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体表面積(BSA)換算投薬(mg/m²)|Mostellerで抗がん剤投与量を算出する化学療法ツール

身長・体重・用量係数(mg/m²)からMostellerの式で体表面積(BSA)を算出し、化学療法・抗がん剤・免疫抑制剤の投与量を即算する無料電卓。BSA = √(身長cm × 体重kg / 3600)の標準式に、20%減量時の投与量参考値も同時算出。パクリタキセル175mg/m²・シクロホスファミド500-1000mg/m²・シスプラチン50-100mg/m²・フルオロウラシル400-800mg/m²・ドキソルビシン50-75mg/m²など主要抗がん剤の用量対応、DuBois式・Haycock式との比較、累積投与量(ドキソルビシン450mg/m²で心毒性リスク)、肥満患者の理想体重BSA適用、小児がん化学療法、日本臨床腫瘍学会ガイドライン、化学療法認定看護師・がん薬物療法認定薬剤師の実務、レジメン計算(FOLFOX/FOLFIRI/DTX等)まで、腫瘍内科・薬剤師・化学療法認定看護師向けにプロ解説します。

最終更新:2026-07-29/監修:計算ツールズ編集部

体表面積換算投薬(mg/m²)ツール

BSA計算式(Mosteller/DuBois/Haycock)

① Mostellerの式(最普及)

BSA (m²) = √(身長cm × 体重kg / 3600)

1987年Dr. Mostellerが提唱した簡便公式。電卓一つで計算可能な明快さで、多くの化学療法プロトコルの標準式として国際的に普及。身長170cm・体重60kgでBSA=1.68m²となります。日本の腫瘍内科・薬剤部でも第一選択の計算式です。

② DuBoisの式(古典)

BSA (m²) = 0.007184 × 身長cm^0.725 × 体重kg^0.425

1916年DuBois兄弟が提唱した古典的公式。歴史ある式で、抗がん剤の臨床試験の一部で使用される。Mostellerとの差は±3%程度のため、実務での使い分けは病院プロトコルに従います。

③ Haycockの式(小児対応)

BSA (m²) = 0.024265 × 身長cm^0.3964 × 体重kg^0.5378

1978年Haycockが提唱、小児・低出生体重児にも適用可能な公式。DuBoisより小児で精度高いとされ、小児がん化学療法のプロトコルで使用されることがあります。

④ 投与量の計算

投与量(mg) = BSA(m²) × 用量係数(mg/m²)

身長170cm・体重60kg・BSA=1.68m²でパクリタキセル175mg/m²なら、1.68×175=約294mgが1回投与量。実際は最も近いバイアル規格(30mg・100mg・300mg)に丸めて300mg投与と判断するケースが実務的。

主要抗がん剤のBSA用量早見表

薬剤mg/m²投与間隔備考
シクロホスファミド(CPA)500-10003-4週間造血器腫瘍・乳がん
ドキソルビシン(DXR)50-753週間累積450mg/m²で心毒性
フルオロウラシル(5-FU)400-8002-3週間大腸・胃・食道がん
パクリタキセル(PTX)135-1753週間週1回80mg/m²プロトコルあり
ドセタキセル(DTX)60-753週間肺・乳・胃・前立腺がん
シスプラチン(CDDP)50-1003-4週間腎障害・悪心強
カルボプラチン(CBDCA)AUC 4-63週間Calvert式で算出
ゲムシタビン(GEM)1000-12501-3週目連続膵・肺・胆道がん
イリノテカン(CPT-11)150-3502週間下痢・骨髄抑制
オキサリプラチン(L-OHP)85-1302-3週間末梢神経障害
メトトレキサート(MTX)30-3000週1回〜大量療法ロイコボリン救援
ビンクリスチン(VCR)1.4週1回2.0mg上限あり

※用量は代表例で、疾患別・レジメン別・患者背景で調整。必ず添付文書・ガイドライン・院内プロトコル参照。

BSA換算投薬の詳しい解説

① なぜBSAで投薬するのか

体表面積(BSA)は代謝率・血液循環量・心拍出量・糸球体濾過率(GFR)と高い相関があり、体重よりも生理学的パラメータとの一致度が高いとされます。抗がん剤・免疫抑制剤は薬物動態(PK/PD)がこれらパラメータに強く影響されるため、BSA換算が国際標準として定着しました。

