計算ツール
キー溝JIS B 1301機械設計はめあい

キー溝寸法(軸径別JIS) 計算ツール|JIS B 1301 平行キー対応

軸径からJIS B 1301(平行キー)準拠のキー・溝寸法(キー幅×高さ・軸溝深さ・ハブ溝深さ)を即参照。締り(P9)・普通(N9)・滑り(JS9)のはめあい公差、キー材(SS400・S45C)、押しネジ止め・両先端角取り、機械設計・切削加工現場での実務ポイント、こう配キー(JIS B 1302)や半月キー(JIS B 1303)との使い分けまで、JIS一次資料に基づいて解説します。

最終更新:2026-07-30/監修:計算ツールズ編集部

キー溝寸法(軸径別JIS)ツール

キーとキー溝の役割

基本の考え方

キーは回転軸と回転体(プーリー・スプロケット・歯車・カップリング等)を確実に結合する機械要素で、軸のトルクをキーのせん断強度を介して伝達します。JIS B 1301(平行キー)では軸径ごとにキー寸法(b×h)、軸溝深さ(t1)、ハブ溝深さ(t2)、キー長さの許容範囲がすべて規定されており、標準寸法から外れると継手・プーリー・スプロケットとの互換性が失われるため、加工は必ずJIS準拠が原則です。

寸法決定の順序

  1. 軸径(d)を確定する
  2. JIS B 1301 表からキー寸法(b × h)を選定
  3. 軸溝深さ(t1)・ハブ溝深さ(t2)を表から確認
  4. 伝達トルクからキー長さ(L)を強度計算で算出
  5. 用途に応じたはめあい公差(P9/N9/JS9)を選定
  6. キー材(SS400/S45C等)とキー長さの規格値を選定

キー長さの強度計算

必要キー長さ L(mm) ≧ 2T ÷ (d × h × σ)

ここで T=伝達トルク(N・mm)、d=軸径(mm)、h=キー高さ(mm)、σ=許容せん断応力(MPa)。目安として鋼キーのσ=50〜80MPa。実際にはキー長さは軸径の1.5〜2倍が実務標準ですが、強度不足なら太い軸に変えるかキーを2本並列(180°位置)使う方法が採られます。

JIS B 1301 平行キー全表

JIS B 1301:2009準拠の平行キー標準寸法一覧。t1・t2の値は「基準寸法」で、実際の加工では公差(t1+0.1・t2+0.1〜0.2など)を考慮します。

軸径 d (mm)キー b×h (mm)軸溝深 t1ハブ溝深 t2キー長 L範囲
6超〜8以下2×21.21.06〜20
8〜103×31.81.46〜36
10〜124×42.51.88〜45
12〜175×53.02.310〜56
17〜226×63.52.814〜70
22〜308×74.03.318〜90
30〜3810×85.03.322〜110
38〜4412×85.03.328〜140
44〜5014×95.53.836〜160
50〜5816×106.04.345〜180
58〜6518×117.04.450〜200
65〜7520×127.54.956〜220
75〜8522×149.05.463〜250
85〜9525×149.05.470〜280
95〜11028×1610.06.480〜320
110〜13032×1811.07.490〜360
130〜15036×2012.08.4100〜400
150〜17040×2213.09.4100〜400
170〜20045×2515.010.4110〜450

はめあい公差の選定

JIS B 1301では軸溝・ハブ溝の幅とキー幅の関係で3種類のはめあいが規定されており、用途に応じて使い分けます。

はめあいキー幅軸溝幅ハブ溝幅用途
締り(1形)h9P9P9取外し不可・重負荷
普通(2形)h9N9JS9汎用・中負荷
滑り(3形)h9H9D10軸方向スライド・軽負荷

