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後熱処理PWHT応力除去予熱

後熱処理(PWHT)の保持時間計算

材質区分・板厚・処理の目的から、後熱処理の保持温度・保持時間・昇降温速度の上限を算出します。

最終更新:2026-05-06/監修:計算ツールズ編集部

後熱処理(PWHT)の保持時間計算ツール

炭素鋼の応力除去では保持温度を600℃とし、保持時間は板厚25mmあたり1時間として60分を確保します。昇温速度の上限は 5550÷板厚 と上限値222℃/hの小さいほうで、板厚25mmでは222℃/h。降温速度は 7000÷板厚 と280℃/hの小さいほうで280℃/hとなります。予熱100℃から600℃まで上げるには (600−100)÷222=約2.3時間が必要です。板厚が50mmを超える場合は、2時間に25mmごと15分を加えて計算します。

材質区分と応力除去の保持温度

材質区分保持温度の目安水素放出の後熱温度
炭素鋼600 ℃250 ℃
炭素・0.5モリブデン鋼620 ℃300 ℃
1.25クロム・0.5モリブデン鋼705 ℃350 ℃
2.25クロム・1モリブデン鋼705 ℃350 ℃
9クロム・1モリブデン鋼745 ℃350 ℃

板厚と保持時間・速度の上限

板厚保持時間昇温速度降温速度
12 mm29 分222 ℃/h280 ℃/h
25 mm60 分222 ℃/h280 ℃/h
50 mm120 分111 ℃/h140 ℃/h
100 mm150 分56 ℃/h70 ℃/h

※参考計算です。規格・工具メーカーの推奨値・機械の仕様によって適正値は変わるため、実機の取扱説明書と最新のJISで確認してください。

後熱処理(PWHT)の保持時間計算の詳しい解説

後熱処理の時間が板厚で決まるのは、部材の中心まで温度が行き渡るのに厚さに比例した時間が要るためです。表面が目標温度に達しても内部はまだ低く、残留応力の緩和は温度が届いた部分でしか進みません。板厚25mmあたり1時間という慣行は、この熱の伝わりと、応力緩和がクリープ現象として時間に対して対数的に進む性質の両方を踏まえたものです。厚板で時間が単純な比例ではなく逓減するのも、一定時間を超えると緩和の進みが鈍るからです。

判断が分かれるのは、応力除去と水素放出のどちらを目的とするかです。応力除去は600℃前後の高温で行い、残留応力を降伏点の低下によって緩めます。水素放出は250℃前後の比較的低い温度で、溶接金属に残った拡散性水素を逃がすことが目的で、低温割れの防止に効きます。前者は寸法安定性や応力腐食割れの抑制に、後者は割れの防止に効くので、両方が要る場合は溶接直後に後熱を行い、その後に応力除去を実施します。溶接方法による水素量の差も、後熱の要否を分ける要素です。

見落とされやすいのは局部加熱のときの加熱幅です。溶接線だけを狭く加熱すると、周囲の冷たい部分が拘束となって新たな熱応力が生じ、応力除去のはずが応力を残す結果になります。溶接中心から板厚の2倍または50mmのいずれか大きいほうを両側に確保するのが一般的な考え方で、その外側にも保温帯を設けて温度勾配を緩やかにします。熱電対を複数点に配置し、実際の温度分布を記録として残すことも求められます。

材質による違いも大きく、クロム・モリブデン鋼では保持温度が700℃を超え、9クロム鋼では変態温度との関係から温度の上限管理も厳しくなります。高温に上げすぎると焼戻し軟化が進み、母材の強度が規定を下回ります。逆に低すぎれば応力が残ります。オーステナイト系ステンレス鋼のように、応力除去のつもりの加熱が鋭敏化を招く材料もあります。適用する規格が圧力容器か配管か建築かで要求は異なるため、施工前に溶接施工要領書で条件を確定し、疑義があれば材料と規格の専門家に確認してください。熱処理の記録は、温度と時間の関係を示すチャートとして保存するのが一般的で、後の検査や事故調査で参照されます。炉の温度分布の確認も定期的に必要です。

業界・現場での使い方

圧力容器の製造

板厚と材質から保持温度と時間を決め、炉の運転計画を立てます。

配管の現地施工

局部加熱の加熱幅と保温帯の範囲を決め、熱電対の配置を計画します。

溶接施工要領書の作成

予熱から後熱、応力除去までの温度履歴を一連の条件として整理します。

熱処理費用の見積り

昇温・保持・降温の合計時間から炉の占有時間と燃料費を算出します。

よくある間違い・注意点

  • 保持時間だけを見て炉の占有時間を決める — 昇温と降温に速度制限があるため、実際の占有時間は保持時間の数倍になります。
  • 局部加熱で加熱幅を狭く取る — 周囲の拘束で新たな熱応力が生じ、応力除去の効果が得られません。
  • 応力除去と水素放出を同じ処理と考える — 目的も温度域も異なり、必要な場面が違います。
  • 保持温度を高くすれば早く済むと考える — 焼戻し軟化が進み、母材の強度が規定値を下回るおそれがあります。
  • 温度記録を残さない — 熱電対による実測記録がないと、処理が要求どおり行われた証明ができません。

関連する規格・公的資料

※本ツールは公的基準に基づく参考計算です。医療・法務・税務の判断は最新の告示・規格および専門家の判断に従ってください。

よくある質問(FAQ)

炭素鋼・板厚25mmの保持時間はどれくらいですか?

600℃で60分が目安です。板厚25mmあたり1時間として計算します。

板厚が50mmを超える場合はどう計算しますか?

2時間を基本とし、25mmごとに15分を加える考え方が広く用いられています。

昇温速度に上限があるのはなぜですか?

急な昇温は部材内に温度差を生み、熱応力による変形や割れの原因になるためです。

水素放出の後熱は何度で行いますか?

炭素鋼で250℃前後、クロム・モリブデン鋼では350℃前後が目安です。

局部加熱の加熱幅はどう決めますか?

溶接中心から板厚の2倍または50mmの大きいほうを両側に確保し、外側に保温帯を設けます。

ティグ溶接でも後熱は必要ですか?

拡散性水素量が少ないため省略できる場合がありますが、材質と板厚によっては必要です。

ステンレス鋼にも応力除去は有効ですか?

オーステナイト系では加熱により鋭敏化するおそれがあり、温度域の選定に注意が要ります。

温度はどこで測ればよいですか?

溶接部と加熱帯の端部に熱電対を配置し、全体の温度分布が要求範囲に入っていることを記録します。