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冷却塔補給水濃縮倍率水処理レジオネラ

冷却塔補給水量

循環水量・冷却温度差ΔT・濃縮倍率から蒸発量・ブロー量・飛散量・補給水量を即算出。冷凍空調工業会基準、レジオネラ対策(建築物衛生法)、水処理薬品コスト、データセンター冷却の水消費まで、冷却塔運用の年間水コスト・薬品コスト管理を実務目線でカバーする無料計算ツール。
ビル管理者、工場ユーティリティ担当、データセンター運用、水処理エンジニアに対応。

最終更新:2026-07-29/監修:計算ツールズ編集部

冷却塔補給水量ツール

基本式・目安

蒸発量(E) = 循環水量 × ΔT × 0.0018 (m³/h)

飛散量(D) = 循環水量 × 0.0002 (m³/h) ※開放型代表値

ブロー量(B) = E / (N − 1) − D (m³/h)

補給水量(M) = E + D + B (m³/h)

係数0.0018は水の潜熱換算(1℃で0.18%程度が蒸発)からきています。100m³/h・ΔT5℃の一般的な冷却塔では蒸発量0.9m³/h、飛散0.02m³/h、濃縮倍率3倍運用でブロー0.43m³/h、補給水量約1.35m³/hが典型値です。

年間4000時間運転(平日8h×250日相当)なら、補給水量は5,400m³/年。水道単価350円/m³で年間189万円の水コストになります。工場・ビルの隠れた大コストとして知られる領域です。

濃縮倍率別のブロー・補給水量

N(倍)ブロー/蒸発比補給水/蒸発比特徴
21.0(蒸発量と同)2.0低濃縮・水多消費
30.51.5標準運用ゾーン
40.331.33準最適ゾーン
50.251.25スケールリスク増
60.201.20水処理厳格化必要
100.111.11純水系のみ実現可

※標準運用は3-5倍。濃縮上昇でブロー削減・水コスト減、ただしスケール・腐食・レジオネラリスクは上昇する。バランス点は水質・薬品管理で決まる。

循環水量別 年間補給水量目安(ΔT5℃・N=3・4000h運転)

循環量補給水/h年間補給年間水コスト(350円/m³)
50 m³/h0.682,700 m³945,000円
1001.355,4001,890,000円
2002.7010,8003,780,000円
5006.7527,0009,450,000円
100013.554,00018,900,000円

冷却塔補給水量の詳しい解説

冷却塔(クーリングタワー)は工場・ビル・データセンターの冷凍機・プロセス冷却で発生する熱を、水の蒸発潜熱で大気に放出する装置です。水の蒸発により熱が奪われる原理を利用しており、循環水の一部が必然的に蒸発します。

蒸発した水は純水(蒸留水)なので、循環水に含まれていた塩類・不純物は残留し、循環し続けるうちに濃縮されていきます。この濃縮の程度を示す指標が「濃縮倍率N」で、補給水の塩分濃度に対する循環水の塩分濃度の比です。

濃縮倍率が高くなるとスケール(炭酸カルシウム等の析出)、腐食、スライム(細菌繁殖)のリスクが上がるため、一定濃度で強制的に排水(ブロー)して薄めます。ブロー量を減らすには濃縮倍率を上げる=水処理薬品でスケール・腐食を抑える必要があり、水コスト削減と薬品コスト増のトレードオフになります。

実務ではN=3-5倍が標準運用ゾーンです。N=3で水消費は蒸発量の1.5倍、N=5で1.25倍と、濃縮倍率を2から5に上げるだけで水消費が25%削減できます。ただしN=5以上は水質管理が厳しくなり、水処理薬品(スケール防止剤・腐食防止剤・殺菌剤)の使用量が増えるため、総コストで最適化する判断が必要です。

冷却塔運用で必ず考慮すべきなのがレジオネラ属菌対策です。冷却塔水は温度25-40℃で細菌繁殖の好条件、飛散水がエアロゾルになって周辺住民に感染するリスクがあります。

建築物衛生法で年1回以上の冷却塔清掃、定期的な水質検査、殺菌剤投入が義務化されており、集団感染事例では管理者責任が問われます。1999年の名古屋ドームでのレジオネラ集団感染、2002年の日向市でのレジオネラ死亡事例など、社会的にも重大な衛生課題です。

データセンター冷却では、水冷式チラー+冷却塔の組み合わせが電力効率(PUE)向上のため広く採用されています。ラック1本あたりの発熱量20-30kW時代になり、冷却塔の水消費も大規模化。