各はめあいの選定基準

  • 締りばめ(P9-P9) ― キーが軸・ハブ両方でわずかに締められて固定される。頻繁な分解を予定しない結合、大トルク・衝撃荷重のある用途(重機・プレス機・大型ポンプ)。組立てにハンマー・プレス圧入が必要。
  • 普通ばめ(N9-JS9) ― もっとも一般的な組合わせで、軸側は締り目、ハブ側はやや隙間ばめ。汎用機械・モーター駆動・減速機の80%はこれ。ハブ側の分解が容易。
  • 滑りばめ(H9-D10) ― キーがハブ内で軸方向にスライドできる組合わせ。可変ピッチプーリー・スライドクラッチ・変速機構の一部で使用。トルク伝達しつつ軸方向動作が必要な場面。

キー材と表面処理

キーは「軸より少しやわらかい材料」を選定するのが原則です。過負荷時にキーがせん断破損することで、高価な軸・回転体を保護する「安全部品」の役割を果たすためです。

キー材料降伏点(MPa)用途備考
SS400(一般構造用圧延鋼)245汎用・軽〜中負荷もっとも一般的
S45C(機械構造用炭素鋼)490中〜重負荷調質処理で強度確保
S50C530重負荷・高精度調質+研磨仕上げ
SNCM439(クロモリ鋼)885高強度・衝撃荷重大型プレス・重機
SUS303/304205食品・薬品機械耐食性
黄銅(C3604BD)245電機・楽器非磁性・良導電

市販の「キー材」はJIS B 1301の規格寸法に精密加工された状態で流通しており、長さを切って両端の角取りを施すだけで使えます。カットキー・両端R付きキー・止めネジ用穴あきキーなど各種バリエーションが工具商・機械部品商で入手可能です。

キーの種類(平行/こう配/半月)

JISではキーの形式ごとに規格が分かれています。本ツールは平行キー(JIS B 1301)を対象としていますが、他形式との使い分けを理解することが実務で重要です。

キー形式JIS規格特徴用途
平行キーJIS B 1301断面が長方形・軸方向に平行汎用・8割の機械
こう配キーJIS B 13021/100のこう配・楔効果で締まる低速大トルク・過剰締め
半月キー(ウッドラフ)JIS B 1303半月状・首振り可能テーパ軸・自動車ステアリング
接線キーJIS B 13042本を接線方向に配置大トルク・両方向回転
丸キーJIS B 1305断面が丸・ピン状小径軸・軽負荷
スプラインJIS B 1601等軸全周に複数キー溝自動車ドライブシャフト

業界・現場での使い方

機械設計・強度計算

継手・プーリー・スプロケット・歯車の選定で、軸径とキー寸法をJIS B 1301から確定。伝達トルクとキーせん断強度からキー長を逆算し、必要な軸径・材質を組み立てます。CADライブラリの機械部品テンプレートもJIS準拠が主流。

切削加工・キー溝加工

マシニングセンター・エンドミル・キー溝盤で軸に溝を切削。エンドミル径=キー幅、切込み量=溝深さで加工。両端の抜け止め(止まり穴)か貫通か、Rつきか角ばりかの図面指示を確認します。ハブ側は形彫盤・ブローチ加工が一般的。

メンテナンス・キー交換

摩耗・変形したキーを標準寸法品と交換。軸径を測定→JIS表からキー寸法特定→両端の角取りと止めネジ用ザグリを追加加工→組み立て。軸溝が摩耗している場合は肉盛溶接+再機械加工か、軸交換の判断が必要です。

工作機械・自動組立ライン

NCマシン・ロボット・搬送コンベアのモーター軸-減速機-駆動プーリーの接続にキー溝結合。トルク検出・過負荷保護装置と組み合わせて、キーせん断を安全機構として活用する設計も。

ポンプ・送風機の羽根車固定

ポンプ・ブロワの羽根車を軸に固定。締りばめ+セットネジ止めが基本、大型機ではボスにフレット防止のプレローディングを設計。定期分解メンテを予定する場合は普通ばめ(N9-JS9)を選択。

自動車・産業車両の駆動系

クラッチ・トランスミッション・デフの伝動系ではスプライン(多歯キー)が主流ですが、補機類のプーリー・スプロケット固定には従来型のキー溝結合が今も多用されています。