② BSA平均値の目安

  • 成人男性(日本) — 1.6-1.8m²(平均1.68m²)
  • 成人女性(日本) — 1.4-1.6m²(平均1.5m²)
  • 欧米成人 — 1.7-2.0m²(体格差)
  • 肥満患者 — 実測2.2m²超も、上限打ち切り検討
  • 小児(10歳) — 約1.0-1.2m²
  • 幼児(3歳) — 約0.5-0.7m²

③ BSA計算式の選定

Mosteller式が最も普及、DuBois式・Haycock式は補完的に使用。院内プロトコルで統一することが重要で、複数式の混在は用量差・調剤ミスの原因になります。臨床試験プロトコルはMostellerが標準です。

④ BSAとmg/kg併用のパターン

抗がん剤の多くはBSA換算(mg/m²)ですが、ビンクリスチン・ボルテゾミブなど一部薬剤は絶対上限(2mg等)+BSA計算の複合基準。免疫療法(抗PD-1抗体等)は体重ベース(mg/kg)またはfixed dose(定量投与)が主流です。

減量規則と累積毒性

① 減量規則の基本

患者の肝腎機能・年齢・PS(Performance Status)・過去の治療反応・副作用歴で減量を判断。25%・50%減量が主要なステップで、レジメンごとの減量基準表が病院プロトコルに定められています。

② 減量判断の指標

肝機能

ALT/AST・T-Bil・PT高値で肝代謝抗がん剤(パクリタキセル等)減量。Child-Pugh分類基準で判断。

腎機能

eGFR/クレアチニンクリアランスで腎排泄抗がん剤(シスプラチン・メトトレキサート等)減量。カルボプラチンはAUC計算(Calvert式)で個別化。

骨髄機能

好中球1000/μL未満・血小板75000/μL未満で減量または延期。CTCAE Grade 3-4以上の骨髄抑制は次回減量必須。

年齢・PS

75歳以上・PS 2以上は初回から減量開始が多い。総合的な臓器機能・耐容能で判断。

副作用歴

末梢神経障害・嘔吐・下痢・粘膜炎・皮疹などのGrade別に減量規則あり。累積毒性(パクリタキセル末梢神経障害)は特に注意。

体重変動

治療中の体重減少でBSA再計算+用量調整。10%以上の体重減少は栄養管理+用量再検討。

③ 累積毒性のある抗がん剤

  • ドキソルビシン — 累積450mg/m²で心毒性リスク急上昇、心エコー・BNP定期モニタリング
  • シスプラチン — 累積量で腎障害・聴力低下・末梢神経障害
  • ブレオマイシン — 累積400mg以上で肺線維症リスク、DLCO確認
  • ビンクリスチン — 末梢神経障害の累積・遷延
  • パクリタキセル/ドセタキセル — 末梢神経障害の累積

主要レジメンでのBSA計算

① FOLFOX(大腸がん)

オキサリプラチン85mg/m²+ロイコボリン200mg/m²+5-FU 400mg/m²急速静注+5-FU 2400mg/m² 46時間持続静注。BSA=1.68m²なら、オキサリプラチン143mg、5-FU急速672mg、5-FU持続4032mgとなります。

② FOLFIRI(大腸がん)

イリノテカン180mg/m²+ロイコボリン200mg/m²+5-FU 400mg/m²急速+5-FU 2400mg/m² 46時間持続。BSA=1.68m²ならイリノテカン302mg。

③ TC療法(卵巣がん・肺がん)

パクリタキセル175mg/m²(3時間点滴)+カルボプラチンAUC 5-6(Calvert式)。BSA=1.68m²ならパクリタキセル294mg、カルボプラチンはeGFRとAUCから個別算定。

④ AC療法(乳がん)

ドキソルビシン60mg/m²+シクロホスファミド600mg/m²、3週間隔4サイクル。BSA=1.68m²ならドキソルビシン101mg、シクロホスファミド1008mg。ドキソルビシン累積量240mg/m²(4サイクル分)で心毒性リスク一定範囲内。

⑤ R-CHOP(悪性リンパ腫)

リツキシマブ375mg/m²+シクロホスファミド750mg/m²+ドキソルビシン50mg/m²+ビンクリスチン1.4mg/m²(2mg上限)+プレドニン100mg/body×5日間。ビンクリスチンは上限管理が特徴。

特殊集団への対応

① 肥満患者(BMI30以上)

