計算ツール
産後うつEPDS母子健康スクリーニング

産後うつスクリーニング(EPDS)計算ツール|10項目で即判定、9点・13点カットオフの根拠と対処

エジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)10項目に答えるだけで、日本語版標準のカットオフ9点・13点に基づき即時にリスクを判定します。産後1〜2ヶ月健診で公的に用いられている国際標準ツールを、厚生労働省の産後ケア事業・母子健康法・日本産婦人科医会のガイドラインに照らして解説。ひとりで抱え込まず、パートナー・家族・保健師・産科医と話すきっかけにお使いください。

最終更新:2026-08-05/監修:計算ツールズ編集部

EPDS 10項目 セルフチェック

過去7日間のあなたの気持ちに最も近い項目を選んでください。各設問0〜3点、合計0〜30点で評価します。

Q1. 笑うことができ、物事のおもしろい面もわかった
Q2. 物事を楽しみに待った
Q3. 物事がうまくいかない時、自分を不必要に責めた
Q4. はっきりとした理由もないのに不安になったり心配した
Q5. はっきりとした理由もないのに恐怖に襲われた
Q6. することがたくさんあって大変だった
Q7. 不幸せなので眠りにくかった
Q8. 悲しくなったり、惨めになった
Q9. 不幸せで泣いた
Q10. 自分自身を傷つけたいと思うことがあった

EPDSの計算式とカットオフ

基本算式

EPDS合計点 = Q1〜Q10 の各設問(0〜3点)の総和 / 最大30点

エジンバラ産後うつ病質問票(Edinburgh Postnatal Depression Scale, EPDS)は、1987年に英国 Cox らによって開発された10項目の自己記入式質問票です。日本語版は岡野禎治ら(1996)によって検証され、以下のカットオフが確立しています。

日本語版カットオフ

スコア判定臨床的意味
0〜8点低リスク現時点で産後うつの可能性は低い
9〜12点要観察・要注意抑うつ傾向あり、次回健診での再評価・保健師相談を推奨
13点以上高リスク(要精査)産後うつの可能性が高い。精神科・産婦人科への相談を強く推奨
Q10が1点以上自傷念慮ありスコアに関わらず即日相談。24時間対応の相談窓口を推奨

厚生労働省の「産婦健康診査事業」では、産後2週間・1ヶ月健診でEPDSを含む3つの質問票(EPDS・赤ちゃんへの気持ち質問票・育児支援チェックリスト)による評価が推奨されています。

スコア別の解釈

0〜8点:低リスク

現時点で産後うつのサインは目立ちません。ただし、産後6ヶ月〜1年の間はホルモン変動・睡眠不足・育児負荷が続くため、2〜4週おきの再評価を推奨します。

9〜12点:要観察

抑うつ傾向あり。保健センターの新生児訪問・産婦健診で保健師と面談し、育児支援サービス・産後ケア事業の利用検討を。夫・パートナー・親族の関与増加が有効です。

13点以上:高リスク

大うつ病エピソードに相当する可能性あり。産科医・精神科医(周産期メンタルヘルス外来)への受診が強く推奨されます。放置すると母子関係・児の発達・家族機能に長期的影響が及ぶことが分かっています。

Q10(自傷念慮)が1点以上

合計スコアに関わらず即時対応が必要です。よりそいホットライン(0120-279-338)、いのちの電話、地域の精神保健福祉センター、緊急時は119/救急外来へ。パートナー・家族の同伴が望ましいです。

産後うつのサイン(DSM-5 大うつ病エピソード)

米国精神医学会 DSM-5 の周産期発症うつ病(産後うつは産後4週以内発症と定義)の主要症状は次の通りです。EPDS高得点かつ以下2つ以上の症状が2週間以上続く場合は、専門医への相談が推奨されます。

