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日次原価経営厨房管理F/L

日次原価(仕入×消費量)計算ツール|飲食店・給食施設のF管理・原価率・棚卸実務

食材別使用量×単価から日次総原価を即算出し、日次売上と組み合わせて日次原価率(F/S比)を管理。業態別標準原価率(和食25〜32%・寿司40%・イタリアン30%・居酒屋28〜33%・ラーメン28〜32%)、棚卸差異・調理ロス・オーバーポーション、POS連動・原価管理システム、食品衛生法・HACCP・食品ロス削減推進法まで、外食産業経営実務で必要な情報を網羅します。

最終更新:2026-08-08/初版:2026-05-06/監修:計算ツールズ編集部

日次原価(仕入×消費量) 計算機

計算式とF/L指標

基本式

日次原価 = Σ(食材使用量 × 単価)

日次原価率(F/S比) = 日次原価 ÷ 日次売上 × 100 (%)

実原価率 = (期首在庫 + 期中仕入 − 期末在庫) ÷ 期中売上 × 100

F/Lコストの考え方

飲食業経営の基本指標として「F/Lコスト」があります。F=Food(食材原価)、L=Labor(人件費)の合計比率で、通常売上の55〜60%以下に収めるのが黒字経営の目安。F 30%+L 25〜30% で50〜60%が業界標準。これを超えると家賃・水道光熱費・広告費で赤字になります。

理論原価と実原価

理論原価は「メニュー別レシピ×販売数」で算出する計算値、実原価は「期首在庫+仕入−期末在庫」で算出する実測値。両者の差が棚卸差異で、通常2〜3%以内が管理目標。差異が5%を超えると、廃棄・従業員食・盗難・仕入伝票ミス等の管理課題が疑われます。

業態別 標準原価率(業界水準)

日本フードサービス協会・外食産業総合調査研究センター等の調査に基づく業態別の標準的な原価率レンジです。実際は立地・単価・仕入戦略で±3〜5%変動します。

業態標準原価率(F)目標人件費率(L)備考
ファストフード(ハンバーガー等)32〜38%22〜28%低単価・回転重視
ファミリーレストラン32〜38%25〜30%チェーンオペ・セントラルキッチン
ラーメン28〜32%25〜30%スープ原価が大
そば・うどん25〜30%25〜30%粉物・回転早い
カフェ25〜30%25〜30%ドリンク原価が低い
居酒屋28〜33%25〜30%アルコール比率で変動
和食(定食・割烹)25〜32%28〜33%技術給高い
寿司(江戸前)38〜45%25〜30%鮮魚単価変動大
回転寿司(チェーン)45〜50%15〜20%省人化・原価開示型
焼肉35〜42%20〜25%肉原価が支配
イタリアン(カジュアル)28〜33%25〜30%パスタ・ピッツァ原価低
フレンチ・高級店30〜40%30〜38%技術給高い・原材料高価
中華(街中華)28〜35%22〜28%油物・野菜バランス
焼鳥・串焼き30〜36%25〜30%串刺し工数大
給食(病院・老人ホーム)35〜45%30〜35%栄養バランス・大量調理

日次原価管理の実務フロー

朝(仕込み前)

前日棚卸→当日仕入伝票確認→本日の予測客数(過去実績・予約状況)から仕入量を確定。生鮮品(魚・肉・野菜)は当日築地・市場・業者配送で当日中に消化する短サイクル管理。

昼・夜(営業中)

POSレジで販売メニューを記録→メニュー別レシピから理論消費量が自動算出(POS連動型)。ホールと厨房で追加仕入・在庫確認をリアルタイム実施。売上ペースと予測を照合し、閉店前の値引き・追加販売判断。

夜(閉店後)

当日売上締め→簡易棚卸(主要食材のみ)→日次原価表への転記。原価率を算出し、翌日以降の仕入判断へフィードバック。差異2%以上なら翌日朝礼で対策共有。

週次(定休日等)