大手データセンターでは年間数十万m³の水消費(小規模自治体の給水量に匹敵)になるため、雨水利用、再生水利用、間接気化冷却の導入が進んでいます。水資源不足地域では立地選定にも影響する重要事項です。

水処理薬品は「スケール防止剤+腐食防止剤+殺菌剤」の3種を組み合わせるのが標準です。スケール防止剤はホスホン酸系・ポリマー系で炭酸カルシウム析出を抑制、腐食防止剤はモリブデン酸・アゾール系で金属配管を保護、殺菌剤は塩素系・非酸化性剤でスライム・レジオネラを抑えます。

薬品コストは循環量100m³/hで月2-5万円が相場、年間30-60万円。この投資でブロー削減・機器寿命延長・法令遵守が同時に達成できます。

業界・現場での使い方

冷凍空調・セントラル冷房

ビル・商業施設のセントラル冷房の熱源冷却。夏季ピーク運転時の水消費量算出、水道料金予算計上、水処理薬品コスト管理に使用。ΔTと循環量から年間水コストを予測。

工場プロセス冷却

射出成形、圧延、化学プロセスの冷却水系。24時間連続運転の場合、年間8760時間フル稼働で補給水量も倍増。工場のユーティリティコスト分析の中核データ。

データセンター運用

大規模DC冷却系の水管理。ラック1本30kWの発熱を冷却塔で処理、水資源不足地域では雨水・再生水利用や間接気化冷却などの代替案検討に本ツールの結果を使用。

ビル管理・設備管理

建築物衛生法の対応。年1回の冷却塔清掃、水質検査、殺菌剤投入の記録管理。レジオネラ検査結果の記録保持は同法の必須項目。

水処理薬品業界

顧客工場の薬品使用量予測。循環量・濃縮倍率・水質からスケール防止剤・腐食防止剤・殺菌剤の最適投入量を提案する際の基礎データに。

環境・省資源担当

ISO14001・カーボンニュートラル・SDGsの水資源目標達成。濃縮倍率を上げる+雨水利用で水消費20-40%削減する省水化提案の基礎計算に。

ケーススタディ:現場での実務計算

ケース1:中型ビル冷却塔(100m³/h・ΔT5℃・N=3)

  • 蒸発量:100 × 5 × 0.0018 = 0.9 m³/h
  • 飛散量:100 × 0.0002 = 0.02 m³/h
  • ブロー量:0.9/(3−1) − 0.02 = 0.43 m³/h
  • 補給水量:0.9 + 0.02 + 0.43 = 1.35 m³/h
  • 年間4000h運転:5,400 m³ = 水コスト約189万円/年

ケース2:工場24h連続運転(200m³/h・ΔT7℃・N=4)

  • 蒸発量:200 × 7 × 0.0018 = 2.52 m³/h
  • 飛散量:0.04 m³/h
  • ブロー量:2.52/3 − 0.04 = 0.80 m³/h
  • 補給水量:3.36 m³/h
  • 年間8000h運転:26,880 m³ = 水コスト約940万円/年

ケース3:データセンター(500m³/h・ΔT6℃・N=5)

  • 蒸発量:500 × 6 × 0.0018 = 5.4 m³/h
  • 飛散量:0.1 m³/h
  • ブロー量:5.4/4 − 0.1 = 1.25 m³/h
  • 補給水量:6.75 m³/h
  • 年間8760h(通年):59,130 m³ = 水コスト約2,070万円/年

ケース4:省水化改善(濃縮倍率N=2→N=5への引上げ)

  • 元:100m³/h・N=2 補給水量 1.8 m³/h → 年7,200m³・約252万円
  • 改善後:N=5 補給水量 1.13 m³/h → 年4,520m³・約158万円
  • 年間節約:約94万円/年(水+下水道)
  • 薬品コスト増:年+30万円 → 差引実質+64万円/年の削減

