キー溝寸法(軸径別JIS) 計算ツール|JIS B 1301 平行キー対応
軸径からJIS B 1301(平行キー)準拠のキー・溝寸法(キー幅×高さ・軸溝深さ・ハブ溝深さ)を即参照。締り(P9)・普通(N9)・滑り(JS9)のはめあい公差、キー材(SS400・S45C)、押しネジ止め・両先端角取り、機械設計・切削加工現場での実務ポイント、こう配キー(JIS B 1302)や半月キー(JIS B 1303)との使い分けまで、JIS一次資料に基づいて解説します。
キー溝寸法(軸径別JIS)ツール
キーとキー溝の役割
基本の考え方
キーは回転軸と回転体(プーリー・スプロケット・歯車・カップリング等)を確実に結合する機械要素で、軸のトルクをキーのせん断強度を介して伝達します。JIS B 1301(平行キー)では軸径ごとにキー寸法(b×h)、軸溝深さ(t1)、ハブ溝深さ(t2)、キー長さの許容範囲がすべて規定されており、標準寸法から外れると継手・プーリー・スプロケットとの互換性が失われるため、加工は必ずJIS準拠が原則です。
寸法決定の順序
- 軸径(d)を確定する
- JIS B 1301 表からキー寸法(b × h)を選定
- 軸溝深さ(t1)・ハブ溝深さ(t2)を表から確認
- 伝達トルクからキー長さ(L)を強度計算で算出
- 用途に応じたはめあい公差(P9/N9/JS9)を選定
- キー材(SS400/S45C等)とキー長さの規格値を選定
キー長さの強度計算
必要キー長さ L(mm) ≧ 2T ÷ (d × h × σ)
ここで T=伝達トルク(N・mm)、d=軸径(mm)、h=キー高さ(mm)、σ=許容せん断応力(MPa)。目安として鋼キーのσ=50〜80MPa。実際にはキー長さは軸径の1.5〜2倍が実務標準ですが、強度不足なら太い軸に変えるかキーを2本並列(180°位置)使う方法が採られます。
JIS B 1301 平行キー全表
JIS B 1301:2009準拠の平行キー標準寸法一覧。t1・t2の値は「基準寸法」で、実際の加工では公差(t1+0.1・t2+0.1〜0.2など)を考慮します。
| 軸径 d (mm) | キー b×h (mm) | 軸溝深 t1 | ハブ溝深 t2 | キー長 L範囲 |
|---|---|---|---|---|
| 6超〜8以下 | 2×2 | 1.2 | 1.0 | 6〜20 |
| 8〜10 | 3×3 | 1.8 | 1.4 | 6〜36 |
| 10〜12 | 4×4 | 2.5 | 1.8 | 8〜45 |
| 12〜17 | 5×5 | 3.0 | 2.3 | 10〜56 |
| 17〜22 | 6×6 | 3.5 | 2.8 | 14〜70 |
| 22〜30 | 8×7 | 4.0 | 3.3 | 18〜90 |
| 30〜38 | 10×8 | 5.0 | 3.3 | 22〜110 |
| 38〜44 | 12×8 | 5.0 | 3.3 | 28〜140 |
| 44〜50 | 14×9 | 5.5 | 3.8 | 36〜160 |
| 50〜58 | 16×10 | 6.0 | 4.3 | 45〜180 |
| 58〜65 | 18×11 | 7.0 | 4.4 | 50〜200 |
| 65〜75 | 20×12 | 7.5 | 4.9 | 56〜220 |
| 75〜85 | 22×14 | 9.0 | 5.4 | 63〜250 |
| 85〜95 | 25×14 | 9.0 | 5.4 | 70〜280 |
| 95〜110 | 28×16 | 10.0 | 6.4 | 80〜320 |
| 110〜130 | 32×18 | 11.0 | 7.4 | 90〜360 |
| 130〜150 | 36×20 | 12.0 | 8.4 | 100〜400 |
| 150〜170 | 40×22 | 13.0 | 9.4 | 100〜400 |
| 170〜200 | 45×25 | 15.0 | 10.4 | 110〜450 |
はめあい公差の選定
JIS B 1301では軸溝・ハブ溝の幅とキー幅の関係で3種類のはめあいが規定されており、用途に応じて使い分けます。
| はめあい | キー幅 | 軸溝幅 | ハブ溝幅 | 用途 |
|---|---|---|---|---|
| 締り(1形) | h9 | P9 | P9 | 取外し不可・重負荷 |