実測BSAでは投与量過多で毒性増強リスク。調整BSA(調整体重使用)・実測BSA・BSA上限打ち切り(2.0m²等)の3方式があり、レジメンごとに判断が異なります。米国ASCOガイドラインは実測BSAを推奨しつつ、日本では慎重派も多い議論領域。

② やせ・低栄養患者

低体重で計算通り投与しても、実際の血中濃度は予測より高くなる傾向。アルブミン低値・PS不良では減量スタートが安全策。栄養状態改善+化学療法並行の実務判断が求められます。

③ 小児がん患者

小児は0.5m²未満はmg/kg計算に変更する慣例(BSA計算誤差増大回避)。Haycock式の適用+小児がん学会プロトコル基準に従います。臓器発達段階での薬物動態も配慮。

④ 高齢者(75歳以上)

予備能低下+多臓器機能低下+併存疾患で有害事象リスク増加。CGA(高齢者総合的機能評価)+初回減量開始+副作用モニタリング強化の三本柱で対応。

⑤ 妊娠中・授乳中患者

妊娠中の化学療法は妊娠週数+薬剤リスク+代替療法を総合判断。抗がん剤は基本的に胎児毒性あり、第1三半期は原則禁忌、第2-3三半期は限定的に実施。授乳中は薬剤移行を考慮し中止判断。

チーム医療での運用

① チーム構成

化学療法は「腫瘍内科医+薬剤師+化学療法認定看護師+外来看護師+医療事務」の多職種チーム医療。それぞれの役割分担と情報共有が安全な治療の基盤です。

② 各職種の役割

  • 腫瘍内科医 — レジメン選択・投与量決定・副作用管理・治療効果判定
  • がん薬物療法認定薬剤師 — 用量チェック・調剤・投与前確認・副作用薬学的介入
  • 化学療法認定看護師 — 患者教育・投与実施・副作用モニタリング・生活支援
  • 外来看護師 — バイタル・血管確保・投与監視・患者相談
  • 医療事務 — スケジュール調整・保険請求・患者フォロー

③ 電子カルテ+化学療法レジメン管理システム

近年は電子カルテ連携の化学療法レジメン管理システムが普及。BSA自動計算+用量自動算出+ダブルチェック+副作用スケジュール管理が統合されています。手動計算ミスの防止に有効。

④ ダブルチェック体制

化学療法は「投与量計算・調剤・投与実施」の各段階でダブルチェックが原則。医師処方→薬剤師調剤前確認→調剤時確認→投与前ベッドサイド確認の4重チェック体制が典型。

⑤ インシデント・アクシデント報告

化学療法の医療事故は重篤化・死亡リスクが高いため、インシデント・アクシデント報告制度で組織学習を促進。ヒヤリハット段階での事例収集+多職種カンファレンス+プロトコル改善のPDCAが患者安全の要です。年1回の医療安全研修も義務化されています。

業界・現場での使い方

腫瘍内科(外来化学療法)

抗がん剤レジメン計算。BSA自動化+レジメン管理システムで用量算出、副作用管理と併用。

薬剤師(調剤・鑑査)

処方内容の確認と調剤前の用量チェック。プロトコル逸脱の検出、疑義照会の判断基準。

小児腫瘍・血液内科

BSA基準の詳細投与量算定。年齢・体重・BSA複合判断、Haycock式併用。

免疫内科・膠原病

移植後免疫抑制剤(タクロリムス・シクロスポリン等)の投与量調整。血中濃度モニタリングと併用。

化学療法認定看護師

患者教育・投与実施・副作用モニタリング。多職種との情報共有ハブ役。

治験・臨床研究

プロトコルベースの厳密な用量管理。CRC(臨床研究コーディネータ)の書類作成、逸脱検出。

よくある間違い・注意点

  • BSA式の混同 — Mosteller・DuBois・Haycock等複数式で±3%差。院内で式を統一しないと用量差が生じ、調剤ミスの原因に。
  • BSA上限考慮せず — 実測2.0m²超の患者では頭打ち(2.0m²)で計算する薬剤あり(過量毒性回避)。レジメン別ルール確認。
  • 過去投与の累積毒性無視 — ドキソルビシン累積450mg/m²で心毒性リスク急上昇。累積投与量の記録・追跡+心エコー定期評価必須。
  • 肥満患者の投与量過剰 — 実測BSA使用で毒性強い場合あり。調整体重・BSA上限打ち切り検討、レジメン別に判断。
  • 体重減少時のBSA再計算怠慢 — 治療中の体重10%減少で用量再計算+副作用リスク再評価が必要。
  • 腎機能・肝機能考慮せず — 減量規則の適用漏れ。カルボプラチンAUCはCalvert式でeGFR個別算定。
  • 年齢・PS考慮不足 — 75歳以上・PS2以上は初回減量開始が多い。CGA評価併用でリスク評価。
  • ダブルチェック省略 — 医師処方→薬剤師鑑査→調剤→投与実施の4重チェック体制なしは重大医療事故リスク。
  • ビンクリスチン上限(2mg)を無視 — BSAでは超過するが絶対上限あり。上限超え投与で末梢神経障害重篤化。
  • 身長・体重の再測定省略 — 治療開始時の値のまま長期使用は誤差増大。各サイクル前に再測定が原則。

