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アパレル原価計算ツール|1着原価・4倍上代・原価率・ロット按分を業界慣行で算出

アパレルの1着製造原価と推奨売価を、生地・付属・縫製工賃・型代按分・輸送費・ロット数から瞬時に算出。日本アパレル業界標準の「4倍上代」設定、原価率25%、OEM見積、D2Cブランドの売価設計、家庭用品品質表示法・景品表示法・JIS L 4004サイズ規格まで、企画・OEM・D2C・小売の各業種向けに公的資料と業界慣行に基づき解説します。

最終更新:2026-08-08/監修:計算ツールズ編集部

アパレル原価・売価計算機

計算式と原価構成

1着製造原価の計算式

1着原価 = 生地代 + 付属代 + 縫製工賃 + 型代按分(型代÷ロット数) + 輸送費・その他

推奨上代 = 1着原価 × 上代倍率(業界標準:4倍)

卸価格 = 上代 × 0.5(掛率50%)、卸掛率0.4-0.6が一般的

アパレルの製造原価は「材料費(生地+付属)」+「加工費(縫製工賃)」+「型代按分」+「物流費」の4要素で構成されます。300ロットで生地1,500円・付属400円・縫製900円・型代30,000円(1着100円按分)なら、1着製造原価は約2,900-3,000円。上代4倍で税抜11,600-12,000円となります。

製造原価と販売原価の違い

本ツールで計算するのは「製造原価」で、ブランド側の広告宣伝費・EC運営費・店舗経費・返品ロス等は含みません。売上原価率25%(上代4倍原価)を前提としつつ、ブランド側は販管費で20-30%、営業利益率10-15%を確保するのが標準的な業界構造です。

4倍上代の由来と業界慣行

日本アパレル業界の「4倍上代」は、卸2倍・小売2倍の掛け合わせから慣行化されたルールです。実際は流通経路と取引形態で倍率が変動します。

流通形態上代倍率ブランド側粗利率特徴
D2C直販(EC)2.5-3倍60-65%中間流通なし、価格訴求可
SPA(製造小売)3-4倍65-75%ユニクロ・ザラ型
ブランド直営店4-5倍75-80%家賃・人件費上乗せ
百貨店ブランド4-5倍60-65%百貨店マージン25-35%
セレクトショップ卸3-4倍50-55%卸掛率55-60%
インポート・ラグジュアリー5-8倍75-85%ブランド価値上乗せ

実売価格はセール・アウトレット・返品ロスで実質3-3.5倍相当まで下がるため、多くのブランドはプロパー消化率50-60%を目標に価格設計します。プロパー消化率が下がると年間平均掛率が悪化し、キャッシュフローを圧迫します。

原価内訳比率(製品カテゴリ別)

製品カテゴリごとに原価内訳は変動します。日本繊維産業連盟の業界統計と業界慣行を基にした目安。

カテゴリ生地代縫製工賃付属・副資材その他
Tシャツ(カットソー)50-60%20-25%10-15%5-10%
シャツ・ブラウス40-50%30-40%10-15%5-10%
パンツ(ボトム)40-50%25-35%15-20%5-10%
ジャケット・コート45-55%25-30%15-20%5-10%
ダウンジャケット50-60%15-20%20-25%(ダウン)5-10%
ニット55-65%20-25%5-10%5-10%
デニム40-50%25-30%15-20%(加工含む)5-10%
スーツ(2ピース)40-50%30-40%10-15%5-10%

一般に生地比率が40-60%が標準で、縫製工賃は生産国(日本・中国・ベトナム・バングラデシュ)で大きく変動します。ダウン・ファー・皮革など高級素材使用品は材料費比率が上昇します。

生地単価と反物歩留

生地単価は「1着あたり使用量(m)」×「反物単価(円/m)」で算出。使用量には型入り歩留(通常80-90%)を織り込みます。

アイテム使用生地量(1.5m巾)反物単価目安1着生地代目安
Tシャツ(綿ジャージ)1.0-1.2m500-800円/m500-1,000円
シャツ(綿ブロード)1.8-2.2m600-1,200円/m1,100-2,600円
パンツ(綿ツイル)1.5-1.8m700-1,500円/m1,000-2,700円
デニムパンツ(11-14oz)1.5-1.8m800-2,000円/m1,200-3,600円
ジャケット(ウール)2.5-3.0m2,000-8,000円/m5,000-24,000円
コート(ウール・ダウン)3.0-3.5m3,000-10,000円/m9,000-35,000円
スカート1.2-1.8m800-2,500円/m1,000-4,500円

