耐火時間 要求区分ツール|階数×部位から柱・梁・壁の要求耐火性能を即参照
耐火建築物の設計・鉄骨耐火被覆計画に必須の要求耐火時間を、階数と部位(柱・梁・壁・床・屋根・階段)から即算出。建築基準法第2条9号の2・施行令107条・108条に基づく1時間/2時間/3時間耐火の区分を早見化し、S造の耐火被覆材選定、RC造かぶり厚設計、耐火建築物と準耐火建築物の使い分けまで解説します。国土交通省・日本建築学会・日本建築防災協会の公式資料に基づく参考計算です。
耐火時間 要求区分ツール
計算式と法的根拠
建築基準法における耐火時間の定義
耐火時間は建築基準法第2条9号の2で「耐火建築物」を定義し、同施行令第107条・108条で具体的な性能規定を行っています。耐火時間は火災発生から建物が倒壊せずに保つべき時間で、この時間内に消火活動・避難活動を可能にする構造性能が要求されます。
要求耐火時間 = 階数区分 × 部位区分(施行令107条 別表)
階数は「地上4階以下」「地上5-14階」「地上15階以上」の3区分、部位は「柱・梁・壁」「床」「屋根・階段」で分けられ、最も高い要求時間はの15階以上の柱・梁で3時間耐火となります。
耐火性能の3段階
- 1時間耐火(60分):4階以下の建物の主要構造部。石膏ボード被覆30分厚 or 耐火塗料等で達成。
- 2時間耐火(120分):5-14階建物の柱・梁・壁・床。石膏ボード2枚張り or 厚耐火被覆で達成。
- 3時間耐火(180分):15階以上の柱・梁。ロックウール吹付50mm以上 or 耐火被覆一体化構造で達成。
階数・部位別 要求耐火時間 早見表
建築基準法施行令107条 別表第1に基づく、耐火建築物の主要構造部の要求耐火時間です。
| 部位 | 4階以下 | 5-14階(最上階から4階以内) | 5-14階(最上階から5-14階) | 15階以上 |
|---|---|---|---|---|
| 柱・梁 | 1時間 | 2時間 | 2時間 | 3時間 |
| 壁 | 1時間 | 1時間 | 2時間 | 2時間 |
| 床 | 1時間 | 1時間 | 2時間 | 2時間 |
| 屋根 | 30分 | 30分 | 30分 | 30分 |
| 階段 | 30分 | 30分 | 30分 | 30分 |
屋根と階段は原則30分耐火(最上階のみ)で緩和されています。ただし、屋上避難経路・特別避難階段は別途規定があります。
鉄骨耐火被覆の適用厚み
鉄骨(S造)は素材のままでは500℃で強度が半減、900℃で崩落するため、耐火時間を満たすには耐火被覆が必須。主要な被覆工法と適用厚みは以下の通りです。
| 被覆材料 | 1時間耐火 | 2時間耐火 | 3時間耐火 |
|---|---|---|---|
| 石膏ボード被覆 | 21mm×2枚 | 21mm×3枚 or 25mm×2枚 | 25mm×3枚以上 |
| ロックウール吹付 | 25mm | 40mm | 60mm |
| ケイ酸カルシウム板 | 20mm | 30mm | 50mm |
| 耐火塗料(インツメセント) | 1-2mm | 3-4mm | 5mm以上 |
| PC板(プレキャスト) | 50mm | 75mm | 100mm |
工事費用は延床m²あたり数千円〜2万円のインパクト。耐火塗料は薄型で意匠を残せますが施工単価は高く、ロックウール吹付は隠蔽部位で最安。設計時の意匠・コスト・工程で選定します。
耐火建築物・準耐火建築物・防火構造の違い
| 区分 | 要求性能 | 主な構造 | 用途例 |
|---|---|---|---|