  • 抑うつ気分(悲しい、空虚、絶望的)
  • 興味・喜びの著明な減退(育児が楽しめない、赤ちゃんに愛情を感じない)
  • 食欲・体重の顕著な変化
  • 不眠・過眠(赤ちゃんが寝ても眠れない)
  • 精神運動性の焦燥・制止
  • 疲労感・気力減退
  • 無価値感・過度の罪悪感
  • 集中力・決断力の低下
  • 死・自傷への反復思考

マタニティ・ブルーズ(産後2〜10日の一過性気分変化)とは異なり、産後うつは2週間以上持続し、日常機能の障害を伴います。マタニティブルーズはホルモン急変による正常反応で自然軽快しますが、産後うつは治療介入を要します。

スクリーニングの時期

時期評価内容実施主体
妊娠中期〜後期周産期メンタルヘルス評価産科施設・母子手帳交付時面談
産後2週間健診EPDS初回・赤ちゃんへの気持ち質問票産科施設(産婦健康診査事業)
産後1ヶ月健診EPDS再評価産科施設
新生児訪問(生後28日以内)保健師によるEPDS実施市区町村保健センター
3〜4ヶ月児健診母親のメンタル面接市区町村
産後1年まで随時セルフチェック推奨本人・家族

厚生労働省の「産婦健康診査事業」により、産後2週間・1ヶ月の健診費用は市区町村の助成対象(上限5,000円×2回など)となっており、EPDS実施は公的にサポートされています。

リスク要因

産後うつの発症リスクが高い要因として、日本産婦人科医会の「妊産婦メンタルヘルスケアマニュアル」で以下が挙げられています。

  • 過去のうつ病・不安障害の既往(最強のリスク因子)
  • 妊娠中の抑うつ・不安(周産期うつの延長)
  • 家族歴(母・姉妹の産後うつ既往)
  • パートナーとの関係不良・DV
  • ソーシャルサポートの不足(実家遠方、孤立育児)
  • 予期せぬ妊娠・望まない妊娠
  • 妊娠合併症・切迫早産・NICU入院児
  • 難産・帝王切開・出産時トラウマ
  • 経済的困窮・失職
  • 甲状腺機能異常(産後甲状腺炎)
  • 睡眠不足の慢性化(3時間以下)

相談窓口・産後ケア事業

市区町村の産後ケア事業

母子健康法に基づき、全国の市区町村で「宿泊型」「デイサービス型」「訪問型」の産後ケアが提供されています。産後4ヶ月まで(一部自治体は1年まで)、1回あたり自己負担2,000〜5,000円で利用可能。EPDS高得点者は優先利用の対象です。

保健センター・母子保健コーディネーター

子育て世代包括支援センター(母子保健法改正で全市町村に設置)で、妊娠期から産後まで一貫した相談が可能。保健師・助産師が無料で対応し、必要に応じ医療機関・福祉サービスを紹介します。

周産期メンタルヘルス外来

総合病院精神科・大学病院に設置される専門外来。妊娠中〜産後の女性に特化し、授乳中でも使える薬物治療、心理療法、家族療法を提供。日本周産期メンタルヘルス学会の医療機関検索で近隣施設を確認できます。

電話・オンライン相談

よりそいホットライン(0120-279-338、24時間・無料)、いのちの電話、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)。緊急時は迷わず119番・救急外来へ。

NPO・民間サポート

日本産後ケア協会、ドゥーラ協会、ママリ相談室など、自治体を補完する民間ネットワークが多数あります。同じ経験を持つピアサポーターの存在は特に有効です。

治療の選択肢

日本産婦人科医会「妊産婦メンタルヘルスケアマニュアル」および日本周産期メンタルヘルス学会「コンセンサスガイド」に基づき、以下の治療が推奨されています。

治療内容備考
心理療法(CBT・IPT)認知行動療法・対人関係療法軽〜中等症の第一選択
薬物療法(SSRI/SNRI)セルトラリン・フルボキサミン等授乳中でも比較的安全性が確立
電気けいれん療法(mECT)重症・希死念慮・薬剤抵抗性周産期でも安全性高い
家族介入・環境調整パートナー教育・家事育児分担全ケースで必須
ソーシャルサポート強化産後ケア・訪問支援予防・軽症で第一選択