よくある間違い・注意点

  • 軸径のみでキー選定して溝深さを確認せず — JIS表で軸溝深t1・ハブ溝深t2を必ず確認。キー高さhの半分より少し多いのがt1、残りがt2となる関係で、加工ミスは互換性喪失に直結。
  • 公差ミス(P9/N9/JS9) — 締り/普通/滑りのはめあいを混同すると、締り予定で普通ばめだと分解時のガタつき、逆に普通予定で締りだと組立て困難で無理にハンマー打ちして軸を曲げる事故に。図面公差の指示徹底が必須。
  • キー長さを軸径基準で決めない — キー長は軸径の1.5〜2倍が実務標準。伝達トルクに対する強度計算をせず「感覚で決める」と過負荷時に折損。特に始動衝撃・繰返し荷重のある用途は許容応力を安全率2〜3で見込みます。
  • キー材を軸より硬く選ぶ — キーは安全部品としてわざと軸より弱く設計します。SS400軸にS45Cのキーを入れると、過負荷時に高価な軸側が破損する本末転倒に。SS400軸にはSS400キーが標準。
  • 両端の角取り(面取り)忘れ — キー両端はC0.5〜C1程度の角取りが必須。角ばったままだと溝への挿入時にバリを噛み込み、応力集中で亀裂の起点になります。
  • 止めネジ用穴の位置と深さ — ハブ側キーを固定する止めネジは、キー中央付近に位置し、キー厚の半分程度の深さの座グリを設けます。深すぎるとキー強度低下、浅すぎるとネジの効きが弱い。
  • 大型軸に平行キー1本で無理にトルク伝達 — 軸径100mm超で大トルクの用途は、平行キー2本を180°位置に配置、こう配キー、または多歯スプラインへ移行が検討されます。1本キーでの限界点を意識。

関連する規格・法令

  • JIS B 1301 ― 平行キー及びキー溝。もっとも普及。b×h・t1・t2・キー長の標準を規定。
  • JIS B 1302 ― こう配キー及びキー溝。1/100のこう配で楔止め、頭付き/頭なしのバリエーション。
  • JIS B 1303 ― 半月キー(ウッドラフキー)。首振り可能でテーパ軸に多用。
  • JIS B 1304 ― 接線キー。2本を軸接線方向に配置、両方向トルクに対応。
  • JIS B 1305 ― 丸キー(ピンキー)。小径軸の軽負荷伝動。
  • JIS B 1601 ― 角形スプライン軸(呼び方式)。ドライブシャフト・工作機械。
  • JIS B 0401-1/2 ― 製品の幾何特性仕様(GPS) 長さ寸法公差方式。P9/N9/JS9/H9/D10の公差数値を規定。
  • JIS G 3101 ― 一般構造用圧延鋼材(SS400)。キー材の代表規格。
  • JIS G 4051 ― 機械構造用炭素鋼鋼材(S45C・S50C等)。

参考文献・公的資料

JISキー溝寸法の最新版・詳細公差・派生規格は必ず一次資料で確認してください。

※本ページの寸法値はJIS B 1301の主要抜粋です。実際の設計・加工では、必ずJIS最新版の全文を確認し、公差(t1・t2の許容偏差)・キー長L規格値・R指示・角取り指示を含めた完全な図面情報を用いてください。特殊用途(高速回転・振動環境・食品/医療機械・防爆)では、追加の設計配慮や規格対応(ISO/EN/FDA等)が必要です。強度設計の最終判断は、機械設計技術者・機械設計事務所の判断を仰いでください。

よくある質問(FAQ)

φ30軸のキー溝は?

JIS B 1301より、軸径22超〜30以下のカテゴリでキー 8×7 mm・軸溝深さt1=4.0 mm・ハブ溝深さt2=3.3 mmとなります。キー長さは伝達トルクから逆算しますが、実務標準では軸径の1.5〜2倍(45〜60mm程度)を選ぶことが多いです。φ30の軸で標準SS400キーを使う場合、伝達可能トルクは概算で100〜200Nm範囲が目安になります。

キーの公差(P9/N9/JS9)はどう使い分ける?