| 耐火建築物 | 倒壊しない性能(30分〜3時間) | RC造、SRC造、耐火被覆S造 | 高層マンション、大規模商業施設、病院 |
| 準耐火建築物イ準耐 | 加熱後45分〜60分は損傷しない | RC造、耐火被覆S造、木造準耐 | 3階建て共同住宅、中小規模事務所 |
| 準耐火建築物ロ準耐 | 火炎伝播防止性能 | 木造3階、外壁準耐仕様 | 木造3階建て住宅 |
| 防火構造 | 外壁が30分間火炎侵入防止 | モルタル壁、防火サイディング | 防火・準防火地域の木造住宅 |
都市の防火地域・準防火地域では原則耐火建築物または準耐火建築物、防火地域外の一般地域では防火構造以上、と地域によって求められる性能が変わります。都市計画法・建築基準法の連動規制。
耐火時間の詳しい解説
耐火時間は火災時に建物が倒壊せずに保つべき時間で、住民・利用者の避難時間と消防隊の消火活動時間を確保することが目的です。1時間耐火(4階以下)、2時間耐火(5-14階)、3時間耐火(15階以上)が基本区分で、この時間内は主要構造部(柱・梁・床・壁)の性能を維持しなければなりません。
実務では鉄骨造(S造)の耐火被覆が特に重要です。素の鉄骨は500℃で降伏強度が半減し、900℃で崩落するため、耐火時間を満たすには耐火被覆(石膏ボード・ロックウール吹付・耐火塗料等)を巻き付けます。1時間耐火で被覆厚20〜30mm、2時間で30〜50mm、3時間で50mm超が目安。工事費用は延床m²あたり数千円〜2万円のインパクトがあります。
RC造(鉄筋コンクリート)ではコンクリートかぶり厚が耐火性能に直結します。1時間耐火で30mm、2時間で40mm、3時間で50mm以上が必要。SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート)は鉄骨をコンクリートで巻き込むため、追加被覆なしで3時間耐火を達成可能で、高層建物で採用されます。
2025年建築基準法改正では、「延焼防止建築物」制度により防火地域内での木造中規模建築が拡大。CLT(直交集成板)による木造準耐火建築物が普及し始めています。
場面別の使い方
建築設計事務所
構造計算と耐火設計の並行検討。用途・階数・防火地域指定から要求耐火時間を確定し、S造/RC造/SRC造の選定、被覆材の意匠影響、コスト比較を行います。BIM連動で耐火被覆数量拾いも実務化。
鉄骨工事・専門工事業者
耐火被覆材料・工法の選定。石膏ボード被覆は仕上げ壁との一体化、ロックウール吹付は隠蔽部位で最安、耐火塗料は柱を露出させる意匠設計で採用。工程・単価・数量算出。
リフォーム・用途変更
事務所→共同住宅、倉庫→店舗など、用途変更時の耐火性能再検証。既存不適格建物の場合、増改築時に現行法適用となり、耐火被覆の追加工事が発生することがあります。
建築確認申請・審査
指定確認検査機関の審査では、施行令107条準拠の耐火性能証明が必須。耐火認定番号(FP-060CN-XXXX等)で被覆仕様を特定。書類作成の実務で頻用されます。
消防設備設計
耐火区画・防火区画の設計は消防法とも連動。1500m²ごとの床区画、階段室区画、竪穴区画に耐火時間規定が絡み、防火扉・防火シャッターの設置計画に反映します。
不動産デューデリジェンス
ビル取得時のエンジニアリングレポート(ER)で、既存建物の耐火性能を検証。耐火被覆の劣化、法定不適格状態、再取得原価の算定に影響します。
よくある間違い・注意点
- 耐火被覆の劣化見過ごし — 経年劣化で被覆材が脱落するケースが多い。特に石膏ボード被覆は湿気で劣化しやすい。定期点検(3年毎の特殊建築物定期報告)で確認義務あり。