反物単価は素材・目付・機能加工(撥水・防炎等)で大きく変動。日本製の高機能生地は輸入品の2-3倍のケースもあります。生地の最低ロット(MOQ)は反単位(50反=約2,500-5,000m)が一般的で、小ロット企画では反物残の廃棄コストが発生。

縫製工賃(国内・アジア)相場

縫製工賃は生産国・アイテム難易度・ロット数で3-10倍変動。国内縫製回帰と海外生産のコスト差は近年縮小傾向。

生産地Tシャツシャツパンツジャケット
日本国内(縫製工場)500-800円1,500-3,000円2,000-4,000円5,000-15,000円
中国沿岸(青島・上海)250-400円600-1,200円800-1,500円2,500-6,000円
中国内陸150-300円400-800円500-1,000円1,500-4,000円
ベトナム150-250円400-700円500-900円1,500-3,500円
バングラデシュ100-200円300-500円400-700円1,000-2,500円
ミャンマー・カンボジア100-200円300-500円400-700円1,000-2,500円

2020年代は中国内陸への回帰ベトナム・バングラデシュへのシフトが並行。日本国内縫製は「Made in Japan」プレミアム対応で高付加価値品中心となっています。海外生産は関税・輸送費・リードタイム(通常60-90日)を考慮した総コスト評価が必須。

ロット数と型代按分

型代(パタンナー費+サンプル代+グレーディング費)はロット全体で固定発生するため、小ロットほど1着あたり負担が大きくなります。

ロット数型代30,000円時の按分1着原価への影響採算性
10着3,000円/着+3,000円(致命的)プロトタイプ・受注生産のみ
50着600円/着+600円(大)D2C初回・テスト販売
100着300円/着+300円(中)D2C・セレクトショップ卸
300着100円/着+100円(小)OEM量産の入口
500着60円/着+60円(無視可)ブランド量産標準
1,000着以上30円以下/着ほぼ無視可SPA・大手ブランド

型代のほか生地の最低ロット(MOQ)縫製工場の最低受注ロットも採算判断で重要。国内縫製工場は50-100着、海外工場は300-500着が最低ロットのケースが多く、D2Cブランドは在庫リスクとの兼ね合いで慎重な数量設計が求められます。

物流・関税・その他コスト

本ツールでは「その他50円」で丸めていますが、実際は以下の項目で総額20-30%の追加コストが発生します。

  • 海外→日本輸送費:海上輸送で1着あたり50-200円(コンテナ按分)、航空便で500-2,000円
  • 関税(WCO税番第61-62類):綿製品10-13%、化繊製品7-10%、皮革製品10-16%
  • ラベル・下げ札(景表法対応の品質表示):1着30-100円
  • 個包装(OPP袋・ハンガー):1着20-80円
  • 品質検査費(QC):1着50-200円
  • 倉庫入出庫費:1着30-100円

これらを含めた「上代原価率」で採算判定するのがブランド側の常識。上代原価率25%(上代4倍)を切ると赤字リスクが高まります。

業界・現場での使い方

アパレルメーカー企画部門

シーズン企画時のコスト・上代シミュレーション。企画段階でNG判定できれば試作コスト削減。プロパー消化率とセール構成比を織り込んだ年間平均掛率でGO/NO GOを判断。