週次全品棚卸で実原価率を確定。理論原価との差=棚卸差異を分析。原因(廃棄・従業員食・盗難・オーバーポーション等)を特定し、再発防止策を実施。

棚卸差異と実原価率

実原価率の管理は「棚卸」の精度に大きく依存します。差異の主な原因と対策を整理します。

差異発生原因典型的な差異率対策
調理ロス(切りくず・端材)2〜5%歩留率の把握・調理法の標準化
オーバーポーション(過剰盛付)1〜3%盛付器具の標準化・計量指導
従業員食(まかない)1〜2%まかない用食材の区分・記録
期限切れ・廃棄1〜3%先入先出徹底・発注量最適化
盗難・内部不正0.5〜1%入出庫記録・監視カメラ
仕入伝票ミス・計上漏れ0.5〜1.5%受入検品の徹底
棚卸カウントミス0.5〜1%ダブルチェック・写真記録

合計差異が5%を超える店舗は要注意で、月次200万円原価の店舗なら10万円/月のロスに相当します。

調理ロス・オーバーポーション

歩留率の管理

魚・野菜・肉の可食部率(歩留率)は50〜80%と大きく変動。実効食材単価 = 仕入単価 ÷ 歩留率で算出しないと、原価計算が甘くなります。例: 鰤(ブリ)1本4000円、歩留60%なら実効単価は6667円/kgとなります。

食材歩留率備考
ブリ(丸)55〜60%アラ・骨除去後
マグロ(サク)90%+柵買いで歩留高
牛肉(サーロインブロック)85〜90%スジ・脂除去
玉ねぎ85〜90%皮・根除去
じゃがいも(皮付)80〜85%皮剥き後
キャベツ85%芯・外葉除去
キャベツ千切り75%更に加工ロス
ピーマン85%ヘタ・種除去
大根90%皮剥き後
鶏もも肉(骨付)65〜70%骨除去後

オーバーポーション対策

スタッフの「盛りすぎ」は原価率を2〜5%押し上げる主要因。計量スプーン・盛付ガード・オンス計・ソースディスペンサー等の器具標準化で、盛付量の再現性を確保。写真マニュアル・目視ゲージも有効です。

POS連動・原価管理システム

POS+レシピ連動型(理論原価自動算出)

USEN・スマレジ・Airレジ等のPOSに、メニュー別レシピ(食材×グラム)を登録することで、販売と同時に理論原価と使用食材量を自動集計。日次F/S比を即時把握可能。中規模店(月商500万〜)から導入が進む。

クラウド原価管理(BtoBフードシステム等)

infomart・Foodison・クックビズ経理連携等の食材業者連携システム。仕入伝票電子化→自動仕訳→原価集計まで一気通貫。多店舗チェーンで導入率が高い。

ハンディ棚卸(タブレット)

タブレット端末で店舗棚卸を実施。バーコード読取・写真記録・翌日集計。従来のExcel棚卸(2時間)を30分に短縮可能。中規模チェーン以上で普及。

Excel/Googleシート原価管理(小規模店)

月商100万〜300万の小規模店ではExcel・Googleシートでの日次記録が現実解。無料で始められるが、集計に手間がかかり継続性が課題。

本部管理(セントラルキッチン型)

チェーン本部でメニュー別レシピを一括管理し、各店の販売数から必要食材量を自動計算→セントラルキッチンで加工出荷。原価管理の標準化と食材ロス削減を両立。

AI需要予測(近年トレンド)

過去実績・天候・イベント情報から翌日客数を予測し、仕入量最適化。マクドナルド・スシローなど大手チェーンで導入。食品ロス削減推進法対応にも寄与。

業態別の応用

🍜 ラーメン店

スープ原価(豚骨・鶏ガラ・魚介・野菜)が全体の40〜50%を占める。スープ1杯あたり原価を厳密管理し、麺・具材・タレを組合わせた1杯総原価から売価設定。ロット仕込みのため日次棚卸より週次管理が現実的。

🍣 寿司店

ネタ原価が支配的で日々の魚価変動に敏感。魚種別歩留率・時価管理が要。江戸前寿司でF 40%、回転寿司で45〜50%と業界内で最も原価率が高い業態。

🥩 焼肉店

肉原価(A5和牛・US産・国産豚)が支配。部位別グラム単価と切分歩留(ブロック→スライス)の管理が要。輸入牛の為替変動リスクを盛り込んだ売価設定が必要。

☕ カフェ

コーヒー原価は1杯30〜50円と低く、フード(ケーキ・サンドイッチ)の原価管理が要。ドリンク単価500円のうち原価率6〜10%、フード原価率30〜40%のブレンドで店舗全体原価率28〜32%を実現。

