計算ツールズ
玉掛け吊り角度ワイヤロープ労働安全

玉掛けの吊り角度と張力の計算

【ご注意】このページの計算結果・情報は参考値です。正確性・最新性は保証できません。税務・法務・お金・設計・施工・安全などに関わる判断は、公式の資料と専門家の確認のうえ、ご自身の責任で行ってください。免責事項

荷重・掛け本数・吊り角度から、ワイヤ1本にかかる張力を計算します。吊り角120°では張力が2倍になり、2本で吊っていても1本あたり荷重の全量がかかります。必要な安全荷重と、荷を締め付ける水平分力も出します。

最終更新:2026-09-20/監修:計算ツールズ編集部

玉掛けの吊り角度と張力の計算ツール

角度が広がると張力が増える

2本のワイヤで荷を吊るとき、ワイヤは斜めになります。斜めになるほど、同じ荷を支えるのに大きな力が要ります。

1本の張力 = 荷重 ÷ 本数 ÷ cos(吊り角度 ÷ 2)

2,000 kg の荷を2本で吊る場合、真下に吊れば1本1,000 kg ですが、吊り角60°なら 1,154.7 kg、90°なら 1,414.2 kg、120°では 2,000 kg になります。120°では、2本で吊っているのに1本あたり荷重の全量がかかります。

この倍率を張力係数と呼びます。1÷cos(角度÷2) で求まり、0°で1.000、60°で1.155、90°で1.414、120°で2.000、150°では3.864 です。90°を超えないようにするのが原則とされるのは、これ以上になると増え方が急になるからです。

水平方向の力

ワイヤが斜めになると、荷を内側に締め付ける力も生まれます。

水平分力 = 荷重 ÷ 本数 × tan(吊り角度 ÷ 2)

2,000 kg・2本・60°なら577 kg が内向きにかかります。薄い箱や長尺物では、この力で荷が変形することがあります。

吊り角度と張力係数

吊り角度張力係数2,000kg を2本で吊る場合評価
0°(真下)1.0001,000 kg理想
30°1.0351,035 kg良好
60°1.1551,155 kg推奨の上限
90°1.4141,414 kg許容範囲
120°2.0002,000 kg原則として超えない
150°3.8643,864 kg危険

安全係数

用具安全係数意味
玉掛け用ワイヤロープ6以上破断荷重の6分の1までしか使えない
フック・シャックル5以上—
つりチェーン(一般)5以上—
つりチェーン(条件を満たすもの)4以上伸びと硬さの要件あり

使ってはいけないワイヤ

状態基準
素線の切断1よりの間で10%以上の素線が切れているもの
直径の減少公称径の7%を超えて減少したもの
キンクあるもの(折れ曲がって型崩れしたもの)
著しい形崩れ・腐食あるもの

※入力した内容はお使いのブラウザの中だけで処理され、サーバーには送信されません。保護具と揚重は人命に直結します。このツールは選定の見当をつけるための概算であり、製品ごとに規格値も使用条件も異なります。最終的な判断は、メーカーの取扱説明書と、作業主任者など有資格者の確認によってください。法令の適用については所轄の労働基準監督署にご相談ください。

玉掛けの吊り角度と張力の計算の詳しい解説

玉掛けの事故で多いのが、ワイヤの選定を間違えたことによる破断です。荷の重さだけを見てワイヤを選ぶと、吊り角度によっては能力を超えてしまいます。同じ荷でも、吊り方で1本にかかる力は倍以上変わります。

仕組みは単純な力の分解です。ワイヤが垂直なら、荷重はそのまま上向きに支えられます。ワイヤが斜めになると、張力のうち上向きの成分だけが荷を支えることになるので、同じ上向きの力を出すには全体の張力を大きくしなければなりません。角度が半分の余弦で割るのはこのためです。

数字で見ると危険さが分かります。吊り角60°なら1.155倍で済みますが、120°では2.000倍。2本で吊っているのに、1本あたり荷重の全量がかかります。つまり2本吊りの意味がなくなっています。150°まで開くと3.864倍で、2本合わせて荷重の7.7倍の張力が生じます。角度が開くほど増え方が急になるのが、この関数の性質です。