| 普通(2形) | h9 | N9 | JS9 | 汎用・中負荷 |
| 滑り(3形) | h9 | H9 | D10 | 軸方向スライド・軽負荷 |
各はめあいの選定基準
- 締りばめ(P9-P9) ― キーが軸・ハブ両方でわずかに締められて固定される。頻繁な分解を予定しない結合、大トルク・衝撃荷重のある用途(重機・プレス機・大型ポンプ)。組立てにハンマー・プレス圧入が必要。
- 普通ばめ(N9-JS9) ― もっとも一般的な組合わせで、軸側は締り目、ハブ側はやや隙間ばめ。汎用機械・モーター駆動・減速機の80%はこれ。ハブ側の分解が容易。
- 滑りばめ(H9-D10) ― キーがハブ内で軸方向にスライドできる組合わせ。可変ピッチプーリー・スライドクラッチ・変速機構の一部で使用。トルク伝達しつつ軸方向動作が必要な場面。
キー材と表面処理
キーは「軸より少しやわらかい材料」を選定するのが原則です。過負荷時にキーがせん断破損することで、高価な軸・回転体を保護する「安全部品」の役割を果たすためです。
| キー材料 | 降伏点(MPa) | 用途 | 備考 |
|---|---|---|---|
| SS400(一般構造用圧延鋼) | 245 | 汎用・軽〜中負荷 | もっとも一般的 |
| S45C(機械構造用炭素鋼) | 490 | 中〜重負荷 | 調質処理で強度確保 |
| S50C | 530 | 重負荷・高精度 | 調質+研磨仕上げ |
| SNCM439(クロモリ鋼) | 885 | 高強度・衝撃荷重 | 大型プレス・重機 |
| SUS303/304 | 205 | 食品・薬品機械 | 耐食性 |
| 黄銅(C3604BD) | 245 | 電機・楽器 | 非磁性・良導電 |
市販の「キー材」はJIS B 1301の規格寸法に精密加工された状態で流通しており、長さを切って両端の角取りを施すだけで使えます。カットキー・両端R付きキー・止めネジ用穴あきキーなど各種バリエーションが工具商・機械部品商で入手可能です。
キーの種類(平行/こう配/半月)
JISではキーの形式ごとに規格が分かれています。本ツールは平行キー(JIS B 1301)を対象としていますが、他形式との使い分けを理解することが実務で重要です。
| キー形式 | JIS規格 | 特徴 | 用途 |
|---|---|---|---|
| 平行キー | JIS B 1301 | 断面が長方形・軸方向に平行 | 汎用・8割の機械 |
| こう配キー | JIS B 1302 | 1/100のこう配・楔効果で締まる | 低速大トルク・過剰締め |
| 半月キー(ウッドラフ) | JIS B 1303 | 半月状・首振り可能 | テーパ軸・自動車ステアリング |
| 接線キー | JIS B 1304 | 2本を接線方向に配置 | 大トルク・両方向回転 |
| 丸キー | JIS B 1305 | 断面が丸・ピン状 | 小径軸・軽負荷 |
| スプライン | JIS B 1601等 | 軸全周に複数キー溝 | 自動車ドライブシャフト |
業界・現場での使い方
機械設計・強度計算
継手・プーリー・スプロケット・歯車の選定で、軸径とキー寸法をJIS B 1301から確定。伝達トルクとキーせん断強度からキー長を逆算し、必要な軸径・材質を組み立てます。CADライブラリの機械部品テンプレートもJIS準拠が主流。
切削加工・キー溝加工
マシニングセンター・エンドミル・キー溝盤で軸に溝を切削。エンドミル径=キー幅、切込み量=溝深さで加工。両端の抜け止め(止まり穴)か貫通か、Rつきか角ばりかの図面指示を確認します。ハブ側は形彫盤・ブローチ加工が一般的。
メンテナンス・キー交換
摩耗・変形したキーを標準寸法品と交換。軸径を測定→JIS表からキー寸法特定→両端の角取りと止めネジ用ザグリを追加加工→組み立て。軸溝が摩耗している場合は肉盛溶接+再機械加工か、軸交換の判断が必要です。
工作機械・自動組立ライン
NCマシン・ロボット・搬送コンベアのモーター軸-減速機-駆動プーリーの接続にキー溝結合。トルク検出・過負荷保護装置と組み合わせて、キーせん断を安全機構として活用する設計も。
ポンプ・送風機の羽根車固定
ポンプ・ブロワの羽根車を軸に固定。締りばめ+セットネジ止めが基本、大型機ではボスにフレット防止のプレローディングを設計。定期分解メンテを予定する場合は普通ばめ(N9-JS9)を選択。