よくある間違い・注意点

  • ブロー過剰 — 濃縮倍率2倍以下のブローは水コスト・薬品コスト増。N=3-5に上げる+水処理薬品導入で年数十万〜数百万円の節約が可能。導電率制御によるブロー自動化がベスト。
  • 濃縮倍率無限 — Nを高くしすぎるとスケール・腐食・レジオネラリスクが激増。水質(硬度・塩化物)に応じてN上限を設定する。通常は5-6倍が現実的上限。
  • 飛散量を無視 — 開放型冷却塔で0.02-0.1%飛散する。エアロゾルにレジオネラが含まれれば周辺住民感染リスク。飛散防止デミスターの適正メンテナンス必須。
  • 殺菌剤未投入 — 建築物衛生法違反リスクに加え、レジオネラ感染事故で管理者責任(刑事罰含む)。定期投入と検査記録の保管が必須。
  • ブロー水を排水と扱わない — ブロー水は下水道料金の対象。年間補給水量の3割相当がブロー水として排水料金がかかる。実質水コストは水道単価×補給量×1.3程度で見積る。
  • 冷却塔清掃を怠る — 年1回以上の清掃が建築物衛生法で義務化。スケール蓄積で冷却効率が10-30%低下し、電力コスト増と水質悪化の二重悪化。
  • 冬期の凍結対策不足 — 停止時の凍結でファン・配管破損。ヒーター・トレース保温・冬期は水抜き運転などの対策が必要。
  • 雨水利用・再生水利用の検討漏れ — 大規模DC・工場では雨水タンク・工場排水再利用で補給水の10-30%を代替可能。ESG報告書のポイント。

関連する規格・法規

  • 建築物における衛生的環境の確保に関する法律(建築物衛生法・ビル管法) — 冷却塔の年1回以上の清掃、水質検査、レジオネラ対策を義務化。
  • 厚生労働省「冷却塔水の衛生管理指針」 — 具体的な清掃頻度・殺菌剤投入基準・検査方法の技術指針。
  • JIS B 8609 冷却塔 — 冷却塔の性能試験方法・容量表示規格。
  • 冷凍空調工業会「冷却塔設計基準・性能基準」 — 業界基準。設計時の容量算定・性能保証の実務指針。
  • 下水道法・水質汚濁防止法 — ブロー水の排水規制。pH・COD・塩素量の規制対象。
  • 建築設備定期検査 — 建築基準法12条の定期検査項目。冷却塔も対象。

※本ツールは公的基準に基づく参考計算です。実際の設計・運用は冷却塔メーカーの仕様書、水処理業者の水質分析、建築物衛生法・関連法規の遵守が必須です。レジオネラ対策は法令上の管理者責任があります。

レジオネラ属菌対策の実務チェック

項目頻度基準・アクション
清掃年1回以上スケール除去+殺菌剤浸漬洗浄
殺菌剤投入常時循環塩素系または非酸化性剤
レジオネラ検査年1-2回培養検査で100 CFU/100mL以下
水質検査月1回導電率・pH・残塩素
ドリフトエリミネータ点検四半期飛散防止機能維持
集水槽清掃年2回沈澱物・スライム除去
記録保管常時5年間保管(法定義務)

レジオネラ集団感染は数十人〜数百人規模の被害となり、管理者は刑事責任(業務上過失致死傷罪)を問われる可能性があります。名古屋ドーム(1999年)、日向市温泉(2002年)、大牟田市病院(2015年)など重大事例が繰り返されており、記録に残る形での定期管理が不可欠です。

よくある質問(FAQ)

100m³/h・ΔT5℃・N=3の補給水量は?

約1.35 m³/h。内訳は蒸発0.9・飛散0.02・ブロー0.43。年間4000時間運転なら5,400m³・水コスト約189万円になります。

濃縮倍率(N)は何倍がベスト?

標準運用はN=3-5。N=3で水消費は蒸発の1.5倍、N=5で1.25倍。水処理薬品と水質(硬度・塩化物)のバランスで決定。導電率制御でのブロー自動化が理想。

ブロー水にも下水道料金がかかる?

公共下水道接続の場合かかります。年間補給水量の30-50%がブロー水として排水対象。実質水コストは水道単価×補給量×(1+下水道費割合)で見積り。

レジオネラ対策は何をすればいい?

(1)年1回以上の清掃、(2)殺菌剤の常時循環投入、(3)年1-2回のレジオネラ培養検査(100CFU/100mL以下)、(4)記録の5年間保管。建築物衛生法の必須要件です。

飛散量はどれくらい?

開放型で循環量の0.02-0.1%。ドリフトエリミネータ性能で変動。エアロゾルにレジオネラが含まれる感染リスクの主因、飛散防止対策が最重要。

省水化のポイントは?

(1)濃縮倍率をN=3→N=5に引上げ(-25%)、(2)雨水利用(-10-20%)、(3)工場排水再利用(-10-30%)、(4)高効率冷却塔の採用(-10%)。組み合わせで50%削減可能。

冬期の運用は?