OEM/ODM営業

ブランド向け見積書作成の一次見積。生地・付属・工賃・型代・ロットの5項目で見積可能なため、初期商談で使える簡易ツール。詳細見積は工場側の詳細査定が必要。

D2Cブランド起業

小ロット製造前提の売価設計。型代按分が重い小ロットでも成立する売価と、ロット拡大による原価低減のシミュレーション。D2Cは上代倍率2.5-3倍で価格訴求可能。

セレクトショップ・小売バイヤー

ブランドから提示された上代の妥当性チェック。原価推定→上代逆算→掛率交渉の材料に。特にPB企画時のOEM工場選定で活用。

アパレルコンサル・M&Aアドバイザー

アパレル企業のデューデリジェンス。粗利率・原価率の業界平均対比、SPA/卸/D2Cのビジネスモデル別収益構造分析。

ファッション専門学校・服飾大学

アパレル経営・マーチャンダイジング授業の教材。実際の企画演習で使える具体的な原価構造の理解に。学生ブランド立ち上げ時の売価設計にも。

よくある間違い・注意点

  • 物流費・関税・在庫費を忘れる — 製造原価に対して実質+20-30%の追加コスト発生。関税(綿10-13%・化繊7-10%)、輸送費、QC費、倉庫費、パッキング費は必ず織り込むこと。
  • 型代按分を小ロットで軽視 — ロット10着なら型代1着3,000円加算で採算崩壊。小ロット製造は型代・生地MOQ残の廃棄コストを含めて判断。
  • プロパー消化率を織り込まない — 上代4倍で計算しても、セール50%OFF・アウトレット70%OFFで実質掛率は3-3.5倍に低下。年間平均掛率で採算判定を。
  • 返品・ロスを見込まない — EC返品率5-15%、実店舗の万引き・破損ロスも見込む。返品品の再販売可否・値下げ販売による粗利率悪化も要注意。
  • 家庭用品品質表示法違反 — 繊維製品は組成表示(綿100%等)、取扱表示(洗濯絵表示)、原産国表示、事業者名表示が法定義務。ラベル・下げ札の制作コストと納期を織り込む。
  • 景表法の二重価格表示 — 「メーカー希望小売価格」等の比較対照価格の表示は消費者庁ガイドラインの遵守が必須。8週間以上の販売実績のない参考価格表示は違反リスク。
  • 為替リスクの未対応 — 海外生産は円ドル・元建て決済で為替影響大。円安局面では原価が5-15%上昇。ヘッジ・輸入予約・国内生産切替の準備を。

関連する規格・法令

  • 家庭用品品質表示法 ― 繊維製品の組成表示・取扱い表示・原産国表示・事業者表示の義務。消費者庁所管。ラベル記載事項に法定要件あり。
  • 景品表示法(景表法) ― 二重価格表示・優良誤認表示の規制。「メーカー希望小売価格」表示の適正化ガイドラインあり。消費者庁所管。
  • 不正競争防止法 ― 原産地偽装・ブランド模倣品の規制。Made in Japan表示の要件も規定。
  • JIS L 0001 ― 繊維製品-取扱いに関する表示記号及びその表示方法。2016年改訂で洗濯絵表示が国際整合化。
  • JIS L 4004 ― 成人男子用衣料のサイズ(旧A体・Y体・BB体等の規格)。
  • JIS L 4005 ― 成人女子用衣料のサイズ(9AR等のサイズ表記の元)。
  • JIS L 4002 ― 少年用衣料のサイズ(140A等の規格)。
  • 関税定率法(第61-62類) ― 衣類の輸入関税。綿製品10-13%・化繊製品7-10%等。EPA・FTAで軽減される場合あり。
  • グリーン購入法 ― 国の機関による環境配慮製品の調達推進。エコマーク認定製品への配慮。
  • 労働基準法・下請法 ― 縫製工場の労務管理・支払期日規定。近年は海外生産のサプライチェーン人権リスク開示が上場企業で必須化。

参考文献・公的資料

アパレル業界の統計・法令・規格の一次情報は、以下の公的機関・業界団体で確認してください。

※本ページの原価計算・上代設定・工賃相場は業界慣行・公表資料に基づく参考値であり、個別案件の実際コストは工場・材料・時期・為替で大きく変動します。契約・見積時は必ず各工場の詳細査定と最新為替レート、税関・消費者庁の最新法令・ガイドラインを確認してください。ブランド経営・OEM取引の法務・税務相談は弁護士・税理士等の有資格者にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

生地1,500円・工賃900円・付属400円・300ロットの1着原価は?

約2,950円(生地1,500+付属400+縫製900+型代按分100+その他50)。上代4倍で税抜11,800円、税込12,980円。プロパー消化率60%・セール50%OFFを織り込むと年間平均掛率は3-3.5倍相当となり、実質原価率は28-33%になります。

なぜアパレル業界は「4倍上代」が標準?

