有給休暇買取金額
日給×未消化日数×買取率で有給休暇買取金額を即算出。 退職時清算・時効消滅・法定超過分の買取実務に。 労働基準法第39条・厚労省通達に基づき、買取可否の3ケース、給与所得課税、 退職所得控除の適用不可、社会保険料の扱いまで実務水準で整理します。
有給休暇買取金額ツール
計算式
買取金額 = 日給 × 未消化日数 × 買取率
日給 = 基本給 ÷ 所定労働日数
源泉徴収目安 ≒ 総額 × 約10%(給与所得として通常の給与と合算課税)
労働基準法上、在職中の年次有給休暇の買取は原則禁止(労働基準法第39条・取得促進のため)。
退職時の未消化分・法定日数超過分(会社独自付与)・時効消滅分(付与から2年経過)のみ買取可能です。
買取率は労働協約・就業規則で企業判断となり、実務では50-120%の範囲、100%が最も多く見られます。
計算例
- 日給1.5万・未消化20日・100% → 30万円(退職清算の典型)
- 日給1.8万・未消化15日・80% → 21.6万円(労働協約で80%規定)
- 日給2万・未消化40日・100% → 80万円(10年勤続・時効分含む)
- 日給1万・未消化5日・50% → 2.5万円(買取渋る中小企業事例)
有給買取の可否 3ケース
| ケース | 可否 | 実務ポイント |
|---|---|---|
| 退職時の未消化分 | 買取OK | 労働契約終了により消化不能となるため。買取義務ではなく企業判断。 |
| 時効消滅分(付与から2年経過) | 買取OK | 労基法上時効消滅した権利のため。就業規則で規定していれば買取可能。 |
| 法定日数超過分(会社独自付与) | 買取OK | 法定20日を超えて付与された分は労基法の規制対象外。 |
| 在職中の法定日数分 | 買取NG(違法) | 労基法第39条違反。買取契約自体が無効となり、なお取得請求権が残る。 |
有給休暇買取金額の詳しい解説
労基法第39条と買取禁止原則
年次有給休暇は労働基準法第39条に基づき、雇入れから6ヶ月継続勤務・全労働日の8割以上出勤の労働者に付与される権利です。
原則「在職中の買取禁止」という運用は、労働者の休養権を実質保証するために厚生労働省の通達(昭和30年11月30日基収4718号)で確立された解釈で、金銭給付で有給を代替させることを禁じています。
実務上の買取可能ケース
ただし、実務上「買取可能」とされる3つのケースがあります。
第一は退職時の未消化分で、労働契約終了により消化不能となる特殊事情に基づく買取。
第二は時効消滅分で、労基法上2年で時効消滅した権利について就業規則で買取規定を設けている場合。
第三は法定日数超過分で、労基法の法定付与日数(勤続年数により10-20日)を超えて会社が独自付与した部分は労基法の規制対象外となり、金銭給付で処理可能です。
買取金額の相場
日給1.5万×未消化20日×買取率100%=30万円が典型的な退職時買取額。
実務では「退職前計画消化」(有給消化完了後に退職日を設定)が原則で、業務引継優先や人員不足で消化困難な場合に企業と交渉して買取り(80-100%が相場)となります。
税務上の扱い
税務上、買取金は給与所得として通常給与と合算課税されます。
退職金と一緒に支払われても退職所得控除(年数×40万円等)の対象外で、退職金の税制優遇は受けられません。
源泉徴収・住民税・社会保険料も通常給与と同様に控除されます(ただし退職月の社会保険料は月末退職か否かで扱いが異なる)。
働き方改革と年5日取得義務
2019年4月施行の働き方改革関連法により、年5日の年次有給休暇取得が使用者の義務となりました(労基法第39条第7項)。
この違反には30万円以下の罰金があり、企業側は有給消化率を管理する体制構築が必須となっています。
買取に頼るのではなく、計画的消化を推進することが本来の労務管理です。
税務・社会保険料の扱い
| 項目 | 扱い | 備考 |
|---|---|---|
| 所得区分 | 給与所得 | 退職金と一緒に支払われても給与所得扱い |
| 退職所得控除 | 対象外 | 年数×40万円等の優遇なし |
| 源泉徴収 | 月額表甲欄 | 退職月の給与と合算して源泉徴収 |
| 健康保険・厚生年金 | 対象 | 標準報酬月額算定の報酬に含む(退職月分) |
| 雇用保険 | 対象 | 賃金として保険料算定基礎に含む |
