倍にあたるかを示す無次元数です。
層流と乱流の境目はどこですか?
円管内ではレイノルズ数2,300前後が目安です。4,000を超えると乱流として扱われます。
層流で流速を上げても伝熱が変わらないのはなぜですか?
層流では熱が主に伝導で運ばれるためです。十分に発達した状態ではヌッセルト数が一定値になります。