自動車・産業車両の駆動系
クラッチ・トランスミッション・デフの伝動系ではスプライン(多歯キー)が主流ですが、補機類のプーリー・スプロケット固定には従来型のキー溝結合が今も多用されています。
よくある間違い・注意点
- 軸径のみでキー選定して溝深さを確認せず — JIS表で軸溝深t1・ハブ溝深t2を必ず確認。キー高さhの半分より少し多いのがt1、残りがt2となる関係で、加工ミスは互換性喪失に直結。
- 公差ミス(P9/N9/JS9) — 締り/普通/滑りのはめあいを混同すると、締り予定で普通ばめだと分解時のガタつき、逆に普通予定で締りだと組立て困難で無理にハンマー打ちして軸を曲げる事故に。図面公差の指示徹底が必須。
- キー長さを軸径基準で決めない — キー長は軸径の1.5〜2倍が実務標準。伝達トルクに対する強度計算をせず「感覚で決める」と過負荷時に折損。特に始動衝撃・繰返し荷重のある用途は許容応力を安全率2〜3で見込みます。
- キー材を軸より硬く選ぶ — キーは安全部品としてわざと軸より弱く設計します。SS400軸にS45Cのキーを入れると、過負荷時に高価な軸側が破損する本末転倒に。SS400軸にはSS400キーが標準。
- 両端の角取り(面取り)忘れ — キー両端はC0.5〜C1程度の角取りが必須。角ばったままだと溝への挿入時にバリを噛み込み、応力集中で亀裂の起点になります。
- 止めネジ用穴の位置と深さ — ハブ側キーを固定する止めネジは、キー中央付近に位置し、キー厚の半分程度の深さの座グリを設けます。深すぎるとキー強度低下、浅すぎるとネジの効きが弱い。
- 大型軸に平行キー1本で無理にトルク伝達 — 軸径100mm超で大トルクの用途は、平行キー2本を180°位置に配置、こう配キー、または多歯スプラインへ移行が検討されます。1本キーでの限界点を意識。
関連する規格・法令
- JIS B 1301 ― 平行キー及びキー溝。もっとも普及。b×h・t1・t2・キー長の標準を規定。
- JIS B 1302 ― こう配キー及びキー溝。1/100のこう配で楔止め、頭付き/頭なしのバリエーション。
- JIS B 1303 ― 半月キー(ウッドラフキー)。首振り可能でテーパ軸に多用。
- JIS B 1304 ― 接線キー。2本を軸接線方向に配置、両方向トルクに対応。
- JIS B 1305 ― 丸キー(ピンキー)。小径軸の軽負荷伝動。
- JIS B 1601 ― 角形スプライン軸(呼び方式)。ドライブシャフト・工作機械。
- JIS B 0401-1/2 ― 製品の幾何特性仕様(GPS) 長さ寸法公差方式。P9/N9/JS9/H9/D10の公差数値を規定。
- JIS G 3101 ― 一般構造用圧延鋼材(SS400)。キー材の代表規格。
- JIS G 4051 ― 機械構造用炭素鋼鋼材(S45C・S50C等)。
参考文献・公的資料
JISキー溝寸法の最新版・詳細公差・派生規格は必ず一次資料で確認してください。
- 日本産業標準調査会(JISC) ― JIS規格の公式検索・閲覧サービス。JIS B 1301・1302・1303等の全文を無料閲覧できます。
- 日本規格協会 ― JIS規格の公式販売・解説書発行。「JISハンドブック 機械要素」がキー・軸受・ねじの実務書として定番。
- ミツトヨ 精密測定機器 ― キー溝寸法・公差の測定機器メーカー。マイクロメーター・ピンゲージ等の精密測定ノウハウ資料。
- ISO/TC 14 Shafts and their accessories ― 国際規格ISO 6885(平行キー)を管理する専門委員会。海外調達時の対応情報。
- 日本機械工業連合会 ― 機械工業の業界団体。設計・製造規格の共通ガイドライン。
- 日本機械学会 ― 「JSMEテキストシリーズ 機械要素設計」等でキー溝の設計理論と実務。
- モノタロウ(工具・機械部品通販) ― JIS準拠のキー材・両先端R加工キー・止めネジ用穴あきキー等の市販品カタログ。
- ミスミ(機械部品・工具通販) ― キー・キー溝加工品・自動計算ライブラリ。CADダウンロードで実務効率化。
- NSK(日本精工) 技術資料 ― 軸受と一体でのキー溝設計。振動・偏心・軸剛性の関係。
よくある質問(FAQ)
φ30軸のキー溝は?