停止時の凍結防止が重要。ヒーター・トレース保温、冬期は水抜き運転、外気温-10℃以下は完全停止が安全策。凍結でファン・配管破損する事例が多発。

密閉型冷却塔との違いは?

密閉型はプロセス水を熱交換器で冷却する構造。飛散・レジオネラリスクが低く、水質管理が容易。ただし初期コストが2-3倍高く、電力効率も若干劣ります。

水処理薬品はどう選ぶ?

スケール防止剤(ホスホン酸系)、腐食防止剤(モリブデン酸・アゾール系)、殺菌剤(塩素系+非酸化性剤ローテーション)の3種セットが標準。水処理業者の水質分析に基づく処方選定が実務基本。

実質水コスト計算の考え方

費目金額目安(㎥あたり)備考
上水道料金150-500円地域・使用量段階制
下水道料金(ブロー水)100-300円公共下水道接続時
水処理薬品コスト50-150円スケール・腐食・殺菌剤
電力コスト(ポンプ・ファン)30-80円循環ポンプ含む
清掃・点検人件費10-30円年1回清掃を按分
実質総コスト340-1,060円㎥あたり総額

本ツールは上水道単価×1.3で下水道費を近似計算していますが、実際は地域・段階制で大きく変動します。工場用水は上水道料金が段階制で高くなるケースが多く、大規模工場では月100万円単位のコスト差になります。

薬品コスト・電力コスト・人件費を含めた「実質総コスト」で最適化するのが本来の姿。単純な水道料金だけを見て濃縮倍率を判断すると、薬品・電力・機器寿命の視点で逆効果になることがあります。

用語集

循環水量
冷却塔とプロセス機器の間を循環する水量。m³/h。設備容量の基本値。
ΔT(温度差)
冷却塔入口温度と出口温度の差。標準は5℃、大きいほど熱負荷大。
蒸発量(E)
冷却塔で大気に蒸発する水量。潜熱で熱を奪う。E = 循環×ΔT×0.0018。
飛散量(D、Drift)
ミストとして飛散する水量。循環量の0.02-0.1%程度。
ブロー量(B、Blowdown)
濃縮を防ぐため強制排水する水量。B = E/(N-1) − D。
補給水量(M、Makeup)
失われた水を補給する量。M = E + D + B。
濃縮倍率(N、COC)
Cycle of Concentration。循環水塩分濃度/補給水塩分濃度の比。
スケール
炭酸カルシウム等の析出物。伝熱面に付着し冷却効率を低下させる。
スライム
細菌・カビが集まった粘性沈殿物。悪臭・伝熱低下・腐食の原因。
レジオネラ属菌
温水中で繁殖する病原菌。エアロゾル吸入で肺炎(在郷軍人病)を発症。
ドリフトエリミネータ
冷却塔上部の飛散防止機器。エアロゾル飛散を抑える。
建築物衛生法
ビル管法。特定建築物の空気・水質管理を定めた法律。
PUE
Power Usage Effectiveness。データセンターの電力効率指標。1に近いほど高効率。

まとめ・実務ポイント

冷却塔補給水量は「蒸発+飛散+ブロー」の3要素で決まり、100m³/h・ΔT5℃・N=3の標準ケースで補給水1.35m³/h、年間5,400m³・水コスト約189万円が典型値です。濃縮倍率Nが水消費と薬品コストのトレードオフを支配する最大の管理変数で、N=2→N=5で水消費25%削減、薬品コスト増との差引で年数十万円〜数百万円の実質削減が期待できます。

運用の必須事項は、(1)建築物衛生法に基づく年1回以上の清掃・レジオネラ検査・記録保管、(2)水処理薬品(スケール防止剤・腐食防止剤・殺菌剤)の常時循環投入、(3)導電率制御によるブロー自動化、(4)ブロー水の下水道料金を含めた実質水コスト管理、(5)冬期凍結対策と非常停止手順の整備、の5点です。

本ツールで初期概算を掴んだうえで、冷却塔メーカー・水処理業者との詳細協議、水質分析に基づく薬品処方選定、雨水・再生水利用の代替案検討へと進むのが実務の標準ワークフローです。

参考文献・公的リソース

  • 厚生労働省「建築物における衛生的環境の確保に関する法律(ビル管法)」mhlw.go.jp
  • 日本冷凍空調工業会「冷却塔設計・性能基準」jraia.or.jp
  • 日本産業標準調査会「JIS B 8609 冷却塔」jisc.go.jp
  • 厚生労働省「レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針」mhlw.go.jp
  • 環境省「水質汚濁防止法・排水規制」env.go.jp