授乳中の薬物療法については、国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」で個別相談が可能です。

家族・パートナーの役割

傾聴と共感

「頑張れ」「みんな通る道」等の励ましは逆効果。「つらいね」「話してくれてありがとう」と受け止め、否定せず聞くことが最も有効です。

家事・育児の実務分担

夜間授乳の代替(搾乳・ミルク併用)、家事の外注(食洗機・乾燥機・宅配・家事代行)、育休取得の検討。「手伝う」ではなく「主体的に担う」姿勢が重要です。

睡眠の確保

連続4時間以上の睡眠が確保できないと産後うつリスクが急上昇。パートナー・親族の宿泊サポート、産後ケア宿泊型の活用で睡眠を守ることが治療の一部となります。

受診への同伴

初回受診はハードルが高いため、パートナーが予約・同伴すると受診率が大きく上がります。診察に同席し、家庭での様子を医師に伝える情報提供者の役割も担ってください。

よくある誤解・注意点

  • 「産後うつはマタニティブルーズと同じ」は誤解 — マタニティブルーズは産後2〜10日の一過性気分変化で50〜70%に見られる正常反応。産後うつは2週間以上持続する疾患で、10〜15%に発症します。両者は原因も治療も別物です。
  • 「気合で治る」は誤解 — 産後うつはホルモン変化・脳内神経伝達物質の変化・慢性睡眠不足による神経生物学的疾患であり、意志の力では治りません。適切な治療で数週間〜数ヶ月で寛解します。
  • 「授乳中は薬が飲めない」は誤解 — SSRI(セルトラリン等)は授乳中でも安全性が確立しています。国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」で個別確認が可能。断乳よりも治療優先の判断が推奨される場合が多いです。
  • EPDS高得点=確定診断ではない — EPDSはあくまでスクリーニングツール。確定診断は医師の面接・観察・DSM-5基準に基づき行われます。低得点でも症状があれば受診を、高得点でも自責の必要はありません。
  • Q10無視は危険 — 総合点が低くてもQ10(自傷念慮)が1点以上あれば即時対応が必要。「うまく答えたい」意識で他項目を低く回答している可能性もあり、実際のリスクを見逃すことがあります。
  • 父親・パートナーの産後うつ軽視 — 男性の10%程度に「父親の産後うつ」が発症します。家族全体でのメンタルヘルス評価が推奨されます。
  • 1回のスクリーニングで安心 — 産後うつは産後3〜6ヶ月がピーク。産後1年までは複数回の評価が必要で、1回の陰性で油断できません。

関連する法令・ガイドライン

  • 母子保健法 ― 妊産婦・乳幼児の健康管理に関する基本法。産後ケア事業・母子保健コーディネーターの根拠。
  • 成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推進に関する法律(成育基本法) ― 周産期メンタルヘルスケアの推進を規定。
  • 厚生労働省「産婦健康診査事業実施要綱」 ― 産後2週間・1ヶ月健診でのEPDS実施と自治体助成の枠組み。
  • 日本産婦人科医会「妊産婦メンタルヘルスケアマニュアル」 ― 全国の産科医療機関のスクリーニング・介入標準。
  • 日本周産期メンタルヘルス学会「コンセンサスガイド」 ― 産後うつの診断・治療の学会標準。
  • DSM-5(米国精神医学会) ― 産後うつの診断基準(周産期発症うつ病)。
  • ICD-11(WHO) ― 産後うつを含む周産期精神疾患の国際分類。

参考文献・公的資料

※本ページのEPDSスクリーニングはあくまで自己評価のためのツールであり、医学的診断ではありません。結果の解釈および治療の要否については、必ず産科医・精神科医・保健師にご相談ください。自傷・自殺念慮がある場合は、迷わず119番・救急外来、またはよりそいホットライン(0120-279-338、24時間無料)にご連絡ください。あなたはひとりではありません。

よくある質問(FAQ)

EPDSはいつ受けるのが適切ですか?