卸2倍・小売2倍の掛け合わせから業界慣行化。ブランド→卸店(掛率50%)→小売店(掛率50%)を経ることで最終消費者価格が製造原価の4倍になる構造。SPA(ユニクロ等)は中間流通排除で3倍、D2Cは2.5-3倍、ラグジュアリーは5-8倍と幅があります。

D2C(直販)なら何倍上代が妥当?

2.5-3倍が妥当。中間流通(卸・百貨店)を排除できるため、原価率33-40%(粗利率60-67%)を確保しつつ消費者に価格訴求できるのがD2Cの強み。ただし広告宣伝費・EC運営費・返品対応で販管費が20-30%必要になるため、営業利益率は10-15%程度に収束します。

小ロット製造で型代が重いのはなぜ?

型代(パタンナー費+サンプル代+グレーディング)はロット全体で固定発生するため、10着なら1着3,000円、300着なら1着100円と大きな差。D2Cの初回小ロット(50-100着)では型代按分が300-600円/着と重く、この負担を減らすためにサンプルOEMや共通型の活用が実用的です。

日本国内縫製と海外縫製、どちらが得?

単純工賃比較では海外(中国内陸・ベトナム・バングラデシュ)が3-5倍安いが、関税・輸送費・リードタイム(60-90日)・為替リスク・最低ロット500着以上を含めた総コスト評価が必要。近年は「Made in Japan」プレミアム対応で国内回帰も進んでおり、高付加価値品は国内、大量生産は海外という棲み分けが主流。

関税は何%かかる?

WCO関税分類第61-62類(衣類)は綿製品10-13%・化繊製品7-10%・皮革製品10-16%が基本税率。ただし日本が結んでいるEPA(経済連携協定)・FTAで軽減または撤廃されるケースが多く、ベトナム・タイ・インドネシア産は多くが無税、中国産は基本税率適用。適用可否は税関の実行関税率表で確認を。

プロパー消化率とは?

正価(定価)で販売できる比率のこと。プロパー消化率60%とは、100着中60着が正価販売、40着がセール販売という意味。セール比率が上がると平均掛率が悪化し、上代4倍設計でも実質3-3.5倍相当まで下がります。アパレルブランドはこの数値を最重要KPIとして管理します。

下げ札・ラベルのコストはどれくらい?

1着あたり50-200円が目安。品質表示ラベル(織ネーム・下げ札)、洗濯絵表示ラベル、原産国表示、事業者名表示など法定要件を満たす必要があり、印刷・タグ材料費・取付作業費が発生。ブランドロゴ入り箱型下げ札は1着200円を超える場合も。

返品率はどれくらい見込むべき?

EC販売では5-15%(サイズ・イメージ違いによる返品)、実店舗では2-5%が目安。試着可能なアパレルでもECは返品率が高く、返品品の再販売可否(袋・タグ状態)によって値下げ販売の必要が生じます。返品コストは1着あたり300-800円(送料+検品+再パッキング)。

アパレルのブランド利益率はどれくらい?

売上高粗利率50-60%(上代4倍原価)、販管費30-40%(広告・店舗・EC運営・返品対応)、営業利益率5-15%が業界平均。ユニクロ(ファーストリテイリング)・ワークマンなどSPA大手は15-20%と業界平均を上回ります。

OEM工場の最低ロットはどれくらい?

国内縫製工場:50-100着、海外量産工場:300-500着が一般的。生地の最低ロット(MOQ)は反物単位(50反=約2,500-5,000m)なので、小ロット企画では反物残の廃棄コストが発生します。D2Cブランドは共通型・共通生地の活用で最低ロットを実質下げる工夫が重要。

アパレル業界のSDGs対応で原価は変わる?

オーガニックコットン(通常綿の1.5-2倍)、リサイクルポリエステル(通常の1.2-1.5倍)、フェアトレード認証工場(通常工賃の1.2-1.4倍)など、SDGs対応素材・工場は原価が10-50%上昇。ただしZ世代の環境意識高まりでプレミアム価格の受容度が向上し、SPA大手・D2Cブランドともに環境訴求商品を拡大しています。