| 住民税 | 翌年課税 | 給与所得として翌年6月から徴収 |
業界・現場での使い方
人事給与担当
退職時清算業務での買取金額算定・源泉徴収・社会保険料調整。就業規則の買取規定と労働協約の整合性チェック。
退職予定者
未消化有給日数の把握、計画消化と買取の選択判断、税引後手取り額の試算。
社会保険労務士・労務相談
労基法適合性チェック、就業規則作成支援、労働協約における買取率の条項作成。
労働組合・団体交渉
買取率の交渉材料。中小企業では50-80%が多いため、100%以上への引き上げ交渉。
よくある間違い・注意点
- 在職中の買取は違法 — 法定日数分の在職中買取は労基法第39条違反。買取契約自体が無効で、なお取得請求権が残ります。労働基準監督署の是正勧告対象。
- 買取率100%が義務と誤解 — 労基法に買取義務規定はなく、企業判断(労働協約・就業規則)。実務相場は80-100%ですが、中小では50-70%も少なくありません。
- 退職所得控除適用と誤解 — 給与所得扱いで、退職金の税制優遇(勤続年数×40万円等)は受けられません。手取り計算時に注意。
- 社会保険料未控除 — 標準報酬月額算定の報酬に含まれるため、健康保険・厚生年金の対象。退職月末退職か中途退職かで社会保険料の月数が変わります。
- 年5日取得義務の見落とし — 2019年4月から年5日の年休取得が使用者の義務。買取で済ませて年5日を消化していない場合は労基法違反となります。
よくある質問(FAQ)
日給1.5万×未消化20日の買取は?
買取率100%で30万円。源泉徴収約3万円を差し引き、手取り約27万円が典型例。所得税・住民税・社会保険料の合計で総額の20-30%が控除されるため、手取りは総額×0.7-0.8程度が目安です。
在職中の買取はダメ?
原則NGです。労基法第39条・厚労省通達で買取禁止が確立。ただし①退職時未消化分、②時効消滅分(付与から2年経過)、③法定日数超過分(会社独自付与)の3ケースのみ買取可能。就業規則で該当規定を整備しているかを確認してください。
買取率の相場は?
80-100%が実務標準。100%以上の企業は好待遇として求人でアピールされることが多いです。中小企業では50-80%も見られ、労働協約で明記されている場合はその率が適用されます。労働基準法は買取率の下限を定めていないため、企業裁量です。
税金は?
給与所得扱い。退職所得控除の対象外で、通常の月次給与と同様の源泉徴収・住民税・社会保険料が控除されます。退職金と同時に支払われても、退職金の税制優遇(勤続年数×40万円等)は受けられません。
買取を拒否されたら?
買取は企業の義務ではないため、拒否されても違法ではありません。この場合は退職日までの計画的消化が現実解。退職日を有給日数分後ろ倒しにする「有給消化後退職」で権利行使できます。就業規則の買取規定があれば根拠として交渉可能です。
アルバイト・パートも対象?
対象です。労基法第39条は雇用形態を問わず、6ヶ月継続勤務・全労働日の8割以上出勤の労働者に有給を付与。所定労働日数に応じた比例付与(週4日以下等)でも、退職時の未消化分の買取は可能です。
関連する規格・法規・公的資料
- e-Gov 労働基準法(第39条 年次有給休暇)
- 厚生労働省 年次有給休暇取得促進
- 厚労省 年次有給休暇の時季指定義務 わかりやすい解説
- 厚労省 年次有給休暇制度の概要
- 東京労働局 労働基準監督署
- 国税庁 給与所得の源泉徴収
- 国税庁 退職金と税
- 日本年金機構 標準報酬月額
- 全国社会保険労務士会連合会
- 厚労省 働き方改革関連法(年5日取得義務)
※本ツールは公的基準に基づく参考計算です。実際の労務処理・税務判断は最新の告示・通達および所轄労働基準監督署・税務署・社会保険労務士の判断に従ってください。
免責事項
本ツールは労働基準法第39条・厚労省通達および実務相場に基づく参考計算です。
個別の労働協約・就業規則・雇用契約書の内容、業界慣習、退職事由(自己都合・会社都合)、企業ごとの計算基準により実際の買取金額・源泉徴収額・社会保険料控除は異なります。
労働争議・不当解雇に伴う清算、労働基準監督署への申告、税務署への確定申告等の法的判断は、社会保険労務士・弁護士・税理士等の専門家にご相談ください。
源泉徴収税は10%概算で表示していますが、実際の税率は月額表甲欄・扶養控除等申告書の提出状況により異なります。