- 部分的な耐火被覆撤去 — 設備工事(配管更新、電気配線新設)で耐火被覆を撤去したまま放置→火災リスク急増。撤去部分の復旧は必須で、施工記録も残す。
- 準耐火と耐火の混同 — 準耐火(木造3階建て対応)と耐火(RC/耐火被覆鉄骨)は別区分。混同すると建築確認申請でリジェクトされる。
- 階段室の別要件を見落とす — 特別避難階段・屋外避難階段は施行令123条の別要件が加わる。単純な「30分耐火」では不十分な場合が多い。
- 防火区画と耐火区画の混同 — 防火区画(火煙拡散防止)と耐火区画(構造耐力保持)は別概念。片方だけの検討では法令未達となる。
- 耐火被覆施工後の設備貫通処理 — 配管・配線が耐火壁を貫通する場合、貫通部にモルタル充填・耐火シール施工が必須。未処理は法令違反。
- 「耐火建築物」と「耐火構造」の言い換え — 耐火建築物(法2条9号の2)と耐火構造(施行令107条)は法定義が異なる。設計図書・確認申請書での用語ミスは審査で指摘される。
関連する規格・法令
- 建築基準法 第2条9号の2 ― 耐火建築物の定義。主要構造部が耐火構造で、かつ延焼のおそれのある部分の開口部が防火設備であるもの。
- 建築基準法施行令 第107条 ― 耐火性能に関する技術的基準。階数・部位別の要求耐火時間を規定。
- 建築基準法施行令 第108条 ― 準耐火性能に関する技術的基準。イ準耐(45分)・ロ準耐(60分外壁)の区分。
- 建築基準法施行令 第109条の3 ― 主要構造部を耐火構造とした建築物と同等の性能。
- 建築基準法施行令 第112条 ― 防火区画(面積区画1500m²、竪穴区画、異種用途区画)の規定。
- 建設省告示 第1399号 ― 耐火構造の構造方法(耐火認定番号FP-060/120/180CN-XXXX)。
- JIS A 1304 ― 建築構造部分の耐火試験方法。加熱曲線・支持条件・判定基準。
- JIS A 1321 ― 建築物の内装材料の防炎試験。難燃・準不燃・不燃の区分。
- 消防法 第17条 ― 消防用設備等の設置。耐火区画と連動する自動火災報知設備・スプリンクラー設置基準。
参考文献・公的資料
耐火建築の実務では、以下の公的機関・業界団体の一次資料を参照してください。
- 国土交通省 建築基準法制度概要 ― 建築基準法・施行令・告示の公式情報。耐火建築物・防火地域の解説。
- e-Gov 建築基準法 ― 法令原文。第2条・第26-27条・第61-62条の防火規定。
- e-Gov 建築基準法施行令 ― 施行令107条・108条・112条の耐火性能規定原文。
- 一般財団法人 日本建築防災協会 ― 耐火建築物・防火設備の性能評価、既存建物の耐震・耐火診断ガイドライン。
- 一般社団法人 日本建築学会 ― 建築防火・構造耐火設計指針の学術資料。
- 日本産業標準調査会(JISC) ― JIS A 1304(耐火試験方法)、JIS A 1321(内装防炎)の公式索引。
- 総務省 消防庁 ― 消防法関連。防火対象物点検、消防設備の設置基準。
- 一般財団法人 日本建築総合試験所(GBRC) ― 耐火認定試験の実施機関。認定番号一覧・技術基準。
- 一般財団法人 日本建築センター(BCJ) ― 建築確認・性能評価・耐火認定業務。
- 耐火建築物性能評価協会 ― 耐火被覆材・耐火認定の情報。
よくある質問(FAQ)
5階建て柱の要求耐火時間は?
2時間耐火です。建築基準法施行令107条別表第1により、5-14階の柱・梁は2時間耐火性能が必要。S造では耐火被覆(石膏ボード被覆30mm程度、ロックウール吹付40mm、耐火塗料3-4mm)で達成します。RC造ではコンクリートかぶり厚40mm以上が目安。
鉄骨造で耐火時間を確保する方法は?
