ベンダーのV幅選定と最小フランジ計算
材質・板厚・曲げ長さ・曲げ角度から、推奨V幅・内側曲げ半径・最小フランジ・必要加圧力を算出します。
ベンダーのV幅選定と最小フランジ計算ツール
V幅は板厚の8倍を基本に、標準寸法へ丸めます。板厚2.0mmなら16mmとなり、内側曲げ半径はV幅の0.16倍で2.56mm、最小フランジはV幅の0.65倍で10.4mmです。必要加圧力は 1.33×引張強さ×板厚の2乗÷V幅で、軟鋼400N/mm2では1.33×400×4÷16=133kN/m。曲げ長さ1,000mmでは133kNとなり、トン換算で13.6トンです。能力80トンの機械に対して17.0%で、十分な余裕があります。
板厚とV幅・加圧力(軟鋼・90度・1m)
| 板厚 | 推奨V幅 | 内側R | 加圧力 |
|---|---|---|---|
| 1.0 mm | 8 mm | 1.28 mm | 6.8 トン |
| 1.6 mm | 12 mm | 1.92 mm | 11.6 トン |
| 2.0 mm | 16 mm | 2.56 mm | 13.6 トン |
| 3.2 mm | 25 mm | 4.00 mm | 22.2 トン |
| 4.5 mm | 35 mm | 5.60 mm | 31.4 トン |
材質による違い
| 材質 | 引張強さの目安 | 内側Rの係数 | スプリングバック |
|---|---|---|---|
| 軟鋼 SPCC | 400 N/mm2 | V幅の0.16倍 | 小さい |
| 熱延鋼板 SPHC | 400 N/mm2 | V幅の0.16倍 | 小さい |
| ステンレス SUS304 | 650 N/mm2 | V幅の0.18倍 | 大きい |
| アルミ A5052 | 250 N/mm2 | V幅の0.14倍 | 中くらい |
※参考計算です。規格・工具メーカーの推奨値・機械の仕様によって適正値は変わるため、実機の取扱説明書と最新のJISで確認してください。
ベンダーのV幅選定と最小フランジ計算の詳しい解説
V幅を板厚の8倍に取るのが標準とされるのは、この比率で曲げ半径と加圧力の釣り合いが最も良くなるためです。V幅を狭くすると内側の曲げ半径は小さくなりますが、必要な加圧力はV幅に反比例して急に増え、ダイの肩に食い込み傷が出ます。広くすれば加圧力は下がるものの、曲げ半径が大きくなり、最小フランジも長くなって狭い部分が曲げられません。板厚が薄いほど倍率を大きく取るのは、狭いV幅では板がダイの溝に落ち込みすぎるためです。
判断が分かれるのは内側曲げ半径の指定です。図面にRの指示があると、パンチ先端Rを合わせれば良いと考えがちですが、エアベンディングでは実際の内側RはほぼダイのV幅で決まり、パンチ先端Rはそれより小さければ結果に大きく影響しません。パンチ先端RがV幅から決まる自然なRより大きい場合にだけ、パンチ側が支配的になります。Rを小さくしたいときはV幅を狭めるか、底突き曲げやコイニングに切り替えることになりますが、加圧力は数倍に跳ね上がります。
見落とされやすいのは最小フランジです。V幅の0.65倍程度がダイの肩に乗る限界で、それより短いフランジは曲げの途中で溝に落ち、寸法が出ません。曲げ順序を組むときに、短いフランジ側を先に曲げておく、あるいは捨て代を付けて後で切り落とすといった工夫が要ります。突き当てとの干渉、既に曲げた部分とパンチの干渉も、V幅を決めた段階で確認しておかないと、加工の直前に段取りをやり直すことになります。
材質による差も設計に効きます。ステンレスは引張強さが軟鋼の1.6倍程度で、同じ板厚でも加圧力がそれだけ増え、スプリングバックも2倍以上になります。アルミは加圧力が小さい代わりに、曲げ半径を小さく取ると外側に割れが出やすく、圧延方向に対して直角に曲げる配慮が要ります。熱延鋼板は表面の黒皮がダイに移って傷の原因になります。スプリングバックの量は同じ材質でもロットで変わるため、最終的には試し曲げで補正角を確認する手順が欠かせません。金型の摩耗も無視できません。長く使ったダイは肩が丸くなり、同じV幅でも実際の曲げ半径が大きくなって角度が浅く出ます。定期的に金型の状態を確認し、寸法が安定しない場合は摩耗を疑ってください。
業界・現場での使い方
板金加工の段取り
板厚と材質から使うV幅を決め、金型の交換手順を計画します。
加工可否の判断
必要加圧力と機械能力を比べ、長尺の曲げを分割するかを検討します。
設計段階の確認
最小フランジ寸法から、図面の曲げ形状が加工可能かを事前に判断します。
展開図の作成
内側曲げ半径の目安から伸び代を求め、展開寸法に反映します。
よくある間違い・注意点
- パンチ先端Rで内側Rが決まると考える — エアベンディングでは内側RはほぼダイのV幅で決まります。
- 最小フランジを確認せずに設計する — V幅の0.65倍より短いフランジは溝に落ち、寸法が出ません。
- 曲げ長さを掛け忘れて加圧力を判断する — 線圧に曲げ長さを掛けないと、長尺の曲げで能力不足を見落とします。
- 材質を変えても同じ条件で曲げる — ステンレスは加圧力が1.6倍、スプリングバックは2倍以上になります。
- 鋭角の曲げで加圧力を90度基準のまま見る — 角度が鋭いほど加圧力は増え、金型と機械への負担が大きくなります。
関連する規格・公的資料
- 日本鍛圧機械工業会 — 鍛圧機械・板金機械
- 日本塑性加工学会 — 塑性加工
- 日本産業標準調査会 (JISC) — JIS規格
- 日本規格協会 — 規格の頒布・解説
- 日本鉄鋼連盟 — 鋼材
- 日本アルミニウム協会 — アルミニウム材
- ステンレス協会 — ステンレス鋼
- 日本機械学会 — 機械工学
- 経済産業省 — 産業政策
- 中央労働災害防止協会 — 労働安全衛生
※本ツールは公的基準に基づく参考計算です。医療・法務・税務の判断は最新の告示・規格および専門家の判断に従ってください。
よくある質問(FAQ)
板厚2.0mmの軟鋼ではどのV幅を使いますか?
板厚の8倍にあたるV16が標準です。内側Rは2.56mm前後になります。
必要な加圧力はどう求めますか?
1.33×引張強さ×板厚の2乗÷V幅で線圧を出し、曲げ長さを掛けます。2.0mm・1mで約13.6トンです。
内側Rを小さくしたい場合はどうしますか?
V幅を狭めるか、底突き曲げやコイニングに切り替えます。ただし加圧力は数倍になります。
最小フランジはどのくらいですか?
V幅の0.65倍が目安です。V16なら10.4mm程度が限界になります。
ステンレスでは何が変わりますか?
引張強さが高いため加圧力が1.6倍前後になり、スプリングバックも大きく出ます。
スプリングバックの補正はどうしますか?
目安の角度分だけ余分に曲げます。ロットで変わるため、試し曲げでの確認が前提です。
機械能力を超える場合の対処は?
曲げ長さを分割する、V幅を広げる、板厚の薄い材料に変更するといった方法があります。
薄板でV幅を大きく取るのはなぜですか?
狭いV幅では板が溝に落ち込みすぎて角度が安定しないためです。