JIS B 1301より、軸径22超〜30以下のカテゴリでキー 8×7 mm・軸溝深さt1=4.0 mm・ハブ溝深さt2=3.3 mmとなります。キー長さは伝達トルクから逆算しますが、実務標準では軸径の1.5〜2倍(45〜60mm程度)を選ぶことが多いです。φ30の軸で標準SS400キーを使う場合、伝達可能トルクは概算で100〜200Nm範囲が目安になります。
キーの公差(P9/N9/JS9)はどう使い分ける?
締り(1形・軸溝P9・ハブ溝P9)は分解を予定しない大トルク用、普通(2形・軸溝N9・ハブ溝JS9)は汎用の中負荷用、滑り(3形・軸溝H9・ハブ溝D10)はハブが軸方向にスライドする用途です。一般産業機械の80%は普通ばめが選ばれます。図面では必ず「JIS B 1301 2形」等の指示を明記してください。
キー材はSS400とS45Cどちらを選ぶ?
軸材がSS400ならキーもSS400が原則。軸材がS45C(調質)ならキーはSS400またはS45C(生材)を選び、キー側が軸より少しやわらかいことを担保します。過負荷時にキーがせん断破損して軸・回転体を保護する安全部品の役割を維持するためです。
キー長さはどう決める?
伝達トルクT、軸径d、キー高さh、許容せん断応力σからL ≧ 2T ÷ (d × h × σ)で最小長さを算出し、実務標準の「軸径の1.5〜2倍」と大きい方を採用。SS400キーのσは概ね50〜80MPa、安全率2〜3を見込んで設計します。強度不足なら軸径を大きくするか、2本キー(180°位置)への変更を検討。
両端はRつきと角ばりどちらを使う?
Rつき(先端半円形)は止まり穴の溝用で、エンドミル加工の自然な形状。角ばり(先端平ら)は貫通溝や形彫盤加工用。図面ではRつき指示が主流で、キー長Lは「両先端Rの丸みも含めた全長」で指定するのが標準です。
キー溝の面取り(角取り)は必要?
必須です。両端はC0.5〜C1程度の角取りを施し、応力集中の防止とキー挿入時のバリ噛み込み防止を図ります。市販の両先端R加工品を使えばこの処理は不要ですが、自社加工の場合は必ず指示に含めてください。
止めネジ(セットスクリュー)はどこに打つ?
ハブ側からキー中央を軸方向に押さえる位置に、六角穴付き止めネジ(M4〜M10程度)を配置。キー厚の1/2〜1/3程度の座グリを設けて先端が食い込むようにします。ゆるみ止めにはネジロック(ロックタイト)を併用するのが実務標準。
大トルクで平行キー1本では足りない場合は?
選択肢は3つ。①2本キー(180°位置に平行に配置)で伝達能力を約2倍化、②こう配キー(JIS B 1302)で楔効果を活用、③スプライン軸(JIS B 1601)で軸全周に多数の歯を配置。大型建設機械・工作機械のスピンドルなどではスプラインが主流です。
半月キー(ウッドラフ)はいつ使う?
テーパ軸との組合わせで、キーが首を振ってテーパ角度に自動追従する用途に。自動車のステアリングコラム、農業機械のPTO軸、小型モーターの出力軸などに使われます。JIS B 1303準拠。キー溝は半円状の切込みで加工。
キー溝加工の公差測定はどうする?
幅はスライドキャリパー・マイクロメータ・ピンゲージ、深さはデプスゲージ・ハイトゲージ、精密検査は三次元測定機(CMM)を使用。量産では専用の合格/不合格ゲージ(GO/NG ゲージ)で判定効率化するのが一般的です。
キー溝は軸強度を下げる?
下げます。キー溝断面での断面二次モーメントが減り、応力集中係数も1.5〜2倍程度になります。強度設計では「キー溝有り軸強度」で計算し、キー溝部分の許容応力を10〜20%減じて安全率を確保するのが実務推奨です。特に高速回転軸(タービン等)ではキー溝を避けた圧入・焼ばめ結合を選択します。
キー溝結合と焼ばめ・圧入の使い分けは?
キー溝結合は分解可能・トルク方向明確・追加工少のメリット、焼ばめ・圧入は高剛性・振動吸収・キー溝加工不要のメリット。大型プーリー・軸受内輪等は焼ばめ、駆動プーリー・スプロケットはキー溝結合の使い分けが多いです。両者併用(焼ばめ+キー)で回転方向決めるのも典型的な設計。