耐火被覆で対応します。石膏ボード被覆(意匠隠蔽用)、ロックウール吹付(コスト最安)、耐火塗料(意匠露出)が三大工法。2時間耐火では被覆厚30〜50mmが目安、施工単価は延床m²あたり数千円〜1.5万円。耐火認定番号(FP-120CN-XXXX等)付き認定製品を採用します。
準耐火建築物とは?
耐火建築物より緩和された性能で、加熱後45分(イ準耐45分)または60分(イ準耐60分)は損傷しない性能。木造3階建て共同住宅・中規模事務所で採用可。イ準耐は主要構造部、ロ準耐は外壁の準耐火性能。防火地域では原則耐火建築物が必要ですが、準防火地域では準耐火でも可。
耐火被覆の定期点検義務は?
特殊建築物(共同住宅・事務所・商業施設等)の定期報告制度(建築基準法12条)で、3年に1回の外壁・主要構造部点検が義務化。耐火被覆の剥離・欠損・湿気による劣化を確認し、修繕が必要な場合は速やかに復旧します。所轄行政庁への報告義務。
防火地域と準防火地域の違いは?
都市計画法に基づく地域指定。防火地域は3階以上または延床100m²超で耐火建築物、準防火地域は3階以上または延床500m²超で耐火建築物。防火地域外でも、市街地の一定地域には防火構造以上が求められます。地域指定は市町村都市計画課で確認可。
RC造とSRC造、耐火性能はどう違う?
RC造は鉄筋コンクリートで、コンクリートかぶり厚30〜50mmで1〜3時間耐火達成。SRC造は鉄骨鉄筋コンクリートで、鉄骨をコンクリートで巻き込むため、追加被覆なしで3時間耐火達成。高層建物(20階超)ではSRC造が主流で、S造+被覆に比べて意匠自由度が高い利点。
木造で耐火建築物は可能?
2025年建築基準法改正で木造耐火建築物の適用が拡大。CLT(直交集成板)による2時間耐火、集成材+石膏ボード被覆による1〜2時間耐火が認定取得済み。ただし、S造・RC造に比べてコスト・工程で不利な場合が多く、建物性能とコストの比較検討が必要。
耐火認定番号(FP-060CN)とは?
国交省告示第1399号に基づく耐火構造の大臣認定番号。「FP-060」は60分(1時間)耐火、「FP-120」は120分(2時間)耐火、「FP-180」は180分(3時間)耐火を意味します。「CN」は柱、「BM」は梁、「WL」は壁を示す部位記号。認定製品リストは指定性能評価機関で公開。
階段の耐火時間はなぜ緩和されている?
階段は避難経路であり、火災時に人が短時間通過する空間のため、30分耐火で足ります。ただし特別避難階段(施行令123条)は付室が必要で、耐火時間より「煙侵入防止」の観点が重視されます。屋外避難階段は原則耐火性能不要。
防火区画と耐火区画の違いは?
防火区画は火煙の拡散防止(1500m²ごとの面積区画、階段室竪穴区画、異種用途区画)、耐火区画は構造耐力の保持(施行令107条の耐火時間要件)。両者は別概念ですが、実務では重なる部分が多く、設計時に両方の視点で検討します。
耐火塗料はどんな仕組み?
火災時に加熱されると発泡して数十倍に膨張し、断熱層を形成する塗料(インツメセント型)。通常時は数mm厚の意匠塗装として機能し、火災時のみ被覆化。柱の露出意匠を保ちながら耐火性能を得られるため、モダン建築で採用増加。単価は他工法より高価(延床m²あたり2〜3万円)。
既存建物の耐火不適格を解消するには?
既存不適格建物の増改築時に現行法適用となる場合、既存部分への耐火被覆追加、防火区画再構成、避難経路整備が必要になります。改修コストが新築並みになるケースもあり、事業性判断が必要。既存不適格緩和特例(施行令137条の2)の適用可否は指定確認検査機関に相談します。