🍱 給食(病院・老人ホーム)

1食単価の低さ(400〜700円)から原価率35〜45%と高いが、安定した食数・栄養価管理で経営安定。委託会社(日清医療食品・エームサービス等)が主要プレーヤー。

🍺 居酒屋

アルコール原価率25%・食事原価率33%を組合わせ、店舗全体で28〜33%に。ドリンクCS(客単価比)が原価率と客単価の両方を上げる鍵。宴会予約・食べ放題プランで在庫消化を計画的に。

原価率改善のアプローチ

即効施策(1〜3ヶ月)

ABC分析による高単価メニューの構成比向上、盛付量の標準化(オーバーポーション削減)、廃棄記録の可視化、仕入業者の見直し(相見積り)、単価変動大の食材の売価改定。1〜3%の原価率改善が期待できます。

中期施策(3〜12ヶ月)

POS+レシピ連動導入、セントラルキッチン化(チェーン展開時)、メニュー数の適正化(50品→30品)による在庫回転向上、パート・アルバイトの調理教育。3〜5%の原価率改善が期待できます。

長期施策(1年以上)

直接仕入(産地契約)、自社加工場設立、メニュー開発の抜本的見直し(高利益メニュー主力化)、AI需要予測導入。5%以上の原価率改善が可能ですが、投資と時間が必要です。

よくある間違い・注意点

  • 大まかな見積り(バケット管理) — 「肉類◯万円/週」のような大分類管理では原価率改善のドライバーが見えません。食材別・メニュー別に細分化した管理が必須です。
  • 週次棚卸怠慢 — 月1回の棚卸では実原価率のブレが大きく、改善アクションが遅れます。週次棚卸が実務標準で、少なくとも主要食材(仕入額の80%を占める上位20品目)は週次実施を。
  • 季節変動未対応の売価固定 — 鮮魚・野菜は季節・気象で単価が2〜3倍変動する場合があります。時価表示・仕入価格連動売価で原価率を安定化させる仕組みが必要です。
  • 歩留率を無視した原価計算 — 「鰤1kg=4000円」ではなく「可食部1kg=6667円」で計算しないと、原価が20〜40%過少評価になります。歩留率を掛けた実効食材単価で管理してください。
  • まかない・廃棄を売上に計上 — まかない・従業員食は原価計上しつつ売上外の管理が原則。廃棄食材も別建て記録することで、実原価率を正確に把握できます。
  • 飲料・アルコールと食事の混合管理 — 飲料原価率(15〜25%)と食事原価率(30〜40%)は大きく異なります。カテゴリー別(F飲料/F食事/F+L合算)で見ないと改善方向が誤ります。
  • 販促・値引きを原価率で吸収 — 定期的な割引・クーポン発行は、原価率が上がって当然の施策です。集客効果と原価上昇を切り分けて評価すべきです。

関連する法令・基準

  • 食品衛生法 ― 飲食店営業許可・食中毒防止・食品表示の基本法。厚生労働省・保健所所管。
  • HACCP(ハサップ)導入義務化 ― 2021年6月から原則全ての食品事業者に義務化。危害要因分析と重要管理点による衛生管理。
  • 食品表示法 ― 加工食品のアレルゲン・原産地・栄養成分表示。飲食店メニューの表示ルール。
  • 食品ロス削減推進法(2019年) ― 事業系食品ロス削減の努力義務。飲食店の食品廃棄削減が対象。
  • 食品リサイクル法 ― 食品廃棄物の減量・再生利用を義務化。年間100t以上の食品廃棄物排出事業者は定期報告義務。
  • 労働基準法 ― 深夜労働・時間外労働の割増賃金。労働時間管理と人件費計上に直結。
  • 青色申告(個人事業主)/決算(法人) ― 売上・仕入・棚卸を記録し、税務申告の基礎。売上原価=期首在庫+仕入−期末在庫。
  • 消費税インボイス制度(2023年10月) ― 適格請求書等保存方式。仕入税額控除の要件変更。飲食店の仕入原価管理と直結。