締り(1形・軸溝P9・ハブ溝P9)は分解を予定しない大トルク用、普通(2形・軸溝N9・ハブ溝JS9)は汎用の中負荷用、滑り(3形・軸溝H9・ハブ溝D10)はハブが軸方向にスライドする用途です。一般産業機械の80%は普通ばめが選ばれます。図面では必ず「JIS B 1301 2形」等の指示を明記してください。

キー材はSS400とS45Cどちらを選ぶ?

軸材がSS400ならキーもSS400が原則。軸材がS45C(調質)ならキーはSS400またはS45C(生材)を選び、キー側が軸より少しやわらかいことを担保します。過負荷時にキーがせん断破損して軸・回転体を保護する安全部品の役割を維持するためです。

キー長さはどう決める?

伝達トルクT、軸径d、キー高さh、許容せん断応力σからL ≧ 2T ÷ (d × h × σ)で最小長さを算出し、実務標準の「軸径の1.5〜2倍」と大きい方を採用。SS400キーのσは概ね50〜80MPa、安全率2〜3を見込んで設計します。強度不足なら軸径を大きくするか、2本キー(180°位置)への変更を検討。

両端はRつきと角ばりどちらを使う?

Rつき(先端半円形)は止まり穴の溝用で、エンドミル加工の自然な形状。角ばり(先端平ら)は貫通溝や形彫盤加工用。図面ではRつき指示が主流で、キー長Lは「両先端Rの丸みも含めた全長」で指定するのが標準です。

キー溝の面取り(角取り)は必要?

必須です。両端はC0.5〜C1程度の角取りを施し、応力集中の防止とキー挿入時のバリ噛み込み防止を図ります。市販の両先端R加工品を使えばこの処理は不要ですが、自社加工の場合は必ず指示に含めてください。

止めネジ(セットスクリュー)はどこに打つ?

ハブ側からキー中央を軸方向に押さえる位置に、六角穴付き止めネジ(M4〜M10程度)を配置。キー厚の1/2〜1/3程度の座グリを設けて先端が食い込むようにします。ゆるみ止めにはネジロック(ロックタイト)を併用するのが実務標準。

大トルクで平行キー1本では足りない場合は?

選択肢は3つ。①2本キー(180°位置に平行に配置)で伝達能力を約2倍化、②こう配キー(JIS B 1302)で楔効果を活用、③スプライン軸(JIS B 1601)で軸全周に多数の歯を配置。大型建設機械・工作機械のスピンドルなどではスプラインが主流です。

半月キー(ウッドラフ)はいつ使う?

テーパ軸との組合わせで、キーが首を振ってテーパ角度に自動追従する用途に。自動車のステアリングコラム、農業機械のPTO軸、小型モーターの出力軸などに使われます。JIS B 1303準拠。キー溝は半円状の切込みで加工。

キー溝加工の公差測定はどうする?

幅はスライドキャリパー・マイクロメータ・ピンゲージ、深さはデプスゲージ・ハイトゲージ、精密検査は三次元測定機(CMM)を使用。量産では専用の合格/不合格ゲージ(GO/NG ゲージ)で判定効率化するのが一般的です。

キー溝は軸強度を下げる?

下げます。キー溝断面での断面二次モーメントが減り、応力集中係数も1.5〜2倍程度になります。強度設計では「キー溝有り軸強度」で計算し、キー溝部分の許容応力を10〜20%減じて安全率を確保するのが実務推奨です。特に高速回転軸(タービン等)ではキー溝を避けた圧入・焼ばめ結合を選択します。

キー溝結合と焼ばめ・圧入の使い分けは?

キー溝結合は分解可能・トルク方向明確・追加工少のメリット、焼ばめ・圧入は高剛性・振動吸収・キー溝加工不要のメリット。大型プーリー・軸受内輪等は焼ばめ、駆動プーリー・スプロケットはキー溝結合の使い分けが多いです。両者併用(焼ばめ+キー)で回転方向決めるのも典型的な設計。