産後2週間・1ヶ月健診での実施が公的に推奨されています(厚労省「産婦健康診査事業」)。ただし、産後うつは産後3〜6ヶ月がピークのため、産後1年までは症状の変化に応じて何度でもセルフチェックすることが推奨されます。

スコアが高くて不安です。すぐ受診すべき?

13点以上、またはQ10(自傷念慮)が1点以上なら早期の相談を強く推奨します。まず市区町村の保健センターや産科施設への電話が敷居が低い方法。緊急時(自傷・自殺念慮が強い場合)は迷わず119番・救急外来へ、またはよりそいホットライン(0120-279-338、24時間無料)へ。

治療はどんな方法がありますか?

心理療法(認知行動療法・対人関係療法)、薬物療法(SSRI等)、家族介入、産後ケア事業活用が主要な選択肢です。軽〜中等症では心理療法・環境調整が第一選択、中〜重症では薬物療法併用が推奨されます。授乳中でも安全な薬剤があります。

授乳中でも薬は飲めますか?

SSRI(セルトラリン、パロキセチン等)は授乳中でも安全性が高いことが分かっています。国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」で個別相談も可能です。断乳よりも治療優先の方針で、母子ともに良い結果につながることが多いです。

マタニティ・ブルーズと産後うつの違いは?

マタニティ・ブルーズは産後2〜10日の一過性気分変化で50〜70%の産婦に見られる正常反応で自然軽快します。産後うつは2週間以上持続する疾患で10〜15%に発症、治療介入が必要です。両者は原因も対応も別物として区別されます。

パートナーとして何ができますか?

①「頑張れ」ではなく「つらいね」の傾聴、②夜間授乳の代替・家事の主体的分担、③受診への同伴・予約サポート、④パートナー自身のメンタル管理、⑤外部リソース(産後ケア・訪問支援)の情報収集が重要です。「手伝う」ではなく「一緒に担う」姿勢を持ってください。

父親でも産後うつになりますか?

はい。父親の産後うつは10%程度に発症すると報告されています。生活激変、睡眠不足、経済プレッシャー、パートナーとの関係変化が要因。同じEPDSも一定程度有効で、家族全体のメンタルヘルスケアが推奨されます。

家族歴・過去のうつ病歴は影響しますか?

大きく影響します。過去のうつ病既往は最強のリスク因子で、既往者は非既往者の3〜5倍のリスクです。妊娠期からのモニタリング・予防的サポートが有効で、事前に主治医・保健師に伝えておくことをお勧めします。

誰にも相談できないときは?

24時間対応のよりそいホットライン(0120-279-338、無料)、いのちの電話、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)があります。SNS相談(BONDプロジェクト等)も選択肢。オンラインの匿名相談から始めても構いません。あなたはひとりではありません。

産後ケア事業はどう申し込めば?

お住まいの市区町村保健センターまたは子育て世代包括支援センターに電話・窓口相談で申請します。宿泊型・デイサービス型・訪問型があり、産後4ヶ月まで(自治体により1年まで)利用可能。自己負担は1回2,000〜5,000円程度で、非課税世帯は無料の自治体も多いです。

EPDSを自分でやる意味はある?

あります。日々の気分変化を客観的に数値化することで、「気のせいかも」と見過ごしがちなサインに気づけます。健診まで待たず、気になった時点で自己評価しパートナー・家族と結果を共有することで、早期の対応につながります。継続的なセルフチェックが有効です。

子どもへの影響が心配です

産後うつを放置すると母子相互作用・愛着形成・児の発達に影響が及ぶ可能性があります。しかし逆に言えば、早期に治療すれば影響を最小化できるということ。治療を受けることが子どもへの最善の投資です。自責は不要で、早期受診が最良の対応です。