参考文献・公的資料

飲食業経営・原価管理・法令の詳細については、以下の公的機関・業界団体の一次資料を参照してください。

※本ページの原価率・業態別水準は、業界団体調査・公表数値を基にした一般的な参考値です。実際の経営指標は店舗の立地・客単価・仕入戦略・オペレーションにより大きく変動します。税務・会計上の売上原価計算、食品衛生法・HACCP対応、食品ロス削減推進法対応等は、税理士・食品衛生管理者・保健所の指導を受けた上で実施してください。特にインボイス制度・食品表示等の法令対応は、最新の公式資料の確認と専門家(税理士・弁護士)への相談を推奨します。

よくある質問(FAQ)

日次原価管理のメリットは?

リアルタイム経営判断が可能になり、月次決算を待たずに翌日の仕入・売価・オペレーション対策が打てます。日次原価率のトレンド管理で、業態標準からの乖離を早期発見でき、月次30万円級の原価改善に繋がる事例もあります。

棚卸頻度は?

週1回の全品棚卸が実務標準です。月末に実棚卸で確定させ、税務申告用の売上原価を確定。日次では主要食材(仕入額上位20品目=全体の80%)のみ簡易棚卸することで、日次原価率の精度を確保します。

POSシステム連動のメリットは?

販売と同時に理論原価・使用食材量を自動集計でき、日次F/S比を即時把握可能。大手チェーン・中規模店は必須化。小規模店でもスマレジ・Airレジ等の月額数千円のクラウドPOSで導入可能です。

小規模店(月商100〜300万)の原価管理は?

Excel・Googleシートでの手入力管理が現実解。日次売上・日次仕入・週次棚卸の3項目を記録するだけでも、原価率のトレンドは十分把握できます。継続性が最も重要です。

業態別の標準原価率は?

ラーメン28-32%、ファストフード32-38%、和食25-32%、寿司(江戸前)38-45%、回転寿司45-50%、焼肉35-42%、居酒屋28-33%、カフェ25-30%が業界水準。寿司・焼肉は原価率高いが客単価も高いため経営成立します。

理論原価と実原価の差(棚卸差異)は何%が許容?

2〜3%以内が管理目標。5%を超えると廃棄・従業員食・盗難・オーバーポーション等の管理課題が疑われます。差異発生原因の特定と対策を月次で実施することが原価率安定化の要です。

食材の歩留率とは?

可食部率のこと。魚55-60%・肉70-90%・野菜80-90%と食材で変動します。実効食材単価=仕入単価÷歩留率で計算しないと原価が過小評価に。ブリ1kg 4,000円は可食部1kg 6,667円になります。

F/Lコストとは何?

F=Food(食材原価)・L=Labor(人件費)の合計比率で、通常売上の55〜60%以下が黒字経営の目安。F 30%+L 25〜30%が業界標準。これを超えると家賃・水道光熱・広告費で赤字になります。

季節変動する食材の売価は?

鮮魚・野菜は季節・気象で2〜3倍変動します。「時価」表示、仕入価格連動売価で原価率を安定化。ヤマトホールディングス・トーホーなど食材業者の週次相場情報を参考に、売価改定サイクルを月2回程度が実務的です。

まかない(従業員食)の会計処理は?

まかない用食材は原価計上しつつ売上外で管理するのが原則。所得税基本通達で「食事の価額の50%以上を従業員負担+月額3,500円以下(消費税抜)の会社負担」なら非課税となる規定があります。

HACCPの飲食店対応は?

2021年6月から原則全飲食店にHACCPに沿った衛生管理が義務化されました。小規模店は「衛生管理計画書」の作成と実施記録で対応可能。厚生労働省が業種別手引書を公開しています。

インボイス制度対応は?

2023年10月から適格請求書等保存方式が開始。仕入税額控除には適格請求書発行事業者からの請求書が必要です。小規模仕入業者(免税事業者)からの仕入は控除できない場合があるため、仕入先の登録番号確認が実務対応となります。