だから原則として吊り角は90°を超えない、できれば60°以下とされています。角度を下げるには、より長いワイヤを使うか、吊り点の間隔を狭めるか、上に空間を取るかです。玉掛け用ワイヤが長めに作られているのは、角度を抑えるためでもあります。現場で「ワイヤが長すぎる」と短いものに替えると、角度が開いて危険になることがあります。

4本吊りについても誤解があります。4本掛ければ1本あたり4分の1になりそうですが、荷が完全な剛体で、4点の高さが厳密に揃っていない限り、実際には2本で受けています。わずかな寸法差や荷の変形で、対角の2本が先に張り、残り2本は緩んだままになるからです。安全側に考えるなら、4本吊りでも2本で計算します。これは玉掛け技能講習でも教えられる考え方です。

安全係数も法令で定められています。玉掛け用ワイヤロープは6以上、フックやシャックルは5以上です。破断荷重20 kN のワイヤなら、実際に使えるのは約3.3 kN 相当、キログラムに直すと約340 kg です。「破断荷重=使える荷重」ではありません。この6分の1という数字は、衝撃荷重、ワイヤの劣化、点検の見落としなど、現実のばらつきを吸収するためのものです。

最後に、水平分力にも注意が必要です。ワイヤが斜めになると、荷を内側に締め付ける力が働きます。2,000 kg を60°で吊れば577 kg が内向きにかかり、薄い板金の箱や中空の構造物では変形します。重さに耐えられても、締め付けに耐えられないことがあるのです。こうした荷には、はり(スプレッダビーム)を使って角度をゼロに近づけます。

業界・現場での使い方

玉掛けワイヤの選定

荷重と吊り角度から必要な破断荷重を出し、手持ちのワイヤで足りるか判定します。

吊り方の検討

角度を変えたときの張力の違いを比べ、ワイヤの長さを決めます。

安全教育

角度で張力が倍になることを数字で示し、90°以下の理由を説明します。

スプレッダビームの要否

水平分力から、荷が変形しないかを確かめます。

作業計画の作成

揚重計画書に記載する張力と必要能力を算出します。

よくある間違い・注意点

  • 荷重を本数で割るだけにする — 角度による増加を見落とします。120°では2倍になります。
  • 4本吊りで4分の1と考える — 剛体で高さが揃わない限り実質2本です。安全側では2本で計算します。
  • 破断荷重をそのまま使える荷重とみなす — 安全係数6以上が必要です。6分の1が使える上限です。
  • 角度を確認せずに短いワイヤを使う — 角度が開いて張力が急増します。長さは角度を決めます。
  • 水平分力を考えない — 薄い箱や長尺物は締め付けで変形します。スプレッダビームを検討します。

関連する規格・公的資料

※本ツールは公的基準に基づく参考計算です。医療・法務・税務の判断は最新の告示・規格および専門家の判断に従ってください。

よくある質問(FAQ)

吊り角度で張力はどう変わりますか?

1÷cos(角度÷2) 倍です。60°で1.155、90°で1.414、120°で2.000 になります。

吊り角は何度までにすべきですか?

原則90°以下、できれば60°以下です。それ以上は増え方が急になります。

120°だと何が起きますか?

張力係数が2.000 になり、2本で吊っていても1本あたり荷重の全量がかかります。

4本吊りなら4分の1になりますか?

なりません。荷が剛体で高さが厳密に揃っていない限り実質2本で受けます。

安全係数はいくつですか?

玉掛け用ワイヤロープは6以上、フックやシャックルは5以上と定められています。

破断荷重20 kN のワイヤはいくらまで吊れますか?

安全係数6なら約3.3 kN、約340 kg 相当です。破断荷重の6分の1です。

角度を小さくするには?

より長いワイヤを使うか、吊り点の間隔を狭めるか、上の空間を確保します。

水平分力とは何ですか?

荷を内側に締め付ける力です。2,000 kg を60°で吊ると577 kg かかります。

使ってはいけないワイヤは?

素線切れ10%以上、直径7%超の減少、キンク、著しい形崩れや腐食があるものです。

玉掛けに資格は要りますか?

要ります。つり上げ荷重1t 以上は技能講習、1t 未満は特別教育が必要です。