関連する規格・法規

  • 日本臨床腫瘍学会「制吐薬適正使用ガイドライン」
  • 日本癌治療学会「がん診療ガイドライン」
  • 各種抗がん剤 添付文書・インタビューフォーム
  • ASCO/NCCNガイドライン(米国)
  • ESMOガイドライン(欧州)
  • Chemotherapy Administration Safety Standards(ASCO)
  • CTCAE(有害事象共通用語規準)
  • 薬機法(医薬品医療機器等法)
  • がん対策基本法・がん対策推進基本計画
  • 診療報酬 外来化学療法加算・入院化学療法加算
※本ツールはBSA参考計算です。実際の投与量は疾患別ガイドライン・院内プロトコル・添付文書・患者背景により調整され、腫瘍内科医・がん薬物療法認定薬剤師の判断に必ず従ってください。累積毒性・減量規則・特殊集団(肥満・小児・高齢者)への対応は特に慎重な判断が求められます。

参考文献・公的資料

  • 日本臨床腫瘍学会(JSMO)「化学療法ガイドライン」— 主要抗がん剤の用法用量
  • 日本癌治療学会「がん診療ガイドライン」— 疾患別レジメン
  • Mosteller RD「Simplified Calculation of Body-Surface Area」NEJM 1987
  • DuBois D & DuBois EF「A formula to estimate the approximate surface area」Arch Intern Med 1916
  • Haycock GB「Geometric method for measuring body surface area」J Pediatr 1978
  • ASCO Chemotherapy Administration Safety Standards
  • NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology
  • ESMO Clinical Practice Guidelines
  • Calvert AH「Carboplatin dosage: prospective evaluation of a simple formula」JCO 1989
  • CTCAE(Common Terminology Criteria for Adverse Events) v5.0
  • 日本病院薬剤師会 がん薬物療法関連ガイドライン
  • 厚生労働省 がん対策情報 抗がん剤治療

よくある質問(FAQ)

身長170・体重60kgのBSAは?

Mostellerで約1.68m²。BSA=√(170×60/3600)=√2.833=1.683。パクリタキセル175mg/m²なら約294mg投与量。

BSAとmg/kg どちら使う?

化学療法はBSA(mg/m²)、一般薬剤はmg/kgが主流。免疫療法(抗PD-1抗体等)は体重ベースまたは定量投与、ビンクリスチン等一部は絶対上限あり。

肥満患者のBSA計算は?

実測BSAでは投与量過多で毒性増強。調整体重・BSA上限打ち切り(2.0m²)・実測BSAの3方式があり、レジメンごとに判断。ASCOは実測BSA推奨だが慎重派も多い。

小児のBSA基準は?

Haycock式が小児に適合。0.5m²未満はmg/kg計算に変更する慣例あり(BSA計算誤差増大回避)、小児がん学会プロトコルに従う。

ドキソルビシン累積量の管理は?

累積450mg/m²で心毒性リスク急上昇。心エコー・BNP定期モニタリング+累積投与量記録の追跡。450mg/m²超は代替薬・治療戦略見直し検討。

カルボプラチンのCalvert式は?

投与量(mg) = AUC × (eGFR + 25)。BSAではなくeGFRを使う特殊な計算式。個別化投与の代表例で、腎機能に応じた投与量調整が可能。

減量25%と50%の使い分けは?

25%減量は軽度の毒性・軽度の臓器障害、50%減量は重度の骨髄抑制・臓器機能低下時に適用。レジメン別に減量基準表が定められている。

体重変動時の対応は?

治療中の体重10%以上変動でBSA再計算+用量調整。各サイクル前に身長・体重再測定が原則、栄養状態悪化時は栄養管理併用。